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竹下 隼人*; 明午 伸一郎; 松田 洋樹*; 岩元 大樹; 中野 敬太; 渡辺 幸信*; 前川 藤夫
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 527, p.17 - 27, 2022/09
被引用回数:2 パーセンタイル:53.91(Instruments & Instrumentation)加速器駆動核変換システム(ADS)等における核設計の高度化のため、NiとZrについて数GeVエネルギー領域における陽子入射の核種生成断面積測定を行い、核設計に用いる計算コードPHITSによる計算値やJENDL/HE-2007等との比較検討を行った。
中野 敬太; 松田 洋樹*; 明午 伸一郎; 岩元 大樹; 竹下 隼人*; 前川 藤夫
JAEA-Research 2021-014, 25 Pages, 2022/03
加速器駆動核変換システム(ADS: Accelerator-Driven transmutation System)の開発に資するデータとして、Be, C, Al, Sc, V標的に対する高エネルギー陽子入射反応による核種生成断面積の測定を行った。得られた実験値は最新の核反応モデルによる計算値や評価済み核データライブラリの値と比較を行い、その再現性について議論を行った。
竹下 隼人; 明午 伸一郎; 松田 洋樹; 岩元 大樹; 中野 敬太; 渡辺 幸信*; 前川 藤夫
JAEA-Conf 2021-001, p.207 - 212, 2022/03
加速器駆動核変換システム(ADS)などの大強度陽子加速器施設の遮蔽設計において、高エネルギー陽子入射による核破砕生成物の核種生成量予測は基礎的かつ重要な役割を担っている。しかしながら、生成量予測シミュレーションで用いられる核反応モデルの予測精度は不十分であり、核反応モデルの改良が必要である。J-PARCセンターでは実験データの拡充と核反応モデル改良を目的に、様々な標的に対して核種生成断面積の測定を行っている。本研究では、Lu標的に対して0.4, 1.3, 2.2および3.0GeV陽子ビームを照射し、放射化法により核種生成断面積データを取得した。取得したデータとモンテカルロ粒子輸送計算コードで用いられる核反応モデルと比較することで、現状の予測精度を把握するとともに核反応モデルの改良点を考察した。
竹下 隼人*; 明午 伸一郎; 松田 洋樹*; 岩元 大樹; 中野 敬太; 渡辺 幸信*; 前川 藤夫
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 511, p.30 - 41, 2022/01
被引用回数:5 パーセンタイル:65.59(Instruments & Instrumentation)1.3, 2.2および3.0GeVの陽子入射によるMnおよびCoの核種生成断面積を放射化法によりJ-PARCで測定した。Mn(p,X)S, Mn(p,X)Ar、およびCo(p,X)Sの生成断面積を世界で初めて取得した。安定した陽子ビームと確立されたビームモニタにより、系統的不確かさを典型的に5%以下に低減することができ、過去のデータよりも優れたものとなった。核破砕反応モデルと評価済み核データライブラリの予測精度の検証のため、測定データをPHITSの核破砕反応モデル(INCL4.6/GEM, Bertini/GEM, JAM/GEM)、INCL++/ABLA07、およびJENDL/HE-2007ライブラリの断面積と比較した。平均二乗偏差係数の比較により、INCL4.6/GEMとJENDL/HE-2007は他のモデルよりも実測データとのよい一致を示すことがわかった。
明午 伸一郎; 岩元 洋介; 松田 洋樹
Isotope News, (774), p.27 - 31, 2021/04
加速器駆動核変換システム(ADS)等の大強度陽子加速器施設では、ビーム窓や標的に用いられる材料の損傷評価が重要となる。放射線に起因する材料の弾き出し損傷は、弾き出し断面積と粒子束との積による原子あたりの弾き出し数(dpa)により評価される。弾き出し断面積の計算モデル評価には実験データが必要だが、20MeV以上のエネルギー領域に実験データはほとんど無かったため、本グループではJ-PARC 3GeVシンクロトロン加速器施設において、3GeVまでの陽子エネルギーにおける弾き出し断面積を測定し、計算モデルの精度評価を行った。
明午 伸一郎; 松田 洋樹; 岩元 洋介; 吉田 誠*; 長谷川 勝一; 前川 藤夫; 岩元 大樹; 中本 建志*; 石田 卓*; 牧村 俊助*
JPS Conference Proceedings (Internet), 33, p.011050_1 - 011050_6, 2021/03
加速器駆動型核変換システム(ADS)では、加速器の真空領域と標的領域の隔壁となるビーム入射窓の開発が重要となる。ビーム窓の損傷評価には、原子当たりの弾き出し数(DPA)が用いられるが、DPAの導出に用いられる弾き出し断面積の実験データは20MeV以上のエネルギー領域の陽子に対しほとんどないため、ADSにおいて重要な0.43GeV陽子における弾き出し断面積の測定を開始した。弾き出し断面積は、損傷を維持するため極低温に冷却された試料の陽子入射に伴う抵抗率変化を陽子フルエンスとフランケル対当たりの抵抗率変化で除することにより導出できる。実験はJ-PARCセンターの3GeV陽子シンクロトロン施設で行い、アルミ及び銅を試料として用いた。実験で得られた断面積と一般的に弾き出し断面積の計算に使用されるNRTモデルの計算との比較の結果、NRTモデルの計算は実験を約3倍過大評価することが判明した。
竹下 隼人; 明午 伸一郎; 松田 洋樹; 岩元 大樹; 前川 藤夫; 渡辺 幸信*
JPS Conference Proceedings (Internet), 33, p.011045_1 - 011045_6, 2021/03
加速器駆動核変換システム(ADS)における核設計の高度化のため、ADSで使われる材料であるNiとZrについて、数GeVエネルギー領域における陽子入射の核種生成断面積測定を行い、核設計に用いる計算コードPHITSによる計算値やJENDL/HE-2007との比較検討を行った。
松田 洋樹; 竹下 隼人*; 明午 伸一郎; 前川 藤夫; 岩元 大樹
JPS Conference Proceedings (Internet), 33, p.011047_1 - 011047_6, 2021/03
精度の良い核種生成断面積は加速器駆動核変換システム(ADS)設計における放射性廃棄物の取り扱い、放射性廃棄物の遠隔での取り扱い方法の設計、及び放射線作業従事者の被ばく評価に必要とされる。今日まで数多くの実験が行われてきたが、測定データ誤差が数十%を超えるものが時には存在し、いくつか重要な核種に対してはGeVエネルギー領域において実験データが存在しないものがある。この研究では鋼材の最も重要な構成元素である鉄の陽子入射による核種生成断面積を測定した。実験データはPHITSコードに組み込まれているBertiniやINCL4.6モデルを用いて計算した値、及び評価済み核データJENDL-HE/2007と比較した。この研究では(p,xn)反応を介した生成断面積に大きな食い違いがあることが明らかとなった。これは核子-核子散乱やパウリブロッキングなどのさらなる改良が核内カスケードモデルに必要であることを示唆するものであった。
岩元 洋介; 吉田 誠*; 松田 洋樹; 明午 伸一郎; 佐藤 大樹; 八島 浩*; 薮内 敦*; 嶋 達志*
Materials Science Forum, 1024, p.95 - 101, 2021/03
核破砕中性子源,加速器駆動システム等における材料の照射損傷の基礎研究、マクロな材料特性研究、機器設計等をまとめた書籍の中で、われわれが主導してきた照射損傷量の指標である原子あたりのはじき出し数(DPA)に関する最新の研究を提示する。本研究では、タングステンのDPAの計算値を検証するため、ギフォード・マクマフォン冷凍機を用いてタングステン線を冷却し、389MeVの陽子照射による、極低温(10K)下の照射欠陥に伴う電気抵抗増加の測定値からはじき出し断面積を導出した。はじき出し断面積の実験値と計算値を比較した結果、これまでの発表者らが銅を用いた実験による検証結果と同様に、従来の照射損傷モデルによる計算値に比べて、最新の非熱的な欠陥再結合補正を考慮した計算値が実験値を良く再現することを明らかにした。また、アニールに伴う照射後の欠陥回復の測定により、60Kでは約20%の欠陥が回復し、原子炉の中性子照射環境と同様の結果となる他、銅の測定結果と比べた場合、タングステンにおける欠陥の回復量が少ないこと等を示した。
松田 洋樹; 岩元 大樹; 明午 伸一郎; 竹下 隼人*; 前川 藤夫
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 483, p.33 - 40, 2020/11
被引用回数:3 パーセンタイル:36.4(Instruments & Instrumentation)大強度陽子加速器施設J-PARCにおいて、3GeV陽子入射による水銀標的から180度方向に放出される中性子のエネルギースペクトルを測定した。得られた結果は、粒子輸送計算コードPHITSによる計算結果と明らかな差異が見られ、その傾向はインジウムやニオビウムの放射化箔を用いた反応率実験の結果と一致することがわかった。鉛標的に対するGeV領域陽子入射中性子二重微分断面積の後方角におけるエネルギースペクトルの実験データとPHITSの核反応モデルを比較したところ、この差異は3GeV付近における核反応モデルによる中性子生成あるいは弾性散乱外断面積の記述に起因していることが示唆された。
松田 洋樹; 明午 伸一郎; 岩元 洋介; 吉田 誠*; 長谷川 勝一; 前川 藤夫; 岩元 大樹; 中本 建志*; 石田 卓*; 牧村 俊助*
Journal of Nuclear Science and Technology, 57(10), p.1141 - 1151, 2020/10
被引用回数:9 パーセンタイル:75.92(Nuclear Science & Technology)加速器駆動型核変換システム(ADS)等の陽子ビーム加速器施設におけるビーム窓などの構造材の損傷評価には、原子当たりの弾き出し数(dpa)が損傷指標として広く用いられる。dpaの評価は弾き出し断面積に基づいて行われるものの、20MeV以上のエネルギー領域の陽子に対する弾き出し断面積の実験データは乏しく、計算モデルの間でも約8倍の差が存在している。このため、弾き出し断面積を実験的に取得するのは計算に用いるモデルの評価のために重要となる。弾き出し断面積の取得のため、J-PARCの加速器施設において、0.4-3GeVにわたる陽子エネルギー領域における銅と鉄の断面積を測定した。弾き出し断面積は、損傷を保持するために極低温に冷却された試料における、陽子ビームに金する抵抗率変化により得ることができる。本測定で得られた実験結果を元に、計算モデルの比較検討を行った。広く用いられているNorgertt-Robinson-Torrens (NRT)モデルは、実験値を3.5倍過大評価することが判明した。一方、近年の分子動力学に基づく非熱的再結合補正(arc)モデルは実験値をよく再現したため、銅と鉄の損傷評価にはarcモデルを使うべきであると結論づけられた。
岩元 大樹; 明午 伸一郎; 松田 洋樹
EPJ Web of Conferences, 239, p.06001_1 - 06001_6, 2020/09
被引用回数:1 パーセンタイル:72.93(Nuclear Science & Technology)モンテカルロ粒子輸送計算コードは、加速器駆動核変換システム(ADS)及びJ-PARC等の高エネルギー陽子加速器・大強度中性子源施設の遮蔽設計で重要な役割を演じるが、モンテカルロ粒子輸送計算コードに組み込まれている核反応モデルは高度化の余地が残されている。本研究では、被ばく線量評価・放射能量評価で重要な核破砕生成物の核種生成断面積に関する実験データ及びモンテカルロ粒子輸送計算コード(PHITS, MCNP6及びGEANT4)で使用される最新の核反応モデル(INCL4.6/GEM, Bertini/GEM, JQMD2/GEM, JQMD2/SMM/GEM, CEM03.03, INCL++/GEMINI++, INCL++/ABLA07等)による解析結果と比較することで、現状のPHITS核反応モデルの予測精度を把握し、高度化に向けた課題を摘出した。実験値との比較では、ADS及び核破砕中性子源施設で重要な400MeVから1GeVの陽子入射エネルギー領域及び重標的核種に対する実験値を対象とし、ドイツGSIで測定された逆運動学による実験データ及びJ-PARCで測定された最新の結果を含む放射化法による実験データを使用した。比較の結果、PHITS推奨の核反応モデルINCL4.6/GEMは、核分裂生成物を過小評価し、蒸発残留核について同一元素に対して中性子過剰に評価する傾向を示すことが分かった。さらに、実験データが少ない中重核領域及び核分裂生成核種と蒸発残留核種の間の領域で、モデル間の差異が顕著であることを明らかにした。
松田 洋樹; 明午 伸一郎; 岩元 大樹; 前川 藤夫
EPJ Web of Conferences, 239, p.06004_1 - 06004_4, 2020/09
被引用回数:1 パーセンタイル:72.93(Nuclear Science & Technology)加速器駆動核変換システム(ADS)における鉛ビスマス標的を取り扱う上では、標的において核破砕および高エネルギー核分裂反応による核種生成断面積が重要である。しかしながら、核種生成断面積の実験データは乏しい。この実験データを取得するために、PbおよびBiサンプルを用いてJ-PARCにおいて実験を行った。0.4GeVから3.0GeVのエネルギーの異なる陽子をサンプルに照射し、HPGe検出器を用いた崩壊ガンマ線のスペクトル測定によりBeからReの広範囲にわたる核種生成断面積を得た。実験値を評価済み核データライブラリ(JENDL-HE/2007)、PHITS及びINCL++コードを用いた計算値とで比較した。本実験値は他の実験と矛盾のない結果であり、また他の実験と比べ高精度で測定できた。軽核種を生成する反応では、Beの生成断面積は、JENDLおよびPHITS及びINCL++コードによる計算は比較的良い一致を示すものの、Naは実験の1/10程度となり過小評価することがわかった。中重核から重核の生成では、PHITSはINCL++と同様に実験をファクター2程度の精度で再現することがわかった。PHITS及びINCL++の励起関数の極大となるエネルギーは実験とよい一致を示すものの、JENDL-HEは実験より低いことが判明した。
明午 伸一郎; 松田 洋樹; 岩元 洋介; 吉田 誠*; 長谷川 勝一; 前川 藤夫; 岩元 大樹; 中本 建志*; 石田 卓*; 牧村 俊助*
EPJ Web of Conferences, 239, p.06006_1 - 06006_4, 2020/09
被引用回数:0 パーセンタイル:0.1(Nuclear Science & Technology)加速器駆動型核変換システム(ADS)では、加速器の真空領域と標的領域の隔壁となるビーム入射窓の開発が重要となる。ビーム窓の損傷評価には、原子当たりの弾き出し数(DPA)が用いられるが、DPAの導出に用いられる弾き出し断面積の実験データは20MeV以上のエネルギー領域の陽子に対しほとんどないため、ADSにおいて重要な0.43GeV陽子における弾き出し断面積の測定を開始した。弾き出し断面積は、損傷を維持するため極低温に冷却された試料の陽子入射に伴う抵抗率変化を陽子フルエンスとフランケル対当たりの抵抗率変化で除することにより導出できる。実験はJ-PARCセンターの3GeV陽子シンクロトロン施設で行い、試料には銅を用いた。実験で得られた断面積と一般的に弾き出し断面積の計算に使用されるNRTモデルの計算との比較の結果、NRTモデルの計算は実験を約3倍過大評価することが判明した。
岩元 洋介; 吉田 誠*; 松田 洋樹; 明午 伸一郎; 佐藤 大樹; 八島 浩*; 薮内 敦*; 木野村 淳*; 嶋 達志*
JPS Conference Proceedings (Internet), 28, p.061003_1 - 061003_5, 2020/02
核破砕中性子源における高エネルギー放射線環境下のターゲット材料の寿命を予測するため、原子あたりのはじき出し数(DPA)を導出できるPHITS等の放射線挙動計算コードが使用されている。本研究では、タングステンのDPAの計算値を検証するため、ギフォード・マクマフォン冷凍機を用いた陽子照射装置に直径0.25mmのタングステン線を装着し、389MeVの陽子を照射して、はじき出し断面積に関係付けられる極低温(10K)下の照射欠陥に伴う電気抵抗率変化を測定した。これまで実施された1.1GeV及び1.9GeV陽子照射によるタングステンの電気抵抗率の測定結果と比較した結果、核反応により生成する二次粒子が陽子エネルギーの増加に伴い、照射結果に伴う電気抵抗率が増加することがわかった。
明午 伸一郎; 松田 洋樹; 岩元 洋介; 吉田 誠*; 長谷川 勝一; 前川 藤夫; 岩元 大樹; 中本 建志*; 石田 卓*; 牧村 俊助*
JPS Conference Proceedings (Internet), 28, p.061004_1 - 061004_6, 2020/02
核変換システム等の陽子加速器施設では、標的や窓等の構造材に関する損傷の評価が重要となる。構造材の損傷評価には、原子あたりの弾き出し数(DPA)が広く用いられており、カスケードモデルに基づく計算で得られた弾き出し断面積に粒子束を乗ずることで得られる。DPAによる損傷評価は広く一般的に用いられているものの、20MeV以上のエネルギー範囲における陽子に対する弾き出し断面積の実験データは十分でなく、計算モデル間で約8倍異なることが報告されており構造材の弾き出し断面積の実験データ取得が重要となる。そこで、我々はJ-PARCセンターの3GeV陽子加速器施設を用い、400MeV以上のエネルギー範囲の陽子の弾き出し断面積の測定を開始した。弾き出し損傷断面積は、冷凍機で極低温(4K)に冷却された試料に陽子ビームを照射し、照射に伴う抵抗率の変化により得ることができる。実験で得られた断面積とPHITSコードに一般的に用いられるNRTモデルを用いて計算した結果、計算は実験を3倍程度過大評価を示した。一方、Nordlund等による最新モデルの結果は実験をよく再現し、これまでのNRTモデルに基づく標的等の弾き出し損傷は過大評価していることが明らかになった。
宮原 信哉*; 大平 直也*; 有田 裕二*; 前川 藤夫; 松田 洋樹; 佐々 敏信; 明午 伸一郎
Nuclear Engineering and Design, 352, p.110192_1 - 110192_8, 2019/10
被引用回数:5 パーセンタイル:48.99(Nuclear Science & Technology)鉛ビスマス共晶(LBE)合金は加速器駆動システム(ADS)の核破砕中性子ターゲットや冷却材として用いられ、核破砕生成物として多くの元素が生成するため、その放出および輸送挙動を評価することが重要である。そこで、J-PARCのADSターゲット試験施設(TEF-T)のLBEループについて、LBE中に生成する核破砕生成物のインベントリおよび物理化学的組成について検討した。LBE内の核破砕生成物インベントリは、PHITSコードを使用して評価した。LBE中の核破砕生成物の物理化学的組成は、350C500CのLBE運転温度及びLBE中の酸素濃度10ppb1ppmの条件下、Thermo-Calcコードを用いて計算した。計算の結果、Rb, Tl, Tc, Os, Ir, Pt, Au, Hgの8元素がすべての条件下でLBEに可溶であり、化合物は形成されなかった。Ce, Sr, Zr及びYの酸化物はLBE中でCeO, SrO, ZrOおよびYOとして安定であることが示唆された。
明午 伸一郎; 武井 早憲; 松田 洋樹; 百合 庸介*; 湯山 貴裕*
Proceedings of 16th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.515 - 519, 2019/07
J-PARCセンターで進めている核変換実験施設では、標的に入射する大強度陽子ビームの形状を測定するために、発光型のプロファイルモニタの開発を行っている。このため、量子科学技術研究開発機構の高崎量子応用研究所のTIARA施設において、アルミナ発光型のプロファイルモニタの試験をArビーム(エネルギ150MeV)を用いて行った。アルミナ発光体は、加速器施設における実際の使用状況を考慮し、溶射によりアルミからなる母材に塗布し、密着性を有していることを試験により確認した。耐放射線性型のファイバイメージスコープを用いてビーム形状を測定したところ、明瞭な形状が得られることが確認された。さらに、発光体のビームに起因する発光強度の劣化をスペクトロメータを用いて測定した。その結果、700nmより長波長領域では2.5時間程度の照射時間で20%程度の発光強度の劣化が観測された。一方、700nmより短波長領域では著しい劣化が無いことが確認されたため、測定に用いる波長領域の選択により劣化の影響を緩和できることがわかった。
松田 洋樹; 明午 伸一郎; 岩元 大樹
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 6, p.171 - 174, 2019/01
核破砕中性子源や核変換システムの核設計の精度向上のためには高精度な核反応断面積が必要となり、コスト削減やより精度の高い遮蔽設計のためには放射化断面積の精度向上が必要とされる。放射化断面積は、これまでに既存施設において測定されてきたものの実験データにおいてバラつきが大きく必ずしも十分な精度でない。特にJ-PARCの核破砕中性子源で用いられている3GeV陽子のデータはほとんどないため、ターゲット構造材の更なる安全性向上のために実験データが必要となる。そこで我々は、J-PARCの加速器施設を用いてターゲット構造材や窓材に使用される核種の測定するためにタングステン、金、インジウム、及びベリリウムの放射化断面積を0.4, 1.3, 2,2及び3GeVの陽子に対し測定した。また試料固定用に設置したアルミニウムの放射化断面積を測定することにより実験の妥当性を検証した。測定で得た実験データを評価済み核データ(JENDL-HE 2007)、及び核内カスケードモデル計算と比較検討した。この結果、アルミニウムの実験結果は、JENDL-HE 2007は実験と比較的よい一致を示すことがわかった。一方、PHITSの核内カスケードモデルによる計算は、実験を約40%程度過小評価することがわかった。この過小評価の原因はPHITSに含まれる蒸発過程モデル(GEM)に問題があることが考えられ、GEMの改良により実験結果を再現できることが分かった。アルミニウム以外の核種は現在解析中であるが、PHITSコードによる計算結果は実験値を再現するものとしないものとあり体系的に比較する必要がある。
岩元 洋介; 吉田 誠*; 義家 敏正*; 佐藤 大樹; 八島 浩*; 松田 洋樹; 明午 伸一郎; 嶋 達志*
Journal of Nuclear Materials, 508, p.195 - 202, 2018/09
被引用回数:14 パーセンタイル:81.7(Materials Science, Multidisciplinary)加速器施設の材料損傷評価で使用される放射線輸送計算コードのはじき出し損傷モデルを検証するため、大阪大学核物理研究センターのサイクロトロン施設において、極低温下での200MeV陽子照射による、はじき出し断面積の導出に必要な金属試料の照射欠陥に伴う電気抵抗増加を測定した。照射装置は、GM冷凍機を用いて2つの照射試料を同時に熱伝導冷却する構造とし、熱伝導と電気的絶縁性に優れた2枚の窒化アルミ板により、照射試料となる直径250mのアルミニウム及び銅線を挟み込む構造とした。その結果、ビーム強度3nA以下において温度5K以下を保ちつつ、欠陥に伴う金属の電気抵抗率増加の測定に成功した。また、照射前後の電気抵抗率変化、陽子フルエンス及びフレンケル対あたりの抵抗率増加から導出したはじき出し断面積は欠陥生成率を考慮したPHITSの計算値に近いことがわかった。