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藤原 悟*; 河野 史明*; 松尾 龍人*; 杉本 泰伸*; 松本 友治*; 成田 哲博*; 柴田 薫
Journal of Molecular Biology, 431(17), p.3229 - 3245, 2019/08
被引用回数:14 パーセンタイル:54.27(Biochemistry & Molecular Biology)パーキンソン病発症には、脳細胞中の「-シヌクレイン」というタンパク質が線維状に集合した状態(「アミロイド線維」と呼ばれる)となることが関係すると考えられており、どのようなメカニズムでこのアミロイド線維が形成されるのかに強い関心が寄せられている。そこで研究チームは、タンパク質分子の「動き」に着目し、アミロイド線維のできやすさが様々に異なった条件でのタンパク質の動きを、J-PARCの中性子準弾性散乱装置を用いて調べた。その結果、タンパク質分子の動きの違いによりアミロイド線維のできやすさが変わること、特にアミロイド線維ができるためには、タンパク質同士が集合しやすくなるような特定の動きが必要なことを明らかにした。
成田 あゆみ; 馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 平尾 法恵; 矢板 毅
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet), 10, p.367 - 373, 2012/07
有機薄膜を新たな光学・電子デバイス材料として応用するためには、デバイス基板として用いられる酸化物表面基に対して、有機分子を固定化し規則的に配列させることが重要である。そこで本研究では酸化物表面に有機分子を固定化させ、自己組織化膜を作製することを目指した。試料はサファイア単結晶基板を、デシルホスホン酸(DPA)のエタノール溶液に浸すことにより作製した。表面の電子構造は放射光軟X線でのX線光電子分光法(XPS)により測定した。固体のDPA分子とDPA分子膜のP 1s XPSスペクトルでは、ともに一本のピークが確認され、その束縛エネルギーはほぼ同じであった。また入射X線を全反射条件にしてXPSを測定したところ、通常のXPSに比べC 1sの強度が増大した。全反射条件でのXPS測定は表面敏感になるので、この結果より、サファイア表面においてDPA分子はリン酸基を介して表面とイオン結合を形成しており、アルキル鎖を上にして位置していることが明らかになった。
馬場 祐治; 成田 あゆみ; 関口 哲弘; 下山 巖; 平尾 法恵; 圓谷 志郎; 境 誠司
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet), 10, p.69 - 73, 2012/04
酸化物は、触媒,光触媒,吸着剤,デバイス基板など、さまざまな表面機能性材料として使われており、これらの研究開発においては、酸化物表面における原子や分子の構造や位置を正確に決定することが重要である。しかし酸化物の多くは絶縁体であり、ビームを使った手法では表面に電荷が蓄積するため、構造を決定することは難しい。そこで本研究では、表面電荷の蓄積が少ない軟X線をプローブとして用いたX線定在波法により、酸化物表面の原子,分子の構造解析を試みた。試料は、サファイア単結晶表面に吸着した有機アルキルリン酸分子(炭素数10個)を用いた。軟X線放射光を表面垂直方向から入射し、ブラッグ反射が起こるエネルギー付近で光電子強度の変動を解析することにより、リン原子,炭素原子の表面からの距離を求めた。その結果、リン原子は表面から0.11nmの距離に存在するのに対し、炭素原子は特定の距離を持たないことがわかった。この結果と、X線光電子分光法及びX線吸収端微細構造法の結果から、吸着した有機アルキルリン酸分子は、リン原子がサファイア表面直上に位置し、アルキル基が上に伸びた自己組織化膜を形成することが明らかになった。
成田 あゆみ; 馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 平尾 法恵; 矢板 毅
Applied Surface Science, 258(6), p.2034 - 2037, 2012/01
被引用回数:4 パーセンタイル:19.54(Chemistry, Physical)近年、有機薄膜が新たな機能性材料として注目を集めているが、有機薄膜を新規デバイス材料として応用するためには、有機分子を無機基板表面へ整然と並べて固定化する必要がある。特に光学デバイスを考えた場合、透明な絶縁体である酸化物表面に有機分子を固定化することが重要である。そこで本研究では、サファイア表面にシリコンアルコキシド基を終端に持つ長鎖アルキル分子(オクタデシルトリエトキシシラン,ODTS)を自己組織化的に固定化することを試み、界面の化学状態と分子配向をX線光電子分光法(XPS)及びX線吸収微細構造法(NEXAFS)を用いて調べた。XPSの結果から、溶液法,吸着法で得られた膜は単分子層に近く、シリコンアルコキシドがサファイア表面と化学結合を形成していることがわかった。また、単分子膜のSi K吸収端NEXAFSスペクトルの偏光依存性から、ODTS分子のSi-O結合が、表面に対して垂直であることが明らかとなった。
馬場 祐治; 成田 あゆみ; 関口 哲弘; 下山 巖; 平尾 法恵; 圓谷 志郎; 境 誠司
Photon Factory Activity Report 2011, Part B, P. 201, 2012/00
酸化物は、触媒,光触媒,吸着剤,デバイス基板など、さまざまな表面機能性材料として使われており、これらの研究開発においては、酸化物表面における原子や分子の構造や位置を正確に決定することが重要である。しかし酸化物の多くは絶縁体であり、ビームを使った手法では表面に電荷が蓄積するため、構造を決定することは難い。そこで本研究では、表面電荷の蓄積が少ない軟X線をプローブとして用いたX線定在波法により、酸化物表面の原子、分子の構造解析を試みた。試料は、サファイア単結晶表面に吸着した有機アルキルリン酸分子(炭素数10個)を用いた。軟X線放射光を表面垂直方向から入射し、ブラッグ反射が起こるエネルギー付近で光電子強度の変動を解析することにより、リン原子,炭素原子の表面からの距離を求めた。その結果、リン原子は表面から0.11nmの距離に存在するのに対し、炭素原子は特定の距離を持たないことがわかった。この結果から、吸着した有機アルキルリン酸分子は、リン原子がサファイア表面直上に位置し、アルキル基が上に伸びた自己組織化膜を形成することが明らかになった。
成田 あゆみ; 馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 平尾 法恵; 矢板 毅
Photon Factory Activity Report 2011, Part B, P. 94, 2012/00
有機分子薄膜を用いた電子材料,光学材料の基板には、絶縁性や透明性に優れた酸化物基板が多く用いられている。しかしながら、酸化物表面は化学的に不活性であり、しかも有機分子結晶と酸化物の格子定数は大きく異なるため、酸化物表面に有機分子を固定化し均一な薄膜を作成することは難しい。本研究は、リン酸基と酸化物の親和性が高いことに着目し、炭素数10個のアルキル鎖の末端にホスホン酸基をもつ分子(DPA)をサファイア基板表面に固定化することを試み、界面の化学結合状態を放射光内殻分光法により調べた。基板をDPAのエタノール溶液に浸すことにより作成した膜についてX線光電子分光スペクトル(XPS)を測定した結果、DPA分子はリン原子を下、アルキル鎖を上にして基板に吸着していることがわかった。またXPSとX線近吸収端微細構造(NEXAFS)スペクトルの結果から、室温で島状に吸着したDPAは、250度に加熱することにより、均一な単分子膜に変化することがわかった。以上のことから、ホスホン酸基は有機分子を酸化物表面に固定化するための優れたアンカーであることを明らかにした。
Mannan, M. A.*; 馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 平尾 法恵; 成田 あゆみ; 永野 正光*; 野口 英行*
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 181(2-3), p.242 - 248, 2010/08
被引用回数:5 パーセンタイル:30.91(Spectroscopy)有機分子やポリマーなど異方性分子の薄膜の電気的,光学的特性は、結晶構造や電子構造だけでなく、分子の配向にも大きく依存する。そこで放射光を用いて、導電性透明基板として用いられているインジウム・スズ酸化物(ITO)表面に蒸着したシリコンポリマーの分子配向を調べた。試料は、最も簡単なシリコンポリマーであるポリジメチルシラン(PDMS)を用いた。PDMSを電子衝撃加熱法によりITO表面に1層ずつ精密に蒸着し、直線偏光した放射光を用いてSi K-吸収端のX線吸収スペクトルを測定した。その結果、スペクトルの吸収ピーク強度に顕著な偏光依存性が認められた。これを解析した結果、ポリマーのSi-Si分子軸は表面に対して40度傾いていることがわかった。この角度は、表面に垂直に立ったポリマーがヘリカル構造をとったときの角度にほぼ一致する。以上の結果から、PDMSは自己組織化過程により、高度に配向することが明らかとなった。
関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖; 本田 充紀; 平尾 法恵; 成田 あゆみ; Deng, J.*
Surface and Interface Analysis, 42(6-7), p.863 - 868, 2010/06
被引用回数:1 パーセンタイル:1.74(Chemistry, Physical)有機半導体は豊富な資源,印刷技術が使える、電子物性が多様などが期待される次世代デバイスである。良質な有機半導体はよく分子配向した「核」として薄膜上に生じ始める。発表者は直線偏光の放射光と光電子顕微鏡を組合せた新しい装置を開発中である。その方法ではX線吸収スペクトルに現れる共鳴ピークを解釈する必要がでてくる。そのため大きな有機半導体分子の内殻電子励起状態を求めるため等価内殻近似に基づいて分子軌道法による理論計算を行った。計算結果をもとにグラファイト上に吸着したSiフタロシアニン分子の配向構造を決定した。分子軌道計算により電子励起状態の対称性を帰属することが配向角度を決めるうえで重要であることを示した。
馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 本田 充紀; 平尾 法恵; 成田 あゆみ; Deng, J.
Surface Science, 603(16), p.2612 - 2618, 2009/08
被引用回数:6 パーセンタイル:29.39(Chemistry, Physical)金表面にパターン状に蒸着したシリコンフタロシアニン2塩化物薄膜の電子構造と分子配向を、新しく開発した軟X線励起光電子顕微鏡(PEEM)によりナノメートルスケールで実時間観察した。Si K-吸収端のX線吸収スペクトルの偏光依存性から、5層蒸着したシリコンフタロシアニン2塩化物は、薄膜全体としては表面に平行であることがわかった。室温でのPEEM観察では、マイクロパターンが明瞭に認められたが、高温に加熱すると表面拡散が起こり、均一となった。このとき、清浄な金表面に拡散した分子は、逆に表面に垂直であることを示唆する結果が得られた。このようなナノメートルスケールにおける分子配向の変化は、分子-分子間相互作用と表面-分子間相互作用の大きさによって決定されることを明らかにした。
成田 あゆみ; 馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 本田 充紀; 平尾 法恵; 矢板 毅
表面科学, 29(8), p.489 - 494, 2008/08
極低温で吸着したCH及びCD分子に、1keVのHeイオンを照射したときに生成する分子イオン及び中性分子を二次イオン質量分析法により調べた。単層吸着メタンの場合、モノマーイオン(CH)のみが脱離するが、多層吸着メタンでは、クラスターイオン(CH)とともに、アセチレンイオン(CH)及びエチレンイオン(CH)の脱離も認められた。中性分子の脱離についても同様の結果が得られた。分子生成の機構を明らかにするため、分子イオンの脱離強度の厚み依存性を測定し、固体メタン中でのHeイオンのエネルギー損失過程のモンテカルロ計算結果と比較した。その結果、モノマーイオンは吸着分子の最表面層から1電子励起で脱離するのに対し、CH(n2)イオンは吸着分子層の内部において原子核衝突で起こるフォノン励起によって生成されることが明らかとなった。
馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 本田 充紀; 平尾 法恵*; Deng, J.; 成田 あゆみ
Journal of Physics; Conference Series, 100, p.012015_1 - 012015_4, 2008/00
被引用回数:1 パーセンタイル:51.69(Nanoscience & Nanotechnology)放射光軟X線と光電子顕微鏡を組合せることにより、ナノメートルスケールの化学結合状態分布を観察するための装置を開発し、シリコン化合物に応用した。試料には、7.5ミクロン周期のパターンを持つシリコン酸化物,シリコン窒化物,有機シリコン化合物を用いた。Si K-吸収端付近で放射光のエネルギーを掃引することにより、化学結合状態(シリコンの原子価状態)に依存した画像をナノメートルスケールで観察することに成功した。また、SiとSiOが交互に並んだマイクロパターン試料について、加熱による化学結合状態変化を観察した。その結果、700Cから酸素原子の横方向の拡散が始まることがわかった。拡散の途中でSiとSiO界面の化学結合状態を詳細に観察したところ、界面にSiOなどの中間の原子価状態は存在せず、酸素の拡散はSi原子が一気に4個の酸素原子と配位することにより起こることがわかった。発表では固体表面上に作成した有機シリコン化合物(シリコンフタロシアニン塩化物)の化学結合状態観察と加熱による横方向の拡散についても報告する。
本田 充紀; 馬場 祐治; 平尾 法恵*; 成田 あゆみ*; 関口 哲弘
no journal, ,
固体表面に生体分子などを整然と吸着させ、その吸着分子を利用した新たなデバイスを考えるとき、界面の結合状態に関する情報は必要不可欠である。そこで今回、金とイオウ界面の結合状態に注目し、SH基を側鎖に含むアミノ酸であるL-システインについて詳しく検討した。界面の結合状態については、軟X線吸収分光(NEXAFS)測定及びX線光電子分光(XPS)測定を用いてS -edge及びS 1について詳しく調べた。界面の結合状態を調べるために、L-システイン分子の多分子層及び単分子層の異なる表面状態を作製して比較検討を行った。その結果、単分子層における金とイオウの結合状態においては、S -edgeが9eV大きくなり、またS 1が8eV 高結合エネルギー側に化学シフトした位置に現れることを確認した。金表面上のイオウの界面について、L-システイン単分子層のS-Au界面では、イオウ本来のS [-]の状態ではなく、S[+]の状態をとることによって金原子へ電子供与を行い、S 1軌道が内殻深い準位に潜り込むことにより8eVもの強い結合が形成されていることがわかった。
本田 充紀; 馬場 祐治; 平尾 法恵*; 成田 あゆみ; 関口 哲弘
no journal, ,
有機分子などを用いた生体分子薄膜を利用した新たなデバイスを考えるとき、表面に分子が吸着した場合の基礎的物性は、界面の結合状態に非常に大きく左右されるため、界面の情報を知ることは必要不可欠である。今回、金とイオウ界面に注目し、SHとS化合物の金表面上での界面状態の違いを詳しく検討するために、金表面上にL-システイン及びチオフェン単分子層の異なる2種類の界面状態を作成して軟X線吸収分光法(NEXAFS)及びX線光電子分光法(XPS)による比較検討を行った。その結果、L-システインのNEXAFS結果においてS-K edgeが9eV大きくなり、またXPS測定結果ではS 1sが8eV高結合エネルギー側に化学シフトした位置に現れる、特異な界面の結合状態を確認した。一方、チオフェンでは同様の現象は起こらなかった。この特異なS-Au界面では、一般的なSulfideとは異なり、S[+]Au[-]に電子供与が行われることを明らかにし、またこれは、SH基のみに起こるS-Auの特徴的な結合状態であることがわかった。
本田 充紀; 馬場 祐治; 平尾 法恵*; 成田 あゆみ; 関口 哲弘; 下山 巖
no journal, ,
近年、特異な結合を示すことが知られその結合を利用した新たな応用研究が増加している金-イオウの結合は、実はその特異な結合を示すメカニズムについては未だ解明していない。今回、この金-イオウの特異な界面の結合状態について、SH結合があるアミノ酸とSH結合を持たないチオフェンを用いてX線光電子分光法及びX線吸収微細構造法により表面吸着分子の電子構造を解析した。イオウの電荷が一般的なイオウ化合物(例えばMoS)のマイナス2価の電荷ではなくて、プラス6価の電荷をとることによって、イオウ原子から金表面へ電子移動が起こっていることを解明した。この特異な化学結合は、SH結合を持たないチオフェン分子では確認できない。また官能基を持たないチオール分子でも確認できないことから、官能基を持つアミノ酸で、SH結合を持つL-システインと金表面との間にのみ起こる特異な結合であることもわかった。
本田 充紀; 馬場 祐治; 下山 巖; 平尾 法恵*; 成田 あゆみ; 関口 哲弘
no journal, ,
近年、金属分子接合として用いられる金-イオウの結合は、実はその特異な結合を示すメカニズムについては未だ解明していない。今回、この金-イオウの特異な結合状態について、SH結合があるアミノ酸とSH結合をもたないチオフェンを用いてX線光電子分光法及びX線吸収微細構造法により表面吸着分子の電子構造を解析した。イオウの電荷が一般的なイオウ化合物(例えばMoS)のマイナス2価の電荷ではなくて、プラス6価の電荷をとることによって、イオウ原子から金表面へ電子移動が起こっていることを解明した。この結合はSH結合を持たないチオフェン分子では確認できない。また官能基を持たないチオール分子でも確認できないことから、特異な結合は官能基の影響によることも示唆され特異な結合であることがわかった。
馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 本田 充紀; 平尾 法恵*; 成田 あゆみ*; Deng, J.
no journal, ,
有機分子や生体分子の薄膜は、シリコンなど無機系の材料に代わる次世代のデバイスとして注目されている。本発表ではまず、これら有機薄膜の研究開発にとって「放射光」がいかに強力なツールであるかを紹介する。次に具体的な研究例として、放射光の偏光を使って有機薄膜の「向き」を明らかにした結果と、光電子顕微鏡により有機薄膜のナノ構造を「観た」例をわかりやすく解説する。
平尾 法恵*; 馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 本田 充紀; 成田 あゆみ
no journal, ,
近年の半導体素子など機能性材料の微細化に伴い、ミクロンからナノメートルオーダーのメゾスコピック領域の解析手法が数多く提案されているが、材料の機能を決定する化学結合状態まで含めたナノスケールの解析法は確立されていない。本研究では、化合物の内殻吸収端のエネルギーが化学結合状態によって数eVシフトすることを利用し、エネルギー可変の放射光と光電子顕微鏡(PEEM)を組合せることにより、化学結合状態に依存したナノスケールの画像観察を試みた。試料には、MOSデバイスなどの機能性半導体材料であるSi-SiOのマイクロパターン(周期12.5m)を用いた。PEEM像の輝度の放射光エネルギー依存性から、Si 1s軌道のケミカルシフトを使ったナノメートルオーダーの化学結合状態マッピング測定が可能であることがわかった。また、加熱により界面の横方向の化学結合状態が変化する様子をリアルタイムで観察することに成功した。
成田 あゆみ; 馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 本田 充紀; 平尾 法恵*; 矢板 毅
no journal, ,
固体表面に光や電子線を照射すると化学結合が解離し、分解生成物の脱離が起こる。しかしながらイオンビームを照射するとそれとは逆の過程、すなわち大きな分子やクラスターイオンが脱離する。そこで本研究では、Cu(110)表面にメタン・重水素メタンを厚みを極低温で吸着させ、1keVのHeイオンビームを照射したときに脱離する正イオン・中性分子を四重極質量分析計で検出した。吸着分子層が単分子層である場合、モノマーイオン(CHx+)のみの脱離が確認された。それに対し、吸着分子層を正確に制御して厚くしていくと、多くの分子イオン(CnHx+)が脱離した。脱離した分子イオンの中には、C-C結合を持つアセチレンやエチレンが最も多く確認された。これらの結果から、モノマーイオンは最表層から1電子励起によって、分子イオンは層内部から原子核衝突による高密度の多電子励起によって脱離すると考えられる。また、イオンビーム照射によって新たにC-C結合が形成されることが明らかとなった。
馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 本田 充紀; 平尾 法恵*; Deng, J.; 成田 あゆみ
no journal, ,
種々の固体表面上に蒸着したシリコンフタロシアニン化合物薄膜について、ナノメートルスケールの電子構造と配向性を、放射光を用いた顕微X線吸収分光法により観察した。その結果、室温では基板により分子の配向が異なることを見いだした。また、加熱により分子が表面を拡散する様子をナノメートルスケールで観察するとともに、拡散前後に分子の配向が変化することを明らかにした。
成田 あゆみ; 馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 本田 充紀; 平尾 法恵*; 矢板 毅
no journal, ,
宇宙空間では衛星や彗星表面に氷状のメタン,窒素などの軽分子が存在する。その表面にイオンが衝突することにより、大きなクラスターや分子が生成する反応が実際に起こっており、この反応が宇宙空間における有機分子生成の起源とされている。本研究では、この反応機構を明らかにするため、極低温において銅基板上に厚みを正確に制御してメタン(CH)及び重水素化メタン(CD)を吸着させ、1keVのヘリウムイオンビームを照射したときに脱離するクラスターイオン及び中性分子を四重極質量分析計で検出した。CDの場合、最も強度が大きい脱離種は質量数28のCD及びCDであった。この結果より、イオン照射によりファンデアワールズクラスターが生成するだけでなく、新たなC-C結合が形成されることがわかった。また脱離強度の吸着分子層の厚みに対する依存性により、これらのC-C結合は1電子励起ではなく、吸着分子層の内部におけるヘリウムイオンと吸着分子との原子核衝突によって起こる高密度励起によって生成することがわかった。