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寺田 宏明; 茅野 政道
Proceedings of 2nd International Conference on Radioactivity in the Environment, p.15 - 18, 2005/10
原子力緊急時において放射性物質の大気拡散のリアルタイム予測を行う計算モデルは非常に有用である。発表者らはこれまで緊急時環境線量情報予測システムSPEEDIとその世界版WSPEEDIを開発してきた。従来のWSPEEDIは質量保存風速場モデルWSYNOPと粒子拡散モデルGEARNから構成されていた。WSYNOPは診断型モデルであり気象場を予測することは不可能であるため、予測精度及び解像度が入力気象データに依存し、また鉛直拡散及び降雨沈着過程の詳細な考慮が不可能であった。これを改良するために大気力学モデルMM5を導入した。この改良版WSPEEDIを1986年に発生したチェルノブイリ原子力事故に適用し、数値モデルの予測性能の検証を行った。CASE-1:ヨーロッパ全域を含む広域計算と、CASE-2:広域とチェルノブイリ周辺域での2領域ネスティング計算の2ケースの計算を行った。CASE-1の計算結果よりCsの大気中濃度と地表沈着量を水平分布図及び統計解析で測定データと比較した結果、ヨーロッパスケールでの輸送の挙動をよく予測できていた。CASE-2の計算では、領域ネスティング計算によりCASE-1の広域計算では計算不可能であった詳細な沈着量分布を予測することができた。
Thiessen, K. M.*; Napier, B. A.*; Filistovic, V.*; 本間 俊充; Kanyr, B*; Krajewski, P.*; Kryshev, A. I.*; Nedveckaite, T.*; Nnyei, A.*; Sazykina, T. G.*; et al.
Proceedings from the International Conference on Radioactivity in the Environment, p.313 - 316, 2002/09
IAEAの主催するBIOMASS計画の線量再構築ワーキンググループでは、1963年に米国ハンフォードの化学分離施設から事故で環境に放出されたヨウ素-131に関するモニタリングデータを用いて、環境移行モデル,線量評価モデル等の妥当性の検証を行った。サイト周辺数カ所の沈着量のモデル予測は、参加機関及び評価地点により、ファクター6から7,最大2桁の違いがあった。また、子供に対する食物摂取線量の予測は、評価法の違い,パラメータ値の選択の相違等により、参加機関によって1桁の開きがあった。この検証作業は、アセスメント手法と概念的なアプローチの比較,モデル予測の実測データによる検証,不確かさに寄与する因子の同定の点で有意義であった。予測結果に影響を及ぼす重要な要因として、不完全なデータの取り扱い法,入力情報の解釈,パラメータ値の選択,サイト特有な状況へのモデルの調整,不確かさの取り扱いが見出された。
Thiessen, K. M.*; Sazykina, T. G.*; Apostoaei, A. I.*; Balonov, M.*; Crawford, J.*; Domel, R.*; Fesenko, S.*; Filistovic, V.*; Galeriu, D.*; 本間 俊充; et al.
Proceedings from the International Conference on Radioactivity in the Environment, p.317 - 320, 2002/09
チェルノブイリ事故以後に収集されたデータは、陸域や水系の汚染に関する計算モデルの信頼性を検証するユニークな機会を提供した。IAEAの主催するBIOMASS計画の線量再構築ワーキンググループでは、イプト河シナリオが採用され、多数の被ばく経路が関係する評価モデルの検証に用いられた。チェルノブイリの北東約200kmに位置するイプト河流域の農耕地帯は、ロシアで最も汚染した地域の一つで、単位平方km当り平均800kBq,局所的には1500kBqのCs-137に汚染され、この地域で実行されたさまざまな防護対策をモデル化する必要があった。淡水魚,きのこ類などの摂取を含むさまざまな経路に対して、事故後10年にわたるデータがモデル検証に利用できた。参加機関の最終結果に多くは、ファクター2から3で測定値との一致を見た。計算を実行するうえで困難な点は、局所汚染を考慮したデータの平均化,Cs-137の土壌深部への移行と可給態の同定,防護対策のモデル化であった。モデル予測の正確さは、少なくとも入力情報を解釈する解析者の経験や判断,パラメータ値の選択,不確かさの取り扱いに依存する。
小林 卓也; 外川 織彦
Proceedings from the International Conference on Radioactivity in the Environment (CD-ROM), 4 Pages, 2002/09
海洋中へ放射性物質が放出される際に短期間(30日)の核種移行予測と日本人の集団線量を算出する海洋環境影響評価システムSTEAMERを開発中である。短期間の核種移行予測コードシステムは海流場を解析するプリンストンオーシャンモデル(POM)と溶存放射性核種の海洋中拡散を解析するランダムウォークモデルSEA-GEARNから構成される。予測結果の可視化システムも同時に開発した。本システムの適用試験として、海流,水温,塩分,領域客観解析気象データ(RANAL)を用いて原子力潜水艦の仮想沈没事故の影響解析を実施した。核種拡散結果を比較するため、そして日本人に対する集団線量を算出するために、もう一つの計算コードDSOCEANも使用した。DSOCEANは等分割コンパートメントモデルと地衡流解析モデルから構成される。
寺田 宏明; 古野 朗子; 茅野 政道
Proceedings from the International Conference on Radioactivity in the Environment (CD-ROM), 4 Pages, 2002/09
われわれは国内と海外における原子力事故に備えて緊急時環境線量情報予測システムSPEEDIとその世界版WSPEEDIを開発してきた。本研究は、原子力事故だけでなくテロ攻撃についてもそれによる放射性物質の大気中への放出に対応できるようにWSPEEDIの機能を拡張することを目的としている。テロ攻撃はあらゆる時間,場所,空間スケールが想定される。WSPEEDIはすでに気象庁の全球気象予測データの取得や世界の任意地域の地形データの作成といった機能を有してはいたが複数スケールの予測を同時に行う機能はなかった。したがって非静力学気象モデルMM5と大気拡散モデルGEARNを結合してWSPEEDIに導入した。MM5は領域ネスティング計算機能を有しているので局所域と地域規模の気象場の同時予測が可能である。また以前からWSPEEDIで使用されているGEARNはラグランジュ型粒子拡散モデルで大気中濃度,沈着,被曝線量を計算できる。MM5で各ネスト領域について計算された三次元風速場,降水量,鉛直拡散係数を入力することで、GEARNは詳細な境界層過程や降水過程を考慮した複数スケールの環境放射能汚染を予測することができる。この改良版WSPEEDIを用いてアジア域での原子力事故あるいはテロ攻撃を想定した試験計算を行い、放出点近辺とアジア域全体での放射能汚染を同時に見積もった。
石森 有; 古田 定昭
Proceedings of International Conference on Radioactivity in the Environment, 0 Pages, 2002/00
ラドンに対する法令値は、平衡等価ラドン濃度、すなわち、ラドン娘核種濃度で定められている。サイクル機構では、長期間の環境モニタリングを目的として、積分型ラドン娘核種測定器を開発した。今回、この測定器による試験測定を、1年間にわたって実環境で実施したので、その結果を報告する。
中野 政尚
Proceedings of International Conference on Radioactivity in the Environment, p.451 - 454, 2002/00
広域海洋における放射性物質(Cs)移流拡散モデルを開発した。大気圏核実験に起因するCs降下量を入力し、数十年間の移流拡散後の海水中放射性物質濃度を計算した。拡散係数を最適化することによって良好に世界100地点以上の海水中137Cs鉛直分布観測値を再現することができた。最適化によって見出した拡散係数は大洋における現実的な拡散係数と捕らえることができる。