2002年度

Journal of Nuclear Materials


310225
Heat load rest of Be/Cu joint for ITER first wall mock-ups
内田宗範* ; 石塚悦男 ; 秦野歳久 ; Barabash, V.* ; 河村弘
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1533-1536(2002) ; (JAERI-J 19855)

 ITER第1壁の開発を目的として,Al,Ti,Cuから成る中間層及びCu中間層を用いて製作したベリリウム/銅合金接合体の熱負荷試験を実施し,試験体の健全性を調べた.除熱性能を確認した後に,接合部温度が約200℃となる熱負荷条件(5MW/m2)で15秒加熱,15秒冷却で1000回の熱サイクル試験を実施した.Al/Ti/Cu中間層の試験体は,1000回まで良好な除熱性能を維持したが,Cu中間層を用いた試験体は除熱性能の低下が見られた.試験後,接合部の断面を調べた結果,接合体のコーナー部の接合界面において剥離が確認され,これが熱伝導の低下を招いたものと推定された.


310224
Tritium release from neutron-irradiated Li2O sintered pellets; Fluence dependence
谷藤隆昭 ; 八巻大樹 ; 實川資朗
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1456-1460(2002) ; (JAERI-J 19854)

 かさ密度71%TDから92.5%TDの種々気孔率をもつLi2O焼結体からのトリチウム放出挙動を等速昇温法により調べた.その結果,71%TDから89%TDのあいだではトリチウムの放出挙動が中性子照射量に強く依存することが明らかになった.また放出律速過程として,次の三段階あることが判明した.すなわち,(1)放出ピークA領域(71%-86%T.D.); 照射欠陥にトラップされたトリチウムが欠陥の回復に伴い,トラップからの離脱により放出される.(2)放出ピークB領域(87%-89%T.D.); 連結開気孔を通じて,開気孔内壁への吸着,開気孔内壁からの脱離,開気孔内の気相拡散などを繰り返しながら表面まで移行する.(3)放出ピークC領域(91%-92.5%T.D.); 閉気孔からの離脱がトリチウム放出の律速過程となり,閉気孔の分布に従って,おもに700K,830K及び1000Kの三個の放出ピークを示す.


310223
Irradiation effects on thermal expansion of SiC/SiC composite materials
石原正博 ; 馬場信一 ; 星屋泰二 ; 四竈樹男*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1168-1172(2002) ; (JAERI-J 19853)

 SiC繊維強化SiC複合材料,SiC粒子強化SiC複合材料及び多結晶SiCを573K,673K及び843Kの温度で1.8×1024m-2(E>1MeV)の照射を行った.照射後,室温での照射誘起寸法変化及び室温から1673Kまでの熱膨張率を測定した.その結果,照射誘起寸法変化については,(1)SiC粒子強化SiC複合材料及び多結晶SiCでは,照射により生成される点欠陥に起因して,照射とともに膨張すること,さらにこの値は多くのSiC材料や単結晶で測定されたものとほぼ同様の値であること,(2)繊維強化SiC複合材料複合では,結晶性の悪い繊維の照射誘起寸法収縮の影響を受け収縮すること,熱膨張率については,高温での測定による照射損傷の回復が認められ,たとえばこれにより照射温度の予測がおおむね可能であることが明らかとなった.


310123
Use of high energy ions for the mechanistic study of irradiation embrittlement in pressure vessel steels using Fe-Cu model alloys
森田憲二* ; 石野栞* ; 飛田徹 ; 知見康弘 ; 石川法人 ; 岩瀬彰宏
Journal of Nuclear Materials 304(2-3), p.153-160(2002) ; (JAERI-J 19767)

 軽水炉圧力容器の照射脆性機構を調べるために,FeCuモデル合金に高エネルギーイオンビームを照射して,照射によるヴィッカース硬さ変化を測定した.硬さ変化の,イオン照射量,照射温度,銅濃度依存性について調べ,以下のような結果を得た.硬さ変化の照射温度依存性は,中性子照射時の延性・脆性転移と対応している.また,硬さ変化は,銅濃度の平方根に比例する.これは,照射による銅析出物の大きさは一定であるということを仮定すれば説明できる.


301040
Sputtering of nano-crystalline gold by high energy heavy ions
松浪紀明* ; 左高正雄 ; 岩瀬彰宏 ; 稲見隆* ; 小檜山守*
Journal of Nuclear Materials 302(2-3), p.206-210(2002) ; (JAERI-J 19477)

 物質に対する放射線の効果において,結晶粒の大きさと電子励起との2つの効果を調べるために,ナノ結晶の金と多結晶の金について高エネルギー重イオンによるスパッタリング収率の測定を行った.その結果2つの試料に対するスパッタリング収率は有意な差が見られなかった.また,その収率は弾性衝突カスケードによる計算値と一致し,電子励起効果は見えなかった.


310122
Ab initio study on the mechanism of hydrogen release from the silicate surface in the presence of water molecule
中沢哲也 ; 横山啓一 ; Grismanovs, V.* ; 片野吉男* ; 實川資朗
Journal of Nuclear Materials 302(2-3), p.165-174(2002) ; (JAERI-J 19766)

 本論文では,リチウムシリケイト表面に水酸基の形で存在するトリチウムの放出過程を理解するため,シリカ表面に孤立して存在する水酸基(-OH)と水分子の相互作用と水素放出反応過程について非経験的分子軌道計算により調べた.表面水酸基からの水素放出反応として表面水酸基と水分子の間で起る水素交換反応と水酸基交換反応について検討を行った.その結果,水素放出はシリカ表面水酸基のSi-O結合の切断による水酸基交換反応で起ることが分かった.この水酸基交換反応はプロトン供与体として働く水分子と表面水酸基の複合体において進行する.したがって,シリカ表面からのトリチウム放出は水分子と表面水酸基の間における水素交換反応ではなく,それらの間での水酸基交換反応で進行するものと考えられる.また,この反応の反応エネルギー障壁は24.4kcal/molと計算された.


301039
Application of neutron radiography for estimating concentration and distribution of hydrogen in zircaloy cladding tubes
安田良 ; 松林政仁 ; 仲田祐仁 ; 原田克也
Journal of Nuclear Materials 302(2-3), p.156-164(2002) ; (JAERI-J 19476)

 被覆管中における水素の挙動に関する知見を得ることは,燃料の健全性を評価するうえで重要である.現在,中性子と水素との相互作用に着目して,固体中の水素化合物の濃度分布を調べるための手法として中性子ラジオグラフィが考えられている.そこで,燃料被覆管中における水素の濃度分布を評価する照射後試験法としての中性子ラジオグラフィの有効性を評価・検討した.試験は,照射済燃料と同様に外周部に水素を偏析させ,さらに水素濃度を調整した未照射被覆管を用いて,イメージングプレート法及びCT法により,JRR3M-TNRF2において行った.画像上において,水素の偏析部に相当する領域で輝度変化が観察され,それが水素吸収量の増加とともに増大する傾向が確認された.このことは,被覆管中の水素の濃度分布を評価するツールとしのて中性子ラジオグラフィの可能性を示唆していると考えられる.


300972
Corrosion studies in liquid Pb-Bi alloy at JAERI; R&D program and first experimental results
倉田有司 ; 二川正敏 ; 菊地賢司 ; 斎藤滋 ; 大杉俊隆
Journal of Nuclear Materials 301(1), p.28-34(2002) ; (JAERI-J 19418)

 核破砕条件下での照射とともに液体鉛合金中の腐食が加速器駆動システムの開発のための重要な研究開発項目である.液体鉛合金中の腐食挙動は温度,高温部と低温部の温度差,液体鉛合金中の酸素濃度,流速,照射,応力,材料の化学組成等によって,影響される.特に,酸素濃度と保護膜の有効性が重要である.現在の研究開発計画が述べられる.(1)静的Pb-Bi中の基礎的な腐食研究では,腐食メカニズムの理解のために,種々の合金,純金属,被覆材が,異なる酸素濃度のもとで試験される.照射効果として,トリプルイオンビーム照射の腐食に及ぼす影響が調べられる.(2)流動Pb-Bi中腐食試験として,Pb-Biループを用いた試験が行われる.静的腐食試験装置,腐食試験ループの概要,酸素飽和条件下のPb-Bi中静的腐食試験の結果が述べられる.


300971
The Accelerator driven system strategy in Japan
倉田有司 ; 滝塚貴和 ; 大杉俊隆 ; 高野秀機
Journal of Nuclear Materials 301(1), p.1-7(2002) ; (JAERI-J 19417)

 日本におけるADS(加速器駆動核変換システム)の最近の戦略を述べた.階層型燃料サイクル概念は,長寿命放射性核種の分離と核変換のためのシステムとして,原研によって提案されている.ADSはこの階層型燃料サイクルのキーテクノロジーである.提案されたシステムは,鉛−ビスマス冷却,窒化物燃料を用いたマイナーアクチノイドと長寿命核分裂生成物を核変換するための800MWtのADSである.原研と高エネルギー加速器機構の統合計画のもとで,施設の概念設計が実施されている.高強度陽子加速器に加え,加速器駆動核変換技術の開発と実証のために,炉物理実験施設と工学実験施設が計画されている.炉物理実験施設ではハイブリッド未臨界システムの炉物理データを取得することを主な目的とし,工学実験施設では鉛−ビスマスターゲットシステムの設計のための材料データを蓄積することを主な目的としている.


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