1998年度

J.Magn.Magn.Mater.


26545
Small-angle neutron scattering study of magnetic microstructures in Co-Cr films
鈴木淳市・武井弘次*・前田安*・森井幸生
J. Magn. Magn. Mater. 184(1), p.116-125(1998);(JAERI-J 15558)

 中性子小角散乱により,Co-22at%Cr薄膜の磁気記録特性は微細磁気ドメインの形状に強く支配されることを明らかにした.バルク状態と異なり,薄膜試料では組成分離に伴う微細な磁気的変調構造が現れる.基板温度の上昇により磁気ドメインの構造は柱状から粒状に変化するが,記録特性は,組成分離が顕著で柱状磁気ドメインを持つ試料で最も優れたものとなる.


26459
Neutron diffraction and Moessbauer measurements for magnetism of Bcc Cr-Fe-Mn alloys
土屋佳則*・中村寛嗣*・村山茂幸*・保志賢介*・下条豊・森井幸生・濱口由和*
J. Magn. Magn. Mater. 177-181, p.1447-1448(1998);(JAERI-J 15484)

 組成,温度で様々に変化するBcc Cr-Fe-Mn三元合金の磁性について,中性子散乱実験,メスバウア効果測定を行った.Cr80-xFe20Mnx(x=10.0,30.0,15.0)のJRR-3Mに設置したTAS-1,TAS-2による中性子散乱実験では,TN以下で磁気散乱ピークが観測され,これより反強磁性モーメントの見積もりを行った,メスバウアスペクトルから内部磁場分布と平均内部磁場を求めた.これらはCr-Fe合金と類似していることが判った.平均内部磁場はTNから発生し,Tc,Tgで大きく成長する.x=15.0の試料ではFeの磁気モーメントはTgで1μB,13Kで1.7μBと算出された.


26403
Neutron diffraction study on hp13 type M7-xMnxGe6(M=Co, Fe)
堀富栄*・土屋佳則*・舩橋達・秋光正子*・下条豊・白石浩*・中川康昭*
J. Magn. Magn. Mater. 177-181, p.1425-1426(1998);(JAERI-J 15434)

 M7-xMnxGe6(M=Co,Fe)合金はhp13型構造をとる.遷移元素層はGe原子層と充分離れている.高温での帯磁率はCurie-Weiss則に従い,TnはCurie温度とほぼ一致する.この物質について磁気構造を調べるため,JRR-3Mに設置の高分解能粉末中性子回折装置(HRPD)による中性子散乱実験を行った.この測定により2つの遷移元素位置のうち,T(1)サイトはMnが大部分を占め,T(2)サイトはFe,またはCoと余剰のMuが配置しているという結果が得られた.x=4の試料の磁気構造はc軸方向に格子定数の2倍の周期をもつことが判明した.遷移元素層面内で,磁気モーメントは強磁性的に配列しており,Ge層をはさむ遷移元素層同志は互いに反強磁性的に配列している.Mn又はFe原子の磁気モーメントはT(1),T(2)サイトでそれぞれ1.3と0.9μBであり,方向はc軸からわずかにずれている.


26404
Neutron-diffraction study of Na- and K-jarosites
稲見俊哉*・前川覚*・高野幹夫*
J. Magn. Magn. Mater. 177-181, p.752-753(1998);(JAERI-J 15435)

 カゴメ格子反強磁性体は,極めて揺動の大きい系として知られており,その基底状態の性質には大変興味が集まっている.ジャロサイト化合物では,Fe3+のイオンがカゴメ格子を組み,モデル物質と考えられている.残念ながら,約60Kで3次元秩序化するが,最近逐次相転移が行っていることが,NMRなどから判明し,フラストレーションとのからみに興味が持たれている.この逐次相転移の性質を明らかにするために,中性子回折での磁気構造の決定を試みた.低温相の磁気構造は,いわゆるq=0構造であることが明らかになったが,中間相の構造は,S/Nが十分とれず,不明である.


26460
Neutron scattering study of the correlation of magnetism and superconductivity in heavy-fermion superconductor UPd2Al3
目時直人・芳賀芳範・小池良浩*・阿曽尚文*・大貫惇睦*
J. Magn. Magn. Mater. 177-181, p.449-450(1998);(JAERI-J 15485)

 重い電子系超伝導体UPd2Al3において超伝導転移温度Tc以下で反強磁性ピーク強度が1%減少することを観察した.これは磁気及び超伝導秩序変数の結合によって理解できる.同じ現象をUPt3やUNi2Al3でも観察し,これが重い電子系超伝導体の特徴的な現象であること,またピーク強度の減少と磁気モーメントの大きさに相関があることを明らかにした.さらにUPd2Al3の中性子非弾性散乱実験の結果,Tc以下で磁気励起スペクトルに0.4MeVのギャップが生じることを発見した.このギャップは2kBTcに相当し,BCS理論の3.5kBTcより小さい.ギャップはTc以下0から連続的に増加し,Hc2以上の磁場で消失する.これらの結果から超伝導ギャップであると結論した.重い電子系超伝導体の超伝導ギャップは本研究によって初めて観察された.ギャップの大きさは波数に依存し,この化合物の異方的ギャップを反映していると思われる.


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