1998年度

J.Nucl.Sci.Technol.


27229
A Steady-state simulation model of gas separation system by hollow-filament type membrane module
岩井保則・山西敏彦・西正孝
J. Nucl. Sci. Technol. 36(1), p.95-104(1999);(JAERI-J 16176)

 中空糸膜を用いた排ガス中の水素ガス回収システムの定常シミュレーションモデルを提案した.このモデルでは膜の非多孔質部分の拡散,支持構造体中の拡散及び膜表面におけるガス境膜内の拡散を考慮した.システムのガス流れとしては,十字流,混合流,向流,並流の4つの流れを想定した.膜透過の物質移動においては膜の非多孔質超薄膜層が律速段階となっており,全体の物質移動の約99%を支配していることが明らかとなった.当研究室において行われた窒素-水素系あるいは空気-水素系の実験結果は流量10m3/h,供給圧2580Torr,透過圧80Torrの実験条件において,十字流モデルの結果と一致することが明らかとなった.また水蒸気が混在する空気中からの水素回収において水素回収率は計算結果とよく一致するが水蒸気の回収率は計算値が若干低くなった.この原因は水蒸気の透過係数の不確定性が考えられる.


27228
Evaluation of delayed neutron data using FCA βeff benchmark experiment
岡嶋成晃・Zuhair*・桜井健・H. Song*
J. Nucl. Sci. Technol. 35(12), p.963-965(1998);(JAERI-J 16175)

 FCAのβeff国際ベンチマーク炉心の実効遅発中性子割合(βeff)を,さまざまな遅発中性子データを用いて計算し,その結果を相互比較した.計算されたβeffは,遅発中性子データ間では大差ないが,炉周期と逆時間方程式を用いて求めた基準反応度には,遅発中性子データ間に差が生じることがわかった.


27226
Evaluation of response of whole-body counter using the EGS4 code
木名瀬栄
J. Nucl. Sci. Technol. 35(12), p.958-962(1998);(JAERI-J 16173)

 モンテカルロシミュレーションにより,経口摂取された放射性セシウム-137の人体内分布に対応する全身カウンタの応答について解析した.また,全身カウンタの計数効率の変化に伴う内部被ばく線量推定の不確実性について検討した.全身カウンタの計数効率は放射性セシウム-137の人体内分布に大きく依存し,その計数効率の変化による内部被ばく線量推定の不確実性は最大で係数3程度になることがわかった.また,モンテカルロ計算による全身カウンタ校正の実行可能性を調べるため,放射性セシウム-137を含有した簡易幾何形状モデル/ファントムについて,計算及び実測により全身カウンタの計数効率を求め比較した.その結果,計算値は実測値と非常によく一致し,計算による全身カウンタの校正の妥当性が検証された.


27145
Improvement of critical heat flux correlation for research reactors using plate-type fuel
神永雅紀・山本和喜・数土幸夫
J. Nucl. Sci. Technol. 35(12), p.943-951(1998);(JAERI-J 16114)

 通常運転時において,下向流により炉心を冷却している研究用原子炉では,1次冷却材の流量が喪失した場合,炉心内で強制循環による下向流から自然循環による上昇流へと流れの向きの逆転が生ずる.このため,設計では原子炉停止後の補助ポンプ等による炉心冷却の必要性,流れが逆転する際の燃料の安全性を評価する上で流速零を含むCCFL条件下の限界熱流速(CHF)の検討が重要となる.著者らがこれまでに提案したCCFL条件下のCHF相関式は,保守的な評価をするために冷却材のサブクール度を考慮しなかった.本研究では,垂直矩形流路におけるCCFL条件下のCHFについて,CHFに及ぼす流路入口サブクール度及び軸方向出力分布の影響を既存の実験データに基づき定量的に評価し,新たな相関式を提案した.さらに,提案したCHF相関式を安全評価に適用した場合の具体例を解析結果とともに示し,これまでの評価の保守性を定量的に示した.


27227
Secondary-side depressurization during PWR cold-leg small break LOCAs based on ROSA-V/LSTF experiments and analyses
浅香英明・安濃田良成・久木田豊*・大津巌
J. Nucl. Sci. Technol. 35(12), p.905-915(1998);(JAERI-J 16174)

 原子炉冷却系の2次側減圧操作は,種々の事故シナリオにおいて炉心の冷却を維持する上で有効であると考えられている.特に1次系の冷却材損失を防ぎつつ炉心冷却を促進できる観点から注目されている.PWR小破断LOCA時に高圧注入系が不動作の場合について,2次側減圧操作の有効性をROSA-V/LSTF実験とRELAP5解析により検討した.2次側減圧速度と減圧開始時間が炉心水位や燃料被覆管表面最高温度(PCT)に与える影響を種々の破断面積について解析的に調べた.その結果,PCTは破断面積が1%から1.5%の間で最も高くなることが示された.また,極大PCTを制限するための減圧速度と減圧開始時間に関する条件を明らかにした.さらに,減圧速度の限界についても論じられている.


27056
Biaxial fatigue strength of a fine-grained isotropic graphite for HTTR
衛藤基邦・石山新太郎
J. Nucl. Sci. Technol. 35(11), p.808-815(1998);(JAERI-J 16032)

 HTTRの炉内黒鉛構造物に用いられる等方性黒鉛の2軸疲労強度を評価するため,室温において引張-引張及び圧縮引張型の疲労試験を実施した.圧縮-引張型では1273K,真空中の疲労試験をも行った.長手方向の負荷荷重は平均強度の75〜90%,横方向では53〜74%とした.試験結果から次の事項が明らかになった.(1)負荷応力が静的強度の平均値の約90%以下であれば,単軸と2軸で疲労強度に差が現れる.(2)2軸疲労強度は負荷応力を静的2軸強度で規格化すると,単軸疲労強度よりも大きくなる.(3)1273Kにおける2軸疲労強度は,室温の場合とほぼ同じか,やや大きくなる.(4)単軸疲労強度と2軸の静的強度に基づいて2軸疲労強度を評価すると,その評価は安全側になる.


27055
Development of negative-ion based NBI system for JT-60
栗山正明・秋野昇・海老沢昇・L. Grisham*・本田敦・H. Liquen*・伊藤孝雄・河合視己人・椛澤稔・藻垣和彦・小原祥裕・大賀徳道・大森憲一郎・奥村義和・大原比呂志・薄井勝富・渡邊和弘
J. Nucl. Sci. Technol. 35(11), p.739-749(1998);(JAERI-J 16031)

 高密度プラズマでの中心加熱・電流駆動実験のために開発を進めてきたJT-60用負イオンNBIについて報告する.本負イオンNBIは,平成4年に建設を開始し,平成8年に完成した.完成後直ちに,負イオン源,ビームライン,イオン源用電源の調整,改良を行いながら,負イオンビーム出力の増大に努めるとともにJT-60へのビーム入射運転を行ってきた.これまでにイオン源単体でのビーム出力として,水素負イオンで360kV,18.5Aを得ている.また,JT-60への入射パワーとしては,重水素ビームで350keV,5.2MW,水素ビームで360keV,4.2MWを達成している.本報告では,まず,本負イオンNBI装置開発の経緯,設計及び建設について述べ,装置完成後の調整試験,ビーム出力増大のためのイオン源,電源等の運転パラメータの最適化,及びこれまでに得られた結果について述べる.


261003
Low cycle fatigue lifetime of HIP bonded Bi-metallic first wall structures of fusion reactors
秦野歳久・佐藤聡・橋本俊行*・喜多村和憲*・古谷一幸・黒田敏公*・榎枝幹男・高津英幸
J. Nucl. Sci. Technol. 35(10), p.705-711(1998);(JAERI-J 15923)

 核融合炉における遮蔽ブランケットの第一壁は,アルミナ分散強化銅の熱シンク層とステンレス鋼の冷却管を拡散接合の一種であるHIP接合により一体化する複合構造を有する.このような異材接合複合構造体の疲労寿命を評価するため,第一壁部分モデルをHIPにより製作し,低サイクル疲労試験を行った.すべての試験片において初期き裂はステンレスの冷却管内部に発生し,これは解析において得られた最大歪みの発生位置と一致した.試験及び解析結果の比較より第一壁HIP構造体の疲労寿命はステンレス母材の疲労データよりも長寿命側であることが明らかとなった.また,第一壁構造体のHIP接合部の疲労寿命も材料試験で得られた疲労データよりも長寿命側であった.このことは,材料試験で得られる設計疲労曲線に基づいた第一壁疲労寿命が十分な安全率を有することを示唆しているものと考えられる.


261004
Evaluation of photonuclear reaction data on tantalum-181 up to 140 MeV
Y. Lee*・深堀智生・J. Chang*
J. Nucl. Sci. Technol. 35(10), p.685-691(1998);(JAERI-J 15924)

 Ta-181の光核反応断面積をπ中性子生成しきい値の140MeV以下のエネルギー領域で評価した.Saclay及びLivermoreで測定された(γ,n)及び(γ,2n)を再解析し,参照データとして再構成した.40MeV以下の光吸収断面積は二重極巨大共鳴モデルを用いて評価した.結果的に得られたこのエネルギー領域における光中性子断面積のモデル計算及び再構成されたデータの整合性によって,Ta-181の巨大共鳴から崩壊する中性子生成量は統計模型によって良く説明できることがわかった.40-140MeVのエネルギー領域では,擬似重陽子モデルを用いて光吸収断面積を評価し,実験値と比較した.中性子,陽子,2・3重陽子,He-3原子核,α粒子に関する粒子崩壊過程は前平衝及び統計模型コードALICE-Fを用いて評価された.


26887
Experimental study on heat transfer augmentation for high heat flux removal in rib-roughened narrow channels
M. S. Islam*・日野竜太郎・羽賀勝洋・門出政則*・数土幸夫
J. Nucl. Sci. Technol. 35(9), p.671-678(1998);(JAERI-J 15837)

 大強度核破砕中性子源となる固体ターゲット板に発生する高熱流束を除去するためのターゲット冷却流路の設計に資することを目的として,0.2mmの高さの矩形リブをピッチと高さの比(p/k)が10と20の条件で設けた片面一様加熱の狭隘矩形流路の乱流域における圧力損失及び熱伝達特性を実験的に調べ,それらの実験式をレイノルズ数(Re)が,2400〜98500の範囲で導出した.高さ1.2mmの流路においてp/kが10の場合,Re数が8000〜30000の範囲でリブのない平滑な流路よりも圧力損失は2倍,熱伝達率は2〜2.5倍増大した.流路高さが3.2mmの場合には,圧力損失及び熱伝達率は平滑な流路よりも大きいものの,高さが1.2mmの場合よりも低い結果を得た.


26698
Thermal expansion and thermal conductivity of cesium uranates
高野公秀・湊和生・福田幸朔・佐藤正知*・大橋弘士*
J. Nucl. Sci. Technol. 35(7), p.485-493(1998);(JAERI-J 15683)

 酸素ポテンシャルの高い酸化物燃料中において生成することが熱力学的に予測されているCs2UO4とCs2U2O7を,U3O8とCs2CO3から調整し,熱膨張率及び熱伝導率を測定した.高温X線回折法による格子定数の温度依存性から求めたCs2UO4の線熱膨張は,室温から973Kまでで1.2%であり,Cs2U2O7については1073Kまでで1%であった.CS2UO4とCs2U2O7のディスク状試料を作製し,レーザーフラッシュ法により熱拡散率を測定した.測定値に密度と比熱を掛け,熱伝導率を温度の関数として決定した.100%理論密度に換算したCs2UO4の熱伝導率は980Kで1.18W/mKでありUO2の約30%であった.Cs2U2O7については1093Kで0.94W/mKであり,UO2の約27%であった.


26627
A Real-time prediction technique of severe accident progression in containment for emergency response
石神努・小林健介
J. Nucl. Sci. Technol. 35(6), p.443-453(1998);(JAERI-J 15624)

 日本原子力研究所では,原子力発電プラントで万一の事故が発生した場合に,緊急技術助言組織に有用な情報を提供する緊急時助言システム(COSTA)の開発を進めている.COSTAの機能の1つに,プラントから通報される事故情報に基づき,実時間でプラント状態を把握し今後の事故進展を予測する機能がある.シビアアクシデント解析コードを直接用いてこの機能を実現することは,長い計算時間を要することから困難である.開発した手法は,エキスパートシステムと多変量解析手法を組み合わせたものであり,実時間予測及び時々刻々と変化する状況への対応を可能としている.本報では,PWRにおけるウェットキャビティの場合の格納容器内事故進展の予測手法を述べる.同手法をシビアアクシデント解析コードTHALES及びSTCPの解析結果に適用したところ,同手法は元の解析結果をよく再現した.


26547
Effects of organic solvent on infinite neutron multiplication factor of homogeneous plutonium nitrate solution system
桜井聡・荒川拓也*・奥野浩
J. Nucl. Sci. Technol. 35(5), p.365-369(1998);(JAERI-J 15560)

 均質硝酸プルトニウム溶液体系の無限中性子増倍率(kinf)に与える有機溶媒の影響をMNCP-4Aを用いた数値計算によって調べた.その結果,硝酸プルトニウム-30vol%リン酸トリブチル-ドデカン有機溶媒系のkinfは硝酸プルトニウム水溶液系のkinfとほぼ等しいことを確認した.しかし,結果をより子細に眺めると,有機溶媒系のkinfは70gPu/l以下では水溶液系の対応値よりも僅かに大きくなった.それゆえ,239Pu(NO34水溶液系の推定臨界下限濃度が6.9g239Pu/lであるのに対して,有機溶媒系の推定臨界下限濃度は6.8g239Pu/lとなった.また,有機溶媒系のリン酸トリブチル濃度が上昇するとkinfが増加する傾向も見出した.


26462
Experiments and analyses on sodium void reactivity worth in mock-up cores of metallic fueled and MOX fueled fast reactors at FCA
大井川宏之・飯島進・安藤真樹
J. Nucl. Sci. Technol. 35(4), p.264-277(1998);(JAERI-J 15487)

 FCAにおいて金属燃料高速炉及びMOX燃料高速炉におけるナトリウムボイド反応度価値を測定し,計算精度を非漏洩項と漏洩項に分けて検討した.非漏洩項に関しては,JENDL-3.2は実験と良い一致を示し,金属燃料と酸化物燃料は中性子スペクトルが大幅に異なるのにも関らず計算精度の相違は見られなかった.しかし,ボイド領域がプルトニウムと濃縮ウランで構成されている場合は,JENDL-3.2は非漏洩項を約7%過大評価した.さらに,プルトニウムの同位体組成の効果も検討した.漏洩項に関しては,計算精度はセルに占めるボイドの割合で異なることが分かった.ブノアの理論に基づく方向別拡散係数の妥当性を燃料板の方向を換えることによって検証した.さらに,ナトリウムボイド反応度低減のためにナトリウムプレナムを備えた高速炉の設計概念についても計算精度を検証した.


26407
A Method to calculate sensitivity coefficients of reactivity to errors in estimating amounts of nuclides found in irradiated fuel
奥野浩・須山賢也・酒井友宏*
J. Nucl. Sci. Technol. 35(3), p.240-242(1998);(JAERI-J 15438)

 燃焼燃料の貯蔵・輸送などの臨界安全評価において,これまでは新燃料を仮定するのが通例であった.しかし,核燃料の高燃焼度化に伴い,経済性・合理的安全設計の観点から燃焼を前提とした臨界安全管理・評価が要求されるようになってきた.その実現のためには,核種組成を正確に把握できることが大切である.臨界安全上の重要度は,各種の種類やその置かれている場所により異なる.燃料重要度関数との類似性により,核種重要度関数を導入した.これを用い,核種量計算誤差に対する中性子増倍率の感度を示す感度係数の表式を与えた.OECD/NEAで燃焼計算のベンチマーク対象となったPWR燃焼燃料棒のセル体系に対し,感度計数を計算した.各核種の存在量を変化させて臨界計算を行う直接的計算により得られた感度係数とよく一致した.報告された燃焼計算結果を例として,核種量の推定誤差が中性子増倍率の計算に及ぼす影響を示した.


26318
Core liquid level responses due to secondary-side depressurization during PWR small break LOCA
浅香英明・大津巌・安濃田良成・大貫晃・久木田豊*
J. Nucl. Sci. Technol. 35(2), p.113-119(1998);(JAERI-J 15367)

 原子炉冷却系の減圧操作は,種々の事故シナリオにおいて炉心の冷却を維持するうえで有効であると考えられている.特にPWRの2次系減圧操作は,1次系の冷却材損失を防ぎつつ炉心冷却を促進できる観点から注目されている.PWR小破断LOCA時に高圧注入系の全系統が不作動の場合について,2次系減圧速度と破断面積が炉心水位挙動に与える影響についてLSTF実験とREFLA/TRACコードによる解析により調べた.その結果,2.5%以下の任意の破断について,炉心の著しい温度上昇を防ぐためには約200K/h以上の2次系減圧操作が必要であることを明らかにした.また,2次系減圧操作時における1次系内の特徴的な熱水力挙動を明らかにした.


26406
Real-time nuclear power plant monitoring with neural network
鍋島邦彦・鈴土知明・鈴木勝男・E. Tuerkcan*
J. Nucl. Sci. Technol. 35(2), p.93-100(1998);(JAERI-J 15437)

 本論文では,ニューラルネットワークを利用した原子炉運転中の異常検知について述べる.この手法の基本原理は,実際のブラントから測定されたプロセス信号とプラントモデルから得られる出力信号の誤差が大きくなる場合に異常を検知するものであり,プラントは3層のオートアソシアティブ型ニューラルネットワークでモデル化されている.オートアソシアティブ型ネットワークを用いると,未知のプラント状態を検知できるという利点がある.ここで用いる新しい学習方法は,一般的な誤差逆伝播アルゴリズムを改良したもので,ニューラルネットワークによるプラントの動的モデルが得られる.実炉による試験の結果,このプラント監視システムが,原子炉の起動,停止,定常運転を含めた広い出力範囲にわたって,実時間で微小な異常兆候を的確に検知できることが明らかになった.


[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  累積情報(1998年度) > 当ページ
Copyright(C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)