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金子 政志; 中島 覚*
Inorganic Chemistry, 60(17), p.12740 - 12752, 2021/09
被引用回数:2 パーセンタイル:33.75(Chemistry, Inorganic & Nuclear)高レベル放射性廃液中で観測されている白金族元素と水素との反応の理解に向けて、本研究では、水素と酸化的付加反応を起こす代表的な錯体であるVaska錯体-[IrCl(CO)(PPh)]とその酸化付加体-[IrCl(YZ)(CO))(PPh)]に着目し、密度汎関数(DFT)計算を用いてIrメスバウアー分光パラメータの報告値と電子状態を相関づけた。DFT計算によるIr錯体の安定構造やIrメスバウアー異性体シフトの再現性を確認した後、Vaska錯体と酸化付加体のメスバウアー分光パラメータの計算を行った。結合解析によって、メスバウアー異性体シフトの傾向が、配位結合における共有結合の強弱と相関づけられることが明らかになった。また、電場勾配(EFG)の解析によって、EFG主軸の符号がYZ=Cl付加体とYZ=H付加体で逆転していることが分かり、状態密度解析から、IrとYZとの配位結合における電子密度分布の違いが、EFG主軸の符号逆転の原因であることが示唆された。
深澤 優人*; 金子 政志; 中島 覚*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 329(1), p.77 - 84, 2021/07
被引用回数:1 パーセンタイル:16.97(Chemistry, Analytical)マイナーアクチノイドと希土類元素の分離メカニズム解明の一環として、クラウンエーテル型配位子のAm/Eu選択性について密度汎関数計算を用いて研究を行った。まず、異なるリングサイズを持つクラウンエーテル, 12C4, 15C5, 18C6とEuとの錯生成反応を比較した結果、18C6が最も安定に錯体を生成することが分かった。18C6によるAm/Eu選択性を見積った結果、Amに対する選択性が示され、溶媒抽出を用いた既報の研究結果と一致した。18C6の酸素ドナーを窒素及び硫黄ドナーに置換した配位子を用いて、Am/Eu選択性を予測した結果、18C6よりも高いAm選択性を示すことが期待された。化学結合解析の結果、Am-O結合と比較してAm-N及びAm-S結合の強い原子軌道間の相互作用が観測され、その高い共有結合性がクラウンエーテル型配位子によるAm/Eu選択性の起源であることが示唆された。
加藤 茜*; 金子 政志; 中島 覚*
RSC Advances (Internet), 10(41), p.24434 - 24443, 2020/06
被引用回数:6 パーセンタイル:32.49(Chemistry, Multidisciplinary)高レベル放射性廃液中のルテニウム化学種の安定性を予測することを目的として、硝酸溶液中のルテニウムニトロシル錯体の錯生成反応を密度汎関数法(DFT)を用いて調査した。DFT計算によって得られた[Ru(NO)(NO)(HO)]の最適化構造を既報の実験値と比較した結果、Ru-配位子結合距離やIR振動数を再現することが分かった。幾何異性体間のギブズエネルギーの比較した結果、硝酸イオンの錯生成反応は、Ru-NO軸に対してエクアトリアル平面に配位することによって進行することが明らかになった。また、逐次錯体生成反応におけるギブズエネルギー差を見積ったところ、Ru錯体種と置換する配位子との会合エネルギーを考慮することによって、6M硝酸中のRu錯体種のフラクションを再現することに成功した。Ru-配位子との配位結合の解析の結果、Ru錯体種の安定性は、トランス影響に起因する電子密度の違いによって説明できることが示唆された。本研究は、硝酸中における白金族元素の詳細な錯生成反応のモデル化に寄与することが期待される。
金子 政志; 加藤 茜*; 中島 覚*; 北辻 章浩
Inorganic Chemistry, 58(20), p.14024 - 14033, 2019/10
被引用回数:10 パーセンタイル:64.21(Chemistry, Inorganic & Nuclear)高レベル放射性廃液中に存在することが知られているニトロシルルテニウム錯体について、密度汎関数計算を用いて、Ruメスバウアー分光パラメータ(及び)と配位子場分裂()を相関づけた。[Ru(NO)L] (L = Br, Cl, NH, CN)の構造は、全て報告されている単結晶構造に基づいて作成した。異なるスピン状態で計算した構造とエネルギーを比較した結果、一重項状態[Ru(II)(NO)L]が最も安定であることが分かった。及びの計算値は、報告されている実験値をよく再現し、L = Br, Cl, NH, CNの順で増加した。さらに、C対称性を仮定したを見積った結果、同じ順で増加し、分光化学系列と一致することが分かった。これは、配位子のドナー性及びアクセプター性の増加が、結果としてメスバウアー分光パラメータの増加に起因することを示唆している。
金子 政志; 渡邉 雅之; 宮下 直*; 中島 覚*
Hyperfine Interactions, 239(1), p.20_1 - 20_10, 2018/12
被引用回数:4 パーセンタイル:85.22fブロック化合物に対する密度汎関数計算の精度向上を目指し、Eu, Npメスバウアー異性体シフトを指標として、二次Douglas-Kroll-Hess(DKH2)ハミルトニアンを用いて相対論密度汎関数法のベンチマーク研究を行った。純粋な密度汎関数法による電子交換相互作用とHartree-Fockによる厳密な電子交換相互作用の混合パラメータを変えて、メスバウアー異性体シフトの実験値に対する平均二乗誤差を比較した。その結果、Eu, Npメスバウアー異性体シフトに対して、厳密な交換相互作用の割合が、それぞれ30, 60%のときに、平均二乗誤差が最小になることが明らかになった。
中島 覚*; 金子 政志; 吉浪 啓介*; 岩井 咲樹*; 土手 遥*
Hyperfine Interactions, 239(1), p.39_1 - 39_15, 2018/12
被引用回数:2 パーセンタイル:66.37本研究は、鉄二価集積型錯体のスピンクロスオーバー(SCO)のオン・オフ現象と転移挙動の制御について議論する。ビスピリジル型配位子で架橋した鉄二価集積型錯体のSCO現象が起こるか否かは、鉄原子周りの局所構造によって決定する。つまり、鉄原子を通して向き合っているピリジンがプロペラ型で配位しているときにSCO現象は起きるが、平行型または歪んだプロペラ型の場合起きない。これは、プロペラ型の場合、高スピン状態から低スピン状態への構造変化において立体障害がより小さく、鉄とピリジンがお互いに近づくことができることに起因する。さらに、局所構造を制御し、転移温度を変化するための試みとして、ビルディングブロックにメチル基やシステムを導入した配位子の設計や、アニオン配位子の希釈効果についても議論する。
木村 太己*; 金子 政志; 渡邉 雅之; 宮下 直*; 中島 覚*
Dalton Transactions (Internet), 47(42), p.14924 - 14931, 2018/11
被引用回数:7 パーセンタイル:45.21(Chemistry, Inorganic & Nuclear)マイナーアクチノイド(MA)と希土類の分離メカニズム解明を目的として、密度汎関数計算を用いたEu(III)もしくはAm(III)とニクトゲンドナー(X)配位子(CH)X-CH-CH-X(CH) (X=窒素,リン,ヒ素,アンチモン)との錯体に対する計算化学解析を試みた。配位子との錯体生成ギブズエネルギーを解析した結果、リンドナー配位子がEu(III)と比較してAm(III)と安定に錯体を生成することが示唆された。金属(Eu(III)もしくはAm(III))とニクトゲンドナーとの化学結合を解析した結果、Am(III)とリンとの共有結合性が他のニクトゲンに比べて高く、リンドナー配位子が高いAm(III)選択性を有することが示唆された。
金子 政志; 安原 大樹*; 宮下 直*; 中島 覚*
Hyperfine Interactions, 238(1), p.36_1 - 36_9, 2017/11
被引用回数:2 パーセンタイル:77.36Ru, Os錯体の結合状態に対する密度汎関数計算の妥当性を評価することを目的として、Ru, Osのメスバウアー異性体シフト実験値を用いて理論計算手法のベンチマークを行った。結果、Ru錯体およびOs錯体の原子核位置での電子密度の計算値はメスバウアー異性体シフト実験値とよく相関した。
金子 政志; 渡邉 雅之; 宮下 直*; 中島 覚*
Radioisotopes, 66(8), p.289 - 300, 2017/08
Eu錯体の配位結合におけるf電子の役割を理解することを目的として、相対論密度汎関数計算をEu(III)錯体に適用した。既報のEuメスバウアー異性体シフト実験値とEu原子核位置での電子密度計算値の線形性を比較することによって、B2PLYP理論がメスバウアー異性体シフトを最もよく再現することが分かった。また、分子軌道に基づく電子密度の解析によって、d及びf電子が配位結合に大きく関与していることを明らかにした。
金子 政志; 渡邉 雅之; 宮下 直*; 中島 覚*
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences (Internet), 17, p.9 - 15, 2017/03
金属イオンの原子価軌道の結合特性の観点から、密度汎関数計算をOドナーであるホスフィン酸とSドナーであるジチオホスフィン酸によるEu(III), Am(III)イオンの錯形成反応に適用した。Sドナー錯体として二つ、Oドナー錯体として四つの幾何異性体の構造最適化を行い、[M(HO)]に対する錯形成による安定化エネルギーを見積もった。その結果、Oドナー配位子はEu(III)イオンに選択的に配位し、Sドナー配位子はAm(III)イオンに選択的に配位し、実験のAm/Eu選択性を再現した。d,f軌道電子の結合性に着目すると、d軌道電子の結合性に対する寄与はEu, Am錯体のどちらにおいても結合的な特性を持ち、同じ寄与を示した。一方、f軌道電子の寄与は、Eu, Am錯体間で異なり、Sドナー錯体の場合、Euの4f電子は非結合的、Amの5f電子は結合的に振舞うのに対し、Oドナー錯体では、Euの4f電子は結合的、Amの5f電子は反結合的に振舞うことが分かった。この結果から、d軌道電子の結合性は、Eu, Am錯体構造の類似性に、また、f軌道電子の結合性は、Eu, Amイオンの選択性の相違性に起因することが示唆された。
中島 覚*; 金子 政志
Advances in Chemistry Research, Vol.36, p.171 - 195, 2017/01
集積型配位高分子のスピンクロスオーバー(SCO)現象について紹介する。1,2-ビス(4-ピリジル)エタンや1,3-ビス(4-ピリジル)プロパンのように構造異性体を有する架橋配位子を用いた場合、多様な集積構造が得られる。SCO現象は、集積型錯体のゲスト吸脱着に依存することを明らかにした。その原因を明らかにするため、密度汎関数法を適用し、SCOが起こるか否かが鉄イオン周りの局所構造に依存することを見出した。
金子 政志; 渡邉 雅之; 宮下 直*; 中島 覚*
no journal, ,
Eu錯体中のf軌道電子が共有結合性にどう関与するかを明らかにすることを目的としている。密度汎関数計算とEuメスバウアー異性体シフトを組み合わせることによって、計算によって得られた電子密度がEu錯体中の結合状態をよく再現することを示した。発表では、分子軌道に基づく結合重なり密度解析を用いて、Eu錯体中のf軌道の結合特性について議論する。
金子 政志; 渡邉 雅之; 宮下 直*; 中島 覚*
no journal, ,
マイナーアクチノイド(MA)とランタノイド(Ln)の分離メカニズムを理解することは、高レベル放射性廃棄物の分離変換プロセスの構築のために重要である。我々は、抽出剤とMA/Lnとの結合状態をMA/Lnの分離挙動と相関づけることによって、MA分離メカニズムを明らかにすることを目的としている。本研究では、密度汎関数法を用いた計算化学研究によって、MA/Ln分離挙動を分子レベルでモデル化する。用いる基底関数や理論による分離挙動の違いを検討し、f軌道などの原子価軌道の結合特性がMA/Lnの選択性にどのように寄与するか議論する。
金子 政志; 渡邉 雅之; 宮下 直*; 中島 覚*
no journal, ,
本研究では、OドナーとSドナーで同じ配位幾何学を示すイミドジホスフィン酸配位子を用いて、Eu, Am錯体の安定性および結合状態について議論した。相対論DFT計算を適用し、単結晶構造を初期構造として構造最適化を行い、水和錯イオンに対する熱力学エネルギーを算出した。その結果、Eu, Am錯体は、O, Sドナーともに同じ配位構造となり、単結晶構造の結合距離をよく再現した。熱力学エネルギーを見積もった結果、OドナーはAmよりもEuと選択的に錯生成し、SドナーはEuよりもAmと選択的に錯生成することが示唆された。
金子 政志; 木村 太己; 渡邉 雅之; 宮下 直*; 中島 覚*
no journal, ,
分離変換において重要であるMAと希土類及びMA間の分離研究の一環として、計算シミュレーションによるMAの分離メカニズムの解明に取り組んできた。本件では、性能予測のために重要である金属と分離試薬の化学結合を網羅的に評価し、分離性能予測や新規分離試薬の開発のためのデータベースを構築することを目的としている。密度汎関数法を用いたエネルギー解析によって、15族元素と16族元素配位子によるAm/Eu分離挙動は、Hard and Soft Acids and Bases則によるソフト酸の分離と関連付けられることを明らかにした。また、化学結合解析によって、Amとより強く結合する配位子が、より高いAm選択性を有することが示唆された。
金子 政志; 加藤 茜*; 中島 覚*; 北辻 章浩; 渡邉 雅之
no journal, ,
高レベル放射性廃液中において、ルテニウムはニトロシルルテニウム[Ru(NO)]として存在し、硝酸イオンや水酸化物イオンの濃度に依存して多様な安定性を示すが、その詳細な安定性は未だ明らかになっていない。ニトロシルルテニウムの安定性解明に向けた第一歩として、本研究では塩化物イオンやアンモニアなどの基礎的な配位子を有するニトロシルルテニウム化合物の構造・結合特性に着目する。単結晶構造を参照したモデルを用いて、密度汎関数法による水溶液中の安定構造を計算した結果、ルテニウムと配位子との結合距離やニトロシル基の伸縮振動エネルギーの実験値をよく再現した。また、錯体の電子密度解析に基づいてRuメスバウアー異性体シフトを見積もった結果、実験値をよく再現した。当日は、分子軌道解析による配位子場分裂の結果とメスバウアー異性体シフトとの相関について議論し、錯体の安定性が何に起因しているか考察を行う。
金子 政志; 加藤 茜*; 中島 覚*; 北辻 章浩
no journal, ,
メスバウアー異性体シフトと原子核位置での電子密度の線形関係は、メスバウアー元素とその周辺環境との共有結合的相互作用の定量性を保証する。この線形関係を用いることによって、未知の化合物の化学結合特性を量子化学計算による電子密度解析によって予測できるようになる。本研究では、高レベル放射性廃液の分離プロセス阻害因子の一つであるルテニウムの安定性解明に向けた第一歩として、ニトロシルルテニウム錯体の化学結合特性の予測のための基礎的な検討を行う。塩化物イオンやアンモニアなどの基本的な配位子を持つニトロシルルテニウム錯体[Ru(NO)L] (L = Br, Cl, NH, CN)を密度汎関数計算によってモデル化し、電子密度解析によってRuメスバウアー異性体シフトを予測した。その結果、錯体の構造は、実験の単結晶構造をよく再現し、Ruメスバウアー異性体シフト予測値は、0.1mm/s以内の誤差で一致した。また、分子軌道解析により見積もったルテニウムのd電子軌道の分裂の大きさは、L = Br, Cl, NH, CNの順に増加し、メスバウアー異性体シフトの序列とも一致した。これは、金属-配位子の共有結合的相互作用は、ルテニウムのd電子軌道の相互作用に起因していることを示唆している。
加藤 茜*; 金子 政志; 中島 覚*
no journal, ,
高レベル放射性廃液中に存在すると考えられているルテニウム錯体種であるニトロシルルテニウム硝酸錯体の構造を密度汎関数法を用いて予測した。類似構造を持つ単結晶や分子モデリングソフトウェアを用いて正八面体型錯体[Ru(NO)(NO)(HO)] (x=1-4)の構造を作成し、密度汎関数計算による安定構造探索及びエネルギー解析を行った。その結果、x=1-4全ての錯体において、Ru-NO軸に対してエクアトリアル平面に硝酸イオンが結合した構造が熱力学的に最も安定であることが分かった。
加藤 茜*; 金子 政志; 中島 覚*
no journal, ,
高レベル放射性廃液中のルテニウム錯体種の予測に向けて、ニトロシルルテニウム錯体と硝酸イオンとの錯生成反応を密度汎関数法に基づいてシミュレーションした。ニトロシルルテニウム硝酸錯体の12種の構造異性体の熱力学的安定性を比較した結果、Ru-NO軸に対して硝酸イオンが平面位に配位した構造が安定であることが分かった。また、ギブズエネルギー解析により逐次錯生成反応をシミュレーションした結果、錯体と置換する配位子との会合エネルギーを補正することによって、実験値における錯体種の硝酸イオン濃度依存性を再現することに成功した。