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佐藤 雄飛*; 石塚 成宏*; 平舘 俊太郎*; 安藤 麻里子; 永野 博彦*; 小嵐 淳
Environmental Research, 239(Part 1), p.117224_1 - 117224_9, 2023/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Environmental Sciences)土壌有機物(SOM)の安定性は地球上の炭素循環や気候変動問題を理解する上で重要な研究課題である。本研究では段階的昇温過程を経た強熱減量法(SIT-LOI)がSOMの安定性の評価に対する利用可能性を検証するため、日本各地で採取した有機物及び無機物の各含有率並びに放射性炭素分析に基づくSOMの平均滞留時間(MRT)のそれぞれが異なる土壌試料を用いた検証実験を実施した。本実験の結果、SIT-LOIデータはSOMのMRTと強い相関を示した。これはSIT-LOIデータが実環境におけるSOMの安定性に対する指標となることを示唆するものである。
佐藤 雄飛*; 乙坂 重嘉*; 鈴木 崇史; 中西 貴宏
Limnology and Oceanography, 68(7), p.1580 - 1594, 2023/07
被引用回数:2 パーセンタイル:61.05(Limnology)海水中の懸濁態ヨウ素(PI)濃度の規定要因を明らかにするため、太平洋沿岸の2つの海域で、PI、懸濁態有機炭素(POC)・窒素、溶存態ヨウ素、植物プランクトン色素を測定した。PI/POC比から、データセットは3グループ(A: 低い、B: 中間、C: 高い)に分類された。各グループは、植物プランクトンの生理状態として、それぞれ対数増殖期、静止期、衰退期に特徴付けられた。PI生産と植物プランクトンの生理状態との関係に基づき、季節的・地域的差異が一貫して説明できた。これらの結果から、植物プランクトンの生理状態が海水中のPI濃度を調節する重要な因子であることが示唆された。
乙坂 重嘉; 佐藤 雄飛*; 鈴木 崇史; 桑原 潤; 中西 貴宏
Journal of Environmental Radioactivity, 192, p.208 - 218, 2018/12
被引用回数:15 パーセンタイル:48.31(Environmental Sciences)2011年8月から2013年10月にかけて、福島第一原子力発電所から160km圏内の26観測点において、海底堆積物および沈降粒子中のI濃度を観測した。2011年における海底堆積物中のI濃度は0.020.45mBq/kgであった。同海域の海底への主なIの沈着は事故後の半年以内に起こったと推測され、その初期沈着量は約0.360.13GBqと見積もられた。ヨウ素は生物による利用性の高い元素であるが、事故由来の放射性ヨウ素を海産生物を介して摂取することによる被ばく量は、極めて低いと推定された。福島周辺の陸棚縁辺域(海底水深200400m)では、2013年10月にかけて表層堆積物中のI濃度がわずかに増加した。このI濃度の増加をもたらす主要因として、福島第一原子力発電所近傍の海底から脱離したIの陸棚縁辺域への再堆積と、河川を通じた陸上からのIの供給の2つのプロセスが支配的であると考えられた。
乙坂 重嘉; 中西 貴宏; 鈴木 崇史; 佐藤 雄飛; 成田 尚史*
Environmental Science & Technology, 48(21), p.12595 - 12602, 2014/11
被引用回数:25 パーセンタイル:58.66(Engineering, Environmental)福島第一原子力発電所から約100km東方の沖合に、2011年8月から約2年間にわたってセジメントトラップを設置し、事故由来の放射性セシウムの海底への輸送フラックスを見積もるとともに、鉛同位体濃度等を指標として沈降粒子の輸送過程を解析した。Cs粒子束は観測期間の初期に高く、季節的に変動しながら全体として減少傾向を示した。この放射性セシウムの粒子束は、主に2つのモードで制御されていた。一つ目は表層水中で放射性セシウムを取り込んだ粒子の急速な鉛直輸送(鉛直モード)であった。このモードは、特に事故後の早い段階で支配的であり、観測点付近の海底における放射性セシウムの分布を形成したと推測された。二つ目のモードは、海底付近に運ばれた粒子状放射性セシウムの再移動であった(水平モード)。福島周辺の広域で採取した海底堆積物中のCs/Pb比を沈降粒子と比較することにより、水平モード時に堆積物が移動する範囲は数十km程度であると推定された。
佐藤 雄飛; 乙坂 重嘉; 鈴木 崇史
Journal of Water and Environment Technology (Internet), 12(2), p.201 - 210, 2014/04
本研究では、懸濁態および溶存態中の全ヨウ素濃度を簡便かつ迅速に測定するために、次亜塩素酸による試料の酸化分解(NaClO-酸化分解)とボルタンメトリーを組み合わせた分析法を提案する。代表的な3種類の試料(参照土壌,堆積物,海藻)を用いた検討の結果、最適なNaClO-酸化分解の条件は、40-50C、2時間の分解であった。この条件を用いて、有機態ヨウ素の標準物質であるチロキシンを用いて、本法によるヨウ素の回収率を調べたところ、97%以上であった。また、チロキシンと参照土壌を混合しチロキシン由来ヨウ素(チロキシン-ヨウ素)の回収実験(標準添加-回収実験)を行ったところ、1-7mol gの濃度範囲において、ほぼ全てのヨウ素が回収された。懸濁態試料(参照土壌,堆積物,海藻,濾紙上懸濁物)および溶存態試料を用いて、本法と、従来の一般的な分析法であるNaOH-分解および燃焼法の測定結果と比較した。NaOH-分解においては、従来法は本法に比べ低い測定値となり、分解能力が不十分であることが示唆された。燃焼法では、一部の試料で従来法は、本法に比べて低い測定値となり、これはおそらく、トラップ効果と不十分な燃焼が原因であることが推測された。
乙坂 重嘉; 鈴木 崇史; 中西 貴宏; 桑原 潤; 佐藤 雄飛
no journal, ,
2011年8月から11月にかけて福島県及び茨城県沖合の18観測点で採取した海底堆積物中のI濃度を、加速器質量分析装置で分析した。得られた結果から、海底での放射性ヨウ素の分布状況を明らかにするとともに、福島第一原子力発電所事故由来の放射性核種の海底への蓄積過程を議論する。海底堆積物表層(01cm層)中のI濃度は、0.0450.48mBq/kg-dryの範囲で分布しており、多くの観測点で事故前の濃度(0.08mBq/kg-dry)に比べて数倍高かった。本研究で得た海底堆積物について、事故由来と考えられるI濃度のCs濃度に対する比は、事故直後の同海域におけるモニタリング調査結果から推定した表層海水中での濃度比に比べて高かった。この結果から、海洋表層や海底付近において、放射性セシウムに比べて放射性ヨウ素が優先的に粒子化し、海底に蓄積した可能性があることが示唆された。
佐藤 雄飛; 乙坂 重嘉; 鈴木 崇史
no journal, ,
ヨウ素が親生物性元素であることがよく知られている。しかしながら、植物プランクトンのヨウ素の取り込み過程についての理解は十分とは言い難い。本研究では、培養株および自然群集を用いて、植物プランクトンによるヨウ素取り込み能力を、明条件および暗条件下において評価した。培養株について、ヨウ素酸イオンをヨウ素源として10時間の培養実験を行った結果、珪藻、クリプト藻およびハプト藻で有意なヨウ素の蓄積が認められた一方で、ラン藻(シアノバクテリア)では認められなかった。クリプト藻とハプト藻類でのみ明条件に顕著な蓄積がヨウ素の蓄積が起こったが、珪藻では、明暗共に顕著な蓄積が認められた。自然光または暗条件下、自然海水中における自然群集によるヨウ素取り込みを調べた結果、明暗の両条件下において、ヨウ素の蓄積が確認された。これらの実験結果から、植物プランクトンの生理活性や種類が日スケールにおけるヨウ素動態に影響する、可能性が示唆された。
佐藤 雄飛; 乙坂 重嘉; 鈴木 崇史
no journal, ,
海洋沿岸における堆積物からのヨウ素の溶出過程を解明するために、茨城および福島沿岸より採取した表層堆積物と人工海水を用いて、実験容器内で現場環境を模擬した、堆積物からのヨウ素溶出実験を行った。その際、海水中の各化学種ごとの溶存態ヨウ素濃度と溶存態有機物(DOM)濃度の変化を、70日間にわたって観測した。その結果、実験開始後21日目までの高いヨウ素濃度、35日目にかけてのヨウ素濃度の減少、35日目以降の溶存態有機ヨウ素(DOI)の優占化、という特徴的な傾向が確認された。これらは、ヨウ素の化学種組成および蛍光性DOMの分析結果から、(1)間隙水の拡散によるヨウ化物イオンの供給、(2)数日スケールでの易分解性DOIの供給、(3)堆積物へのヨウ化物イオンの吸着除去、(4)堆積物-海水間の難分解性DOIの交換、によって引き起こされていることが示唆された。現場環境においても、これらの要因によって堆積物からのヨウ素溶出が制御されていることが推測される。
乙坂 重嘉; 佐藤 雄飛; 鈴木 崇史; 成田 尚史*
no journal, ,
福島第一原子力発電所事故によって海洋に放出された放射性セシウムの海底付近での輸送過程を把握するため、福島第一原発から約100km東方の沖合に、2011年8月から約2年間にわたってセジメントトラップを設置し、26日間隔で26期間の沈降粒子を採取した。得られた沈降粒子中の放射性セシウムの分析結果から、海底への放射性セシウムの輸送量と輸送機構を解析した。Cs粒子束は観測序盤に高く、2011年9月に最大(98m Bq/m/day)となった後、年3回の極大を示しながら全体として減少した。放射性セシウムの粒子束は、主に2つのモードで制御されていた。一つ目は表層水中で放射性セシウムを取り込んだ粒子の急速な鉛直輸送(夏モード)であった。このモードは、特に事故後の早い段階で支配的だったと考えられ、観測点付近の海底における放射性セシウムの分布を形成したと推測された。二つ目のモードは、海底付近に運ばれた粒子状放射性セシウムの再移動であった(冬モード)。冬モードにおける粒子状放射性セシウムの輸送は、大規模ではないものの、放射性セシウムの再分布を長期にわたって制御する主要機構として注目すべきと言える。
佐藤 雄飛; 乙坂 重嘉; 鈴木 崇史
no journal, ,
植物プランクトン有機物へのヨウ素蓄積は海洋におけるヨウ素動態を制御する重要な過程であるが、研究例の少なさに起因して、その過程はよく理解されていない。植物プランクトンのヨウ素蓄積効率を評価するために、培養株(珪藻,シアノバクテリア,クリプト藻,ハプト藻)および沿岸海水より採取した自然群集を用いた培養実験を行った。自然群集は北太平洋の日本沿岸域から採取した。ヨウ素の蓄積効率は植物プランクトンの種類によって幅があったが、特に珪藻において炭素量あたりの顕著なヨウ素蓄積が確認された。これは、珪藻が植物プランクトン群集へのヨウ素蓄積を制御している重要種であることを示唆する。珪藻によって生産される懸濁態有機ヨウ素(POI)のヨウ素/炭素比を求めると、約410(mol/mol、平均値)であった。この比と珪藻の生産量を掛け合わせることで、現場環境で植物プランクトンにより生産されるPOI量を概算することが可能と考えられる。
乙坂 重嘉; 佐藤 雄飛; 鈴木 崇史; 桑原 潤
no journal, ,
2011年8月から2013年1月にかけて福島県周辺ののべ24観測点で採取した海底堆積物中のIとCsの濃度の関係から、福島第一原子力発電所由来の放射性核種の海底付近での輸送過程を議論する。2011年における海底堆積物最上層(01cm層)でのI濃度は、0.040.45mBq/kg、Cs濃度は12230Bq/kgの範囲で分布しており、いずれの観測点でもおおむね一定のI/Csを示した。このI/Cs比は全体として時間と共に増加し、特に陸棚外縁部(水深200400m)の堆積物最上層で顕著であった。この傾向から、(1)事故直後の放射性核種の大規模な沈着イベント以降にI/Cs比の高い粒子が海底に達したことと、(2)このような「新しい」粒子は陸棚外縁へと集められやすいことが示唆された。海底付近での粒子中のI/Cs比は、陸棚上を移動する物質を追跡するための指標の一つとして有効であると考えられる。
乙坂 重嘉; 佐藤 雄飛; 鈴木 崇史; 桑原 潤
no journal, ,
本研究では、福島周辺海域で得た海底堆積物中のI濃度の分布とその時間変化から、福島第一原子力発電所由来の親生物性の放射性核種の海底付近での輸送経路について議論する。2011年の堆積物表層でのI濃度は0.040.45mBq/kgの範囲で、全体として沿岸域で高かった。このI分布は、事故後の概ね2か月以内に形成されたと推測された。事故から約2年後の2013年には、陸棚縁辺(海底水深200400m)の堆積物表層でI濃度がわずかに増加しており、この増加傾向は放射性セシウムには見られなかった。この選択的な陸棚縁辺でのIの蓄積は、福島周辺の沿岸に堆積したIの一部が陸棚縁辺に水平移動したことによるものと推測された。ヨウ素の環境中での挙動の特徴を考慮すると、堆積物表層付近の粒子態有機物がIを取り込んで、より沖合へと移動したものと考えられる。
乙坂 重嘉*; 佐藤 雄飛*; 鈴木 崇史; 桑原 潤; 中西 貴宏
no journal, ,
海底付近においてヨウ素は、還元的な堆積物中での有機物の分解に伴う無機化, 酸化的な海水中での化学形の変化、細胞内外での酵素反応による有機化等、様々な経路で移行する。このため、海底付近での放射性ヨウ素の移行過程の追跡は、海洋における様々な元素循環についての理解を深めるうえで貴重な情報をもたらす。本講演では、福島第一原子力発電所事故によって福島沿岸の海底に沈着したIの分布や再移動の様子について議論した研究成果について、元素循環の観点で紹介する。特に、(1)福島周辺海域の海底へのIの沈着は非生物性の吸着によるものであること、(2)事故から2年間に沿岸に沈着したIの数パーセントが陸棚縁辺域へと再移動することについて解説する。