1998年度

Surf.Sci.


26802
Desorption of fragment ions from mono- and multilayered CCl4 on Cu(100)by inner-shell photoexcitation
馬場祐治・吉井賢資・佐々木貞吉
Surf. Sci. 402-404, p.115-119(1998);(JAERI-J 15772)

 Cu(100)表面に単層及び多層吸着したCCl4分子に,Cl1s領域の放射光軟X線を照射した時の脱離フラグメントイオンを測定した.単層吸着では,脱離イオン種はCl+のみであり,これはCl1s→α*共鳴励起後のスペクテータオージェ遷移に伴う速いC-Cl結合解裂に起因する.一方,多層吸着の場合は,分子イオン(CCl3+)の脱離も起こり,その脱離強度はX線の吸収量に比例する.このことから,脱離速度が遅い重い分子種の脱離は,オージェ遷移後の二次電子の効果により起こることを明らかにした.


26647
Photon-stimulated ion desorption from DCOO/Si(100)near the O K-edge
関口広美*・関口哲弘
Surf. Sci. 390(1-3), p.214-218(1997);(JAERI-J 15644)

 我々は炭素原子一つを持つギ酸吸着系(DCOO/Si)において,炭素K殻から3種類の異なる空軌道への遷移の結果,分子軌道が関与した結合が切断されて生じる脱離フラグメントの収量が増加することを既に報告した.本研究においては高分解能軟X線分光器を用いることにより酸素内殻励起領域においてDCOO吸着種の二種類の酸素を選択的に内殻励起し,それぞれの励起で起こる脱離反応収量の違いを調べた.ヒドロキシ酸素(-O-)の励起によりCDO+イオン収量が増加し,カルボニル酸素(C=O)の励起ではCD+収量が増加した.このことから非局在効果が大きいと考えられるπ電子をもつ有機分子吸着系においても選択励起された原子の近傍で優先的に結合切断及び脱離が起こることが明らかにされた.また,基板との相互作用が弱いカルボニル酸素励起の方がO+脱離が顕著であり,相互作用が強いヒドロキシ酸素の励起では脱離が顕著でないといった表面特有効果が見出された.


26561
Applications of a photoion-photoion-coincidence technique to the study of photon-stimulated ion-desorption process following K-shell excitation
関口哲弘・関口広美*・田中健一郎*
Surf. Sci. 390(1-3), p.199-203(1997);(JAERI-J 15574)

 放射光励起によって引き起こされるイオン脱離反応は表面反応の解明や表面状態及び構造に関する知見を与えるものとして近年注目を集めている.イオン脱離反応の機構をより深く理解するためには,励起により表面上に生成する多電荷イオン中間体をなるべく直接的に観測することが望ましい.本研究は気相の光化学反応過程を調べるのによく用いられる手法である光イオン・光イオン・コインシデンス分光法を表面反応に応用することにより多電荷イオン中間体の反応挙動を調べたものである.H2O/Si(100),DCOOD/Si(100)DCOOCH3 multilayer試料の結果を示すとともに,各々の結果を比較した.その結果(1)コインシデンスの励起スペクトルは多電子励起領域で大きな増加を示すこと,(2)これら励起スペクトルの立上がり敷居エネルギーは吸着種と基板(又は周囲吸着種)との相互作用を反映して,各々大きく異なること,等が見出された.


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