2002年度

Journal of the Physical Society of Japan


310259
Single crystal growth and structural and magnetic properties of the uranium thernary intermetallic compound UCr2Si2
松田達磨* ; 目時直人 ; 芳賀芳範 ; 池田修悟* ; 大久保智幸* ; 杉山清寛* ; 中村仁子* ; 金道浩一* ; 金子耕士* ; 中村彰夫 ; 山本悦嗣 ; 大貫惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 72(1), p.122-130(2003) ; (JAERI-J 19889)

 われわれは,UCr2Si2の単結晶育成を初めて行なった.この物質について,温度約210K において高温の正方晶から三斜晶への構造相転移を示すことを明らかにした.また中性子回折実験によって低温における磁気構造を決定した.低温高磁場磁化測定ではメタ磁性転移が11.4Tで起きることを明らかにし,比熱測定からは電子比熱係数が約80mJ/K2molと比較的重い電子系化合物であることを明らかにした.


310258
Transport model of boundary plasma and evaluation of transport coefficients
上原和也 ; 前田満* ; 津島晴* ; 雨宮宏*
Journal of the Physical Society of Japan 72(1), p.94-100(2003) ; (JAERI-J 19888)

 周辺プラズマの輸送モデルについての研究の集大成である.トカマクの周辺プラズマにおける磁気面に垂直な輸送が,粒子保存則及びエネルギー保存則を用いて評価される.従来のモデルに電離と荷電変換による損失項を加えさらに温度勾配による輸送への寄与を含めて精密化した.シースポテンシャルで加速される粒子束を含んだ,連続長についての詳細な考察もAppendixに含めた.得られた表式により,JFT-2Mの静電プローブで測定されている実験値を代入して,輸送係数を評価した.


301155
Anomalous spin density distribution in CeB6
斉藤雅洋* ; 岡田典子* ; 西堀英治* ; 高際實之* ; 横尾哲也* ; 西正和* ; 加倉井和久 ; 國井暁* ; 高田昌樹* ; 坂田誠* ; 秋光純*
Journal of the Physical Society of Japan 71(10), p.2369-2372(2002) ; (JAERI-J 19579)

 CeB6におけるスピンモーメント密度分布を偏極中性子回折実験によって測定した.その結果Ce-site以外に隣接したB原子との間やB6八面体のネットワーク内に局在したスピンモーメントが存在することが初めて明らかになった.この結果はX-線粉末回折実験から得られた電荷密度分布との整合性もあり,コヴァレント結合内の磁気モーメントの存在を示唆しており,この系の磁性の理解に新しい側面を加えると思われる.


310129
Pressure effect on antiferromagnetic ordering in UIn3
芳賀芳範 ; 本多史憲* ; 江藤徹二郎* ; 巨海玄道* ; 加賀山朋子* ; 竹下直* ; 毛利信男* ; 中西剛司* ; 常盤欣文* ; 青木大* ; 大貫惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 71(8), p.2019-2021(2002) ; (JAERI-J 19773)

 高圧下電気抵抗測定を行い,UIn3の圧力相図を決定した.反強磁性転移温度は加圧とともに単調に上昇し,常圧の88Kから9GPaでは127Kに達した.その他に,圧力誘起の新しい転移を発見した.この転移は1.4GPa以上の圧力下で現れ,加圧とともに転移温度が減少し,約8GPaで消失した.


301232
Resonant X-ray scattering from CeB6
五十嵐潤一 ; 長尾辰哉*
Journal of the Physical Society of Japan 71(7), p.1771-1779(2002) ; (JAERI-J 19646)

 CeB6におけるLIII吸収端近傍における共鳴X線散乱スペクトルを計算した.Ceの4f状態は原子内局在軌道として,また,5d状態はバンド状態として記述するモデルに基づいて計算した.初期状態は斯波らによって導かれた有効なハミルトニアンに基づき取り扱った.四重極秩序に対応する超格子点散乱強度の実験結果をよく再現する結果をえた.この計算は,格子歪を仮定しない計算であり,スペクトル強度は,中間状態の5d状態が4f状態と原子内相互作用を通して変調をうけるところから生じることが明らかになった.磁気秩序に対応する超格子点散乱強度の計算も同様のモデルに基づき行い,種々の予言を行った.


300802
Magnetic and Fermi surface properties of UPtGa5
常盤欣文* ; 池田修悟* ; 芳賀芳範 ; 大久保智幸* ; 飯塚知也* ; 杉山清寛* ; 中村彰夫 ; 大貫惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 71(3), p.845-851(2002) ; (JAERI-J 19280)

 UFeGa5はHoCoGa5型の正方晶の結晶構造を持ち,磁気秩序を持たない常磁性体である.帯磁率の温度依存性は小さく,降温とともにわずかに増大する.われわれはこのUFeGa5の純単結晶育成に初めて成功した.単結晶育成は自己フラックス法により行い,得られた単結晶の残留抵抗比は88であった.本研究では物理量の異方性及びフェルミ面の性質を明らかにするため電気抵抗,帯磁率及びde Haas-van Alphen(dHvA)効果の測定を行った.H//[001]付近では3つのブランチが観測された.このうちαブランチは,その角度依存性から,CeIrIn5などにおいても見られる円柱状フェルミ面からの寄与と思われる.また,観測されたブランチのサイクロトロン質量は比較的大きく,2.4〜9.9m0であった.


300801
Neutron scattering study of the crystal and magnetic structures in itinerant-5f antiferromagnets UNiGa5 and UPtGa5
常盤欣文* ; 芳賀芳範 ; 目時直人 ; 石井慶信 ; 大貫惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 71(3), p.725-728(2002) ; (JAERI-J 19279)

 UNiGa5とUPtGa5の中性子散乱実験を行い,これらの物質の磁気構造を決定した.UNiGa5はNeelタイプの磁気構造を持ち,磁気モーメントは[001]方向を向いており,の大きさは0.9μB/Uであった.一方,UPtGa5では,反強磁性伝播ベクトルが[001/2]で磁気モーメントは[001]方向を向いている.そして磁気モーメントの大きさは0.24μB/Uと見積もられた.UNiGa5とUPtGa5における磁気構造の違いの起源は今のところ明らかではない.


300662
Neutron scattering study of the crystal and magnetic structures in itinerant-5f antiferromagnets UNiGa5 and UPtGa5
常盤欣文* ; 芳賀芳範 ; 目時直人 ; 石井慶信 ; 大貫惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 71(3), p.725-728(2002) ; (JAERI-J 19157)

 遍歴反強磁性体UNiGa5及びUPtGa5の磁気構造及び結晶構造を決定した.UNiGa5はすべての隣同士のスピンの方向が反対向きをとる構造,一方UPtGa5は結晶構造がUNiGa5と同じであるにもかかわらず,c面内で強磁性的に並んだスピンがc軸方向に反強磁性的に積層していることを明らかにした.磁気モーメントの大きさはそれぞれウランあたり0.90ボーア磁子と0.27ボーア磁子であった.この磁気構造の違いは,互いに最も近いウランの磁気相互作用が強磁性的か,もしくは反強磁性的か二つの化合物で異なることを意味しており,単にフェルミ面のネスティングからは説明できない.化合物の違いによってGa(4i)サイトの位置が大きく変化することが,中性子粉末解析から明らかにされた.磁気モーメントのサイズと,磁気相互作用の違いは,この原子位置の変化に伴うU-5fバンドとGa-4pバンドの混成の強弱と,ウランの軌道を媒介にした磁気相互作用の変化によって説明できる可能性を示した.


300661
Static correlation and dynamical properties of Tb3+-moments in Tb2Ti2O7; Neutron scattering study
安井幸夫* ; 金田昌基* ; 伊藤雅昌* ; 原科浩* ; 佐藤正俊* ; 奥村肇* ; 加倉井和久 ; 門脇広明*
Journal of the Physical Society of Japan 71(2), p.599-606(2002) ; (JAERI-J 19156)

 強い磁気的フラストレーションを示すパイロクロア系物質,Tb2Ti2O7,の静的及び動的磁気的性質をT=0.4Kまでの低温下で単結晶中性子散乱により研究した.30K以下の温度で磁気的散乱強度の波数依存性が顕著になり磁気的相関を示すことが明らかになった.その相関のエネルギー依存性から弾性,準弾性及び非弾性の成分が存在することが明らかになった.この静的相関を記述できるクラスターとして二つの四面体に属する7つのモーメントの配列を提案した.また1.5K以下で観測されるグラス的状態の原因についても議論した.


300532
MCD study on materials without magnetic order
宮原恒あき* ; 石井広義* ; 高山泰弘* ; 広瀬正晃* ; 丸山健一* ; 大部健司* ; 篠田元樹* ; 室隆桂之* ; 斎藤祐児 ; 松田達磨* ; 菅原仁* ; 佐藤英行*
Journal of the Physical Society of Japan 70(10), p.2977-2981(2001) ; (JAERI-J 19063)

 磁気秩序の無いPrFe4P12とCePd3について内殻励起磁気円2色性(MCD)の測定を行い,磁化率とMCDの大きさを比較した.PrFe4P12の磁化率は6K以上で強磁性振る舞いを示すことが知られている.この物質のMCDは高温側では局在モーメントを持つように振る舞うが,低温側では局在モーメントが消失し,近藤温度(Tk)が10Kより遥かに高い物質で有るかのような振る舞いを示した.一方,CePd3のMCDはTkが20K程度の通常の希薄近藤物質のような温度依存性を示したのであるが,これはこの物質のTKが150Kであることと矛盾し,また以前われわれが測定を行ったCeFe4P12とも大きく異なる結果である.このことは,コヒーレント近藤物質のTKが4fモーメント間の反強磁性的交換相互作用による局所的なスピン揺らぎにより,観測されるTKよりも高くなりうることを示唆している.


301045
Theoretical and experimental study of resonant 3d X-ray photoemission and resonant L3M45M45 Auger transition of PdO
魚住孝幸* ; 岡根哲夫 ; 吉井賢資 ; 佐々木貞吉 ; 小谷章夫*
Journal of the Physical Society of Japan 69(4), p.1226-1233(2000) ; (JAERI-J 19482)

 4d遷移金属化合物PdOの3d準位のX線光電子スペクトル,L3吸収端での共鳴3d X線光電子スペクトル,共鳴L3M45M45 オージェスペクトルを測定し,不純物アンダーソンモデルによって解析した.実験とスペクトル解析の結果,4d-2p電荷移動エネルギー,4d電子相関エネルギー等の大きさを定量的に定めた.PdOのエネルギーギャップについては,4d-2p軌道混成の効果が重要であることを明らかにし,PdOが絶縁体としてはモット・ハバード型と電荷移動型の中間的性質を有することを明らかにした.


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