1998年度

Mater.Sci.Forum


26714
Generation mechanisms of trapped charges in oxide layers of 6H-SiC MOS structures irradiated with γ-rays
吉川正人・斉藤一成*・大島武・伊藤久義・梨山勇・高橋芳裕*・大西一功*・奥村元*・吉田貞史*
Mater. Sci. Forum 264-268, p.1017-1020(1998);(JAERI-J 15699)

 +10V及び-10Vの電圧を印加しながら照射した傾斜酸化膜を用いて6H-SiC MOS構造を形成し,照射による酸化膜中の固定電荷の深さ方向分布の変化を調べた.未照射の酸化膜中には,SiO2/6H-SiC界面に負の,その界面から40nm離れた所には正の固定電荷が存在することがわかっているが,+10Vの電圧を印加しながら照射すると,正の固定電荷は界面にしだいに近づき,界面の負の固定電荷と重なって電気的に中性になることがわかった.一方,-10Vの電圧を加えながら照射すると,界面の負の固定電荷は増加し,正電荷は消滅した.酸化膜中の固定電荷分布は照射中に印加される電圧の極性に大きく依存することがわかった.


26715
Study of thermal annealing of vacancies in ion implanted 3C-SiC by positron annihilation
大島武・上殿明良*・伊藤久義・阿部功二*・鈴木良一*・大平俊平*・青木康・谷川庄一郎*・吉川正人・三角智久*・奥村元*・吉田貞史*・梨山勇
Mater. Sci. Forum 264-268, p.745-748(1998);(JAERI-J 15700)

 イオン注入により発生する照射欠陥とその熱アニールによる回復についての情報を得るために,陽電子消滅測定を行った.試料はCVC法により作成した立方晶シリコンカーバイド(3C-SiC)を用い,イオン注入は室温で,200keV-N2を1×1013/cm2行った.注入後の熱アニール処理は〜1400℃まで行い,それぞれの温度でアルゴン中で20分間行った.陽電子消滅測定の結果,室温〜1000℃までは空孔型欠陥のサイズが増加し,空孔クラスターを形成するが,1000℃以上では空孔型欠陥のサイズは減少し,1200℃以上では消滅していくことが分かった.また,照射によりダメージを受けた領域の回復は結晶の奥の方から始まり,アニール温度の上昇にしたがって表面へ移動してくることも明らかになった.


26712
Hot-implantation of phosphorus ions into 6H-SiC
安部功二*・大島武・伊藤久義・青木康・吉川正人・梨山勇・岩見基弘*
Mater. Sci. Forum 264-268, p.721-724(1998);(JAERI-J 15697)

 六方晶シリコンカーバイド(6H-SiC)中のリン不純物の挙動を明らかにするためにリンイオンの高温イオン注入を行った.また,イオン注入の最適条件を調べる目的で,注入温度とリン不純物の電気活性化の関係についても調べた.リン注入は,注入層のリン分布を均一にする目的で,80〜200keVの間で4つのエネルギーを用いて行った.注入後の熱アニールは,アルゴン中で20分間行った.注入温度とリンの電気的活性化の関係は,室温〜1000℃注入では,大きな差はないが,1200℃注入の場合は,注入後熱アニールを行わなくても,リンが電気的に活性化しn型伝導を示すことがわかった.また1200℃以上の熱アニール処理を行ったときも,室温〜1000℃注入した試料に比べ,1200℃注入試料はより多くのリンが電気的に活性化することも明らかにした.ホール係数測定の温度依存性から,リンドナーのイオン化エネルギーを見積もったところ,85,135MeVとなった.


26468
ESR studies of defects in P-type 6H-SiC irradiated with 3MeV-electrons
D. Cha*・伊藤久義・森下憲雄・河裾厚男・大島武・渡辺祐平・J. Ko*・K. Lee*・梨山勇
Mater. Sci. Forum 264-268, p.615-618(1998);(JAERI-J 15493)

 六方晶シリコンカーバイド(6H-SiC)の照射欠陥を調べるために,P型6H-SiCへ3MeV電子線を1×1018e/cm2照射した.欠陥に関する情報を得るために4K〜室温の電子スピン共鳴測定を行った.測定の結果PA,PB,PC,PD及びPEの照射欠陥に起因する5つのシグナルを観測した.PA,PBについては,4K〜室温の広い範囲で,PCは4K〜20K,PDとPEは〜10Kで観測された.それらのシグナルの磁場vs試料の角度依存性を調べたところ,PAシグナルはシリコンの単一空孔に由来するシグナルであることが分かった.またPB〜PEのシグナルは他のn型6H-SiCや3C-SiCの照射欠陥では見られないシグナルであり,P型特有のものであることがわかった.


26713
Characterization of defects in electron irradiated 6H-SiC by positron lifetime and electron spin resonance
河裾厚男・伊藤久義・岡田漱平・D. Cha*
Mater. Sci. Forum 264-268, p.611-614(1998);(JAERI-J 15698)

 3MeV電子線照射によって6H-SiC中に生ずる欠陥の性質を陽電子寿命と電子スピン共鳴により研究した.陽電子寿命測定から,照射により空孔型欠陥が生成していることが見出された.一方,三種類の電子スピン共鳴吸収スペクトルが観測された.陽電子寿命と電子スピン共鳴のアニール特性を比較することにより,観測された電子スピン共鳴スペクトルが空孔型欠陥に起因していることが明らかになった.欠陥の構造モデルとアニール機構について可能な説明を加える.


26467
Positron annihilation study of electron-irradiated silicon-germanium bulk alloys
河裾厚男・末沢正志*・米永一郎*・本田達也*・岡田漱平
Mater. Sci. Forum 258-263, p.127-132(1997);(JAERI-J 15492)

 SiGe合金について陽電子寿命及びドップラー広がり測定を行い,消滅特性の組成依存性,照射効果及び焼鈍温度依存性を求めた.ドップラー広がり測定より,Ge,SiGe,Siの電子運動量分布が高運動量域で大きく異なることが見い出された.即ち,Geの割合が高くなるとコア電子の消滅への寄与が増し,運動量分布がより広がる.一方,S及びWパラメータ及び寿命値の組成依存性を調べた結果,Siが0.2の割合のところで,これらのパラメータが不連続に変化することが見い出された.この現象は,伝導帯の底が,X点からL点に遷移することに対応してSiGeのバンドギャップが不連続に変化することと同期している.電子線照射によって原子空孔型欠陥が生ずることが見い出されたが,導入される原子空孔の種類と濃度が組成に大きく依存することが見い出された.これは,原子空孔の熱的安定度が,SiGeの合金組成に強く依存していることを示している.


26322
Vacancy-hydrogen interaction in proton-implanted Si studied by positron lifetime and infrared absorption measurements
河裾厚男・荒井秀幸*・岡田漱平
Mater. Sci. Forum 255-257, p.548-550(1997);(JAERI-J 15371)

 プロトン照射によって誘起されるシリコン中の原子空孔-水素間の相互作用を陽電子寿命測定と赤外吸収測定によって研究した.また,比較のためアルファー照射と電子線照射に対しても実験を行った.電子線及びアルファー照射の場合,熱処理により電子空孔の成長プロセスが見られたが,プロトン照射の場合には,そのようなプロセスは見られなかった.これは,プロトン照射によって導入された水素原子が高い活性度を持っており,同時に形成された原子空孔と極めて強く相互作用をするためと解釈される.実際,赤外吸収の結果,不対電子と結合した水素原子の局在振動に由来する多数の吸収線が見つかった.さらに,これら吸収線と陽電子寿命パラメータの熱処理挙動が,うまく対応づけられることがわかった.これより,見出された赤外吸収線が原子空孔位置に捕捉されていると結論できる.上記の結果は,イオン照射誘起欠陥解析への陽電子消滅法の有効性をも示している.


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