2000年度

Journal of Chemical Physics


290043
Quantum scattering calculations for the electronically nonadiabatic Br(2P1/2)+H2→HBr+H reaction
高柳敏幸 ; 黒崎譲
Journal of Chemical Physics 113(17), p.7158-7164(2000) ; (JAERI-J 17773)

 スピン軌道相互作用による電子的非断熱遷移を伴う反応,Br(2P1/2)+H2→HBr+Hについて3次元量子反応性散乱計算を2つの計算方法を用いて行った.1つは超球座標を用いたclose-coupling法で,もう一方は,虚数の吸収ポテンシャルを用いた一般化R行列伝播法である.後者では反応側のJacobi座標を用いた.ポテンシャル曲面としてはTruhlarらによる(2×2)のdiabaticなポテンシャル曲面を用いた.いずれの方法でも数値的に十分収束した計算結果を得ることができた.また,得られた結果から電子的非断熱遷移が反応の入口でほとんど起こるが,その効率は小さいことがわかった.


290042
Theoretical study of kinetic isotope effects on rate constans for the H2+C2H→H+C2H2 reaction and its isotopic variants
黒崎譲 ; 高柳敏幸
Journal of Chemical Physics 113(10), p.4060-4072(2000) ; (JAERI-J 17772)

 反応H2+C2H→H+C2H2(1)及びこれを同位体置換した反応,HD+C2H→H+C2HD(2),DH+C2H→D+C2H2(3),D2+C2H→D+C2HD(4),H2+C2D→H+C2HD(5)の反応速度定数を,トンネル補正を加えた変分的遷移状態理論により計算した.その結果,これらの反応に見られる同位体効果はほとんど一次同位体効果によるもので,二次同位体効果及び反応経路(IRC)の曲率の効果は比較的小さいことが明らかとなった.このことは,分子軌道計算からも明らかなように,これらの反応のポテンシャルが「early」であることに起因すると思われる.また,反応1と2の反応速度定数の計算結果は,実験結果とかなり良い一致を示した.


280632
Ionization energies of hyperlithiated and electronically segregated isomers of Lin (OH)n-1(n=2-5) clusters
田中宏昌*・横山啓一・工藤博司*
Journal of Chemical Physics 113(5), p.1821-1830 (2000) ; (JAERI-J 17590)

 レーザーアブレーション実験で見いだした過剰なリチウムをもつLin(OH)n-1(n=2-5)について,理論計算により安定構造とイオン化エネルギーを調べた.n=2及び3では過剰電子がすべてのリチウム原子に非局在化した超リチウム化結合的な電子構造が,n=4及び5では過剰電子が特定部位に局在化した分離型の電子構造が最安定となる.イオン化エネルギーは構造に強く依存し,1個の酸素原子とのみ結合した末端リチウム原子の数により異性体を3種類に分類することができる.この依存性は過剰電子1個を有する最高被占軌道(SOMO)の特徴を強く反映する.


280631
Effects of pressure on radiation processes in solid hydrogen; An ESR study
熊田高之・Shevtsov, V.*・荒殿保幸・宮崎哲郎*
Journal of Chemical Physics 113(4), p.1605-1608(2000) ; (JAERI-J 17589)

 固相における放射線分解過程は,特有の拡散,緩和機構により,気相とは異なる様相を示す.われわれはX線照射した固体水素中に生成する水素原子収量の圧力依存性を見ることで,放射線分解過程が固相中でどのように進行するかを調べた.その結果,収量は圧力とともに減少し,22MPaにおいては0MPaに比べて約半分になっていることを見いだした.以上の結果は圧力によりかご効果が強くなったため,放射線分解過程における水素原子解離反応が起きにくくなったためであると考えられる.


280437
Study of dissociation of neutral intermediates using charge inversion mass spectrometry
早川滋雄*・原田謙吾*・荒川和夫・森下憲雄
Journal of Chemical Physics 112(19), p.8432-8435(2000) ; (JAERI-J 17416)

 MS/MS(Mass Separation/Mass Spectral Characterization)システムの質量分析計を用いた電荷逆転実験において,質量弁別した正イオンがアルカリ金属ターゲットとの衝突により,二電子移動反応で生成した負イオンの質量分析を行った.thermometer molecule(温度計分子)W(CO)6等を用いて内部エネルギーを測定した結果,W(CO)6による測定値と先駆体イオンのエネルギーレベルの差は,Csターゲットのイオン化エネルギーと良く一致した.この一致は,電荷逆転法における中性化が,近共鳴でおこるため,特定のエネルギー状態の中間体となり,この中間体が解離していることを示している.


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