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佐藤 雄飛*; 乙坂 重嘉*; 鈴木 崇史; 中西 貴宏
Limnology and Oceanography, 68(7), p.1580 - 1594, 2023/07
被引用回数:2 パーセンタイル:61.05(Limnology)海水中の懸濁態ヨウ素(PI)濃度の規定要因を明らかにするため、太平洋沿岸の2つの海域で、PI、懸濁態有機炭素(POC)・窒素、溶存態ヨウ素、植物プランクトン色素を測定した。PI/POC比から、データセットは3グループ(A: 低い、B: 中間、C: 高い)に分類された。各グループは、植物プランクトンの生理状態として、それぞれ対数増殖期、静止期、衰退期に特徴付けられた。PI生産と植物プランクトンの生理状態との関係に基づき、季節的・地域的差異が一貫して説明できた。これらの結果から、植物プランクトンの生理状態が海水中のPI濃度を調節する重要な因子であることが示唆された。
乙坂 重嘉*; 神林 翔太*; 福田 美保*; 鶴田 忠彦; 御園生 敏治; 鈴木 崇史; 青野 辰雄*
Environmental Science & Technology, 54(21), p.13778 - 13785, 2020/11
被引用回数:12 パーセンタイル:54.1(Engineering, Environmental)2015年から2018年にかけて、福島周辺の沿岸域から採取した海水,海底堆積物,間隙水中のCs濃度を調査し、福島第一原子力発電所事故によって海底に沈着した放射性セシウムの海水中への放出の効果を評価した。間隙水中のCs濃度は33から1934mBq Lで、海底直上水(海底から約30cmまでの間の海水)の10から40倍であった。多くの観測点で、海底直上水と間隙水との間にはCs濃度に正の相関がみられた。間隙水と堆積物間の見かけの分配係数は、0.9-1410 L kgであり、採取年による差は見られなかった。これらの結果は、間隙水と堆積物間でのCsの平衡が比較的短期間で成立された後、間隙水中のCsが海底上に徐々に拡散することが示唆された。これらの観測結果に基づく海底付近でのCsの収支計算から、堆積物中のCsの約6%が一年間に脱離・拡散すると推定された。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 永野 博彦*; Sugiharto, U.*; Saengkorakot, C.*; 鈴木 崇史; 國分 陽子; 藤田 奈津子; 木下 尚喜; 永井 晴康; et al.
JAEA-Technology 2020-012, 53 Pages, 2020/10
近年急速に進行する温暖化をはじめとした地球環境の変化は、陸域生態系(とりわけ森林生態系)における炭素循環に変化をもたらし、その結果、温暖化や環境変化の進行に拍車をかける悪循環が懸念されている。しかしながら、その影響の予測には大きな不確実性が伴っており、その主たる要因は、土壌に貯留する有機炭素の動態とその環境変化に対する応答についての定量的な理解の不足にある。放射性炭素(C)や安定炭素(C)同位体の陸域生態系における動きを追跡することは、土壌有機炭素の動態を解明するうえで有力な研究手段となりうる。本ガイドは、同位体を利用した土壌炭素循環に関する研究を、特にアジア地域において促進させることを目的としたものである。本ガイドは、土壌の採取、土壌試料の処理、土壌有機炭素の分画、Cの同位体比質量分析法による測定及びその試料調製、ならびに Cの加速器質量分析法による測定及びその試料調製に関する実践的手法を網羅している。本ガイドでは、炭素循環研究において広く用いられる C分析結果の報告方法についても簡単に紹介する。さらに、同位体を利用した研究手法の実際的応用として、日本の森林生態系において実施した事例研究の結果についても報告する。本ガイドによって、同位体を利用した炭素循環研究に興味を持って参画する研究者が増加し、地球環境の変化の仕組みについての理解が大きく進展することを期待する。
三輪 一爾; 小畑 元*; 鈴木 崇史
Journal of Nuclear Science and Technology, 57(5), p.537 - 545, 2020/05
被引用回数:2 パーセンタイル:21.58(Nuclear Science & Technology)本研究では、チャクチ海, ベーリング海において人為起源の放射性核種であるIodine-129(I)の鉛直分布の観測を実施した。現在、Iの主なソースはヨーロッパの核燃料再処理施設である。2013年6月から8月の観測結果よりチャクチ海, ベーリング海におけるI濃度はフォールアウトレベルであった。ヨーロッパの核燃料再処理施設から海洋に放出されたIを高濃度に含んだ海水の流入は確認できなかった。また、海洋の生物生産に重要な役割を果たしているヨウ化物イオンの鉛直分布をチャクチ海, ベーリング海にて初めて観測した。観測の結果、当海域においては海底付近でヨウ化物イオンの濃度が高くなる傾向が見られた。
鈴木 崇史; 乙坂 重嘉; 桑原 潤; 川村 英之; 小林 卓也
JAEA-Conf 2018-002, p.103 - 106, 2019/02
福島第一原子力発電所(1F)事故起因の放射性物質の海洋中での動態解明を行うことを目的に、西部北太平洋における3地点でIの鉛直分布を明らかにした。3地点とも1F事故起因とみられるIは混合層内に存在していた。また最も南側の観測点では水深370m-470mに1F事故起因とみられるIによる極大層が存在していた。溶存酸素濃度及び周辺海域の流速を考慮すると、この極大層は、別の海域の表層に存在していたIが速い下降流によって、水深370m-470mに到達したと考えられる。
乙坂 重嘉; 佐藤 雄飛*; 鈴木 崇史; 桑原 潤; 中西 貴宏
Journal of Environmental Radioactivity, 192, p.208 - 218, 2018/12
被引用回数:15 パーセンタイル:48.31(Environmental Sciences)2011年8月から2013年10月にかけて、福島第一原子力発電所から160km圏内の26観測点において、海底堆積物および沈降粒子中のI濃度を観測した。2011年における海底堆積物中のI濃度は0.020.45mBq/kgであった。同海域の海底への主なIの沈着は事故後の半年以内に起こったと推測され、その初期沈着量は約0.360.13GBqと見積もられた。ヨウ素は生物による利用性の高い元素であるが、事故由来の放射性ヨウ素を海産生物を介して摂取することによる被ばく量は、極めて低いと推定された。福島周辺の陸棚縁辺域(海底水深200400m)では、2013年10月にかけて表層堆積物中のI濃度がわずかに増加した。このI濃度の増加をもたらす主要因として、福島第一原子力発電所近傍の海底から脱離したIの陸棚縁辺域への再堆積と、河川を通じた陸上からのIの供給の2つのプロセスが支配的であると考えられた。
鈴木 崇史; 乙坂 重嘉; 桑原 潤; 川村 英之; 小林 卓也
Marine Chemistry, 204, p.163 - 171, 2018/08
被引用回数:2 パーセンタイル:10.86(Chemistry, Multidisciplinary)福島第一原子力発電所から放出された放射性物質の深さ方向への移行を調べる事を目的に、親潮,黒潮、及びそれらの混合海域においてヨウ素129(I)の鉛直分布を明らかにした。福島第一原子力発電所起因のIは親潮及び混合海域においては表層で、黒潮海域においては亜表層で観測された。親潮及び混合海域で観測されたI/Csは福島第一原子力発電所の原子炉内のそれより高いことが明らかとなった。高いI/Csは、(1)事故時に放射性ヨウ素は放射性セシウムより放出されやすかった、(2)汚染地域からIが再放出され、大気経由で沈着した、(3)放射性セシウムが除去された汚染水が観測地点に到達した可能性が示唆された。また亜表層で観測された福島第一原子力発電所起因のIは黒潮続流の蛇行によって運び込まれたと考えられる。、
門脇 正尚; 堅田 元喜*; 寺田 宏明; 鈴木 崇史; 長谷川 英尚*; 赤田 尚史*; 柿内 秀樹*
Atmospheric Environment, 184, p.278 - 291, 2018/07
被引用回数:16 パーセンタイル:53.77(Environmental Sciences)長寿命放射性ヨウ素(I)は、大気環境における放射性核種の有用な地球化学トレーサである。本研究では、Iの大気濃度および沈着の観測を実施し、観測データから大気濃度および沈着の明瞭な季節変動を得た。さらに、大気中のI循環を支配する要因を明らかにすることを目的として、得られた観測データを用いて、移流、乱流拡散、大気沈着、光化学、ガス粒子変換、核燃料再処理工場からのIの排出、海洋および陸域からのIの揮発の各物理・化学過程を考慮した全球ヨウ素輸送モデルを開発した。全球ヨウ素輸送モデルは、我々が観測したIの大気濃度および沈着の季節変動、そして既往文献のIの降水中濃度の全球分布を良好に再現した。開発した全球ヨウ素輸送モデルを用いて人為起源と自然起源のIインベントリの強度を変化させる数値実験を実施し、地球全体のI循環に対する人為起源のIの影響を評価した。その結果、冬季においては、人為起源のIが主にユーラシアの北部に沈着する可能性があることが示された。一方で、夏季においては、自然起源のIが北半球中高緯度の沈着に支配的であった。これらの結果は、地球表面からのIの再飛散過程が全球規模でのI循環に重要であることを示唆している。さらに、冬季のユーラシア北部や北極域においては局所的に乾性沈着が寄与しており、乾性沈着が環境中のIの季節変化に重要な影響を及ぼすことが示唆された。
乙坂 重嘉; 中西 貴宏; 鈴木 崇史; 佐藤 雄飛; 成田 尚史*
Environmental Science & Technology, 48(21), p.12595 - 12602, 2014/11
被引用回数:25 パーセンタイル:58.66(Engineering, Environmental)福島第一原子力発電所から約100km東方の沖合に、2011年8月から約2年間にわたってセジメントトラップを設置し、事故由来の放射性セシウムの海底への輸送フラックスを見積もるとともに、鉛同位体濃度等を指標として沈降粒子の輸送過程を解析した。Cs粒子束は観測期間の初期に高く、季節的に変動しながら全体として減少傾向を示した。この放射性セシウムの粒子束は、主に2つのモードで制御されていた。一つ目は表層水中で放射性セシウムを取り込んだ粒子の急速な鉛直輸送(鉛直モード)であった。このモードは、特に事故後の早い段階で支配的であり、観測点付近の海底における放射性セシウムの分布を形成したと推測された。二つ目のモードは、海底付近に運ばれた粒子状放射性セシウムの再移動であった(水平モード)。福島周辺の広域で採取した海底堆積物中のCs/Pb比を沈降粒子と比較することにより、水平モード時に堆積物が移動する範囲は数十km程度であると推定された。
佐藤 雄飛; 乙坂 重嘉; 鈴木 崇史
Journal of Water and Environment Technology (Internet), 12(2), p.201 - 210, 2014/04
本研究では、懸濁態および溶存態中の全ヨウ素濃度を簡便かつ迅速に測定するために、次亜塩素酸による試料の酸化分解(NaClO-酸化分解)とボルタンメトリーを組み合わせた分析法を提案する。代表的な3種類の試料(参照土壌,堆積物,海藻)を用いた検討の結果、最適なNaClO-酸化分解の条件は、40-50C、2時間の分解であった。この条件を用いて、有機態ヨウ素の標準物質であるチロキシンを用いて、本法によるヨウ素の回収率を調べたところ、97%以上であった。また、チロキシンと参照土壌を混合しチロキシン由来ヨウ素(チロキシン-ヨウ素)の回収実験(標準添加-回収実験)を行ったところ、1-7mol gの濃度範囲において、ほぼ全てのヨウ素が回収された。懸濁態試料(参照土壌,堆積物,海藻,濾紙上懸濁物)および溶存態試料を用いて、本法と、従来の一般的な分析法であるNaOH-分解および燃焼法の測定結果と比較した。NaOH-分解においては、従来法は本法に比べ低い測定値となり、分解能力が不十分であることが示唆された。燃焼法では、一部の試料で従来法は、本法に比べて低い測定値となり、これはおそらく、トラップ効果と不十分な燃焼が原因であることが推測された。
鈴木 崇史; 乙坂 重嘉; 桑原 潤; 川村 英之; 小林 卓也
Biogeosciences, 10(6), p.3839 - 3847, 2013/06
被引用回数:24 パーセンタイル:57.84(Ecology)福島第一原子力発電所事故により環境中にさまざまな放射性物質が放出された。事故起因のIの影響を評価することを目的に事故前後における海水中のI濃度を測定した。事故前のI濃度の結果から北太平洋の北緯36度から44度における濃度分布は緯度の減少とともに減少している傾向を示した。事故後の海水中のI濃度は最大値で73倍、平均値で約8倍上昇していることが明らかとなった。また鉛直分布の結果から水深1000mまでの事故起因Iのインベントリーは(1.8-9.9)10atoms/mであった。海水中のI測定結果から海産生物摂取による内部被ばく量を見積もったところ、事故起因のIによる被ばく量は極めて小さいと考えられる。
鈴木 崇史; 乙坂 重嘉; 桑原 潤
第15回AMSシンポジウム報告集, p.49 - 52, 2013/03
福島第一原子力発電所事故により放出されたIの海洋環境における移行過程を解明する目的で、北西部北太平洋におけるIの鉛直分布を測定した。海水試料は、親潮海域のSta.106、親潮と黒潮の混合海域であるSta.098、及び黒潮海域のSta.090において表面から水深1500mまで採取した。表面海水中のI濃度は、Sta.106及びSta.098では事故以前の濃度レベルより高かったが、Sta.090では事故以前と同レベルであった。この結果から、黒潮海域では事故起因のIの影響を受けていないことが確認された。Sta.106及びSta.098のIの鉛直分布の結果は、表面が最も高く水深とともに減少していく傾向が見られた。一方Sta.090の鉛直分布の結果は、水深500m付近に濃度極大が存在することが確認された。この濃度極大は、Iが高濃度の表面海水が等密度面に沿って水深500mまで運ばれたためだと考えられる。
鈴木 崇史; 乙坂 重嘉; 外川 織彦
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 294, p.563 - 567, 2013/01
被引用回数:5 パーセンタイル:38.63(Instruments & Instrumentation)日本海は北太平洋の縁辺海であり、気候変動に対し鋭敏な海域であることが知られている。そこでIを海水循環のトレーサーとして利用し、日本海の海水循環構造を解明することを目的に、2007年11月に北海道大学所属の練習船おしょろ丸にて日本海調査を行った。I測定用試料は日本海の亜寒帯循環内の2地点及び亜熱帯循環内の3地点で深度別に採取した。亜寒帯循環内の表面海水中のI濃度は亜熱帯循環内のそれより高かった。この傾向は核実験起源の核種であるC, Sr及びCsの傾向とは一致しなかった。この結果は日本海におけるI濃度分布はすべて核実験起源では説明できないことを示している。亜寒帯循環(高緯度域)の表面海水でI濃度が高かったことから、英国や仏国などの高緯度域で稼動している再処理工場の影響を受けているのではないかと考えられる。
鈴木 崇史; 乙坂 重嘉; 外川 織彦
第13回AMSシンポジウム報告書, p.69 - 72, 2011/01
地球環境中でのIの循環過程を理解する目的で、日本海における亜寒帯前線の北部と南部の表面海水中のI濃度を測定した。水深100m以浅の平均I濃度は北部と南部でそれぞれ1.910atoms/m及び1.510atoms/mであり、北部のI濃度が南部のそれより高かった。この濃度分布は核実験起源核種であるC, Sr及びCsの分布と異なっていた。すなわちIの濃度分布は核実験起源だけでは説明できないことを意味している。核実験以外のIの起源はおもに再処理工場であること、日本海の北部で高濃度であったことを考慮すると、ヨーロッパの再処理工場から放出されたIが沈着することによりこのような濃度分布になったと考えられる。
田中 孝幸; 甲 昭二; 木下 尚喜; 鈴木 崇史; 桑原 潤; 関 武雄
第13回AMSシンポジウム報告書, p.129 - 132, 2011/01
日本原子力研究開発機構青森研究開発センターにある加速器質量分析装置(JAEA-AMS-MUTSU)は、平成9年に設置され、C測定については平成11年、I測定については平成15年から定常運転を開始した。平成18年度からは外部利用者が利用可能な供用施設となり、多くの利用者によりさまざまな研究活動に利用されるようになっている。本講演では、JAEA-AMS-MUTSUの現状を報告する。施設供用制度開始から5年間は、平成21年度を除き、順調に測定数を増加させた。しかし、平成21年度の測定数の減少は、制御システムの更新により、約1.5か月間、加速器を停止させたこと、検出器のアンプの故障により、数か月間、C測定が不可能であったことによるものである。現在は、問題も解消し、C及びIともに順調に測定している。
田中 孝幸; 甲 昭二; 木下 尚喜; 鈴木 崇史; 桑原 潤; 関 武雄
第23回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集, p.113 - 116, 2010/11
日本原子力研究開発機構青森研究開発センターにある加速器質量分析装置(JAEA-AMS-MUTSU)は、平成9年に設置され、C測定については平成11年、I測定については平成15年から定常運転を開始した。平成18年度からは外部利用者が利用可能な供用施設となり、多くの利用者によりさまざまな研究活動に利用されるようになっている。本講演では、平成21年度のJAEA-AMS-MUTSUの現状を報告する。平成21年度の試料測定数は、C測定を480試料、I測定を677試料測定した。この測定数は、平成20年度より712試料少なかった。測定数の減少は、制御システムの更新により、約1.5か月間、加速器を停止させたこと、検出器のアンプの故障により、数か月間、C測定が不可能であったことによるものである。現在は、問題も解消し、C及びIともに順調に測定している。
Pham, M. K.*; Betti, M.*; Povinec, P. P.*; Alfimov, V.*; Biddulph, D.*; Gastaud, J.*; Kieser, W. E.*; Lpez, Gutirrez, J. M.*; Possnert, G.*; Sanchez-Cabeza, J. A.*; et al.
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 286(1), p.121 - 127, 2010/10
被引用回数:14 パーセンタイル:67.77(Chemistry, Analytical)本論文は認証標準物質IAEA-418(地中海海水)中のI濃度測定結果について報告するものである。この海水は9機関に配布され、8機関は加速器質量分析法(AMS)で、1機関は中性子放射化分析法(NAA)でI濃度を測定した。I濃度の認証は、NAAでは海水中のI濃度が検出限界以下であったこと、またAMSで測定した機関の内1機関の測定値が棄却検定によって棄却されたため、7機関の測定結果によって行われた。この認証標準物質に与えられたI濃度は中央値が2.310atom/Lであり、95%信頼区間では(2.22.8)10atom/Lであった。
西沢 匡人; 鈴木 崇史; 永井 晴康; 外川 織彦
Proceedings of Joint International Conference of 7th Supercomputing in Nuclear Application and 3rd Monte Carlo (SNA + MC 2010) (USB Flash Drive), 4 Pages, 2010/10
鈴木ら(, , 268-275, 2008)は日本海において採取した海水中のIの80%以上が核燃料再処理施設起源であると推定した。欧州の再処理施設から日本海までの距離と大気及び海洋循環の時間スケールを考慮すると、Iの大部分は大気を経由して輸送したものと考えられる。本研究では、欧州の核燃料再処理施設から放出されるIの動態と遠隔地における沈着量を調べるために全球化学物質輸送モデルMOZART-4を用いた。1950年代から50年以上に渡る数値シミュレーションの結果を観測値との比較により検証し、Iの濃度及び沈着量分布の特徴を調べた。その結果、モデルは欧州における降水中のI濃度と日本近海におけるI沈着量の観測値と同じオーダーにあった。大気中に放出されたIは、偏西風により北半球全体に拡散・沈着したことがわかった。よってIの大気中への放出は、Iの遠隔地への輸送と沈着を考えるうえで重要であることがわかった。
鈴木 崇史; 皆川 昌幸*; 甲 昭二; 外川 織彦
第12回AMSシンポジウム報告集, p.69 - 72, 2010/05
原子力利用によって放出されたIは、日本海の海水循環を考察するうえで有効なトレーサーであると考えられる。そこで、日本海におけるI濃度の水平及び鉛直分布を明らかにした。表面海水中の濃度レベルは核実験による濃度レベルより高かった。これは欧州及び米国の再処理工場から放出されたIが飛来してきたものだと考えられる。日本海底層水(JSBW)では人為起源Iが観測された。この観測された人為起源Iの濃度レベルからJSBWのturnover timeとpotential formation rateを見積もった。結果はそれぞれ180210年と(3.94.6)10 m/yrであった。また本発表では国際原子力機関海洋環境研究所で行われた海水中のI相互比較検定において青森研究開発センターで測定した結果が推奨値の範囲内に入っており、良い精度及び正確さを持って測定したことも併せて報告する。
鈴木 崇史; 皆川 昌幸*; 天野 光; 外川 織彦
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 268, p.1229 - 1231, 2010/04
被引用回数:26 パーセンタイル:84.21(Instruments & Instrumentation)ヨウ素129(I)は半減期1570万年の長寿命放射性核種であり、核実験や核燃料再処理工場の稼動により人為起源Iが環境中に放出される。六ヶ所村に新たに使用済核燃料再処理工場が定常運転を開始予定でありIの放出が予想される。そこで再処理工場の定常運転前における海水中のIの分布を把握することは長期的な環境影響評価の観点から重要である。また人為起源Iは海水循環のトレーサーとして利用できる可能性がある。そこで本研究では太平洋,日本海におけるIの鉛直分布を明らかにした。太平洋及び日本海におけるIの濃度は表層及び亜表層で最も高く水深とともに減少した。太平洋においては水深1500m以下において人為起源Iは観測されなかった。この結果は従来トレーサーとして利用されているCやCsと同様の結果を示した。Iは放出源及び放出量がより明確であることや分析に使用する供試量が少ないことから海水循環を解明する有用なトレーサーになり得ると考えられる。また日本海におけるIの水柱における総量は太平洋に比べて3倍高かった。これは日本海固有の海底地形及び海水循環によるものと考えている。