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三ツ井 誠一郎
一般国道9号(鳥取西道路)の改築に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書,17; 良田中道遺跡, p.221 - 230, 2015/03
2012年6月に鳥取市良田中道遺跡の古墳時代以降の水田土壌から出土した袋状鉄斧は、原形を留めるなど遺存状態が良好であった。この要因を調べるため、埋蔵環境と腐食状態に関する調査・分析を実施した。埋蔵環境として、湧水水質(酸化還元電位、溶存酸素濃度等)の分析、鉄電極の腐食速度(自然腐食速度)等の測定を現地で実施した。鉄斧の腐食状態については、X線CT装置を用いた腐食層厚の計測、ポータブルX線回折・蛍光X線分析装置を用いた鉄斧表面の腐食生成物等の分析を実施した。その結果、腐食生成物層の厚さはおおむね1mm前後であり鉄斧内部は金属鉄であること、表面に生成した菱鉄鉱(FeCO)が腐食反応を抑制していた可能性があることなどを確認した。
山内 通則*; 竹村 守雄*; 中村 博雄; Fischer, U.*; 井田 瑞穂*; 森 清治*; 佐藤 聡; 西谷 健夫; Simakov, S. P.*; 杉本 昌義
Fusion Science and Technology, 47(4), p.1008 - 1011, 2005/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)IFMIFリチウムループ中では、強力な中性子に照射されたターゲット背壁の放射化と腐食により大量の放射性腐食生成物が発生する。原研で開発された放射化計算コードACT-4, FENDLに基づく核融合炉用放射化断面積ライブラリー及び加速器用放射化断面積ライブラリーIEAF-2001を用いてその量を計算した。その結果、リチウム中の放射性腐食生成物は反応生成物Be-7に比べて非常に少ないことがわかったが、あいにくループの内壁に対する沈着挙動等リチウム中での腐食生成物の化学的特性データがほとんどない。そこで、1年間の運転によりリチウム中に発生した放射性腐食生成物の100%沈着を想定してリチウム配管周りの空間線量率を評価したところ、配管表面での作業のためには1年ほど冷却を待たないと許容線量率以下にならないことがわかった。したがって、保守作業のためには、放射性腐食生成物についても効率の良いリチウム浄化装置が必要である。
大橋 弘士*; 佐藤 正知*; 小崎 完*
JAERI-Tech 2002-021, 52 Pages, 2002/03
有害な重金属や有機物質あるいは放射性物質によって汚染した土壌に対する新しい修復技術として、汚染の除去並びに土壌中に鉄腐食生成物を層状に沈殿させることが可能な、鉄陽電極界面動電法を提案し、有効性を検討した。その結果、鉄腐食生成物がSe,Npの遅廷能を有していることを確認するとともに、生成物の鉱物学的特性についても明らかにした。したがって、鉄陽電極界面導電法は、汚染土壌に対する有望な環境修復技術の一つである。
谷口 直樹; 本田 明; 川崎 学*; 舛形 剛*
JNC TN8400 2001-001, 56 Pages, 2000/12
高レベル放射性廃棄物の地層処分における炭素鋼オーバーパックの腐食寿命を評価するうえで、堆積する腐食生成物による腐食への影響を明らかにする必要がある。特に、マグネタイトを模擬腐食生成物として与えると、腐食が加速されるという報告があり、その影響を把握することが重要である。そこで、腐食生成物としてのマグネタイトが炭素鋼オーバーパックの腐食に及ぼす影響を評価することを目的としてマグネタイト共存下での腐食加速再現試験および腐食加速機構の解明のための試験を実施した。その結果、以下のことが確認された。(1)粉末のマグネタイトは炭素鋼の腐食を加速する作用を有する。その主要因はマグネタイト中の3価鉄の2価への還元反応であるが、水素発生反応もある程度加速される。マグネタイト共存下での炭素鋼の浸漬試験では、腐食反応に占める水素ガス発生反応の寄与は30%程度であった。(2)炭素鋼の腐食によって生じたマグネタイトを含む腐食生成物層は炭素鋼の腐食をむしろ抑制する。また、マグネタイトによる腐食の促進を仮定し、実験結果に基づいて1000年間の腐食深さを見積もった。その結果、マグネタイトに起因する腐食深さの増加は1mmにすぎず、これを加えてもトータルの腐食深さは約33mmであり、第2次取りまとめにおいて設定されている炭素鋼オーバーパックの腐食しろの40mmを超えないことがわかった。よって、オーバーパック寿命へのマグネタイトによる腐食加速の影響はほとんど無視できることがわかった。
増田 純男; 梅木 博之; 清水 和彦; 宮原 要; 内藤 守正; 瀬尾 俊弘; 藤田 朝雄
JNC TN1410 2000-008, 100 Pages, 2000/10
核燃料サイクル開発機構(以下、サイクル機構)が平成11年11月26日に原子力委員会に提出した「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発の第2次取りまとめ-」(以下、第2次取りまとめ)に対し、『高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性』批判(2000年7月20日)」と題するレポート(以下、批判レポート)が地層処分問題研究グループ(高木学校+原子力資料情報室)から公表した。批判レポートの記述内容には独断的な部分や誤解に基づくものも多々あることから、第2次取りまとめに関連した技術的な部分に対して、サイクル機構の見解を本報告書として取りまとめた。見解をまとめるにあたっては、批判レポートの第1章から第7章にわたって展開されている内容を対象とし、またそれらの関連性などを考慮して、本報告書を4つの章により構成することとした。第1章では「地質環境の長期安定性について」、第2章では「工学技術と深部坑道の安定性について」、第3章では「人工バリアの特性について」、第4章では「地下水シナリオに基づく安全評価について」として、それぞれ見解を述べた。本報告書に示した見解は、第2次取りまとめを構成する4つの報告書の記載内容に基づくものであり、関連箇所を引用する際には、それぞれ「総論レポート」、「分冊1」、「分冊2」、「分冊3」と略記した。
小田野 直光; 石田 紀久
Journal of Nuclear Science and Technology, 37(Suppl.1), p.584 - 588, 2000/03
日本原子力研究所では、深海科学調査船の動力源として使用する超小型舶用炉DRXの設計研究を進めている。DRXは小型軽量化・系統の簡素化のために、浄化系を設けずに、無浄化で原子炉を約1ヶ月間連続運転する設計である。無浄化運転の成立性を定量的に評価するために、原子運転後に蓄積する放射性腐食生成物量を評価する計算コードCTAM-IIを開発した。CTAM-IIは、原子炉の一次系を燃料被覆管、冷却材、制御棒駆動装置、蒸気発生器伝熱管、配管、炉内構造物、浄化系等のノードに分割し、各ノードにおける放射能、質量バランスに関する連立常微分方程式を解くことで、放射性腐食生成物の蓄積量を評価する。原子力船「むつ」の一次冷却材中放射性核種濃度をCTAM-IIにより計算し、測定値との比較をしたところ、比較的よく一致した。さらに、CTAM-IIによりDRXに対する計算を行い、CTAM-IIの結果を線源項として遮蔽安全性の評価を行った。
柴田 俊夫*; 瀬尾 眞浩*; 杉本 克久*; 水流 徹*; 井上 博之*
JNC TJ8400 2000-013, 38 Pages, 2000/02
これまでに核燃料サイクル開発機構(旧動燃事業団)が実施してきたオーバーパックに関する研究成果についてレビューし評価をおこなったのに引き続き、腐食防食協会の中に専門家による委員会を継続した。腐食科学の観点から、材料選定の考え方、実験方法、寿命評価手法など、より具体的な指針として役立てるべく、個別現象解析モデルの研究をおこなった。本書が、今後の研究開発の過程で利用され、オーバーパックに関する研究に役立つことを期待するものである。
納多 勝*
JNC TJ1400 99-035, 256 Pages, 1999/02
本研究は、核燃料サイクル開発機構が平成10年9月に公表した「第2次取りまとめ第l次ドラフト」における「処分技術開発」の内容を対象に、別途構築される評価検討手法の高度化に資することを目的として、国内の大学、民間企業の専門家の意見等をとりまとめたものである。地層処分システムの設計・建設技術に関する検討では、処分空洞建設時に発生が予想されるゆるみ領域の評価手法、空洞安定性解析手法と支保工の設計手法、緩衝材の仕様決定手法等、「処分技術開発」の評価について、主として現状技術を基本とした工学的な観点から各専門家の意見をとりまとめた。人工バリアシステムの長期力学安定性評価については、ベントナイト緩衝材を対象に、周辺の岩盤、オーバーパックの腐食膨張等時系列に発生する事象を解析する手法の現状について、専門家の意見を反映し今後の研究の方向を示唆する事項としてとりまとめた。処分場の管理に関する検討では、閉鎖前後の管理の考え方を中心に、世界各国での議論を調査し、専門家の意見を反映して管理の考え方を助言としてとりまとめた。オーバーパックの腐食に関する検討としては、ベントナイト共存下における腐食試験を実施し、腐食生成物が腐食プロセスに与える影響の評価に資する知見をとりまとめた。
斉藤 淳一; 舘 義昭; 林 和範; 加納 茂機
PNC TN9410 98-082, 60 Pages, 1998/08
優れた高温強度を有するセラミックスは、過酷な環境下で使用される構造材料として有望視されている材料である。これまでに液体ナトリウムなどの高速炉環境下で使用することを目的として、セラミックスの研究開発を行ってきた。特にナトリウム耐食性向上のために、腐食挙動を調べてきた。しかしながら、試験片表面に生成し、腐食挙動に重要な役割を果たすと考えられる腐食生成物が試験後に明確に検出できないため、ナトリウム中のセラミックスの腐食機構は十分に把握されていないのが現状である。本研究では、セラミックスのナトリウム腐食挙動を理解するために従来の腐食試験に代わるイオン注入技術を利用した。まず、セラミックスにナトリウムイオンを注入(100keV,1.910の17乗ions/cm2)した後、アルゴン雰囲気で923Kまたは823K、36ksの熱処理を施し、その後、SEM,TEMおよびX線回折を用いて表面の生成物の解析を行った。その結果、生成物の種類を明確に同定はできなかったが、生成物の存在は確認できた。これは生成物量が少ないことが原因である。今後、ナトリウム注入条件および熱処理条件を系統的に変化させた実験を行うことが必要である。それにより、セラミックスの腐食挙動を理解するために有益な情報が得られるものと思われる。
斉藤 淳一; 森永 正彦*; 加納 茂機
PNC TN9410 98-072, 97 Pages, 1998/07
高温アルカリ金属のフロンティア領域を開拓するために、高温液体Liの過酷な環境下で使用できる構造材料の研究開発を推進してきている。その条件下で使用される材料としてNbおよびMoの高融点金属を基とした超耐熱合金に着目した。液体リチウム中の腐食特性、クリープおよび引張強度等の高温での機械的特性は最も重要な特性の一つであり、高温(1473K)でのリチウム耐食性と機械的特性の多くの実験や解析により、NbおよびMo基合金の設計開発を進めてきた。本報告書は、これまで実施してきたNb基およびMo基超耐熱合金のLi腐食試験結果を系統的にまとめ、解析結果より腐食機構を提案するとともに、表面の腐食生成物の生成機構とNb基合金の表面クラックの生成機構を解明したものである。主な結果は下記のとおりである。(1)腐食生成物の生成機構は、溶出金属とLi中の窒素の間で最初に反応が起こり、腐食生成物(窒化物)が表面に析出し、その後、溶出金属どうしの反応が生じ腐食生成物(金属間化合物)が表面に析出する。これらの生成機構により、腐食生成物の成分を予測できることがわかった。(2)クラック生成メカニズムでは、化学ポテンシャル図を用いることによりクラック発生の原因となる3元系酸化物の形成を理解することができた。その結果、合金中の固溶酸素だけでなく試験中に表面から侵入してくるLiの濃度も3元系酸化物の形成に重要であることが明らかになった。
辻川 茂男*; 瀬尾 眞浩*; 杉本 克久*; 水流 徹*; 柴田 俊夫*; 山川 宏二*
PNC TJ1560 98-001, 164 Pages, 1998/02
これまで動燃事業団が実施してきたオーバーパックに関する研究成果についてレビューし評価を行ったのに引き続き、腐食防食協会の中に専門家による委員会を継続した。腐食科学の観点から、材料選定の考え方、実験方法、寿命評価手法など、より具体的な指針として役立てるべく、個別現象解析モデルの研究をおこなった。本書が、今後の研究開発の過程で利用され、オーバーパックに関する研究に役立つことを期待するものである。
下郡 一利*; 泊里 治夫*; 小田 正彦*; 藤原 和雄*; 舛形 剛*
PNC TJ1074 98-002, 270 Pages, 1998/02
銅は還元性条件下では熱力学的に腐食しない事が知られている。従って、地下深部本来の環境である還元性環境下において、銅にオーバーパック候補材料としての優位性が与えられる。しかし、処分開始直後には比較的酸化性の環境になるため局部腐食発生の可能性が考えられる。そこで、本研究では酸化性環境下における銅の局部腐食発生の臨界条件を明らかにする事を目的として、80度Cにおける脱気炭酸塩溶液含浸ベントナイト中及び脱気炭酸塩溶液中での60日間の電気化学的試験ならびに暴気炭酸溶液含浸ベントナイト中及び暴気炭酸塩溶液中での60日間の自然浸漬試験を行い、溶液中のイオン濃度ならびに電位と腐食状況との関係を整理し、銅の局部腐食発生の臨界条件の検討を行った。その結果、ベントナイト無しの場合、高腐食性溶液(HCOSUB3/SUPー/S0/SUB4/SUP2-l、高濃度Cl/SUP-)中は勿論のこと、低腐食性溶液(HC0/SUB3/SUP-/S0/SUB4/SUP2-l)に塩素イオン及び硫酸イオン濃度を高めた溶液中においても、淡水や給湯環境中での孔食臨界電位である。"0.115VVSSCEat 60度C(=0.296VvsSHE at 80度C)"以上では局部腐食発生の可能性があるが、ベントナイト有りの場合には、高腐食性溶液中における高電位印加以外の条件では、局部腐食発生の可能性は低いものと考えられる。また、大気平衡下での自然竜位は高くとも上記臨界電位近傍であり、実環境中では酸素の消費も生じるため、局部腐食発生の可能性は更に低いと推察された。
青山 卓史; 升井 智彦*; 住野 公造; 佐井川 拓也*
PNC TN9410 98-004, 74 Pages, 1997/12
高速炉プラントの保守・補修作業時の主要な被ばく源となる放射性腐食生成物(CP)の挙動解明と解析手法の整備に資するため、高速実験炉「常陽」において、第11回定期検査中の平成7年10月11月(積算原子炉熱出力:約14.3万MWd)に、1次冷却系の配管および主要機器を対象に、CPの付着密度と線量率を測定した。今回は、新放射線計測技術として近年実用化が進んでいるプラスチックシンチレーション光ファイバ(PSF)検出器を線量率分布測定に適用し、CP挙動測定の高精度化と迅速化を図った。本研究の主要な成果は以下のとおりである。(1)1次冷却系における主要なCP核種は、54Mnと60Coであり、これらの付着分布には以下の特徴がみられ、過去の測定結果と概ね同じ傾向であった。1)1次主冷却系配管(Aループ)のCP付着密度は、原子炉容器出口から主中間熱交換器までのホットレグ、主中間熱交換器から主循環ポンプまでのコールドレグ(1)、主循環ポンプから原子炉容器入口までのコールドレグ(2)について、それぞれ、54Mnが約15kBq/cm2乗、約33kBq/cm2乗、約46kBq/cm2乗であり、60Coが約8kBq/cm2乗、約5kBq/cm2乗、約7kBq/cm2乗であった。54Mnの付着密度は、60Coに比べて、ホットレグで約2倍、コールドレグで約7倍であり、54Mnの方が線量率に占める割合が大きい。2)1次主冷却系配管表面の線量率は、ホットレグで約0.3mSv/h、コールドレグ(1)で約0.2mSv/hおよびコールドレグ(2)で約0.4mSv/hであった。(2)今回の測定では、前回測定した第10回定期検査以降の原子炉運転時間が少なかったCPの生成量よりも減衰量が上回り、付着密度が減少した。また、原子炉停止後の冷却期間が長かったため、主に54Mnの減衰により線量率も低下した。(3)PSFにより、10mまでの範囲で位置分解能の高い連続的な空間分布が数分間で得られた。また、狭隘で人のアクセスが容易でない保守作業エリアにおける線量率分布が詳細に測定でき、空間線量率のデータを大幅に拡充できた。
永江 勇二; 吉田 英一; 古川 智弘; 青砥 紀身
PNC TN9410 97-092, 87 Pages, 1997/07
本試験は、「もんじゅナトリウム漏えい事故」における炭素鋼材損傷の原因究明の一環として、高温化学反応による炭素鋼の損傷機構に関するデータを基礎的実験から取得し、現象解明することを目的としている。本報告では、試験後の金属組織観察を行い、炭素鋼の損傷状況について検討した。試験は、アルゴンガス流中、単独Na化合物試薬(Na2O,Na2O2,NaOH)を用いて6001200の温度範囲で行われた。組織観察の結果、試験条件によっては試薬に接していた炭素鋼表面に孔が観察され、選択的な反応を生じていることが分かった。選択的な反応は、試薬と炭素鋼との反応後に起きると考えられ、高温で晒されている時間が長いと顕著になる。炭素鋼と反応生成物の界面の組成分析の結果、反応生成物中には炭素鋼に比べてMn濃度の高い場所が観察された。
竹内 正行; 川野邉 一則*; 永井 崇之; 大橋 和夫; 武田 誠一郎
PNC TN8410 97-104, 56 Pages, 1997/04
(目的)再処理溶液中に腐食生成物として存在するクロム(以下,「Cr」という)を対象に,ステンレス鋼の腐食に与える影響および粒界選択型の腐食加速機構について調査し,特に影響の大きいCr(6)の酸化生成条件等を中心に検討する。(方法)ステンレス鋼の腐食に与えるCrの影響を評価する手法として,材料浸漬試験および電気化学試験を行った。また,粒界腐食の要因とされる微量元素の粒界偏析に関しては,オージェ電子分光法により粒表面および粒界の組成を比較することで評価した。さらに,Crの酸化反応条件について検討するため,硝酸濃度,溶液温度をパラメータとしたCr(3)共存溶液の加熱試験を実施するとともに,溶液のPt電位測定および試験後におけるCr(6)の定量分析等を行った。(結果)本試験の結果から,得られた主な知見を以下に示す。(1)浸漬試験および電気化学試験結果から,同じ元素種でも,Cr(3)に比較して,Cr(6)の共存環境ではステンレス鋼の腐食電位が高電位側に移行し,粒界腐食を伴う腐食速度の著しい増加が認められた。(2)粒界腐食機構の要因とされる微量元素の粒界偏析については,オージェ電子分光法による測定では観察できなかった。(3)180時間程度の加熱試験結果から,沸点の条件では,酸化生成したCr(6)が硝酸濃度4M以上で定量的に検出された。(4)非破壊吸光光度法によるCrを指標としたステンレス鋼の腐食モニタリングで得られた腐食速度は腐食減少量からの算出値より低い値が得られた。(結論)ステンレス鋼の腐食に対するCrの影響はCr(3)に比べて、Cr(6)の共存環境で顕著である。この要因は硝酸よりもポテンシャルの高いCr(6)の酸化作用にあり,Cr(6)は高温,高濃度硝酸環境で酸化生成する可能性が示唆された。
遠藤 和豊*
PNC TJ1639 97-001, 40 Pages, 1997/03
地下水は長期間にわたってベントナイトに接触すると化学反応を起こし、その化学組成を変化させる。そして、地下水は炭素鋼のオーバーパック表面に達すると炭素鋼を腐食させる。このときの地下水の化学組成は、炭素鋼の腐食に関わる条件を得るために重要である。このような地下水の化学組成や腐食生成物の正確な知見を得るために、さまざまな条件下での鉄-地下水-ベントナイトの化学的相互作用を評価するため、メスバウアー分光法を用いて検討した。さらに、ベントナイト共存下におけるオーバーパック腐食生成物の存在形態を理解するために、ベントナイトクニゲルV1およびクニピアFを各種金属塩の水溶液に浸漬した場合の鉄化学種の変化をメスバウアー分光法で検討した。蒸留水、60で7日間の浸漬実験をおこなった。用いた金属塩は硫酸銅、硫酸ニッケル、塩化コバルト、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、水酸化ナトリウムである。その結果、ベントナイト中の鉄の化学形態はクニピアFでは常磁性三価二成分、二価一成分、クニゲルV1では三価一成分、二価二成分に解析され、金属イオンを含む溶液では相対的に三価成分が多くなって観測された。
青山 卓史; 鈴木 惣十
PNC TN9420 96-058, 27 Pages, 1996/10
本報告書は,高速実験炉「常陽」の核計装設備および放射線計測を中心とした計測技術の内容を紹介するものである。核計装設備の紹介では,原子炉プラント設備としての核計装設備の機能と位置付け,使用している中性子検出器の仕様と特性,機器配置等について記述した。各種照射試験やサーベイランス試験に対する中性子照射量を実側ベースで評価するための原子炉ドシメトリーでは,「常陽」で採用している多重放射化箔法とその測定解析評価法および現在開発中のHe蓄積法(HAFM法)について概説した。また,放射線計測がキーとなる破損燃料検出技術の開発では,「常陽」の燃料破損検出設備と各種実験装置の説明に加えて,現在までに実施した燃料破損模擬実験結果の一部を紹介した。さらに,新放射線計測技術の応用として,プラスチック・シンチレーション光ファイバを用いた「常陽」1次冷却系における放射性腐食生成物(CP)の挙動測定について,測定原理,測定方法および主要な測定結果について記述した。
青砥 紀身; 黒田 哲宏; 平川 康
PNC TN9410 97-055, 128 Pages, 1996/07
大洗工学センターで平成8年6月7日に実施された「ナトリウム漏えい燃焼実験-II」(「燃焼実験-II」)の実験セル内に配置された炭素鋼製床ライナ材について、(1)「ナトリウム漏えい燃焼実験-I」(「燃焼実験I)の受皿の減肉機構との違い(2)ライナ欠損発生位置の決定要因 を明らかにするデータ取得を目的に材料分析を実施した。実施した材料分析は以下の通り。1)金属組織観察 2)断面(金属材料堆積物層)電子線プローブ・マイクロアナライザ(EPMA)分析 3)堆積物界面(堆積物/付着物側および材料側界面)のX線回折 得られたデータ及び知見に基づき、「もんじゅ」実機床ライナと「燃焼実験I」床受皿における減肉機構と「燃焼実験II」の床ライナに生じた減肉機構との違いを考察した。種々の検討に基づき、前者ではNa-Fe-O化合物の生成と物理的/化学的除去による反応進行が、後者では高温溶融塩腐食に似た機構が支配的となった減肉機構が働いたものと推察した。また、ライナ欠損発生場所はいずれも変形凸部の中腹を取り巻くように位置しており、上記機構の推定と合わせて大部分が溶融体界面から開口したものと推定した。
棚井 憲治; 菅野 毅; Galle, C.*
PNC TN8410 96-289, 25 Pages, 1996/06
高レベル放射性廃棄物地層処分における人工バリアの一つである炭素鋼オーバーパックは、還元環境下では腐食により水素ガスを発生する。この水素ガスは、緩衝材の通気性が小さい場合には、オーバーパックと緩衝材間に蓄積され、人工バリアの構造力学的安定性や核種移行特性に影響を及ぼす可能性がある。したがって、緩衝材中のガス移行挙動メカニズムを定量的に把握し、ガス発生による影響を定量的に評価する必要がある。本報告書は、(1)腐食生成ガスの蓄積、移行の検討(2)不飽和透気試験(3)飽和透気試験(4)ガス移行経路の同定手法に関する検討のそれぞれの結果について述べるものである。水素ガスの蓄積、移行の検討については、腐食速度から求められる水素ガスの発生量と溶存水素としての拡散移行速度をそれぞれ概略的に計算し、ガスの蓄積可能性について検討を行った。その結果、ガス発生速度に比して拡散移行速度が2桁程小さい値となることから、オーバーパックと緩衝材間に水素ガスが蓄積される可能性があることが分かった。しかしながら、現状の試験結果から水素ガスは膨潤圧程度の圧力でベントナイト中を透過することが推測されていることから、水素ガスの蓄積圧力による緩衝材の構造力学的安定性に与える影響は少ないものと予想される。不飽和透気試験においては、ガス有効浸透率の飽和度依存性について検討を行い、以下のような結果を得た。1)ガス有効浸透率は飽和度が高くなるにつれて小さな値を示し、その値は約70%の飽和度においてガス絶対浸透率の1/1001/1000程度であることが分かった。2)本試験結果は、既に幾つか提案されている相対浸透率評価モデルのうち、Coreyモデルにより近似できる。3)絶対浸透率は、元来流体によらず媒体固有のものであるが、透水試験の結果から求められた絶対浸透率と本試験結果を比較した結果、5桁程度異なることが判明した。その理由としては、ベントナイトのような膨潤性媒体の場合、膨潤による空隙構造の変化が起因しているものと推測される。また、飽和透気試験においては、破過圧力の把握と破過圧力と膨潤圧との関係について検討を行い、以下のような結果を得た。1)破過圧力は乾燥密度の増加に伴い大きくなる傾向を示し、これは各乾燥密度の膨潤圧に依存しているものと推測される。2)破過後のガスの有効浸透率は、10-1810-21 の範囲で
遠藤 和豊*
PNC TJ1639 96-001, 52 Pages, 1996/03
本研究では、接触する水溶液に着目し、地下の低酸素条件を模擬した窒素雰囲気下でベントナイト共存下及びベントナイト非共存下での鉄粉と水溶液の反応実験を行ない、メスバウアー分光法により鉄の化学状態について検討した。炭素鋼オーバーパックが地下水と接触した際に生ずる腐食生成物を分析した。鉄粉-ベントナイト-溶液(蒸留水、人工海水)混合物、鉄粉-ベントナイト比(1:1)で鉄粉-溶液比が2ml/gおよび10ml/gの試料を作成、メスバウアースペクトルを観測した。その結果、鉄粉末の蒸留水、人工海水系による腐食生成物としてマグネタイトの生成がわずかではあるが観測された。また、オーバーパックの外側の緩衝剤として用いられるベントナイト(クニピアF、クニゲルV1)の蒸留水に対する変質をその中に含まれる鉄の化学状態の変化から検討した。その結果、クニピアFでは三価二成分、二価一成分、クニゲルV1では三価一成分、二価二成分で解析され、どちらの試料も変質により三価成分が多くなった。さらに80Kから300Kの範囲で温度変化による二価および三価の強度変化を測定した結果、二価成分の温度依存性の大きいことが明かになった。