2000年度

Bulletin of the Chemical Society of Japan


290194
Electron-beam decomposition of carbon tetrachloride in air/nitrogen
広田耕一 ; 新井英彦 ; 橋本昭司
Bulletin of the Chemical Society of Japan 73(12), p.2719-2724(2000) ; (JAERI-J 17882)

 空気及び窒素雰囲気中で,電子線による四塩化炭素の分解率を水分有り無しの場合について調べた.その結果,四塩化炭素10ppmで水分無しの場合,両雰囲気ともに分解率はおよそ90%であった.ところが水分有りの場合,窒素雰囲気では分解率にあまり変化が見られなかったのに対し,空気雰囲気ではその値は70%となった.これには酸素が関与していることがわかった.すなわち,窒素雰囲気ではおもにeにより四塩化炭素が酸化分解を起こすが,空気雰囲気ではeは酸素分子とも反応し,O2-となる.しかし,このO2-も四塩化炭素を酸化分解するため,見かけ上水なしの場合では,両雰囲気ともに分解率に大きな差は見られなかった.これに対し,水有りの場合O2-は水分子と反応しクラスターイオン(O2-(H2O))を形成し,O2-による四塩化炭素の酸化分解を阻害するため,空気雰囲気で水分有りの場合,四塩化炭素の分解率が低下したことがわかった.


280695
Enhanced decomposition of dichloromethane in air by multi-pass electron beam irradiation
Wahyuni, S.*・広田耕一・箱田照幸・新井英彦・橋本昭司・川本二三男*・椋木康雄*
Bulletin of the Chemical Society of Japan 73(8), p.1939-1943(2000) ; (JAERI-J 17644)

 塩化メチレンは,各種産業で使用され,かなりの分が最終的に大気へ放出され,大気汚染源の一つとなっている.従来,活性炭で処理されているが,コストが高いなどの問題がある.本研究では,塩化メチレンを100ppm前後含むモデル空気試料を調製し500ml容量のガラス照射容器に採取し,バッチ式で電子ビーム照射を行い,その分解挙動を調べた.その結果,1パス照射では分解率は線量を増しても65%位で飽和するが,低い線量率で間欠的に多重パス照射する方法によれば32kGyで100%近い分解率が得られることを見いだした.また,水を4ml添加して照射すると,1パス照射でも100%近い分解率が得られることを見いだした.本研究では,電子ビーム照射による塩化メチレンの分解及び上記多重照射効果並びに水添加効果のメカニズムも明らかにした.


280360
Effect of the hydrophobic anion of picrate on the extraction of europium(III) with diamide
長縄弘親・鈴木英哉*・館盛勝一・那須昭宣*・関根達也*
Bulletin of the Chemical Society of Japan 73(3), p.623-630(2000) ; (JAERI-J 17350)

 アクチノイド,ランタノイドの抽出分離に有用な新しい抽出剤として注目されているジアミドについて,その抽出能の向上に,イオン対抽出に基づく協同効果が有効かどうかを検討した.第2の抽出剤として,疎水性でかさ高の陰イオンであるピクリン酸イオンを用いた.本研究ではユウロピウム(III)の抽出に与える協同効果を検討し,そのメカニズムを解明した.その結果,Eu(III)にジアミド分子が2つ配位し,さらに対イオンとして,3つのピクリン酸イオンを伴ったイオン対錯体の生成が,この協同効果の大きさを決定づけていることがわかった.この錯体の抽出定数は対イオンが硝酸イオンに替わった錯体の抽出定数の6×1010倍という大きさで,このことが,この系で見られる極端に大きな協同効果の原因であることがわかった.ピクリン酸イオンは,疎水性が大きいことから,抽出の向上に極めて有効に作用することがわかった.


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