1998年度

日本原子力学会誌


27253
JMTR用高性能燃料要素の設計
桜井文雄・島川聡司・小森芳廣・土橋敬一郎・神永文人*
日本原子力学会誌 41(1), p.57-65(1999);(JAERI-J 16200)

 試験・研究炉においては,最近の高度化する利用ニーズ等に対応するため,高ウラン密度燃料材及びCdワイヤ可燃性吸収体を使用する高性能燃料を採取し,炉心性能の向上を図る必要がある.このため,少数群拡散計算法を用いる上記高性能燃料の設計手法を開発した.本報においては,Cdワイヤ入り燃料要素の少数群拡散計算用群定数作成法の開発,臨界実験装置JMTRCを用いた実験による同群定数作成法の検証,同手法を用いてのJMTR用高性能低濃縮燃料要素の設計及び同燃料要素を用いたJMTR炉心の特性試験について報告する.


27252
JT-60トカマク放電解析のための磁気流体平衡高速処理システムの開発と実用化
長谷川幸弘*・中村幸治・白井浩・濱松清隆・原田裕夫・菊池満・中田義弘*
日本原子力学会誌 41(1), p.48-56(1999);(JAERI-J 16199)

 トカマクプラズマのエネルギー閉じ込め性能の改善研究及び電磁流体力学的不安定性の安定化研究に不可欠な磁気流体平衡のデータベースを生成するため,専用の最新高速ワークステーションと平衡計算を高速に処理するために最適化した並列計算法を用いて,JT-60の実験放電と同期して高速でデータ処理を行うシステムを開発した.この高速処理システムはショット間で平衡計算をすべて終了する能力を持っている.最近のショットの平衡データベースを自動的に保存する大容量補助記憶システムと動画モニターを連動させることにより,JT-60のオペレータが次のショットの放電制御パラメータを決定する際の有用な情報を提供している.本報では,JT-60実験における本システムの性能を報告する.


27089
長距離逆大気輸送計算による放出源情報推定法
山澤弘実
日本原子力学会誌 40(11), p.885-891(1998);(JAERI-J 16065)

 放射能を含む汚染物質の濃度等のモニタリング値から,放出位置及び相対的な放出率の時間変化を推定する手法を開発し,長距離拡散実験データを用いて推定精度を検証した.この手法では,多数のマーカー粒子をモニタリング地点から放出し,時間を遡る方向に移流計算を行い,粒子の統計量から放出源情報を推定する.対象範囲は,放出源から1,000km程度またはそれ以上である.検証の結果,放出位置及び相対的な放出率の時間変化がほぼ良好に再現できることが示された.また,本手法と順方向の拡散計算を組み合わせる方法が有効であることが指摘された.


27088
放射線共グラフト重合法により作成したアミドキシム吸着材の海域でのウラン吸着
片貝秋雄・瀬古典明・川上尚志*・斉藤恭一*・須郷高信
日本原子力学会誌 40(11), p.878-880(1998);(JAERI-J 16064)

 アミドキシム吸着材のウラン吸着性能を向上させるために,アクリロニトリル(AN)と親水性モノマーであるメタクリル酸(MAA)とをポリプロピレン(PP)製不織布基材に放射線共グラフト重合させた後,アミドキシム化を行って捕集材を合成した.得られた捕集材を充填した装置をむつ事業所関根浜沖合い6kmの10から30mの深さの海域に60日間係留して,捕集試験を行った.親水基を導入した捕集材のウラン吸着性能は,ANを単独グラフトした捕集材に比較して,5倍の吸着速度を示した.pH8の海水に溶存している三炭酸ウラニルイオンを効率よく吸着するには,親水性モノマーを共グラフトした捕集材が有効であることが明らかになった.


261044
高並列処理における粒子輸送モンテカルロ・コードの負荷分散
樋口健二・武宮博*・川崎琢治*
日本原子力学会誌 40(10), p.798-808(1998);(JAERI-J 15964)

 中性子・光子・電子輸送モンテカルロ・コードの場合高並列計算機上で実際に高い速度向上率を得るためには,負荷分散の最適化が重要であり,実用のモンテカルロ・コードの並列処理においてはこの最適化が困難である場合が多い.実際,性能解析に使用した例では,128台のプロセッサを用いた時の速度向上率は,100倍程度に留まっている.原子力分野で広く用いられているMCNPコードの並列処理を通して,特に中性子輸送問題において負荷の均等化が難しいことを示すとともに,計算時間と通信時間にかかわるコストを最小化するよう分配粒子数を動的に変化させる発見的手法の効果を示す.これにより静的手法と比較し15%程度の実行時間短縮があった.


27090
「国際臨界安全ベンチマーク実験ハンドブック」の紹介
小室雄一
日本原子力学会誌 40(9), p.697-701(1998);(JAERI-J 16066)

 1992年10月,米国DOEは臨界実験データの鑑定,評価及び編集を行うプロジェクトをINELに委託した.プロジェクトの名称は標記の通りである.その後,本プロジェクトはOECD/NEAの下での国際的な活動として進められている.活動の成果は「International Handbook of Evaluated Criticality Safety Benchmark Experiments」と題する文献にまとめられ,その内容は年々増加している.本稿では,活動の概要を紹介して,ハンドブックの積極的な活用を訴える.


261045
日本原子力研究所における環境安全研究
川上泰
日本原子力学会誌 40(9), p.684-696(1998);(JAERI-J 15965)

 日本原子力研究所において実施している原子力の環境安全に関する研究は,放射性廃棄物の処理処分に関する研究と,環境放射能に関する研究に区分される.原研における環境安全研究が本格化してから20年が経過し,1998年2月に原研における環境安全研究の現状と今後の展開に関するワークショップならびに意見交換会を開催した.本報告は,この時の各研究グループの発表を再編成し,環境安全研究部で行われてきた環境放射能関連研究及び放射性廃棄物の処理処分関連研究について,ワークショップの際に寄せられた各界からの意見も含め,資料としてまとめたものである.


26655
軽水炉使用済燃料の長期貯蔵がプルサーマル燃料サイクルに与える効果
黒澤正義・内藤俶孝・須山賢也・板原國幸*・鈴木勝男*・濱田紘司*
日本原子力学会誌 40(6), p.486-494(1998);(JAERI-J 15652)

 日本の原子力開発利用長期計画によると,六ヶ所再処理工場の操業開始は2000年過ぎ,民間第2再処理工場の方針決定が2010年頃とされている.国内処理能力とのバランスを考えると,使用済燃料の貯蔵が増大すると予想される.そこで,使用済燃料の冷却期間の延長がプルサーマル燃料サイクルに与える効果を検討することとした.このため,日本の典型的なPWR燃料について燃焼計算を行うとともに,MOX燃料を用いたプルサーマル炉心の燃焼及び臨界計算を行って,再処理施設の臨界安全やしゃへい設計及びMOX燃料炉心の寿命などに与える影響を評価した.プルトニウム有効利用の点から使用済燃料貯蔵期間は短い方が望ましいと考えられてきたが,本検討の結果,使用済燃料貯蔵期間を30年に延長すると,燃料サイクルの安全性,経済性に多くの利点が期待できる上,プルトニウム有効利用の点でもほとんど不利益のないことがわかった.


26580
計算値を用いた未臨界度の推定;MCNPによる2分割結合炉心実験の解析
桜井淳・山本俊弘・荒川拓也*・内藤俶孝*
日本原子力学会誌 40(5), p.380-386(1998);(JAERI-J 15593)

 TCAで実施された二分割結合炉心実験の解析をMCNP 4Aで行った.中性子増倍率の誤差は,筆者らによって提案された「計算誤差間接推定法」で評価した.パルス中性子法シミュレーション計算は17×17+5G+17×17体系に対して,指数実験法シミュレーションの計算は16×9+3G+16×9体系及び16×9+5G+16×9体系に対して行った.「計算誤差間接推定法」による評価によれば,MCNP 4Aで計算した中性子増倍率には,0.4〜0.9%の誤差が見込まれる.従来のパルス中性子法及び指数実験法では中性子増倍率に6%の誤差が見込まれているが,「計算誤差間接推定法」による計算値を用いた未臨界度の評価ではそれを1%以下にできる.


26581
リスク情報利用への道筋
傍島眞
日本原子力学会誌 40(5), p.372-374(1998);(JAERI-J 15594)

 確率論的安全評価(PSA)を基にしたリスク情報の,原子力施設の安全向上への利用に関して,わが国でのその意識の浸透を計るために何をするのが有益かについての意見を,原子力界の諸状況とともに述べた.一つにはリスク情報利用の有用性について,リスク選択の習慣を広めるべく,新技術についてのリスク情報を分かり易く提示することが,民主的な制度の中では求められる.米国でのリスク情報利用は,事業者の提言以後,規制当局の検討を経て,近年制作声明にて具体的方針が提案されている.この中では,安全目標に基づいた定量的指標値が示され,これに対して裕度を有する場合は,指標値の増加を裕度に応じて許容している.わが国での利用を考える場合,合理化によって利益を受ける事業者から規制当局へ利用が提言されて良い.これは消費者の利益でもあり,原子力の優位性を助長することにもなる.その前提として必要な情報提供の障害は,事業者,帰省者双方で克服する必要がある.これまで,アクシデントマネジメントの検討とPSRにおいてPSAの利用が行われたが,PSRでは持続的に利用を拡大するためにパイロットプラントによる試用が有益と考えられる.


26582
「マイナーアクチニド核廃棄物の核変換のために要求される核分裂生成物収率データ」IAEA協力研究計画第1回検討会合報告
深堀智生・片倉純一
日本原子力学会誌 40(5), p.363-366(1998);(JAERI-J 15595)

 「マイナーアクチニド核廃棄物の核変換のために要求される核分裂生成物収率データ」に関するIAEA協力研究計画の第1回検討会合が1997年11月にウィーンのIAEA本部にて開催された.核廃棄物消滅処理における,専焼炉や加速器駆動システムなどの成立可能性,中性子経済及び環境安全性などを考慮するためには,それぞれの概念において考慮されるべきエネルギー領域における系統的な核分裂生成物収率データの整備が必要となる.しかし,現存するデータの状況は,エネルギー依存データは14MeVまでしかなく,マイナーアクチニド収率セットは不完全であり,必要とされるすべてのエネルギー領域で収率を計算できるツールは存在しない.このため,本CRPではエネルギー依存の核分裂収率データ評価に使用可能なシステマティクスまたはモデルを開発することを目標に掲げている.第1回検討会合では,この目標を達成すべく,現状の実験データ及び理論・モデルのレビューを行い,参加者による作業の策定及び分担を討議した.本報告では,これらの討議結果に関して報告するとともに,日本における検討の参考とするために日本に期待されている作業分担について概説した.


26579
指数実験及びモンテカルロ計算により評価された未臨界度の比較
桜井淳・山本俊弘
日本原子力学会誌 40(4), p.304-311(1998);(JAERI-J 15592)

 指数実験とモンテカルロ計算により得られた未臨界度の差は約1%である.検出器,中性子源配置,及び解析における高次モードを含むデータの放棄により,実効遅発中性子割合(βeff)以外に起因する実験誤差を1%程度に削減できた.さらに誤差を削減するためには,誤差全体を支配するβeffの誤差(5%)を低減する必要がある.正方配列炉心に対して作成したバックリング-反応度換算係数の相関式は,非正方配列炉心に対して適用することができる.


26496
40年を迎えた原子力研修
国際原子力総合技術センター
日本原子力学会誌 40(4), p.282-293(1998);(JAERI-J 15521)

 原研は,原子力全般にわたる研究開発,人材養成等を実施する機関として昭和31年に発足した.原子力に関する研究者及び技術者を養成するために設立された研修所は,昭和33年から東京の駒込において研修事業を開始し,平成10年1月で40周年を迎えた.設立当初は,国内の研究者・技術者の養成であったが,時代のニーズに対応して近隣諸国や旧ソ連・東欧諸国等を対象とした国際研修を開催するとともに,国内的にも一般向けのセミナーを開催する等幅広い事業展開を図っている.これまでに45000人を超える修了者は,国内外で活躍されており,原研の研修事業が果たしている役割は大きいものと考えている.この機会に40年にわたる研修所の変遷や近年の活動状況を紹介するとともに今後の展開について紹介する.


26578
臨界集合体の現状と将来利用, 2-4;高温ガス炉臨界実験装置(VHTRC)
秋濃藤義・山根剛
日本原子力学会誌 40(4), p.262-264(1998);(JAERI-J 15591)

 1985年5月のVHTRCの初回臨界以来,HTTRの基本設計,詳細設計及び部分模擬炉心の各炉心を構成し,基本的な炉物理である(1)臨界質量,(2)制御棒及び可燃性毒物棒の反応度価値,(3)中性子束分布,(4)動特性パラメータβeff/Λ等について実験・解析の比較を行い,HTTRの核設計精度の検証を行いHTTRの核設計の要請精度を満たすことを明確にした.また,VHTRCにおいてHTTRの初回臨界試験における核的安全性の評価のための実験を行い,1996年度でVHTRCを用いての実験を終了した.


26577
臨界集合体の現状と将来利用, 3;高速炉臨界実験装置(FCA)
大杉俊隆・岡嶋成晃
日本原子力学会誌 40(4), p.259-262(1998);(JAERI-J 15590)

 FCA装置の概要,1990年以降の研究成果として,(1)FCA-XVI炉心及びFCA-XVII炉心,(2)FCA-XVIII炉心,(3)FCA-XIX炉心での実験について述べた.さらに,今後の利用計画として,新型炉の核特性,高速炉の反応度特性,マイナーアクティニド消滅処理特性等の研究テーマを挙げた.最後に,今後のFCAの果たすべき役割について,国際協力,高速炉開発における基盤研究を進める上で,多様なニーズに応えることのできる臨界実験装置の必要性を強調した.


26497
臨界集合体の現状と将来利用;今後果たすべき役割の検証と展望, 2, 各施設の報告, 2.2, TCA
須崎武則・堀木欧一郎*
日本原子力学会誌 40(4), p.257-259(1998);(JAERI-J 15522)

 前回,日本原子力学会誌でわが国の臨界集合体に関する特集が組まれてから約9年が経過し,この間にJMTRC,VHTRCが停止され,今,KUCA,TCA及びFCAの運転維持方策が検討されつつある.今回の特集では次の2点を報告する.1.TCAは軽水型の装置として,これまで,軽水炉・燃料サイクル研究及び炉物理教育研修に活発に使用されてきた.2.将来利用に関しては,(1)教育研修における原子炉シミュレータや出力炉とは異なる面での有用性,(2)軽水炉でのプルトニウム利用と関連燃料サイクルにおける臨界実験の必要性,(3)今後原子力利用を拡げようとしている近隣アジア諸国等との共同実験の必要性,等を再評価し,運転継続をはかるべきであると提言している.


26495
国際核融合材料照射施設(IFMIF)の設計活動;現状と今後の展望
勝田博司・野田健治・加藤義夫・杉本昌義・前川洋・小西哲之・中村秀夫・井田瑞穂*・大山幸夫・實川資朗・近藤達男*・石野栞*・宮原昭*
日本原子力学会誌 40(3), p.162-191(1998);(JAERI-J 15520)

 核融合炉材料の開発には,核融合炉条件下における中性子照射挙動を調べることが不可欠であるが,核融合炉条件を模擬できる高エネルギー中性子照射施設は現存しない.そこで,国際エネルギー機関(IEA)が日・米・欧・露の4極に呼びかけて,国際核融合材料照射施設(IFMIF)の検討が4極の共同で始められた.予備検討を経て,1995年に開始された概念設計活動が1997年に一応の区切りを迎えたので,この機会に,IFMIF設計活動の現状と今後の展望についてまとめ,紹介したものである.


26351
水張格納容器方式の冷却材喪失事故時の圧力挙動に関する基礎実験
楠剛・頼経勉・石田紀久
日本原子力学会誌 40(2), p.135-143(1998);(JAERI-J 15400)

 日本原子力研究所が設計研究を進めている改良舶用炉MRXは,小型一体型炉であり,冷却材喪失事故に対する工学的安全施設として受動的安全機能を有する水張格納方式を採用している.本格納容器方式では,冷却材喪失事故時に格納容器圧力が上昇して原子炉容器の圧力と等しくなることで,冷却材の流出を停止させる.水張格納容器の設計では,冷却材喪失事故時の圧力挙動を明らかにしておくことが重要であるが,本設計のように受動的な炉心冠水維持を図った格納容器に関する実験例はない.本報告書では,冷却材喪失事故時の水張格納容器内の熱流動現象を実験的に調べ,格納容器圧力上昇の程度及びそれへの影響因子を明らかにし,格納容器圧力上昇の簡便な予測モデルを検討した結果を述べる.


26350
遅れ積分計数法における補正因子Fの評価
山根剛・竹内光男・島川聡司・金子義彦*
日本原子力学会誌 40(2), p.122-123(1998);(JAERI-J 15399)

 負の大きな反応度測定法の一つに制御棒落下法があり,動力炉や試験研究炉において,炉停止余裕の決定等に広く使用されている.制御棒落下法の解釈には外挿法と積分計数法があるが,現在では,精度に優れた後者が適用される場合が多い.一方,最近では高温工学試験研究炉(HTTR)の臨界試験をひかえて,制御棒の落下時間の影響を取り入れる必要のあることが明らかにされ,遅れ積分計数法が著者等により提案された.今回,実用的な観点から,その遅れ積分計数法において用いる補正因子Fの数値を代表的な実験条件に対して図表にまとめた.


26349
「アクチニド '97」国際会議
鈴木康文・荒井康夫
日本原子力学会誌 40(2), p.111-112(1998);(JAERI-J 15398)

 国際会議「アクチニド '97」の概要を紹介する.本会議には30ヶ国以上から350名以上の研究者が参加し,アクチニドの分析,配位化学,廃棄物管理,重元素研究,高圧物性,高温物性,磁性,熱力学等の分野で320件余りの発表があった.


26348
放射性廃棄物処分システムにおいてセメントに期待される役割
田中知*・長崎晋也*・大江俊昭*・廣永道彦*・村岡進・油井三和*・妹尾宗明*・藤原愛*・芳賀和子*・坂本浩幸*・藤田英樹*・石崎寛治郎*・天野恕*
日本原子力学会誌 39(12), p.1008-1018(1997);(JAERI-J 15397)

 セメント系材料は,すでに実施されている低レベル廃棄物処分ばかりではなく,高レベル廃棄物やTRU廃棄物の処分システムの成立性を考えるうえでも重要な人工バリア要素である.しかしながら,それらの放射性核種の閉じ込め性や長期的な処分環境下での安定性,他材料との両立性などさらに明らかにすべき課題が残されている.本稿は原子力産業界及びセメント産業界において,放射性廃棄物の処理処分分野に携わっている人々や関心を有している人の共通認識を醸成するためにその現状と今後の課題を整理したものである.


26494
トリチウムの影響と安全管理;環境中トリチウム挙動, 植物中におけるトリチウムの挙動
天野光・新麻里子
日本原子力学会誌 39(11), p.929-931(1997);(JAERI-J 15519)

 環境に放出されるトリチウムが植物に取り込まれるプロセスの解析は,植物を動物が摂取し,またトリチウムを含む動植物を人間が摂取することから重要である.環境中に存在しまた原子力施設から放出されるトリチウムは主要な化学形として,水蒸気状(HTO)や水素ガス状(HT)の他,メタン状(CH3T)やその他種々の有機結合型の形態として存在する.このうち被曝線量としては,例えば同じ量のトリチウムが人間に吸収摂取された場合HTOはHTの1万倍,CH3Tの100倍であるが,植物組織等に有機結合したトリチウムの経口摂取線量は,HTO経口摂取のさらに2.3倍と評価されている.こうしたことから,トリチウムの植物への移行,特に野菜や果物の可食部への移行プロセス,さらに光合成により有機化し有機生成物として可食部へ移行するプロセスの解析が重要である.本論文はトリチウムの植物への取り込みに関し,現在までの知見を解説した.


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