1998年度

Phys.Rev.Lett.


27153
Reflection high energy positron diffraction from a Si(111)surface
河裾厚男・岡田漱平
Phys. Rev. Lett. 81(13), p.2695-2698(1998);(JAERI-J 16122)

 この論文は,世界初の反射高速陽電子回折の観測について詳述する.20keVの陽電子ビームが水素終端されたシリコン(111)面に対して,[111]及び[112]方位から入射させられた.0次のラウエゾーンとともにスペキュラースポットと回折スポットがはっきりと観測できた.また,シャドーエッジも明瞭に観測できた.回折図形は,比較的高い入射角(>3°)のときに出現した.スペキュラースポット強度のロッキング曲線は1次ブラッグピークと陽電子の全反射を明示した.


27068
Comment on “Localization and metal-insulator transition in multilayered quantum hall structures”
田中秋広*・町田昌彦
Phys. Rev. Lett. 81(8), p.1746-1747(1998);(JAERI-J 16044)

 最近,Wang, Z. は,多層層状量子ホール状態における相図の研究を行い,その結果をフィジカル・レビュー・レター誌に発表している.この論文は,この記事に対するコメントであり,彼の解析的計算に対し,より注意深い取り扱いが必要であると指摘し,さらにそれがもたらす物理的意味について言及するものである.Wangは,エッジ状態のネットワークモデルから出発し,非線形シグマモデルを取り扱い,繰り込み群の手法を用いて,多くの興味深い重要な物理を指摘している.しかしながら,非線形シグマモデルへの写像における,トポロジカル項の存在は,より注意深い取り扱いが必要であり,主要な物理的結果に対し大きな影響を及ぼすものと考えられる.また,この研究により,様々な場面において出会う渦や欠陥等のトポロジカルな実体に対するより厳密な取り扱いが可能となる.


26720
Superconducting energy gap observed in the magnetic excitation spectra of a heavy fermion superconductor UPd2Al3
目時直人・芳賀芳範・小池良浩*・大貫惇睦*
Phys. Rev. Lett. 80(24), p.5417-5420(1998);(JAERI-J 15705)

 重い電子系超伝導体UPd2Al3において超伝導転移温度Tc以下で反強磁性ピーク強度が1%減少することを観察した.これは磁気及び超伝導秩序パラメータの結合によって理解できる.同じ現象をUPt3やUNi2Al3においても観察し,これが重い電子系超伝導体において特徴的な現象であること,またピーク強度の減少と磁気モーメントの大きさに相関があることを明らかにした.さらにTc以下で磁気励起スペクトルに0.4meVのギャップが生じることを発見した.このギャップは2kBTcに相当し,BCS理論の3.5kBTcよりも小さい.ギャップはTc以下0から連続的に増加し,Hc2以上の磁場で消失する.これらの結果から超伝導ギャップであると結論した.重い電子系超伝導体の超伝導ギャップは本研究によって初めて観察された.ギャップの大きさは波数に依存し,この化合物の異方的ギャップを反映していると思われる.


26642
Noncircular triangularity and ellipticity-induced Alfven eigenmodes observed in JT-60U
G. J. Kramer*・三枝幹雄・小関隆久・草間義紀・木村晴行・及川聡洋・G. Y. Fu*・C. Z. Cheng*・飛田健次
Phys. Rev. Lett. 80(12), p.2594-2597(1998);(JAERI-J 15639)

 三角度が励起する三角度励起アルフベン固有(NAE)モードを,イオンサイクロトロン波帯高周波と中性粒子入射を用いた複合加熱実験時に,JT-60Uにて世界で初めて観測した.その際,楕円度励起アルフベン固有(EAE)モード,トロイダルアルフベン固有(TAE)モードも,同時に観測した.また,NAEモードの励起に必要な高速イオンのベータ値の閾値は,TAEモード励起と同程度になるプラズマパラメータが存在することが判明した.計算コード(NOVA-K)による解析によれば,観測されたNAEモードは,規格化小半径r/aで0.8以上の周辺部に励起されたと推定できた.また,測定データから求めたアルフベン共鳴連続スペクトルの構造から,容易に励起可能と考えられたEAEモードは,内部インダクタンスが低い場合のみしか観測できなかった.


26331
Achievement of high fusion performance in JT-60U reversed shear discharges
石田真一
Phys. Rev. Lett. 79(20), p.3917-3921(1997);(JAERI-J 15380)

 JT-60Uにおける負磁気シア実験において,プラズマ電流を2.8MAまで増加させることによって,Lモード境界の負磁気シア・プラズマの核融合性能を大幅に向上させることに成功した.負磁気シア領域の境界近くの小半径r/a〜0.7にて形成される内部輸送障壁によって,コアプラズマエネルギーは,効率よく閉じ込められた.その内部輸送障壁は,イオンと電子の双方に対して形成され,放電中持続した.三重水素と重水素の50:50%混合比を燃料として仮定した場合,dw/dtを含む過渡的な条件で定義した核融合エネルギー増倍率は,ピークで1.05に達した.これによって,JT-60Uは,負磁気シア放電という新しい先進的な運転方式によって,臨界プラズマ条件の達成を果たした.


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