2000年度

放射光


290240
高圧XAFS
片山芳則
放射光 13(5), p.385-387(2000) ; (JAERI-J 17928)

 本解説では,高圧下でのXAFSについての一般的な情報を,放射光関係者に対して簡潔に紹介する.始めに,圧力を加えることによって物質の構造や性質がどのように変化するかということに簡単に触れた後,高圧XAFSのメリットやデメリットを高圧X線回折実験と比較して述べ特に単結晶X線回折実験が難しい高圧では,XAFSが粉末X線回折実験と相補的な手段であることを示す.次に,これまで高圧下でのXAFSに用いられてきたいくつかの高圧発生装置やXAFS実験方法について,それぞれ発生できる温度圧力範囲や特色などについてまとめる.それと同時に代表的な研究例を挙げる.最後にわれわれが最近SPring-8の放射光を用いて行った,高圧下での結晶及び液体セレンのXAFS測定データを紹介する.


280402
固体表面の軟X線光化学
関口哲弘・馬場祐治
放射光 13(2), p.29-37(2000) ; (JAERI-J 17392)

 最近行われた固体表面における軟X線光化学反応研究に関して,実例を交えながら解説した.放射光からの軟X線を固体に照射すると内殻電子励起を初期過程として種々の化学反応が引き起こされる.X線励起エネルギーを変えることにより,特定元素が励起できることに着目し,励起エネルギーに対し分解反応がどのように変化するかを概説した.有機珪素化合物などいくつかの試料における反応選択性の現れ方を断片イオンの生成パターンと生成収量の励起X線エネルギー依存性に基づいて議論した.また分解反応の機構を詳細に調べるためわれわれが最近行った「吸着分子層数依存性」と「直線偏光角度依存性」の実験を紹介し,最新の実験結果を元に,全課程をX線吸収による直接的な「一次過程」と散乱電子等に誘起される「二次過程」に分けそれぞれの寄与を求め,反応モデルを論じた.


280562
Study of inner shell excitation effect on C-H dissociation in aromatic hydrocarbon solids
下山巖*
放射光 12(4), p.59-60(1999) ; (JAERI-J 17530)

 表面とバルクでの結合切断に関する内殻励起効果を調べるため,ベンゼン凝縮層の光刺激イオン脱離(PSID)の研究とアントラセン単結晶の色中心生成の研究を行った.ベンゼンのPSIDでは2次効果も含まれたTIY/AEYからC-H解離効率ηd(hν)を評価した.hν=285eVのπ*(e2u)←1sとhν=287eVのσ*C-H←1sの内殻共鳴励起においてηd(287eV)/ηd (285eV)〜4であった.AEICO分光法を用いて1次効果のみによるηd(hν)を調べた結果ηd(287eV)/ηd(285eV)〜10であった.両者の結果より1次効果と2次効果の寄与率を求めることに成功した.アントラセン単結晶の色中心生成では炭素K端エネルギー領域において色中心生成量子効率ηc(hν)はわずかに内殻励起により増加する結果を得た.しかし,π*←1sにおいてnc(hν)の抑制は観測されなかった.これらの結果よりバルクによりC-H解離効率では2次効果が表面よりも支配的であること結論した.


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