1998年度

Atomic Collision Research in Japan


27167
Double-electron excited singlet and triplet Be-like ions produced by slow He-like ion-atom collisions
北澤真一・市村淳*・武田淳一*・田辺邦宏*・町田修一*・高柳俊暢*・脇谷一義*・家村彰*・F. Currel*・大谷俊介*・鈴木洋*・関口雅行*・金井保之*・U. I. Safronova*
Atomic Collision Research in Japan(24), p.70-72(1998);(JAERI-J 16136)

 我々は,理研や東大田無のECRイオン源を用いて低エネルギー(数10keV)のHe様多価イオンと,希ガスの衝突による2電子移行で生成するBe様イオンを放出電子分光によって測定してきた.理論計算によってそのスペクトル中のピークを同定し,電子の1重項状態,3重項状態を調べた.標的原子がHeのときは,1重項のみが現れ,Neのときは,3重項状態がおもに現れ,Arのときには,1重項,3重項がともに現れる傾向があるということがわかった.


26658
The Mechanism of fragmentation and desorption pathways via multi-hole states of chemisorbates as studied by ion-ion-coincidence method
関口哲弘・関口広美*・田中健一郎*
Atomic Collision Research in Japan(23), p.84-85(1997);(JAERI-J 15655)

 電子励起による固体表面からのイオン種の脱離過程は,二次イオン質量分析(SIMS)及び電子刺激脱離(ESD)などの表面分析における重要かつ基礎的な過程である.本研究は選択励起されたSi(100)表面上の吸着ギ酸分子(DC00-)の分解及び脱離課程を光イオン・光イオン・コインシデンス分光法により調べた.C+-D+コインシデンス収量の励起エネルギー依存性を詳細に測定し,しきいエネルギー等を決定した.C+-D+は炭素内殻励起で生じ,酸素内殻励起ではほとんど増加を示さない.また二電子イオン化(shake-off)の断面積が一電子イオン化(normal)に比較して10%以下であるにもかかわらず,C+-D+収量はshake-off領域でnormal領域の2倍以上に増加した.このことから,脱離前駆体のイオン価数及び初期光励起における内殻ホールの位置がどの原子にあるか等がイオン脱離反応において重要であることが見出された.


26659
Ion desorption induced by site-selective excitation of oxygen 1s electrons
関口広美*・関口哲弘
Atomic Collision Research in Japan(23), p.82-83(1997);(JAERI-J 15656)

 光刺激イオン脱離収量の内殻吸収端微細構造(PSID-NEXAFS)スペクトルは特定の表面吸着種の空軌道の性質等の局所的情報を与えると期待されている.本研究においては,Si基板に単分子吸着したDCOO吸着種からの酸素内殻励起領域におけるPSID-NEXAFSを高分解能軟X線分光器を用いて測定した.結合エネルギーの化学シフトを利用して,二種類の酸素を選択して内殻励起し,それぞれの励起で起こる脱離反応収量の違いを調べた.ヒドロキシ基酸素(-O-)の励起によりCDO+イオン収量が増加し,カルボニル基酸素(>C=O)の励起ではCD+収量が増加した.このことから選択励起された原子の近傍で優先的に結合切断及び脱離が起こることが明らかにされた.また,O+収量はカルボニル基酸素の励起で増加した.この結果は,ヒドロキシ酸素が基板のSi原子に直接結合しているため励起エネルギーが基板に散逸したためと考えられる.


26660
Fragmentation of methyl formate following carbon 1s electron excitation
関口広美*・斉藤則夫*・鈴木功*・関口哲弘
Atomic Collision Research in Japan(23), p.80-81(1997);(JAERI-J 15657)

 凝集ギ酸メチル(DCOOCH3)からの光刺激イオン脱離反応においていくつかの共鳴励起によりフラグメントイオン収量が増加することが観測されている.本研究はそれが表面反応に特有なものであるかどうかを確かめる目的で気相DCOOCH3分子の光分解実験を行った.実験は電総研TERAS放射光施設おける軟X線ビームラインの飛行時間質量分析装置を用いて行った.表面反応ではC1s(C-D)→σ*(C-D)の励起でD+収量が大きく増加したが,気相反応ではそれほど増加しなく,一方でC1s(CH3)→π*(CH3)励起でD+収量は減少した.気相では単分子反応が起こり中性化が起こらないため量子収率の変化は分子の分解による収量減少という形で表れる.それに対して,表面反応では中性化反応が起こるため量子収率の変化は表面分子の励起状態での反発性を反映して収量増加という形で表われる.上記の結果は光刺激イオン脱離法が表面敏感な分析手法であることを示している.


26657
Inner-shell excitation and state-specific ion-desorption from condensed methyl formate
関口哲弘・関口広美*
Atomic Collision Research in Japan(22), p.89-90(1996);(JAERI-J 15654)

 ギ酸メチル分子のいくつかの内殻励起状態における波動関数が各官能基や結合に局在しているという研究背景を元に,高エネルギー分解能の軟X線分光器により内殻励起状態を選択励起することにより「結合を選択した光化学反応」の可能性を検討した.実験手法としてはパルス放射光を用い,同位体置換ギ酸メチルの吸着系から脱離するイオン種を飛行時間質量分析法により観測した.各イオン収量の励起スペクトルは吸収スペクトルとかなり異なり,イオン脱離確率が初期内殻励起にかなり依存していることが見出された.特にD+とCHn+イオン脱離確率が大きく増加した励起はC 1s(CH3)→σ*(O-CH3)とC 1s(C=O)→σ*(C-D)といった反結合性軌道への電子遷移による結果であると解釈された.この結果は励起エネルギーを変化させることにより分子内の反応部位(サイト)を任意に選択することができる可能性があることを示したものである.


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