2002年度

Journal of Nuclear Science and Technology


310228
Effect of higher-harmonic flux in exponential experiment for subcriticality measurement
山本俊弘 ; 三好慶典 ; 外池幸太郎 ; 岡本肇* ; 井田俊一* ; 青木繁明*
Journal of Nuclear Science and Technology 40(2), p.77-83(2003) ; (JAERI-J 19858)

 指数実験での未臨界度測定における高次モード中性子束の影響について調べた.指数実験における減衰定数を固有値とする中性子拡散方程式に対する高次モード解析手法を開発し,高次モードに対する固有値及び固有関数を求められるようにした.指数実験における3次元の中性子束分布を高次モード中性子束の重ね合わせで再現することを試みた.TCA (Tank-type Critical Assembly)での未臨界の矩形の燃料棒配列において指数実験を行い,中性子源位置を何箇所かに変えて,垂直方向の中性子束分布を数箇所に配置した検出器で測定した.この指数実験での高次モードの固有値と固有関数を計算し,垂直方向の中性子束の再現を行った.その結果,燃料棒配列内または水反射体領域でも燃料棒配列に近いところでは,少数次の高次モード中性子束でよく再現できた.この高次モード解析手法を用いることで,高次モードの影響の評価や垂直方向の中性子束の測定結果から基本モードを抽出することが可能となる.さらに,高次モード解析によって指数実験における中性子源や検出器の適切な配置を決めることが容易にできるようになる.


310227
Analysis of nucleon scattering data of 52Cr with a coupling scheme built with the soft-rotator model
Sukhovitskij, E.* ; 千葉敏 ; Lee, J.* ; Kim, B.* ; Hong, S.*
Journal of Nuclear Science and Technology 40(2), p.69-76(2003) ; (JAERI-J 19857)

 軟回転体模型の波動関数を用いて構築した結合様式に基づくチャンネル結合理論によって52Crの核子散乱データの解析を行った.はじめに軟回転体模型のパラメータを実験的にわかっている52Crの4.5MeVまでの集団準位構造を再現するように決定し,それを用いて光学模型ポテンシャルと変形パラメータの検索を行った.この手法による計算がこの核の200MeVまでの相互作用データを良く再現できることがわかった.


310226
Deuterium effect on the subcritical limit for fissile-to-hydrogen ratio
奥野浩 ; 秋山秀夫* ; 望月弘樹*
Journal of Nuclear Science and Technology 40(1), p.57-60(2003) ; (JAERI-J 19856)

 国際原子力機関(IAEA)の現行の放射性物質安全輸送規則を厳密に適用すると,低レベル廃棄物(LLW)ドラムが核分裂性物質として輸送することが要求される.この問題は,LLWドラム中のコンクリートの水分が重水素(D)を含み,その量が核分裂性物質質量の0.1%を超え,従ってLLW運搬物が核分裂性物質を含む輸送物に関する除外規定要求を満たさないことの帰結である.軽水素(1H)とDの中性子吸収断面積の相違に関する検討から,水素減速体系において天然水中のDの存在による中性子増倍率の相対的な増加が0.015%以下であることを示す.235U/H質量比5%の235U金属と水の混合物において,無限中性子増倍率がD/H原子個数比に比例して増加し,D/H原子個数比0.015%に対して無限中性子増倍率の相対的な増加割合が0.03%未満であることを数値計算により確認する.除外規定にある核分裂性核種と水素の制限質量比5%が,天然水にDを含む水素減速体系にも適用可能であることを結論付ける.


310126
Establishment of a clean laboratory for ultra trace analysis of nuclear materials in safeguards environmental samples
半澤有希子 ; 間柄正明 ; 渡部和男 ; 江坂文孝 ; 宮本ユタカ ; 安田健一郎 ; 郡司勝文* ; 桜井聡 ; 高野清之丞* ; 臼田重和 ; 安達武雄
Journal of Nuclear Science and Technology 40(1), p.49-56(2003) ; (JAERI-J 19770)

 日本原子力研究所は,ISOクラス5の清浄度を持つクリーンルーム施設として,高度環境分析研究棟(CLEAR)を整備した.本施設は保障措置,包括的核実験禁止条約遵守検証及び環境科学にかかわる研究を目的として,環境試料中の核物質の分析を行うための施設である.本施設は,外部からの汚染を避けるというクリーンルームの要件と,日本の法規に従って核物質を使用するため,放射性物質を施設内に閉じこめるという,相反する要件を両立するように設計した.本施設は湿式化学処理,機器分析及び粒子試料の処理を行えるものとした.核物質を取り扱うための清浄な作業面を確保するため,クリーンフードを特別に設計した.腐食性の酸の使用のため,建設資材の選択に多大な注意を払った.クリーンルームの性能及び実験室における分析上のバックグラウンドについて議論した.本施設はIAEAネットワーク分析所に参加するのに申し分ない仕様を持っており,環境試料中のサブピコグラムレベルの極微量核物質分析が可能になった.


310125
Behavior of YSZ based rock-like oxide fuels under simulated RIA conditions
中村武彦 ; 草ヶ谷和幸* ; 笹島栄夫 ; 山下利之 ; 上塚寛
Journal of Nuclear Science and Technology 40(1), p.30-38(2003) ; (JAERI-J 19769)

 3種類の未照射の岩石(ROX)燃料,すなわちイットリア安定型ジルコニア(YSZ)型,YSZ/スピネル微細混合型,スピネル中YSZ粒子分散型,の反応度事故(RIA)時挙動を調べるためのパルス照射実験をNSRRで実施した.ROX燃料はPuを効率良く消費し廃棄するためのオプションの1つとして開発が進められている.ROX燃料はUO2燃料に比べて融点が低いため,被覆管の溶融破損が生じる前に燃料の溶融が起こる.このため,燃料破損の影響はUO2燃料とは全く異なる結果となった.ROX燃料が破損した際にはかなりの溶融燃料が冷却水中へ放出された.しかしながら,燃料/水熱的相互作用による機械的エネルギ発生は12GJ/m3以下の体積当たりのエンタルピ範囲では生じなかった.他方,ROXの破損しきい値は10GJ/m3以上であり,UO2燃料と同等であった.これらの結果は,物性値の大きく異なる燃料の過渡挙動の相違に関して知見を与えるとともに,RIA時挙動で重要なパラメータを明らかにした.


310124
Modeling for evaluation of debris coolability in lower plenum of reactor pressure vessel
丸山結* ; 森山清史 ; 中村秀夫 ; 平野雅司 ; 中島研吾*
Journal of Nuclear Science and Technology 40(1), p.12-21(2003) ; (JAERI-J 19768)

 デブリと下部ヘッドとの境界におけるギャップを満たす水のデブリ冷却効果を,実炉規模の定常計算に基づいて概略的に評価した.本計算では,狭隘流路における限界熱流束及び内部発熱流体の自然対流熱伝達に関する相関式を用い,ギャップ幅に依存する下部プレナム内冷却可能最大デブリ堆積深さを算出した.計算結果は,TMI-2事故の条件下では1mmから2mmの幅を有するギャップによりデブリを冷却可能なこと,より多量のデブリを冷却するためにはギャップ幅の大幅な増大が必要であることを示唆した.定常計算と併せて,過渡挙動の重要性を明確にするため,ギャップの成長及びギャップ内浸水に関するモデルを構築し,低レイノルズ数型二方程式モデルに分類されるYinらの乱流自然対流モデルとともにCAMPコードに組み込んだ.乱流モデルはUCLAで実施された内部発熱流体自然対流実験の解析により検証し,容器壁面における局所熱伝達係数の分布を精度良く予測することを確認した.ギャップ冷却に関するモデルの検証は,原研で実施した,水で満たした半球容器に溶融アルミナを注いだ圧力容器内デブリ冷却性実験の解析を通して行った.構築したギャップ冷却モデルを用いることにより,CAMPコードが容器壁の温度履歴を再現可能であることを明らかにした.


310062
Evaluation of shutdown γ-ray dose rates around the duct penetration by three-dimensional Monte Carlo decay γ-ray transport calculation with variance reduction method
佐藤聡 ; 飯田浩正 ; 西谷健夫
Journal of Nuclear Science and Technology 39(11), p.1237-1246(2002) ; (JAERI-J 19726)

 核融合炉ダクト周囲の停止後γ線線量率評価を目的に,モンテカルロ中性子及び崩壊γ線輸送計算を応用した計算手法を提案した.即発γ線スペクトルを崩壊γ線スペクトルに置き換えることによりモンテカルロ崩壊γ線輸送計算を行い,崩壊γ線線量率を評価した.統計誤差を向上させるために,ウェイトウィンドウ法の応用と崩壊γ線発生位置の特定による分散低減手法を提案した.本計算手法を用いて,ITERメンテナンス及びNBIダクトの遮蔽解析を行った.統計誤差の小さい計算解が得られ,遮蔽設計計算に対する本計算手法の有効性を実証した.また,中性子束の崩壊γ線線量率換算係数の空間依存性が大きいことを明らかにし,精度良い評価を行うためには本計算手法が必要であることを指摘した.


310061
Kinetic parameter βeff/l measurement on low enriched uranyl nitrate solution with single unit cores (600φ, 280T, 800φ) of STACY
外池幸太郎 ; 三好慶典 ; 菊地司* ; 山本俊弘
Journal of Nuclear Science and Technology 39(11), p.1227-1236(2002) ; (JAERI-J 19725)

 STACYにおいて,低濃縮硝酸ウラニル水溶液の動特性パラメータβeff/lを,パルス中性子法により測定した.ウラン濃度を193.7gU/lから432.1gU/lの範囲で変化させ,測定を系統的に繰り返した.用いた炉心タンクは,直径600mm及び直径800mmの2基の円筒タンクと,厚さ280mm,幅700mmの平板タンクである.本報告では,溶液燃料条件,臨界液位,測定を行った未臨界液位,測定された中性子束時間減衰の減衰定数,外挿されたβeff/lなどの実験データを,パルス中性子法の説明とともに示す.また,拡散コードであるSRACシステムのCITATIONと核データライブラリJENDL 3.2を用いて,βeff/lの計算も行った.これらのβeff/lの測定値と計算値はよく一致している.


310060
Modified quasi-steady-state method to evaluate the mean power profiles of nuclear excursions in fissile solution
中島健 ; 山本俊弘 ; 三好慶典
Journal of Nuclear Science and Technology 39(11), p.1162-1168(2002) ; (JAERI-J 19724)

 核分裂性溶液の核暴走時の平均出力変化を評価するための改良準定常法を開発した.改良前の手法では,反応度の計算に1群理論に基づく臨界方程式を使用している.しかし,1群近似では計算精度が悪く,また,臨界方程式で使用される形状バックリングは複雑な体系に適用できない.そこで,筆者らは,この手法を改良し反応度フィードバック係数を使用する手法とした.改良した手法は,フィードバック係数を算出するために別の計算を行う必要があるが,この手法は複雑な体系に適用可能であり,また,1群近似よりも精度の良い結果が得られる.さらに,沸騰出力を計算する新たな手法を,超臨界実験装置SILENEの実験データを用いて開発した.新たな手法を検証するために,CRAC及びTRACYを用いた超臨界実験の解析を実施した.結果は実験と良い一致を示した.


310059
Tunneling in high-K isomeric decays
静間俊行 ; 清水良文* ; 早川岳人
Journal of Nuclear Science and Technology 39(11), p.1137-1141(2002) ; (JAERI-J 19723)

 γ遷移の禁止度の非常に大きなK核異性体の崩壊について,量子トンネル効果を考慮した理論模型を用いて,遷移確率の系統的な研究を行なった.本研究では,われわれが観測したK禁止遷移,及び,最近,他グループにより報告されたK禁止遷移について,実験値と理論値の比較分析を行なった.その結果,実験値と理論値の非常によい一致を得ることができ,量子トンネル効果によるK核異性体のγ崩壊メカニズムを明らかにした.さらに,質量数180領域の中性子過剰核に対して,量子トンネル効果によるK核異性体の波動関数の透過率の同位体依存性を調べた.その結果,陽子数66,中性子数104付近において,透過率が最も小さく,この付近の原子核において,核異性体の存在する可能性が大きいことがわかった.


310058
Japanese evaluated nuclear data library version 3 revision-3; JENDL-3.3
柴田恵一 ; 河野俊彦* ; 中川庸雄 ; 岩本修 ; 片倉純一 ; 深堀智生 ; 千葉敏 ; 長谷川明 ; 村田徹* ; 松延廣幸* ; 大澤孝明* ; 中島豊* ; 吉田正* ; 瑞慶覧篤* ; 川合将義* ; 馬場護* ; 石川眞* ; 浅見哲夫* ; 渡部隆* ; 渡辺幸信* ; 井頭政之* ; 山室信弘* ; 北沢日出男* ; 山野直樹* ; 高野秀機
Journal of Nuclear Science and Technology 39(11), p.1125-1136(2002) ; (JAERI-J 19722)

 前版JENDL-3.2のフィードバック情報及び各種ベンチマークテストの結果をもとに,新版JENDL-3.3のための評価が行われた.JENDL-3.2での大きな問題点は新版により解決された.即ち,熱中性子炉体系での臨界性過大評価は235Uの核分裂断面積及び核分裂中性子スペクトルの改訂により解消された.また,重要な重核での不適切な2次中性子エネルギー分布は統計模型計算に置き換えられた.さらに,中重核での天然元素及び同位体評価値間の矛盾も無くなった.一方,20核種について共分散データを収納した.JENDL-3.3の信頼度は原子炉及び遮蔽に関するベンチマークテストにより検証された.ベンチマークテストの結果は,JENDL-3.3の予測精度がJENDL-3.2を上回ることを証明した.


310057
An Economic index regarding market creation of products obtained from utilization of radiation and nuclear energy, 4; Comparison between Japan and U. S. A.
柳澤和章 ; 久米民和 ; 幕内恵三* ; 田川精一* ; 茅野光男* ; 井上登美夫* ; 武久正昭* ; 萩原幸* ; 清水雅彦*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(10), p.1120-1124(2002) ; (JAERI-J 19721)

 本件は,日本原子力学会からの投稿依頼に応えたものである.発表内容は,平成11年度に調査した「我が国の放射線利用経済規模」及び平成12年度に実施した「我が国と米国の放射線利用経済規模」をとりまとめたものである.調査対象が膨大であるので,(1)工業利用,(2)農業利用,(3)医学・医療利用,(4)原発と放射線利用の4つに仕分けした.本件は(4)原発と放射線利用についての報告である.なお,上記調査はいずれも文部科学省の委託調査(特会)であり,成果の発表にあたっては相手方の了解を得ている.主な成果; 1997年における米国の原子力売上は158b$であり,内訳は放射線利用が119b$(75%),原発売上が39b$(25%)であった.此に対して我が国の原子力売上は99b$で,内訳は放射線利用が52b$(53%),原発売上が47b$(47%)であった.米国の原子力売上は我が国の約1.6倍となったが,米国では工業と医学・医療の分野で放射線利用が積極的になされていることが一つの理由である.相対的であるが,原発売上額は米国よりも我が国の方が大きい.


301212
Economic scale of utilization of radiation, 3; Medicine: Comparison between Japan and the U. S. A.
井上登美夫* ; 早川和重* ; 塩足春隆* ; 高田栄一* ; 取越正己* ; 永澤清* ; 萩原一男* ; 柳澤和章
Journal of Nuclear Science and Technology 39(10), p.1114-1119(2002) ; (JAERI-J 19626)

 本件は,平成11年度及び平成12年度に調査した「我が国の放射線利用経済規模」,「我が国と米国の放射線利用経済規模」に関連して,医学・医療利用についての報告である.調査の結果は次のとおりである.(1)米国医療費132兆円の89%を占める個人医療費117兆円に対し我が国の国民医療費29兆円である.両者には4倍の差異がある.(2)放射線利用項目のうち経済規模が大きい順に並べると,(a)画像診断(X線,CT,核医学),(b)医療機器,(c)造影剤,(d)放射線医薬品,(e)前立腺がん(粒子線治療を含む),(f)RI,(g)EDGPET等の順となる.(3)日米の放射線利用経済規模は,米国5.9兆円に対して日本は1.4兆円である.両者で約4倍の差異がある.医療費総額に対する割合は,米国5.9/117×100=5%,我が国は1.4/29×100=4.8%となる.即ち,医学・医療における放射線利用率は日米ほとんど変わらず約5%となっている.


301211
Economic scale of utilization of radiation, 2; Agriculture: Comparison between Japan and U. S. A.
久米民和 ; 天野悦夫* ; 中西友子* ; 茅野光男*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(10), p.1106-1113(2002) ; (JAERI-J 19625)

 本件は,平成11年度及び平成12年度に調査した「我が国の放射線利用経済規模」,「我が国と米国の放射線利用経済規模」に関連して,農業利用についての報告である.調査の結果は次のとおりである.(1)食品照射: 米国の食品照射経済規模はスパイス価格で幅が出る.最小(スパイス1.5$/lb)で206億円,最大(スパイス34$/lb)で3,903億円である(1999年度データ)である.いずれにしても我が国19億円の11倍から205倍の規模である.種類も馬鈴薯だけの我が国とは対照的にスパイス,果実・野菜,トリ肉と種類が多い.(2)突然変異育種: 米国128品種,日本120品種とほぼ同じ数の品種が育成されている.本調査推奨値は,最大のケースである.この場合,米国は1兆3,593億円であり,稲中心の突然変異品種17品種から得た我が国の経済規模973億円の14倍となる.(3)日米農業の放射線利用比較: 米国は17,496億円(対GDP比0.2%)であった.一方,我が国は992億円(対GDP比0.02%)であった.米国の放射線農業利用経済規模は我が国の18倍であった.


301210
Critical and subcritical mass calculations of curium-243 to -247 based on JENDL-3.2 for revision of ANSI/ANS-8.15
奥野浩 ; 川崎弘光*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(10), p.1072-1085(2002) ; (JAERI-J 19624)

 臨界及び未臨界質量を243Cmから247Cmの5核種のキュリウム同位体の球に対して計算した.燃料は金属系及び金属と水の混合系で,3種類の反射条件(裸,水反射体付き,ステンレス鋼反射体付き)を考慮した.計算は,主に連続エネルギーモンテカルロ中性子輸送計算コードMCNPと日本の評価済み核データライブラリJENDL-3.2の組合せを用いて実施した.その他の評価済み核データファイルENDF/B-VI及びJEF-2.2も中性子増倍率の計算結果の評価済み核データファイルの違いに起因する相違を見い出すために適用した.評価済み核データファイルへの大きな依存性が計算結果に見い出された.


301209
Evaluation of neutron nuclear data for sodium-23
柴田恵一
Journal of Nuclear Science and Technology 39(10), p.1065-1071(2002) ; (JAERI-J 19623)

 23Naの中性子核データを20MeVまでのエネルギー領域で評価した.評価したのは,弾性・非弾性散乱断面積,捕獲断面積,(n,2n)反応断面積,(n,p)反応断面積,(n,α)反応断面積,(n,np)反応断面積,(n,nα)反応断面積,γ線生成断面積及び中性子,γ線の角度・エネルギー分布である.評価は,主に原子核模型計算に基づいている.複合核過程に加えて,前平衡及び直接反応過程も考慮された.評価値はJENDLの最新版であるJENDL-3.3に収納された.


301216
Economic scale of utilization of radiation, 1; Industry: Comparison between Japan and the U. S. A.
幕内恵三* ; 田川精一* ; 柏木正之* ; 釜田敏光* ; 関口正之* ; 細淵和成* ; 富永洋* ; 大岡紀一
Journal of Nuclear Science and Technology 39(9), p.1002-1007(2002) ; (JAERI-J 19630)

 本件は,平成11年度及び平成12年度に実施した「我が国の放射線利用経済規模」,「我が国と米国の放射線利用経済規模」に関連し,工業利用についての報告である.調査の結果は次のとおりである.(1)米国放射線利用項目を経済規模が大きい順に並べると,(a)半導体加工(4.5兆円),(b)タイヤ(1.6兆円),(c)医療用具の滅菌(約5,800億円),(d)非破壊検査(約780億円)の順となる.傾向は我が国も同じである.この(a)から(d)の合計(特化項目の合計)は,米国が約6.7兆円,我が国が約4.7兆円となる.この規模比率は1.4である.全体的に見ると放射線工業利用製品を,米国は大量に安く生産している.(2)1997年における米国のGDPは1,006兆円,此に対する日本のGDPは512兆円である.米国は日本の約2倍である.米国特化項目の合計の対GDP比は0.7%,我が国限定項目の合計の対GDP比は0.9%となる.両者はほとんど差がない.


301215
Development of analytical method and study about microstructure of oxide films on stainless steel
根本義之* ; 三輪幸夫 ; 菊地正彦 ; 加治芳行 ; 塚田隆 ; 辻宏和
Journal of Nuclear Science and Technology 39(9), p.996-1001(2002) ; (JAERI-J 19629)

 本研究ではステンレス鋼表面酸化層の表面形状を原子間力顕微鏡(AFM)及び走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて評価した.また酸化層の断面をFE-SEMで観察した.酸化層の微細構造観察のために集束イオンビーム装置(FIB)を用いて薄膜試料を作製し,透過型電子顕微鏡(FE-TEM)により観察を行い,エネルギー分散型X線分光装置(EDS)で化学組成の分析を行った.これらの実験によりステンレス鋼表面酸化皮膜の微細構造及び化学組成がナノスケールで評価された.さらにその結果から,酸化皮膜生成に及ぼす合金へのシリコン(Si)添加の影響及び,高温高圧水中の溶存酸素濃度の影響について評価した.


301214
Safety shutdown of the High Temperature Engineering Test Reactor during loss of Off-site electric power simulation test
竹田武司 ; 中川繁昭 ; 本間史隆* ; 高田英治* ; 藤本望
Journal of Nuclear Science and Technology 39(9), p.986-995(2002) ; (JAERI-J 19628)

 HTTR(高温工学試験研究炉)は,黒鉛減速,ヘリウムガス冷却型の日本で初めての高温ガス炉である.HTTRは,2001年12月7日に初めて定格運転で全出力(30MW)を達成した.HTTRの出力上昇試験の中で,スクラムを伴う異常な過渡変化のシミュレーション試験を30MW運転からの商用電源の手動遮断により実施した.商用電源喪失直後,ヘリウム循環機,加圧水ポンプはコーストダウンし,ヘリウム及び加圧水の流量はスクラム設定値まで減少した.16対の制御棒は,設計値(12秒)以内で重力落下により炉心に2段階で挿入した.商用電源喪失から51秒で,非常用発電機からの給電により補助冷却設備は起動した.補助冷却設備の起動後40分で,炉心黒鉛構造物(例えば,燃料ブロック)の過渡な熱衝撃を防止するため,補助ヘリウム循環機2台のうち1台を計画的に停止した.補助冷却設備の起動後,炉内黒鉛構造物である高温プレナムブロックの温度は継続的に低下した.HTTR動的機器のブラックアウトシーケンスは設計通りであった.商用電源喪失シミュレーション試験により,スクラム後のHTTRの安全停止を確認した.


301213
Design of an anti-compton spectrometer for low-level radioactive wastes using Monte Carlo techniques
堤正博 ; 大石哲也 ; 木内伸幸 ; 坂本隆一 ; 吉田真
Journal of Nuclear Science and Technology 39(9), p.957-963(2002) ; (JAERI-J 19627)

 低レベルのRI・研究所廃棄物からの微弱なγ線を計測するために,2πジオメトリーにコンプトン抑制を配したアンチコンプトンスペクトロメーターを設計した.対象とする試料は重くて大きいために,計測システムは試料側に対して前面開放型となる.本報告では,コンプトン抑制及び自然放射性核種に起源するバックグラウンド成分の低減に関する本システムの特性や特徴について,モンテカルロシミュレーションにより評価した.その結果,アンチコンプトン手法は高エネルギーγ線によるバックグラウンドの抑制だけでなく,周囲のバックグラウンド自然放射線の低減に極めて有効な手段であることがわかった.


301154
Multiaxial creep behavior of nickel-base heat-resistant alloys Hastelloy XR and Ni-Cr-W superalloy at elevated temperatures
加治芳行 ; 辻宏和 ; 西宏 ; 武藤康 ; Penkalla, H. J.* ; Schubert, F.*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(8), p.923-928(2002) ; (JAERI-J 19578)

 原研において,原子力用構造材料として開発したハステロイXRとNi-Cr-W合金の多軸クリープ挙動を調べ,多軸条件下での変形挙動を記述する構成式を検証するために,一連の単軸及び多軸クリープ試験を実施した.Norton型クリープ構成式とMisesの流れ則を種々の負荷条件下での多軸クリープ挙動の予測に適用した.ほとんどの場合には,これらの材料の多軸クリープ挙動は,単軸クリープ試験結果から求めたパラメータに基づく構成式によってよく記述できたが,一部例外な場合も見られた.本研究から,簡易設計法としてNorton型クリープ構成式とMisesの流れ則に基づく方法をハステロイXR及びNi-Cr-W合金の多軸クリープ挙動を記述するのに適用できることがわかった.


301153
In-vessel type control rod drive mechanism using magnetic force latching for a very small reactor
頼経勉 ; 石田紀久 ; 今吉祥*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(8), p.913-922(2002) ; (JAERI-J 19577)

 超小型炉用に高信頼性の電気モータ駆動の原子炉容器内に設置する内装型制御棒駆動装置を開発した.本装置は,原子炉の小型化及び簡素化に寄与し,また制御棒飛出事故の可能性を排除できる.本装置では,制御棒の駆動軸を二つに分け,電磁力を用いて両軸を結合させるという新方式のラッチ機構を採用し小型化を図っている.ラッチ機構に要求される機能は,ストローク370mm内での両軸の結合と,スクラム時に信号受信から0.2秒以内に両軸を切り離すことである.モデルにより室温での機能試験を実施し,コイル電流が多いほどラッチ力が増加し,切り離し時間が増加することを確認した.また,有限要素解析コードによる試験後解析から両軸の隙間(磁気的クリアランス)がラッチ力に大きく影響することを明らかにした.この解析手法を用いて,実機ラッチ力を高温条件(300℃)で解析し,設計要求を満足することを確認した.


301152
Rock-like oxide fuels and their burning in LWRs
山下利之 ; 蔵本賢一 ; 秋江拓志 ; 中野佳洋 ; 白数訓子 ; 中村武彦 ; 草ヶ谷和幸* ; 大道敏彦*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(8), p.865-871(2002) ; (JAERI-J 19576)

 余剰プルトニウムの効率的な利用と廃棄のための新しいオプションを提案するため,岩石型プルトニウム燃料とその軽水炉中での燃焼技術に関する研究を行った.岩石型燃料はイナートマトリクス燃料の一種で,安定化ジルコニア,スピネルやコランダムなどの鉱物類似化合物から構成される.重核分裂片による照射損傷を軽減するため,粒子分散型燃料を考案した.照射試験により,スエリング,ガス放出,微細組織変化に関する知見が得られた.岩石型プルトニウム燃料装荷炉心が有する本来的な短所は,ウランやトリウムなどの共鳴物質を添加することで改善され,改善炉心の過渡時における特性は通常の軽水炉炉心と同等となった.反応度事故条件下における岩石型燃料棒の破損しきい値は軽水炉燃料と同等であることが,パルス照射試験により確認された.


301151
Unit sphere concept for macroscopic triggering of large-scale vapor explosions
丸山結* ; 森山清史 ; 中村秀夫
Journal of Nuclear Science and Technology 39(8), p.854-864(2002) ; (JAERI-J 19575)

 高温液体粒子,低温液体及びその蒸気から成る大規模粗混合領域における自発的蒸気爆発のトリガリングに関する単位球体コンセプトを開発した.粗混合領域内に,単位構造として球体が形成されると仮定し,単位球体の中心に1個の高温液体粒子,表面に12個の近接粒子を配置させる.単位球体コンセプトでは,中心粒子で発生する機械的エネルギーと近接粒子を覆う蒸気膜の機械的崩壊に要するエネルギーとの比及び中心粒子で発生する機械的エネルギーが溶融状態にある近接粒子に到達する確率をトリガリングの指標とした.本コンセプトから,高温液体としてのアルミナ粒子及び低温液体としての水から構成される粗混合領域では,コリウムの場合に比べてより小さい水のサブクール度でトリガリングが生じること,雰囲気を0.5MPa程度まで昇圧させた場合には,アルミナ,コリウムともに水蒸気爆発の発生が抑制されるという知見を得た.KROTOS実験の解析を実施し,コリウムの場合,アルミナと比較して第2の指標が小さくなることが判明した.このことは,コリウム粒子を含む粗混合領域においてトリガリングが相対的に生じがたいことを示唆する.さらに,溶融スズジェットを水層に突入させる一連の実験を行い,第2指標が定性的に適切であることを確認した.


301150
Neutronic optimization of premoderator and reflector for decoupled hydrogen moderator in 1MW spallation neutron source
原田正英* ; 勅使河原誠 ; 甲斐哲也 ; 坂田英明* ; 渡辺昇* ; 池田裕二郎
Journal of Nuclear Science and Technology 39(8), p.827-837(2002) ; (JAERI-J 19574)

 非結合型(超臨界)水素モデレータについて,高い中性子性能を実現するために,デカップリングエネルギーを変えて,プリモデレータと反射体材質(鉛,ベリリウム,鉄,水銀)に関する最適化研究を行った.その結果,鉛反射体中で,最適化されたプリモデレータと,適切なデカップリングエネルギーの採用により,ベリリウム反射体を用いた場合より,高い中性子性能が得られることを示した.


301149
Nuclear level structure, B(E2) γ-transitions and nucleon interaction data for 56Fe by a unified soft-rotator model and coupled-channels framework
Sukhovitskij, E.* ; 千葉敏 ; Lee, J.* ; Lee, Y.* ; Chang, J.* ; 丸山敏毅 ; 岩本修
Journal of Nuclear Science and Technology 39(8), p.816-826(2002) ; (JAERI-J 19573)

 軟回転体模型及びそれを用いるチャンネル結合法により,56Fe原子核の集団準位構造,B(E2)γ遷移確率及び核子入射反応の統一的記述を行った.準位については,励起エネルギー5.5MeV程度までの準位を再現することができた.また,相対論的運動学,殻模型,分散関係及びDirac現象論の効果を取り入れた光学ポテンシャルを採用することで,われわれの以前の研究で未解決の問題として残されていた全断面積の実験データとの不一致が解決され,160MeVまでの核子入射反応データを非常に良く再現できるポテンシャルを導出することができた.


301148
Uncertainty analyses in the resolved resonance region of 235U, 238U, and 239Pu with the Reich-Moore R-matrix theory for JENDL-3.2
河野俊彦* ; 柴田恵一
Journal of Nuclear Science and Technology 39(8), p.807-815(2002) ; (JAERI-J 19572)

 分離共鳴パラメータの共分散を推定する簡易的手法を開発した.主要アクチニド核種では多数の分離共鳴が存在するが,炉物理計算においては共鳴パラメータそれ自身より,それから計算される平均断面積の誤差が重要となる.今回開発した手法では,誤差伝播則により,適切な平均断面積誤差を与えるような分離共鳴パラメータの共分散行列を導出する.この手法を用いて,JENDL-3.2に収納されている235U,238U,239PuのReich-Moore型共鳴パラメータの共分散を算出した.


300977
Evaluation of photon shielding capability for epithermal neutron detection during reactivity-initiated power burst experiments
柳澤宏司 ; 中島健 ; 大野秋男 ; 三好慶典
Journal of Nuclear Science and Technology 39(7), p.800-803(2002) ; (JAERI-J 19423)

 過渡臨界実験装置(TRACY)における反応度投入出力バースト実験における出力履歴の評価のために,熱外中性子検出用の遮蔽体系について光子遮蔽能力を評価した.連続エネルギーモンテカルロコードにより,三種類の遮蔽体系について検出器位置での光子照射線量率と中性子検出率を計算した.計算結果より,中心からポリエチエン,カドミウム板,鉛の順番で遮蔽体系を構成した場合には,カドミウムの中性子捕獲γ線を効果的に遮蔽できないことがわかった.また,この捕獲γ線は熱中性子の反応によって生じるため,熱中性子の検出時間遅れと同様に捕獲γ線が時間遅れを伴って影響する可能性があることが示された.この問題を解決するために,カドミウムを遮蔽体系の外側に配置し,その内側にポリエチレン,鉛を配置した遮蔽体系を提案し,カドミウムの捕獲γ線を大きく低減できることを示した.また,提案した遮蔽体系では中性子検出感度もまた増加することが示され,TRACYの出力履歴評価のための熱外中性子検出器の遮蔽として有効であることがわかった.


300976
Criticality safety benchmark experiment on 10% enriched uranyl nitrate solution using a 28-cm-thickness slab core
山本俊弘 ; 三好慶典 ; 菊地司* ; 渡辺庄一
Journal of Nuclear Science and Technology 39(7), p.789-799(2002) ; (JAERI-J 19422)

 10%濃縮の硝酸ウラニル水溶液の第2シリーズの臨界実験をSTACYでの28cm厚平板炉心タンクを用いて行った.ウラン濃度を464から300gU/Lまで変化させて系統的な臨界データが取得された.本報告書では,水反射体付き及び反射体なしの条件で計13の臨界体系について評価を行った.実験誤差の実効増倍率への影響を感度解析により求めた.計算モデルを構築するのに必要な,ベンチマークモデルを提示した.ベンチマークモデルに含まれる不確かさは約0.1%Δkとなった.13の臨界体系はベンチマークデータとして認定できる.これらのベンチマークデータを用いて,標準的な計算コード,核データを用いたサンプル計算の結果も示す.


300975
Decrease of cesium release from irradiated UO2 fuel in helium atmosphere under elevated pressure of 1.0MPa at temperature up to 2,773K
日高昭秀 ; 工藤保 ; 中村武彦 ; 上塚寛
Journal of Nuclear Science and Technology 39(7), p.759-770(2002) ; (JAERI-J 19421)

 軽水炉のシビアアクシデント時における燃料からの放射性物質放出は,ほとんどの場合,高温高圧下で起きると考えられる.放出挙動に対する温度の影響は既存の実験で数多く調べられてきたが,圧力の影響は実験の困難さのためにほとんど調べられてこなかった.そこで,原研のVEGA実験計画では,圧力の影響を調べるため,圧力を0.1MPaと1.0MPaとする以外はほぼ同じ条件で照射済UO2燃料を不活性ヘリウム雰囲気下で2,773Kまで昇温する実験を2回行った.その結果,1.0MPaの加圧雰囲気下では,燃料からのセシウム放出割合が0.1MPa下におけるそれと比べて,測定した全ての温度域で約30%減少することを世界で初めて観測した.本報では,それらの実験の概要,測定結果について述べるとともに,試験後にホットセルで行った種々の解析結果について記述する.また,観測された圧力の影響を説明する機構及び計算モデルについて議論する.


300974
Experiments and analyses on sodium void reactivity worth in uranium-free fast reactor at FCA
大井川宏之 ; 飯島進 ; 安藤真樹
Journal of Nuclear Science and Technology 39(7), p.729-735(2002) ; (JAERI-J 19420)

 プルトニウム燃焼用高速炉のナトリウムボイド効果の予測精度を評価することを目的として,FCAにおいてウラン・フリー高速炉を模擬した体系を構築した.比較検討のため,プルトニウム及び炭素ボロンの反応度価値も,ナトリウムボイド反応度価値とともに測定した.プルトニウムサンプル反応度価値の軸方向分布と,4種の10B濃縮度に対する炭化ボロンサンプル反応度価値は,いずれも精度良く計算できていることがわかった.ナトリウムボイド反応度価値に関しては,特に非漏洩成分の予測精度が悪いことがわかった.計算と実験の不一致は,ウラン・フリー高速炉における非漏洩成分のエネルギー依存性が特殊であることに起因している.


300892
Characterization of solidified products yielded by plasma melting treatment of simulated non-metallic radioactive wastes
中島幹雄 ; 福井寿樹* ; 中塩信行 ; 磯部元康* ; 大竹敦志* ; 涌井拓治* ; 平林孝圀*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(6), p.687-694(2002) ; (JAERI-J 19358)

 原研における低レベル放射性廃棄物の高減容処理プログラムの一環として,処分に適した安定な固化体を製作するための溶融条件の最適化を図るために,非金属雑固体廃棄物の溶融試験を行った.模擬廃棄物を60Co,137Cs,152Euとともに非移行型プラズマトーチで溶融し,固化体の化学組成と物理的特性,及び放射性核種分布と残存率を調べた.固化体はほぼ均質で,十分な機械的強度を有している.放射性核種は固化体内に均一に分布し,固化体に残存する137Cs量はスラグ塩基度に依存したが,60Csのそれは依存しなかった.スラグ相中に60Coを含む微小な金属粒が観察された.これは還元性の雰囲気下での金属酸化物の還元によるものであった.


300875
Numerical estimation method of the hydrogen isotope inventory in the hydrogen isotope separation system for fusion reactor
岩井保則 ; 山西敏彦 ; 中村博文 ; 磯部兼嗣 ; 西正孝 ; Willms, R. S.*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(6), p.661-669(2002) ; (JAERI-J 19341)

 ITERの燃料循環システムでは,水素同位体分離システム(ISS)を構成する深冷蒸留塔内にトリチウムの大部分が滞留することが予想されている.そのため,高い精度を有するISS内水素同位体滞留量解析評価手法が安全確保の観点から強く求められている.ISS内のインベントリー評価手法の確立のために日米協力のもと,ロスアラモス研究所トリチウムシステム試験施設の有するITER規模の深冷蒸留塔を用いた実験を計画し実施した.この結果を評価し,今回提案した数値解析評価手法により深冷蒸留塔内の水素同位体滞留量を精度よく評価できることを確認し,本手法がITER規模の深冷蒸留塔に有効であることを明らかとした.本手法の精度は塔内の濃度分布に依存せず,特に重水素の液ホールドアップ率は塔の形状の違いにほとんど影響されないことを見いだした.またITER規模の深冷蒸留塔では液の滞留量に対してガスの滞留量も無視できないことを見いだした.


300874
Evaluation of power history during power burst experiments in TRACY by combination of γ-ray and thermal neutron detectors
柳澤宏司 ; 大野秋男
Journal of Nuclear Science and Technology 39(6), p.597-602(2002) ; (JAERI-J 19340)

 γ線及び熱中性子検出器を用いた組合せ法を,過渡臨界実験装置(TRACY)の反応度投入による出力バースト実験時の出力履歴の正確な評価に新たに適用した.初期バースト時には,短いバースト持続時間内の実際の出力履歴を正確にトレース可能であることから,出力履歴は高速応答γ線電離箱によって測定した.初期バースト後は核分裂生成物からの遅発γ線の寄与によりγ線電離箱は適用できないため,高濃縮ウランのマイクロ核分裂電離箱を出力履歴の測定に用いた.今回の方法により,1.50から2.93$の反応度投入による実験について出力履歴を評価した.この結果,マイクロ核分裂電離箱のみを用いた従来の方法によるピーク出力及び出力ピークまでの積分出力は,今回の評価結果に対してそれぞれ最大40%,30%過小評価することが明らかになった.モンテカルロ法による数値シミュレーションによって,この過小評価はTRACY炉心から核分裂電離箱までの中性子の飛行時間に起因した時間遅れを考慮することによって理解できることが示された.


300797
Determination of γ-ray exposure rate from short-lived fission products under criticality accident conditions
柳澤宏司 ; 大野秋男 ; 會澤栄寿
Journal of Nuclear Science and Technology 39(5), p.499-505(2002) ; (JAERI-J 19275)

 臨界事故条件下の短寿命核分裂生成物(FP)のγ線による線量評価のために,γ線照射線量率の時間変化を過渡臨界実験装置(TRACY)において実験的に定量した.データは1.50から2.93$の範囲の反応度投入によって取得した.実験結果より,初期出力バーストを含めた全照射線量に対する短寿命FPからのγ線の寄与は15から17%と評価された.このため,線量評価上FPの寄与は無視できない.解析結果からは,モンテカルロコードMCNP4Bと最新のFP崩壊データであるJENDL FP Decay Data File 2000に基づく光子源によって計算した短寿命FPからのγ線照射線量率は実験結果と良好な一致を示すことがわかった.しかし,光子源をORIGEN2コードで求めた場合には照射線量率は極度に過小評価した.これは,ORIGEN2コード付属の光子データベースにおいて主要な短寿命FP核種のエネルギー依存光子放出率のデータが欠落していることによる.また,この過小評価は初期バースト後1000秒以下の時間において生じることが確認された.


300796
High enrichment of 28Si by infrared multiple photon decomposition of Si2F6
横山淳 ; 大場弘則 ; 柴田猛順 ; 河西俊一* ; 杉本俊一* ; 石井武* ; 大家暁雄* ; 宮本佳樹* ; 磯村昌平* ; 荒井重義*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(4), p.457-462(2002) ; (JAERI-J 19274)

 六フッ化ニケイ素(Si2F6)の赤外多光子解離を用いたシリコン同位体分離により高濃縮28Siを得た.TEA炭酸ガスレーザーの10P(8)発振線(954.55cm-1)の光をセルにつめたSi2F6にフルエンス1.0J/cm2で照射した.その結果,29Siと30Siは,生成物であるSiF4と白色の粉に濃縮し,28Siは分解しないで残ったSi2F6に濃縮した.99.9%濃縮の28Siは,Si2F6を50%分解することにより得られた.また,Si2F6を連続的に流し,レーザー照射を行うことで,99.7%濃縮の28Siを2.5g/hの生成速度で連続的に生成することが出来た.


301041
Mass division in nuclear fission and isotope effect
岩本昭 ; Moller, P.* ; Madland, D.* ; Sierk, A.*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(4), p.332-336(2002) ; (JAERI-J 19478)

 核分裂における,最も生じやすい質量分割の理論計算が述べられる.模型はメッシュ点が250万以上の5次元のポテンシャルエネルギーの解析に依るものである.特別な関心は,鞍部点のエネルギーと位置を近似なしに求めることである.計算結果より,静的なポテンシャルエネルギー表面に多重の鞍部点が存在することをが示される.そのうち最も低い鞍部点とその次の鞍部点が重要であり,このうち一方が質量対称変形,残りが質量非対称変形をしていることが示される.このうちどちらが低いかは,核分裂する親核に依存して変化する.フェルミウムのアイソトープの場合には,この2者の高さは微妙に変化し,256Fmの場合には非対称変形の鞍部点が低く,一方258Fmの場合には対称変形の鞍部点が低くなる.この計算により,2重モード核分裂と呼ばれている現象が説明される.


300731
A High-sensitivity and non-destructive trace element analysis based on multiple γ-ray detection
大島真澄 ; 藤暢輔* ; 初川雄一 ; 早川岳人 ; 篠原伸夫
Journal of Nuclear Science and Technology 39(4), p.292-294(2002) ; (JAERI-J 19217)

 多重γ線検出法と中性子放射化分析を組合せて,新たな微量元素定量法を開発した.この定量法はpptまでの高感度と,49種までの多元素同時定量が可能である.招待講演において,この方法の原理と実証,さらに標準岩石試料,アレンデ隕石,環境中放射能129I,地層試料などへの適用例を紹介する.


300660
Enhancement of cesium release from irradiated fuel at temperature above 2,800K
日高昭秀 ; 工藤保 ; 中村武彦 ; 上塚寛
Journal of Nuclear Science and Technology 39(3), p.273-275(2002) ; (JAERI-J 19155)

 シビアアクシデント条件下における照射済燃料からの放射性物質放出挙動を調べるVEGA計画では,第3回目実験を2000年10月に行った.試験燃料は,被覆管を取り除いた燃焼度47GWd/tUのPWR燃料ペレット2個であり,大気圧,He雰囲気条件下で3,123Kまで昇温した.燃料溶融により,揮発性セシウム(Cs)の放出は促進され,最終的な放出割合は約100%に達したが,低揮発性のRuとEuのそれはゼロであった.燃料溶融時のCsの放出率速度係数は,燃料の融点以下の測定データから求めた放出率速度係数をアレニウス式に従って外挿した場合と比較して1桁近く増加した.このことは,燃料溶融時の放出挙動のモデル化にあたっては,UO2結晶格子を常に健全と仮定するCORSOR型モデルや結晶粒内の拡散モデルなどの従来法からの外挿とは違ったアプローチが必要であることを示している.


300795
High power transient characteristics and capability of NSRR
中村武彦 ; 片西昌司 ; 加島洋一 ; 谷内茂康 ; 吉永真希夫 ; 寺門義文
Journal of Nuclear Science and Technology 39(3), p.264-272(2002) ; (JAERI-J 19273)

 原研NSRRでは制御系を改造し,異常過渡時の燃料挙動を調べるための高出力過渡運転(台形パルス運転)を実現した.この運転により,数ミリ秒間で最高出力23GWに達する単一パルス運転に加え,最高出力10MWの高出力運転を数秒間程度続ける運転が可能となった.この運転のために開発した1点動特性モデルによるシミュレータを用いた計算と運転試験により,台形パルス運転でのNSRRの特性を評価した.本報では,台形パルス運転でのNSRRの能力,運転限界,制御棒価値やフィードバック反応度等の特性について議論する.また,この台形パルス運転によりBWRの出力振動を模擬した運転が可能となった.


300659
Fast vector computation of the characteristics method
久語輝彦
Journal of Nuclear Science and Technology 39(3), p.256-263(2002) ; (JAERI-J 19154)

 非均質中性子輸送計算法であるCharacteristics法のベクトル化手法として,Odd-Even Sweep(OES) 及び Independent Sequential Sweep (ISS)法を開発した.これらの手法はベクトル計算の有効的な利用のために,回帰演算を避けながらベクトル長を長くする.現実的な集合体を計算対象として,両手法の効果を調べた.両手法とも,スカラー計算に対するベクトル計算の計算速度向上比約15の高速演算を達成した.ISS法とOES法の比較という観点からは,ISS法がベクトル−スカラー速度比を低下させずに,記憶容量を節約できること,また,早い収束性を示すことから,ISS法がベクトル化手法として優れていると結論付けられる.


300658
A Simple model predicting iodine profile in a packed bed of silica-gel impregnated with silver nitrate
峯尾英章 ; 後藤実 ; 飯塚勝* ; 藤崎進 ; 内山軍蔵
Journal of Nuclear Science and Technology 39(3), p.241-247(2002) ; (JAERI-J 19153)

 使用済燃料溶解時のオフガス処理に使用される硝酸銀含浸シリカゲル(AgS)カラムにおけるヨウ素の軸方向分布を予測する数学モデルを単純な吸着理論に基づき提案した.モデルで必要なパラメータは,有効拡散係数とラングミュア係数の2つで,既往の吸着実験により得られたヨウ素の軸方向分布によるフィッティングによって,423Kにおいて,それぞれ5.60×10-7m2/s及び1.0×105m3kg-1と決定した.これらパラメータの値を用い,既往の研究におけるさまざまな実験条件下でのヨウ素の分布を計算したところ,提案したモデルはこれらの分布を良く予測できることがわかった.さらに,AgS粒子中銀含有率の影響も予測できることもわかった.AgS吸着剤へのヨウ素の吸着速度は,ポア径が小さいことから粒子内のヨウ素の拡散過程が律速と考えられた.提案したモデルは単純でAgS吸着カラム内のヨウ素分布の予測に有用である.


300657
Vectorization of direct Fock matrix construction in DIRAC-DHF calculations
望月祐志* ; 松村昌幸* ; 与倉徹一* ; 平原幸男* ; 今村俊幸
Journal of Nuclear Science and Technology 39(2), p.195-199(2002) ; (JAERI-J 19152)

 DIRACは,2電子積分から直接Fock行列を計算することにより大規模なDirac-Hartree-Fock計算が可能なソフトウェアである.積分の寄与を計算する際,コストの大きい交換項ではアドレスの衝突が起こるために単純なベクトル化はできない.今回,作業配列を導入することによりベクトル化を達成した.また,前段階のスクリーン処理も合わせてベクトル化した.ベクトル化率は,この結果90%を超え,Dirac-Hartree-Fockで2倍,線形応答では約3倍の加速が得られた.なお,この研究は地球シミュレータ用のソフトウェア整備の一環として行ったものである.


300656
JENDL Fusion File 99
千葉敏 ; 深堀智生 ; 柴田恵一 ; Yu, B.* ; 小迫和明* ; 山室信弘*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(2), p.187-194(2002) ; (JAERI-J 19151)

 核融合中性子工学で重要な水素からBiに至る79核種,13元素に対して二次中性子の二重微分断面積(DDX)の評価を行った.本プロジェクトがスタートした際のJENDL汎用ライブラリーの最新版JENDL-3.1のデータをベースにして,中重核に対しては光学模型,DWBA,前平衡及び統計模型計算を行い,系統式を用いて評価した.ただし軽い核に対しては別の手法を用いた.さらに2H,9Be及びフッ素より重い元素に対しては放出される荷電粒子のDDXも与えた.本評価結果は中性子,荷電粒子とも実験値を良い精度で再現できることがわかった.この結果はENDF-6フォーマットで編集され,1999年にJENDL Fusion File 99として公開された.


300655
Development of ocean pollution prediction system for Shimokita region; Model development and verification
小林卓也 ; Lee, S.* ; 茅野政道
Journal of Nuclear Science and Technology 39(2), p.171-179(2002) ; (JAERI-J 19150)

 下北半島沖に放出される放射性核種の海洋中拡散を予測する3次元モデルシステムを開発した.本システムは海流を予測するPrinceton Ocean Model(POM)と海洋中における放射性物質の拡散を予測するランダムウォークモデルを結合して用いる.再処理プラントが建設中の下北沖における観測値(海流,水温,塩分濃度)を用いてモデルの妥当性検証を実施した.シミュレーション結果より以下のことがわかった.(1)風及び津軽海峡から対象海域に流入する津軽暖流は下北沖の流動構造に大きな影響を及ぼす.(2)POMは仮想的な海洋学データを用いることにより津軽暖流の季節変動を再現することが可能である.計算により沿岸モード(冬〜春),渦モード(夏〜秋)の再現計算に成功した.


300654
Optimization of coupled hydrogen moderator for a short pulse spallation source
甲斐哲也 ; 勅使河原誠 ; 渡辺昇* ; 原田正英* ; 坂田英明* ; 池田裕二郎
Journal of Nuclear Science and Technology 39(2), p.120-128(2002) ; (JAERI-J 19149)

 高い積分強度の冷中性子ビームに対する利用者からの要求が大きいため,2つの取り出し面を確保し,できるだけ多くのビームラインを配置できるよう結合型液体水素モデレータの設計検討を行っている.本研究では,これまで提案してきた背中にプリモデレータを共有する2つのモデレータを,より単純化した拡張型プレモデレータ付き単一のモデレータを提案し,さまざまな視点(モデレータ厚さ,プレモデレータ拡張寸法,反射体材料,パルス特性,等)からの最適化を行った.その結果,これまでの中性子強度と遜色なく,パルス特性が改善され,また工学的熱負荷を低減できることが示された.この結果は,統合計画の冷中性子モデレータ設計に反映させることとした.


300527
Analytical study of volumetric scroll pump for liquid hydrogen circulating system
Phichai, K.* ; 秋山光庸* ; 日野竜太郎 ; 神永雅紀 ; 寺田敦彦*
Journal of Nuclear Science and Technology 39(1), p.101-107(2002) ; (JAERI-J 19058)

 大強度陽子加速器計画では,物質・生命科学実験施設の中性子源に用いる冷減速材システムの設計を進めており,システムの合理化のために液体水素を循環させる体積型スクロールポンプの開発が急務となっている.スクロールポンプは,原理的に高効率,低騒音低振動,高信頼性が期待できるため,冷媒圧縮機などとして実用化され,運動性能の向上を目的に広く研究開発が進められている.本報では,液体水素への適用性を調べるため,ポンプ内の流れ場について低レイノルズ数型k-ε乱流モデルを用い数値解析を実施し,歯形の並進回転運動に伴う圧力変動を移動境界アプローチにて検証した.その結果,円滑な吐き出し流動を実現できる見通しを得た.


300526
Comparison of burnup calculation results using several evaluated nuclear data files
須山賢也 ; 片倉純一 ; 清住武秀* ; 金子俊幸* ; 野村靖
Journal of Nuclear Science and Technology 39(1), p.82-89(2002) ; (JAERI-J 19057)

 JENDL-3.2,ENDF/B-VI及びJEF-2.2の評価済核データライブラリの最新版をそれぞれ用いた場合の,燃焼計算結果の相互比較を行った.その結果,ウラン及びプルトニウムの多くの同位体核種の生成量の計算値には,これら核データライブラリーの違いによる影響は少なかった.しかしながら,238Pu,244Cm,149Sm,134Csのような核燃料サイクル評価上重要な数核種同位体については明らかな差異が認められた.この原因について検討し,核種生成崩壊チェーンの分析を行った.


300525
Simulation by Monte Carlo method of power varying with time detected by fission chamber in TRACY water-reflected system
柳澤宏司 ; 大野秋男
Journal of Nuclear Science and Technology 39(1), p.76-81(2002) ; (JAERI-J 19056)

 TRACYの水反射体系における中性子検出の時間遅れの影響を理解するため,TRACYに設置されている核分裂電離箱における検出の時間応答を連続エネルギー・モンテカルロコードMCNP4Bによって計算した.また,計算した時間応答を用いて,水反射条件における初期出力バースト時の時間遅れによる相対出力の変化を確認するために,シミュレーション計算を行った.これらの計算結果より,反射体のない条件との比較において時間応答はわずかにシフトし,水反射体の有無による相対出力は最大20%の差を生じることが確認された.これは,コンクリート天井での中性子の衝突が主として検出に寄与しており,炉心タンクを水平に取り巻く反射体は検出に大きく寄与しない中性子の衝突が生じるコンクリート製の壁と床に向かう中性子を遮蔽することによる.しかし,相対出力の差は反応度評価上重要な逆炉周期に大きく影響を与えないことが確認された.


300524
A Simple evaluation method of the molten fuel amount in a premixing region of fuel-coolant interactions
森山清史 ; 丸山結* ; 中村秀夫
Journal of Nuclear Science and Technology 39(1), p.53-58(2002) ; (JAERI-J 19055)

 水蒸気爆発の粗混合過程における粗混合溶融炉心量を簡易的に評価するモデルを提案した.これは溶融物ジェットの水中での分裂と発生した粒子の沈降及び冷却に基づくものである.本モデルをKROTOS実験のアルミナ及びコリウム溶融物のケースに適用すると,アルミナとコリウムの粗混合状態では溶融粒子の割合が大きく異なる結果となった.これは両物質における水蒸気爆発の発生し易さの相違の原因の一つを示唆したものと考えられる.本モデルをPWRの格納容器内水蒸気爆発の条件に適用すると,約20秒で圧力容器から100tの溶融炉心が流出した時点で,粗混合状態にある溶融炉心は5〜10t程度であるという見通しが得られた.


300523
Adjustment of total delayed neutron yields of 235U, 238U and 239Pu in JENDL-3.2 using benchmark experiments on effective delayed neutron fraction βeff
桜井健 ; 岡嶋成晃
Journal of Nuclear Science and Technology 39(1), p.19-30(2002) ; (JAERI-J 19054)

 積分データを用いる断面積調整手法をJENDL-3.2の235U,238U,239Puの遅発中性子収率の調整に適用し,収率の改善を行った.積分データとしては,高速炉臨界実験装置MASURCAとFCA及び熱中性子炉臨界実験装置TCAにおける合計6つの炉心で実施されたβeff実験の結果を用いた.調整は,JENDL-3.2ファイル中の各入射中性子エネルギー点で与えられている遅発中性子収率に対して行った.調整の結果,238Uの収率は7MeV以下でほぼ一様に約3%小さくなった.熱エネルギーにおいて,239Puの収率は2.6%大きくなり235Uの収率は0.9%小さくなったが,他のエネルギー点では,これら2つの核種の収率の調整量は0.3%未満であった.これら調整を行った収率を用いることにより,βeff計算値の誤差が低減し,βeff計算値が実験値により良く一致するようになった.


300973
Tritium decontamination from co-deposited layer on tungsten substrate by ultra violet lamp and laser
大矢恭久* ; 田所孝広* ; 洲亘 ; 林巧 ; 大平茂 ; 西正孝
Journal of Nuclear Science and Technology 38(11), p.967-970(2001) ; (JAERI-J 19419)

 炭素繊維強化複合材(CFC)とタングステン基板に共堆積層を模擬した膜をアセチレン(C2H2またはC2D2)雰囲気下でのグロー放電により作成した.この膜にキセノンエキシマランプからの172nmまたはArFエキシマレーザーからの193nmの紫外線を照射し,質量分析器により放出ガスの分析を行った.照射前後の膜における水素同位体の深さ分布を弾性反跳粒子検出法と二次イオン質量分析法により測定した.紫外線ランプ照射によって水素,炭素や炭化水素の放出を確認したが,共堆積層は除去できなかった.一方,紫外線を照射することによって,1分以内にほとんどすべての共堆積層が除去された.これらより紫外線ランプでは一光子吸収によりC-H結合だけが切断されるが,紫外線レーザーでは多光子吸収によりC-H結合,C-C結合などすべてが切断され,除去されると考えられる.


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