2002年度

Journal of Chemical Physics


300965
On the electronic structure of Cm(H2O)n3+(n=1, 2, 4, 6) by all-electron Dirak-Hartree-Fock calculations
望月祐志* ; 舘脇洋*
Journal of Chemical Physics 116(20), p.8838-8842(2002) ; (JAERI-J 19411)

 全電子のDirac-Hartree-Fock法を並列処理を駆使することによって,3価キュリウムイオンの6水和錯体モデルにまで適用した.さらに,蛍光スペクトルの評価のために閉殻完全CI計算も行った.同様の計算を等電子系のガドリニウムイオンについても用い,結果をキュリウムの場合と比較した.一連の計算により,水和の本質が配位結合による安定化であること,水側からイオンへ相当量の電子供与があること,結果として蛍光スペクトルが赤方レフトすること等が明らかになった.


300792
A Quantum reactive scattering study of the spin-forbidden CH(X2Π)+N2(X1Σg+)→HCN(X1Σ+)+N(4S) reaction
和田晃* ; 高柳敏幸
Journal of Chemical Physics 116(16), p.7065-7072(2002) ; (JAERI-J 19270)

 スピン禁制反応 CH(X2Π)+N2(X1Σg+)→HCN(X1Σ+)+N(4S) について,量子散乱理論を用いた計算を行った.CH分子を一個の原子とみなすことによって,自由度を3次元に落とした.分子軌道計算を用いて,スピン2重項及び4重項それぞれのポテンシャルエネルギー曲面を作製した.また,スピン軌道相互作用については過去の理論計算を用いた.超球座標を用いた堅密結合方程式を数値的に解いて,総反応確率を計算した.計算された確率は典型的な共鳴構造を示した.得られた確率から反応速度定数を計算し,実験結果と比較したところ,100倍ほど小さな値が得られたが,速度定数はスピン軌道相互作用に大きく依存することがわかった.


300521
Nonadiabatic quantum reactive scattering calculations for the O(1D) + H2, D2, and HD reactions on the lowest three potential energy surfaces
高柳敏幸
Journal of Chemical Physics 116(6), p.2439-2446(2002) ; (JAERI-J 19052)

 O(1D) + H2, D2, and HD反応における電子的非断熱遷移の効果を調べる目的で,時間に依存しない3次元量子反応性散乱計算を行った.ポテンシャルエネルギー曲面としてDobbynとKnowlesによる関数を用いた.このポテンシャルは基底状態と2つの励起状態について高精度な分子軌道計算を行った結果を解析関数にフィットしたものである.計算は超球座標を使った堅密結合法によって行い,全角運動量はゼロのみを考慮した.計算の結果,この反応では電子的非断熱遷移が非常に効率よく起こることがわかった.このことは,基底状態のみを考慮した断熱的な計算は不十分であることを示すものである.つまりBorn-Oppenheimer近似が成立しない.しかしながら,非断熱遷移そのものは同位体置換に対して,あまり影響がないことがわかった.


300651
Absence of recombination of neighboring H atoms in highly purified solid parahydrogen; Electron spin resonance, electron-nuclear double resonance, and electron spin echo studies
熊田高之 ; 榊原正博* ; 長坂敏光* ; 福田紘也* ; 熊谷純* ; 宮崎哲郎*
Journal of Chemical Physics 116(3), p.1109-1119(2002) ; (JAERI-J 19146)

 固体水素中における水素原子の拡散速度と再結合速度をESR,ENDOR,及びESEを用いて調べた.オルソ水素濃度1%以下における水素原子の再結合速度定数は,拡散速度から予想されるより2桁以上も小さいことがわかった.この結果は固体パラ水素中において水素原子同士が隣接しても再結合しないことを示す.高純度パラ水素中において,水素原子再結合に伴い発生するエネルギーの拡散経路が存在しないために,水素原子は再結合することなく散乱されたのではないかと考えられる.


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