2002年度

Journal of Non-Crystalline Solids


310121
XAFS Study of molten zinc dibromide
岡本芳浩 ; 福島和子* ; 岩舘泰彦*
Journal of Non-Crystalline Solids 312(314), p.450-453(2002) ; (JAERI-J 19765)

 溶融臭化亜鉛の構造を,Zn及びBr双方のXAFSを測定することによって調べた.解析から,融体中で(ZnBr4)2-四面体錯体が存在し,Brイオンを共有することで複数の四面体がネットワーク構造を作り上げている可能性があることを示唆する結果が得られた.これは溶融ZnCl2の構造に良く似ている.得られたXAFSデータを,分子動力学計算とその出力を使用したFEFF計算から再現した.XAFSデータを良好に再現するMD計算では,四面体錯体の存在やネットワーク構造の存在を示す結果が得られた.


310222
Nuclear resonant inelastic scattering of synchrotron radiation by icosahedral quasicrystal i-Al62Cu25.5Fe12.5 and tetragonal crystal ω-Al70Cu20Fe10
鈴谷賢太郎 ; 柴田薫* ; 瀬戸誠* ; 北尾真司* ; 依田芳卓* ; 柏原泰治* ; Tsai, A.*
Journal of Non-Crystalline Solids 312-314, p.508-512(2002) ; (JAERI-J 19852)

 X線と中性子による非弾性散乱では,散乱体がそれぞれ電子と原子核と異なっていることに起因して,フォノン振動状態密度(VDOS)の物質構成原子からの寄与が異なるため,互いに異なったVDOSが得られる.特にX線核共鳴非弾性散乱の場合には,Feなどのメスバウア核からの部分振動状態密度の測定が可能になる.そこでわれわれは,SPring-8での高強度X線を利用した57Fe核共鳴(14.4keV)散乱と既存の中性子非弾性散乱との組み合わせによって,正20面体準結晶Al-Cu-Fe合金及び近似結晶の部分振動状態密度の導出を試みた.その結果,FeとCuは,異なる部分状態密度を持つ,つまり,それぞれ異なる環境構造を持っていることが明らかになった.これは,「FeとCu原子は遷移金属のサイトにランダムな原子配置をしている」という従来の解釈とは大きく異なっている.さらに詳しい議論を行うには,さらに統計精度を向上させたデータが必要である.


310221
The Structures of alkylimidazolium fluorohydrogenate molten salts studied by high-energy X-ray diffraction
萩原理加* ; 松本一彦* ; 津田哲哉* ; 伊藤靖彦* ; 小原真司* ; 鈴谷賢太郎 ; 松本一* ; 宮崎義憲*
Journal of Non-Crystalline Solids 312-314, p.414-418(2002) ; (JAERI-J 19851)

 あるN-アルキルイミダゾリウム塩化物あるいはN-アルキルイミダゾルと無水フッ化水素(HF)の反応によって,無揮発性の室温型溶融塩を得ることができる.その室温型溶融塩は,XF.2.3HFであり,ここで X=1-エチル-3-メチルイミダゾリウム (EMI),1-メチルイミダゾリウム (MeIm),1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム (BMI),1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム (HMI)である.室温での最大の固有導電率では,10mScm-1という高い値がEMIF.2.3HFに関して得られている.そこで,これらの各室温型溶融塩についてSPring-8にいて高エネルギーX線回折による構造解析を行った.その結果,溶融塩中にもEMIF.HF結晶の構造と類似のカチオンとアニオンの規則的な構造が存在することが明らかになった.この規則構造が,これらの室温型溶融塩の低粘性率の原因,ひいては高導電率の構造的な要因と考えられる


301208
The Spectrum and laser properties of ytterbium doped phosphate glass at low temperature
Dai, S.* ; 杉山僚 ; Hu, L.* ; Liu, Z.* ; Huang, G.* ; Jiang, Z.*
Journal of Non-Crystalline Solids 311(2), p.138-144(2002) ; (JAERI-J 19622)

 Yb3+をドープしたリン酸ガラスを作成し,低温での分光及びレーザー発振特性について評価を行なった.作成したガラスは,モル%でP2O5:60-65,B2O3:4-8,Al2O3:5-10,K2O:10-15,BaO:5-10,La2O3:0-2,Nb2O5:0-2,Yb2O3:4-87の範囲で調製を行なった.YB3+イオンの上準位寿命25/2からの蛍光寿命について,クライオスタットを用いて温度を変えながら測定を行なった.これと併せて,発振波長940nmのレーザーダイオード励起によるガラスレーザーの発振特性を異なる温度で測定した.この結果,スロープ効率4%,最高出力2mWが温度8K,発振波長1001nmにおいて有益な知見が得られた.


300966
EXAFS study on liquid selenium and liquid tellurium under high pressure
片山芳則 ; 下村理 ; 辻和彦*
Journal of Non-Crystalline Solids 250-252(Part2), p.537-541(1999) ; (JAERI-J 19412)

 これまでの高圧X線回折実験によって液体セレンの構造が加圧により大きく変わることが知られている.われわれは高圧EXAFS実験を行い,常圧では強いセレン原子間の共有結合が高圧では弱くなることを明らかにした.また,液体セレンは高温高圧下のある境界で電気抵抗が大きく減少することが報告されている.われわれはこの抵抗変化と構造変化の関係を調べるためにEXAFS測定を2.5GPaで室温から950℃まで行った.得られたEXAFS振動は融点前後ではほとんど変化せず,共有結合が融点直上で保たれていることがわかったが,抵抗が減少すると報告されている800℃付近から振動が急に減少した.これは金属化と共有結合の変化が同時に起こっていることを示している.さらに,同族のテルルについても高圧下でEXAFS実験を行ったので,その結果について報告する.


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