2002年度

Review of Scientific Instruments


301064
Soft X-ray output from a pinch plasma using laser-induced Au plasma
大図章 ; 伊藤和範*
Review of Scientific Instruments 73(8), p.3131-3132(2002) ; (JAERI-J 19501)

 レーザー誘起金蒸気プラズマを用いたピンチ放電によるプラズマからの軟X線発生の実験的研究を行った.レーザー生成プラズマはレーザー光をピンアノード電極に直径100μm以内に集光することによって得られ,その後それを放電媒質とし,マルクスジェネレータでピンチ放電を行った.その結果,パルス幅120ns,実効フォトンエネルギー約1keV,パルス出力エネルギー約1μJの軟X線出力が得られた.この出力特性は,レーザー誘起プラズマの生成とピンチ放電のタイミング,レーザー出力,放電電流に大きく依存することがわかった.


300826
New evaluation beamline for soft X-ray optical elements
小池雅人 ; 佐野一雄* ; 依田修 ; 原田善寿* ; 石野雅彦 ; 森谷直司* ; 笹井浩行* ; 竹中久貴* ; Gullikson, E. M.* ; Mrowka, S.* ; 神野正文* ; 上野良弘* ; Underwood, J. H.* ; 波岡武*
Review of Scientific Instruments 73(3), p.1541-1544(2002) ; (JAERI-J 19304)

 軟X線光学素子の波長依存性,角度依存性絶対効率を測定するために開発した装置について述べる.この装置は立命館大学にある超電導コンパクトリングAURORAのBL-11に設置された.0.5nm<λ<25nmの広い波長領域をカバーするために2種類のMonk-Gillieson型分光器を装備している.一台は二偏角を持つ不等間隔溝回折格子を用いる従来型で,他方は表面垂直回転(SNR)の波長走査を用いる新型である.このシステムの紹介と,軟X線多層膜,同回折格子,フィルターについての測定結果について述べる.測定値はローレンス・バークレー研究所ALSにおける測定値とよい一致を見せ,システムの信頼性が確認できた.またSNRを用いた分光器ではALS'の同等の従来型分光器では測定不可能な1.5keV(〜0.8nm)にあるアルミニウムのK端が測定でき,シミュレーションによる透過率とよく一致した.


300750
Heterodyne O-mode reflectometer on the JT-60U tokamak
大山直幸* ; 篠原孝司
Review of Scientific Instruments 73(3), p.1169-1176(2002) ; (JAERI-J 19236)

 JT-60Uにおける密度揺動計測のため,Oモード伝搬を用いた3チャンネルヘテロダイン型反射計の開発を行った.Oモード伝搬の電磁波が反射する条件は,入射周波数に応じた電子密度のみで決まるため,閉じ込め磁場に寄らずに計測することが可能である.典型的なJT-60Uプラズマの電子密度分布を考慮し,周辺部輸送障壁から内部輸送障壁まで幅広い領域で,密度揺動の大きさ,相関,反射層の変位を計測できるようにQバンド(33-50GHz)の電磁波を用いた3チャンネル構成とした.3つのうち1つのチャンネルは34GHz固定で,残りの2つは34-40GHz,48-50GHzからそれぞれ1つの周波数を選択できるようになっている.信号の検出にはクオドラチュア型位相検出器を採用し,反射波の振幅と位相を評価することが可能である.本装置をJT-60Uプラズマに適用した結果として,Hモードプラズマの周辺部輸送障壁,負磁気シアプラズマの内部輸送障壁,高密度プラズマの周辺部,における密度揺動計測の結果を報告した.


300749
A 20-channel electron cyclotron emission detection system for a grating polychromator in JT-60U
諫山明彦 ; 伊世井宣明 ; 石田真一 ; 佐藤正泰
Review of Scientific Instruments 73(3), p.1165-1168(2002) ; (JAERI-J 19235)

 電子温度及びその揺動を測定するために,JT-60Uの回折格子型分光装置用20チャンネル電子サイクロトロン放射(ECE)検出システムを開発した.1列に並べられたインジウム・アンチモン(InSb)検出器は,直径約50cmのクライオスタットに貯蔵された液体ヘリウムにより冷却されている.クライオスタット及び開口部の断熱特性を向上することにより液体ヘリウムの保持時間は7週間に達し,少ない作業頻度で装置の維持が可能となった.20チャンネルの前置増幅器は直流結合のものであり,低周波数のECEも測定することができる.直流結合前置増幅器を用いるときにはバイアスのドリフトが問題となるが,本システムでは放電1分前にCAMACモジュール制御用の信号を受信し増幅器内部に設置したタイマーを起動することにより,放電直前にバイアスをキャンセルしている.既設の20チャンネル検出システム(冷凍機によりInSb検出器を冷却し,前置増幅器には交流結合のものを使用している)と比較すると信号雑音比が大幅に改善されていて,これにより小さい揺動も検出できるようになった.この検出システムを用いることにより,負磁気シア放電の内部輸送障壁近傍の電子温度や電子温度揺動を測定した結果,内部輸送障壁の成長過程における電子温度の変動を観測することができた.


300563
Development of a large volume negative-ion source for ITER neutral beam injector
渡邊和弘 ; 雨宮亨* ; 花田磨砂也 ; 伊賀尚* ; 今井剛 ; 井上多加志 ; 柏木美恵子* ; 栗山正明 ; 森下卓俊* ; 奥村義和 ; 高柳智弘* ; 山本巧
Review of Scientific Instruments 73(2), p.1090-1092(2002) ; (JAERI-J 19094)

 ITER用の中性粒子入射装置(NBI)には,1MeV,40Aでパルス幅1000秒以上の大出力負イオン源が要求されており,その設計を完了した.負イオン生成部は原研独自のカマボコ型負イオン源の特徴を生かした構造であり,負イオン加速部には5段の静電加速方式を採用した.負イオンは60cm×160cmの領域に配置した直径14mmの円孔1300個から引き出され加速される.大面積から引き出されたビームを効率良く入射させるため,電極の傾斜や孔軸変位,電界修正電極等の効果を利用して入射ポートに収束する工夫を施している.負イオン源の設計に際しては,負イオンのMeV加速試験,高電流密度生成,負イオンビーム光学最適化等を実施した.これまでに,新たに開発した真空絶縁方式の加速器でも970keV,37mAの負イオン加速に成功し本方式の有効性を示した.また,負イオン生成では目標を上回る0.1Paの極めて低い動作ガス圧力で31mA/cm2の高電流密度を達成した.これらによって,ITER-NBI実現の見通しを示した.


300562
Spatial uniformity of negative ion production in volume negative ion source
森下卓俊* ; 宮本賢治* ; 藤原幸雄* ; 花田磨砂也 ; 北川禎* ; 柏木美恵子* ; 奥村義和 ; 渡邊和弘
Review of Scientific Instruments 73(2), p.1064-1066(2002) ; (JAERI-J 19093)

 大電流負イオン源開発において,大面積から均質の負イオンビームを引き出すことは,静電加速電極の熱負荷軽減のために重要である.そこで,プラズマ密度の空間分布と負イオンビームの一様性との相関を調べた.その結果,プラズマ電極近傍において,イオン飽和電流に強い非一様性が見られた.負イオンビーム電流の空間的非一様性はプラズマ密度の分布と同傾向を示した.このプラズマ密度の不均一性は,プラズマ電極に印加するバイアス電圧に依存することから,フィルター磁場とバイアス電圧印加によるE×Bドリフトによると考えられる.次に,イオン源内にセシウム(Cs)を添加すると,プラズマ密度の分布は純粋水素放電と同様であるが,一様性の良い負イオンビームが得られた.負イオンビーム分布がプラズマ密度分布の非一様性に依存しないことから,中性の水素原子による負イオン表面生成が最も負イオン生成に寄与していることがわかった.


300561
Optimization of negative ion extractor in a JAERI 400 keV H- ion source
高柳智弘* ; 池畑隆* ; 奥村義和 ; 渡邊和弘 ; 花田磨砂也 ; 雨宮亨* ; 柏木美恵子*
Review of Scientific Instruments 73(2), p.1061-1063(2002) ; (JAERI-J 19092)

 負イオンの引き出し加速系では,引き出し電極に埋め込んだ永久磁石によるダイポール磁場によって電子を偏向させ加速部へ流出するのを抑制している.負イオンもわずかではあるがこの磁場によってその軌道が偏向される.高収束の負イオン加速器を実現するうえでは,この負イオンビームの偏向の度合いを詳細に把握することが必要である.そこで,引き出し電極の磁場が負イオンビームの軌道に与える影響を調べるため,原研の400keV負イオン源用いて,プラズマ電極と引き出し電極のギャップを変えてプラズマ引き出し面の磁場を変化させ,そのときの負イオンビームの偏向角度を調べた.その結果,プラズマ電極と引き出し電極のギャップを3mmから9mmとし積分値が310Gauss・cmから160Gauss・cmと減少したとき,ビームの偏向角度が9.5mradから6.4mradへと減少することがわかった.しかし,この場合の磁場積分値と偏向角度の比は,それぞれ1.9:1と1.5:1で一致しなかった.ビームの偏向角度には,3段加速電極の静電レンズ効果が含まれ,ダイポール磁場の積分値だけに依存しないことがわかった.また,偏向角度はビームのエネルギーに反比例することを明らかにした.これらの実験により得られた結果は,3次元軌道計算ソフトOPERA-3Dを用いて行った軌道解析の結果と良い一致を示した.


300560
Present status of the negative ion based neutral beam injector for JT-60U
大賀徳道 ; 梅田尚孝 ; 秋野昇 ; 海老沢昇 ; Grisham, L. R.* ; 疋田繁紀* ; 本田敦 ; 伊藤孝雄 ; 河合視己人 ; 椛澤稔 ; 栗山正明 ; 日下誠* ; 藻垣和彦 ; 大原比呂志 ; Pengyuan, L.* ; 佐藤藤雄* ; 関宏* ; 棚井豊* ; 豊川良治 ; 薄井勝富 ; 山本巧 ; 山崎晴幸*
Review of Scientific Instruments 73(2), p.1058-1060(2002) ; (JAERI-J 19091)

 JT-60U用N-NBI装置は,1996年に建設され,これまでにJT-60プラズマの中心加熱及び非誘導電流駆動実験に貢献してきた.現在,さらなるビームパワーの増大及びビーム入射持続時間の延伸を求めて開発研究を行っている.特に,イオン源におけるソースプラズマの非一様性改善は最も大きなテーマであり,これまでにいくつかの対策を講じてきた.例えば,アークチャンバー内のアーク放電電流分布を変化させることによる一様性の改善であり,フィラメントの温度制御によるアーク放電モードの改善等である.これらの対策は極めて効果的であり,最終的には,ビームエネルギー:400keVにて,5.8MWの重水素ビームをJT-60Uプラズマに入射することができた.


300672
Development of an H- ion source for the high intensity proton Linac
小栗英知 ; 奥村義和 ; 長谷川和男 ; 滑川裕矢* ; 下岡隆*
Review of Scientific Instruments 73(2), p.1021-1023(2002) ; (JAERI-J 19167)

 原研では素粒子原子核研究,物質生命科学研究及び核変換技術開発を目的としたビームパワー1MWの大強度陽子加速器施設の建設を計画している.本計画で使用する負イオン源では,ビーム強度60mA以上,規格化エミッタンス0.15pimm.mradのビーム引出が要求されている.そのため体積生成型負イオン源を設計・製作し,目標達成に必要な実験データの収集を行った.イオン源のソースプラズマはタングステンフィラメントを用いたアーク放電にて生成する.ビーム強度を上げるために,アークチェンバー中にセシウム蒸気を導入する.ビーム引き出し系は3枚の電極で構成され,ビーム孔の寸法は8mmである.今までのところ,ビームエネルギー70keV,デューティー5%の条件下でアーク放電電力30kWに対しビーム電流40mAのビーム引き出しに成功している.セシウムを導入するとビーム強度はアーク放電電力に比例して増加することが分かったので,今後,さらに大出力のアーク電源を用いてビーム試験を行う予定である.


300559
Optimization of plasma grid material in cesium-seeded volume negative-ion sources
柏木美恵子* ; 森下卓俊* ; 奥村義和 ; 谷口正樹 ; 花田磨砂也 ; 渡邊和弘 ; Krylov, A.*
Review of Scientific Instruments 73(2), p.964-966(2002) ; (JAERI-J 19090)

 中性粒子入射装置の負イオン源において,セシウム(Cs)を添加することで負イオン電流密度が増加する.そのときプラズマ電極表面の仕事関数が下がり,電極表面での負イオン生成が促進されることがわかっている.負イオン生成効率をあげるためには,より低仕事関数電極を用いることが重要である.そこで,フィラメントフリーのマイクロ波水素プラズマ源を用い,Cs添加時における9種類の金属の表面状態を調べた.表面状態の観察にはAr+レーザー(488nm)を用い,これを電極表面に照射したときの光電子電流を測定した.仕事関数が低いとき,より高い光電子電流が得られる.その結果,金,銀,ニッケルで光電子電流が最も高く,仕事関数が低いことがわかった.フィラメント材料であるタングステンはその67%,従来の電極材料であるモリブデンはその17%となった.この結果から,従来よりもさらに負イオン電流の増加が期待できる低仕事関数の電極の見通しを得た.


300558
A Frame-cooled plasma grid for long pulse operations in a cesium-seeded volume negative ion source
藤原幸雄 ; 奥村義和 ; 渡邊和弘 ; Trainham, R.* ; Jaquot, C.*
Review of Scientific Instruments 73(2), p.298-304(2002) ; (JAERI-J 19089)

 ITER用負イオン源に向けて,3次元シミュレーションを用いて,温度,応力解析を行い長パルス運転用の周辺冷却型プラズマ電極を設計した.セシウム添加型イオン源では,負イオンを効率よく生成するために電極の温度を一様に300℃前後に維持することが必要である.ITER用電極のサブセグメントに相当する周辺冷却型電極を製作し,負イオン生成実験を行った.その結果,電極温度が定常的に300℃程度に維持できることを確認した.


300557
A Time pickup system for monitoring cyclotron beam bursts
奥村進 ; 福田光宏 ; 石堀郁夫 ; 荒川和夫
Review of Scientific Instruments 73(1), p.51-55(2002) ; (JAERI-J 19088)

 本システムは,サイクロトロンから引き出されたビームの時間特性(ビーム位相,ビーム幅)を測定するために開発された.ビーム中へ挿入されたターゲット(フォイルもしくはワイヤ)から放出される二次電子を検出することで約200psの時間分解能を達成した.フォイルとワイヤの使い分け及びターゲット位置の調整によって,さまざまなビームに対して最適な測定を行うことができる.また,高時間分解能が必要な場合と,高検出効率が必要な場合とでは,各々最適な二次電子収集電圧が異なることを明らかにした.


300556
A Position-sensitive particle detector for Coulomb excitation experiment
藤暢輔* ; 大島真澄 ; 早川岳人 ; 初川雄一 ; 片倉純一 ; 松田誠 ; 飯村秀紀 ; 草刈英榮* ; 西宮大輔* ; 菅原昌彦* ; Zhang, Y. H.*
Review of Scientific Instruments 73(1), p.47-50(2002) ; (JAERI-J 19087)

 多重クーロン励起実験からは励起準位の電磁気的性質を得ることが可能である.クーロン励起実験におけるparticle-γ角度相関測定の際には薄いターゲットを用いなければならないが,重イオンをビームに用いた場合に光速の約10%という高い運動量を持った反跳核から放出されるγ線は,そのエネルギーのドップラー補正を行なわなければならない.このための位置感応型粒子検出器は前方散乱方向での高いcounting rateで用いることが可能であり,角度分解能が良いことが必要とされる.また照射損傷に対して強い耐性がある事が求められる.一般に広く使用されているSi検出器の場合では,典型的な寿命が12〜24時間という短いものになる.加えて,12台のアンチコンプトンサプレッサー付きGe検出器からなる多重γ線検出装置GEMINIとともに用いたために粒子検出器を配置したターゲットチェンバーはコンパクト(110mmφ以下)でなくてはならない.これらの条件を満たす位置感応型フォトマルR5900を用いた粒子検出装置を開発した.


300555
Analytical simulation of microwave reflectometry of a plasma cylinder
Bruskin, L. G.* ; 真瀬淳*
Review of Scientific Instruments 72(11), p.4139-4144(2001) ; (JAERI-J 19086)

 円筒形プラズマ中を伝播するマイクロ波の解析を行った.時間に依存する境界条件で,二次元full wave方程式を解き,ホーンから放射されたマイクロ波の具体的な構造が得られた.これは,一次元スラブモデルを二次元円筒形プラズマに拡張して得られた結果であり,軸対称系プラズマにおけるマイクロ波反射計及び超短パルス反射計のシミュレーションに応用できると考えられる.


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