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武井 早憲; 古川 和朗*; 矢野 喜治*; 小川 雄二郎*
Journal of Nuclear Science and Technology, 55(9), p.996 - 1008, 2018/09
被引用回数:2 パーセンタイル:20.74(Nuclear Science & Technology)加速器駆動核変換システム(ADS)では、ビームトリップ事象が少ない、信頼性の高い加速器を開発しなければならないが、ビームトリップ事象がどの位の間隔で生じているか統一した手法で評価されていない。本研究では、統一した評価手法を得ることを目的として、高エネルギー加速器研究機構入射用加速器のクライストロン系の運転データを用いてクライストロン系が偶発的にトリップする平均時間間隔(MTBI)を信頼性工学に基づく手法で評価し、従来の結果と比較した。従来、クライストロン系のMTBIを評価する手法は少なくとも3種類あり、評価したMTBIは30.9時間, 32.0時間、そして50.4時間となった。一方、本研究では信頼性工学では一般的なノンパラメトリックな評価手法を用いてMTBIを評価したところ、57.3時間となり、従来の評価値と比較して1.14倍以上も長い時間となった。今後、本研究で述べた信頼性工学に基づく手法でビームトリップの平均時間間隔を評価することが望ましい。
武井 早憲; 西原 健司; 辻本 和文; 古川 和朗*; 矢野 喜治*; 小川 雄二郎*; 大井川 宏之
JAEA-Research 2009-023, 114 Pages, 2009/09
大強度陽子ビームなどを加速する加速器では、経験的にビームトリップ事象が頻繁に発生することが知られており、加速器駆動未臨界システム(ADS)の構造物に熱疲労損傷を生じる可能性がある。このビームトリップ事象がADS未臨界炉部に与える影響を調べるため、熱過渡解析を実施した。その結果、許容ビームトリップ頻度はビームトリップ時間に依存し、年間回となった。次に、ADS用大強度加速器で生じるビームトリップ頻度を減らす方法を検討するため、許容ビームトリップ頻度と現状の加速器運転データから推定されるビームトリップ頻度を比較した。その結果、現状の加速器の技術レベルにおいても、既に停止時間が10秒以下のビームトリップ頻度は許容値を満足していた。また、停止時間が5分を超えるビームトリップ頻度は、熱応力条件を満足するために、30分の1程度に減少させれば良いことがわかった。
武井 早憲; 西原 健司; 辻本 和文; 古川 和朗*; 矢野 喜治*; 小川 雄二郎*; 大井川 宏之
Proceedings of International Topical Meeting on Nuclear Research Applications and Utilization of Accelerators (CD-ROM), 9 Pages, 2009/05
現存する大出力陽子加速器では経験上頻繁にビームトリップ事象が発生するため、加速器駆動核変換システム(ADS)の未臨界炉を構成する機器に対して熱疲労損傷を生じる可能性がある。このビームトリップがADSの未臨界炉を構成する4か所の部位(ビーム窓,燃料被覆管,内筒,原子炉容器)に与える影響を調べるため熱過渡解析を実施した。熱過渡解析では、燃料被覆管での許容ビームトリップ頻度の算出、プラントの稼働率の考察などに基づき、従来の解析結果に修正を加えた。その結果、許容ビームトリップ頻度はビームトリップ時間に依存して、年間回となった。この許容ビームトリップ頻度を現状の加速器の運転データから推測されるADS用陽子加速器のビームトリップ頻度と比較したところ、既にビームトリップ時間が10秒以下のビームトリップ頻度は許容値を満足していた。一方、ビームトリップ時間が5分を超えるビームトリップ頻度については、許容値を満足するためには約35分の1に減少させる必要があることがわかった。
二川 正敏; 粉川 広行; 長谷川 勝一; 直江 崇; 井田 真人; 羽賀 勝洋; 涌井 隆; 田中 伸厚*; 松本 洋一郎*; 池田 裕二郎
Journal of Nuclear Science and Technology, 45(10), p.1041 - 1048, 2008/10
被引用回数:32 パーセンタイル:87.3(Nuclear Science & Technology)高出力パルス中性子源水銀ターゲットに大強度陽子ビームを入射したときに生じる圧力波はキャビテーションを生じ、水銀容器の寿命を著しく低下させる。圧力波を低減するための技術として、微小気泡を水銀中に注入することを試みた。衝撃圧負荷装置を水銀ループに接続させて、流動水銀に微小気泡を注入し、それにより生じる変化を圧力応答及び損傷の観点から調べた。その結果、圧縮衝撃圧に気泡注入による変化は見られないが、損傷が著しく軽減した。この結果について、数値解析を行い考察し、気泡によりキャビテーションの発生が抑えられたことが理解された。
二川 正敏; 粉川 広行; 長谷川 勝一; 池田 裕二郎; Riemer, B.*; Wendel, M.*; Haines, J.*; Bauer, G.*; 直江 崇; 沖田 浩平*; et al.
Journal of Nuclear Materials, 377(1), p.182 - 188, 2008/06
被引用回数:28 パーセンタイル:84.99(Materials Science, Multidisciplinary)水銀ターゲットの圧力波によるキャビテーション損傷について、ロスアラモス研究所の陽子加速器を用いたイオンビーム実験を実施し、著者らが考案した音響振動計測に基づいた損傷ポテンシャルの計測及び評価を行った。水銀流動条件による損傷の程度は、流れなしの場合に最も大きく、流れ有り、さらに気泡を注入したときに、一層低下することが、光学的な損傷観察結果よりわかった。これらの傾向は、損傷ポテンシャルの計測結果とよく一致した。これより、音響振動から評価した損傷ポテンシャルはキャビテーション損傷に関するその場診断技術として有効であること、また気泡混入法が損傷低減技術として期待できることを示した。
武井 早憲; 辻本 和文; 大内 伸夫; 大井川 宏之; 水本 元治*; 古川 和朗*; 小川 雄二郎*; 矢野 喜治*
Proceedings of 5th International Workshop on the Utilisation and Reliability of High Power Proton Accelerators (HPPA-5), p.181 - 194, 2008/04
現存する高出力陽子加速器では経験上頻繁にビームトリップが起こるため、加速器駆動核変換システム(ADS)を構成する機器に対して熱疲労損傷を生じる可能性がある。このビームトリップが未臨界炉の各要素に与える影響を調べるため熱過渡解析を実施した。その結果、許容ビーム停止頻度はビームトリップ時間に依存して年間5025,000回の範囲となった。次に、ADS用高出力加速器のビームトリップを減少させる方法を探るため、許容ビーム停止頻度と現状の加速器運転データから求められるビーム停止頻度を比較した。その結果、ある条件の下ではビームトリップ時間が10秒以下の停止頻度は許容ビーム停止頻度を満足していることがわかった。一方、10秒を超えるビームトリップについては、熱応力条件を満足するには停止頻度を約30分の1に減少させる必要があることがわかった。
二川 正敏; 直江 崇*; 粉川 広行; 伊達 秀文*; 池田 裕二郎
JSME International Journal, Series A, 48(4), p.234 - 239, 2005/10
J-PARCに設置される核破砕パルス中性源には、ターゲット材として液体水銀を使用する。大強度陽子線入射時には、熱衝撃に伴う圧力波が水銀中に発生する。この圧力波の伝播過程で水銀中でキャビテーション気泡が生成し、気泡崩壊に伴う局所衝撃がターゲット容器の水銀接液界面に負荷する。本報では、液体水銀衝撃パルス負荷実験により形成したキャビテーション衝撃壊食痕、すなわちマイクロピット形状から局所衝撃力を評価した。さらに、気泡崩壊時に発生するマイクロジェット衝撃力を液球体による固/液界面の衝撃問題として数値解析を行い、実験結果と比較した。その結果、ピット半径と深さの比に着目すれば、マイクロジェット衝撃速度を推定できることがわかった。さらに、MW-classの水銀ターゲットでは気泡崩壊時に300m/s程度の衝撃負荷が発生することが推定された。
直江 崇*; 二川 正敏; 内藤 明*; 粉川 広行; 池田 裕二郎; 本橋 嘉信*
JSME International Journal, Series A, 48(4), p.280 - 285, 2005/10
核破砕中性子源水銀ターゲット容器材料は、核破砕条件による陽子&中性子同時照射と水銀環境に曝される。これらの環境によるターゲット容器材料の劣化を評価するために、核破砕条件を模擬したイオン照射と水銀浸漬実験を容器候補材316ステンレス鋼に対して行い、材料表面層の機械的特性の変化を押し込み試験技術と微細組織観察結果から評価した。押し込み荷重-深さ曲線に逆解析を適用して評価した応力歪み曲線から、核破砕条件下で照射後に水銀浸漬を施すと最大引張り強さまでの延びは、受け入れ材の約1/3程度に低下すると推測された。さらに、キャピテーション壊食低減技術として窒化&浸炭硬化処理を施した表面層は、照射の影響をほとんど受けないことがわかった。微細組織観察から、硬化処理により生じた転位群が照射による発生した転移のシンクとして作用するためと考察できた。
直江 崇*; 二川 正敏; 小山 智史*; 粉川 広行; 池田 裕二郎
実験力学, 5(3), p.280 - 285, 2005/09
現在、開発が進められているJ-PARCの物質生命科学研究施設では、核破砕中性子源水銀ターゲットから生成される中性子を利用した最先端の研究が行われる。大強度の陽子線入射に伴う熱衝撃により、水銀を充填するターゲット容器と水銀との界面では、急激な圧力変動によりキャビテーションが発生する。このキャビテーションによりターゲット容器内壁は壊食損傷を受ける。この壊食損傷は、薄肉構造であるターゲット容器の交換寿命を決定する因子となる。これまでに、電磁式衝撃圧負荷試験装置を用いて陽子線入射時の圧力変動を想定したキャビテーション壊食試験を行い、水銀中での衝撃壊食挙動を評価した。ここでは、キャビテーションにより生じる微小気泡の崩壊に起因する音響振動を計測し、損傷形態と比較した。その結果、音響振動から損傷の程度を評価するのに有用な情報が得られることを確認し、音響振動によりターゲット容器の健全性を診断できる可能性を示した。
勅使河原 誠; 原田 正英; 斎藤 滋; 菊地 賢司; 粉川 広行; 池田 裕二郎; 川合 將義*; 栗下 裕明*; 小無 健司*
Journal of Nuclear Materials, 343(1-3), p.154 - 162, 2005/08
被引用回数:10 パーセンタイル:56.65(Materials Science, Multidisciplinary)大強度陽子加速器計画(J-PARC)では物質・生命科学施設として核破砕中性子源の建設が進められている。早い時間減衰を持ったパルス中性子ビームを得るため、非結合型及びポイゾン型減速材を用いる。これらの減速材はデカップラと呼ぶ熱中性子吸収材を用いる。炭化硼素(B4C)が多く用いられてきた。しかしながら、MWクラスの中性子源では(n,)反応のHe生成を起因とするスウェリングのため使用が困難である。そこで、B4Cに似た特性を有するヘリウム生成を伴わない共鳴吸収型の材料としてAg-In-Cd系の合金に着目した。この合金をCdの焼損の観点からAg-Cd及びAg-In合金の2枚に分割する。熱除去及びコロージョンの観点から減速材の構造材であるアルミ合金(A6061-T6)と密着される必要がある。そのため、Ag-In, Ag-Cd合金とアルミ合金とに十分な接合を得ることを目的として、熱間等方加圧接合(HIP)を用いて接合試験を行った。温度: 803K、圧力: 100MPa、保持時間: 1時間で十分な接合が得られた。特に、Ag-In板をAg-Cd板で挟み、それをアルミ合金で被覆した条件がより良い接合となった。拡散層部には非常に硬い層が観測されたが、接合部の破断応力は設計応力の20MPaを越える値であった。
二川 正敏; 直江 崇; Tsai, C.-C.*; 粉川 広行; 石倉 修一*; 池田 裕二郎; 祖山 均*; 伊達 秀文*
Journal of Nuclear Materials, 343(1-3), p.70 - 80, 2005/08
被引用回数:57 パーセンタイル:95.58(Materials Science, Multidisciplinary)核破砕中性子源水銀ターゲットには、大強度のパルス陽子ビームが入射される。このとき、水銀内には熱衝撃に起因する膨張波が生じ、その伝播過程でキャビテーションによる損傷がターゲット容器内壁に形成される。この損傷挙動を電磁力衝撃圧負荷試験装置により観察し、繰り返し周波数及び入力パワー依存性について調べた。さらにバブル崩壊により誘発される音響振動に着目した損傷ポテンシャルを提案するとともに、バブルダイナッミックスに基づく数値解析を行った。その結果、以下の結論を得た。(1)侵食挙動は微小領域塑性変形支配の潜伏期と質量減少を伴う定常期に大別できる。(2)定常期の質量減少を予測しうる実験式を導出した。(3)潜伏期間は、入力パワーの増加とともに縮小し、繰り返し周波数の増加により拡大する。
粉川 広行; 石倉 修一*; 佐藤 博; 原田 正英; 高玉 俊一*; 二川 正敏; 羽賀 勝洋; 日野 竜太郎; 明午 伸一郎; 前川 藤夫; et al.
Journal of Nuclear Materials, 343(1-3), p.178 - 183, 2005/08
被引用回数:8 パーセンタイル:49.02(Materials Science, Multidisciplinary)JSNSのために開発を進めているクロスフロー型(CFT)水銀ターゲットでは、ビーム窓近傍での水銀の停滞領域発生を抑制するために、水銀を陽子ビームに直交するようにフローガイドブレードに沿って流す。これまで、水銀のモデルに弾性モデルを用いて動的応力解析を行ってきた。しかしながら、実際に陽子ビームを用いた最近の実験結果から、水銀のモデルにカットオフ圧力モデルを用いた方が実験結果に近い動的応力が得られることが示された。そこで、カットオフ圧力モデルを用いて動的応力解析を行った結果、半円筒型ビーム窓に発生する動的応力が、平板型ビーム窓に発生する応力よりも低くなることを明らかにした。また、陽子ビームを広げてピーク発熱密度を218W/ccまで低減して、ビーム窓の発生応力を許容応力以下にした。一方、陽子ビーム窓を広げたため、フローガイドブレード先端の発熱密度が高くなり、許容応力を超える熱応力が発生したが、ブレードの先端の形状を、水銀の流動分布に影響を及ぼさない範囲で薄くすることによって、発生する熱応力を許容応力以下にした。
石倉 修一*; 志賀 章朗*; 二川 正敏; 粉川 広行; 佐藤 博; 羽賀 勝洋; 池田 裕二郎
JAERI-Tech 2005-026, 65 Pages, 2005/03
本報は、大強度陽子加速器計画(J-PARC: Japan Proton Accelerator Complex)の中核施設である物質・生命科学実験施設の核破砕中性子源となる水銀ターゲット容器(3重壁構造)の構造健全性評価を行うための基本データとするために、水銀容器及び保護容器(別名セーフティーハルで2重壁リブ構造)で想定される荷重条件下(水銀容器及び保護容器の内外圧と定常熱応力,水銀容器内の25Hzの熱衝撃に伴う圧力波による応力)で発生する応力値をもとに、実験から求められた照射と壊食による材料強度劣化(疲労寿命の低下)を考慮して、確率論的手法により破損確率の算定を行った。水銀容器と保護容器の破損確率を評価した結果、(1)水銀容器は圧力波による応力サイクルと壊食による疲労強度の低下が大きいために、5000hrを仮定した寿命中の破損確率は12%である。(2)保護容器は圧力波が作用しないために寿命中の破損確率は10と十分低く、破損する可能性はほとんどない。したがって、万が一水銀容器が破損して水銀が漏洩した場合でも、保護容器が漏洩水銀を収納するとともに、同時に水銀漏洩検知器が機能することにより、漏洩水銀は保護容器内部に閉じ込めることが十分可能であることを定量的に示した。
二川 正敏; 直江 崇*; 粉川 広行; 池田 裕二郎
Journal of Nuclear Science and Technology, 41(11), p.1059 - 1064, 2004/11
被引用回数:12 パーセンタイル:61.44(Nuclear Science & Technology)高出力核破砕中性子源の開発が世界で行われている。我が国では、革新的な科学研究の推進を目的としたJ-PARCの物質生命科学研究施設に、核破砕中性子源として水銀ターゲットが設置される。水銀を内包するターゲット容器はパルス陽子線入射時に衝撃的圧力変動を受ける。この圧力変動により生じるキャビテーションは、局所衝撃壊食をターゲット容器に付加する。この衝撃壊食は、ターゲット容器の寿命を支配する因子となる。これまでに、陽子線入射励起圧力波を再現できる電磁力衝撃圧負荷試験機を開発し、衝撃壊食の成長挙動を評価した。ここでは、局所衝撃エネルギに関連する音響振動を計測し、損傷形態と比較した。その結果、音響振動は、損傷の程度を推測する有効な情報を与えうることが明らかになり、音響振動によりターゲット容器構造健全性を診断できる可能性を示した。
石倉 修一*; 二川 正敏; 粉川 広行; 明午 伸一郎; 前川 藤夫; 原田 正英; 佐藤 博; 羽賀 勝洋; 池田 裕二郎
JAERI-Tech 2004-028, 123 Pages, 2004/03
本報告では、J-PARCの物質・生命科学実験施設に設置される核破砕中性子源水銀ターゲット容器について、これまでに実施してきた構造設計の考え方及び手順についてまとめた。基本的には、(1)ターゲット容器の構造設計では、(i)核分裂炉のような反応度事故が原理的に生じる可能性はないこと,(ii)永久構造物ではないことなどから、法規上は障防法を適用し、さらに、(2)安全かつ合理的な設計を行うために、原子力構造設計基準並みのJISB8270[圧力容器(基盤規格)]規格体系の第1種容器に準拠するものとし、「解析による設計法」を適用した設計応力により設計を決めることとした。また、付録には、ターゲット容器構造における最大荷重モードである圧力波の低減を目的として、陽子ビームプロファイルを変化させた場合に想定される種々の影響について検討した結果を述べた。
二川 正敏; 直江 崇; 粉川 広行; Tsai, C.-C.*; 池田 裕二郎
Journal of Nuclear Science and Technology, 40(11), p.895 - 904, 2003/11
被引用回数:51 パーセンタイル:94.08(Nuclear Science & Technology)MW-クラスの核破砕中性子源の開発が世界的に行われており、冷却材とターゲット材を兼ねた液体水銀の利用が提案・開発されている。水銀ターゲットには陽子ビーム入射時に瞬時熱膨張に起因する圧力波が発生する。その伝播過程で水銀/容器壁界面近傍にキャビテーションが生じ、容器壁面にピッティング損傷が形成される。容器構造健全性の観点から、ピッティング損傷の形成挙動を評価することが肝要である。そこで、圧力波を水銀中に与えるために、電磁力を応用した衝撃試験機(MIMTM: Magnetic IMpact Testing Machine)を新たに開発し、1千万回を超える負荷回数領域の損傷形成挙動を調べた。その結果、損傷形成挙動がマイクロピット塑性変形支配領域である潜伏期と質量減少が顕著となる安定期に大別でき、安定期の質量減少を予測しうる実験式を導出した。
二川 正敏; 粉川 広行; Tsai, C.-C.*; 石倉 修一*; 池田 裕二郎
JAERI-Research 2003-005, 70 Pages, 2003/03
世界的にMWクラスの核破砕中性子源ターゲットの開発が行われている。陽子ビーム入射時に核破砕に伴う瞬時発熱により水銀中に圧力波が発生する。圧力波の伝播過程で構造/液体水銀界面で負圧が生じ、キャビテーションの発生・崩壊によるピッチング損傷が容器構造体内壁に形成されると考えられる。ピッチング損傷はターゲット容器の寿命支配因子となることから、その発生条件,損傷形態,程度を評価し、設計に反映することが必要である。そこで、ピッチング損傷に関する2種類のOFF-LINE実験;ホプキンソン棒衝撃負荷実験(SHPB),電磁力衝撃負荷実験(MIMTM)、を実施した。1000万回に及ぶ衝撃負荷後の損傷形態に関するデータをMIMTMにより取得した。さらに、古典的音響振動法により得られた平均壊食深さの結果と比較した。その結果、壊食挙動は、一定の質量減少率を示す定常状態と定常状態に至るまでの潜伏期に大別でき、定常状態における質量減少は規格化統一線図により整理され、潜伏期間は材料特性,負荷圧力の大きさにより決定されることを明らかにした。
向山 武彦; 滝塚 貴和; 水本 元治; 池田 裕二郎; 小川 徹; 長谷川 明; 高田 弘; 高野 秀機
Progress in Nuclear Energy, 38(1-2), p.107 - 134, 2001/02
被引用回数:68 パーセンタイル:96.8(Nuclear Science & Technology)最近、長寿命核種核変換のための加速器駆動未臨界システム(ADS)の研究開発が各国において行われている。この研究の現状を広く知ってもらうために、雑誌"Progress in Nuclear Energy"の特集号を発刊することになり、昨年プラハで開催された「第3回加速器駆動核変換技術と応用に関する国際会議」"ADTTA '98"における発表を中心に編集することになった。本論文は、日本における加速器駆動未臨界システム(ADS)の研究開発現状を、原研における研究活動を中心にまとめたものである。内容は以下の通り: (1)オメガ計画と分離核変換技術開発の概要、(2)中性子科学研究計画と大強度陽子加速器計画の下でのADS開発概要、(3)核変換専用システムとしてのADSまたは専焼炉の選択、(4)ADS開発の技術課題、(5)ADS設計研究、(6)大強度陽子加速器開発、(7)大強度陽子加速器計画におけるADS実験施設、(8)ADSによる核変換の周辺技術、1.群分離、2.窒化物燃料の製造と分離技術、3.核データの整備、(9)国内の他機関におけるADS関連研究開発、(10)まとめ
武井 早憲; 辻本 和文; 大井川 宏之; 水本 元治*; 小川 雄二郎*; 古川 和朗*; 矢野 喜治*
no journal, ,
本研究は、加速器駆動核変換システム(ADS)におけるビーム停止頻度を減少させる方法を探るため、停止時間が1分以下の停止事象を中心に、より詳細に許容ビーム停止頻度を評価し、加速器の運転実績に基づく停止頻度と比較した。その結果、高周波の反射が原因となる停止事象の停止時間が5秒以下に短縮された場合、停止時間が10秒以上のビーム停止頻度を現状の約10分の1程度に減少させれば良いことがわかった。
武井 早憲; 古川 和朗*; 矢野 喜治*; 小川 雄二郎*
no journal, ,
加速器駆動核変換システム(ADS)では、ビームトリップ事象が少ない、信頼性の高い加速器を開発しなければならない。このため、既存の加速器で発生しているビームトリップ頻度を評価する必要があるが、加速器の運転データからどのようにビームトリップ頻度を評価すべきか統一した見解が得られていない。例えば、大強度陽子加速器のビーム停止頻度を算出するために必要となるクライストロン系の平均トリップ間隔の評価では、従来、クライストロン系が偶発的に停止したトリップ事象のみを対象としてきた。しかし、一般に製品の寿命評価では、使用開始から製品が故障に至るまでの時間と使用開始からまだ故障に至らずに途中で観測が打切られた時間を含めて寿命を評価している。このため、本研究では高エネルギー加速器研究機構電子・陽電子線形加速器(KEK入射器)のクライストロン系における平均トリップ間隔を、従来の評価では含めていない打切り事象と呼ばれる停止事象を含めて評価したところ、従来の評価と比較して、クライストロン系の平均トリップ間隔が1.8倍長くなることがわかった。
武井 早憲; 古川 和朗*; 矢野 喜治*; 小川 雄二郎*
no journal, ,
加速器駆動核変換システム(ADS)では、ビームトリップ事象が少ない、信頼性の高い加速器を開発しなければならず、既存の加速器で発生しているビームトリップ事象を統一した手法で評価する必要がある。しかしながら、加速器の運転データからどのようにビームトリップ事象を統一した手法で評価すべきか合意されていない。本研究では、統一した評価手法を得ることを目的として、高エネルギー加速器研究機構入射器クライストロン系の運転データを用いてビームトリップ事象が従う確率密度関数を信頼性工学に基づく手法で評価し、従来の結果と比較した。従来、トリップ事象が従う確率密度関数は暗黙のうちに指数関数と仮定し、平均トリップ間隔や平均トリップ頻度を算出していた。しかしながら、信頼性工学で広く使用されているノンパラメトリック手法を用いて確率密度関数を評価したところ、指数関数ではない可能性が判明し、その結果、従来の手法で求められた平均トリップ間隔は信頼性工学の観点から正しくないことがわかった。今後、ADS用加速器のビームトリップ事象を統一した手法で評価するためには、本研究で述べた信頼性工学に基づく手法で加速器の運転データを解析、評価する必要がある。