2002年度

Physica B: Condensed Matter


300985
Magnetic properties of CaRuO3
吉井賢資 ; 阿部英樹*
Physica B 312-313(1-4), p.791-792(2002) ; (JAERI-J 19431)

 CaRuO3の磁性を調べた.磁化の温度依存性には,85K近傍に磁気転移による屈曲点が見られた.6Kにおける磁化の緩和測定からは,磁化が時間の対数に比例して変化する現象が見られた.これは過去の文献に示唆されたスピングラスの存在と一致する.しかし,交流磁化測定では,スピングラスに見られるような帯磁率ピークは見られず,今後,単結晶による磁気構造の測定などが必要と考えられる.


301162
Orbital ordering in manganites and ruthenates
堀田貴嗣 ; Dagotto, E.*
Physica B: Condensed Matter 312-313(1-4), p.700-702(2002) ; (JAERI-J 19586)

 遷移金属酸化物の複雑なスピン・電荷構造を理解するために,軌道自由度の役割を議論する.マンガン酸化物に対しては,強磁性相における対角線方向の電荷ストライプ構造が,反強的な軌道秩序によって誘起されることを示す.一方,ルテニウム酸化物に対しては,新奇な軌道秩序がG-タイプ反強磁性相の安定化に本質的に重要であることを見い出したが,この軌道秩序は,最近X線吸収によって観測された奇妙なホール分布をうまく説明する.


301161
Electronic structure and the Fermi surface of UBe13
眞榮平孝裕* ; 東谷篤志* ; 樋口雅彦* ; 安原洋* ; 長谷川彰*
Physica B: Condensed Matter 312-313(1-4), p.103-105(2002) ; (JAERI-J 19585)

 相対論的LAPW(Linealized Argumented Plane Wave)法を用いて,UBe13の電子構造とフェルミ面を議論する.UBe13はいわゆる重い電子系に属するが,低温での電子比熱係数は1.1J/K2molであり,一連の重い電子系物質群の中でも特に大きな値を持ち,なおかつ0.85Kにおいて超伝導状態に転移する.このように,UBe13は超伝導を示す重い電子系として重要な物質であり,その電子物性を理論と実験の両面から相補的に研究する必要がある.最近,R. G. Goodrichらによるパルス磁場を用いた測定において,いくつかの比較的小さなド・ハース−ファン・アルフェン(dHvA)シグナルが観測された.そこで,今後の実験との比較を念頭に置いて,UBe13の電子構造とフェルミ面,dHvA 角度依存,サイクロトロン有効質量,フェルミ面上での電子成分分布を理論的に導いた.


310267
Neutron scattering experiment on U3Pd20Si6, 1; Crystal and magnetic structure
立岩尚之* ; 目時直人 ; 小池良浩* ; 及川健一* ; 木村憲彰* ; 青木晴善* ; 小松原武美*
Physica B: Condensed Matter 312-313, p.891-893(2002) ; (JAERI-J 19897)

 U3Pd20Si6は,局在的な5f電子状態の存在が,帯磁率のキュリー則,磁気転移点における弾性定数C44のソフト化によってその可能性が示されていた.この物質の中性子散乱実験によって,19Kでは8cサイトのウランが反強磁性転移を示し,2Kで4aサイトのウランが強磁性転移を示すことを明らかにした.また結晶場及びスピン波励起の観察から,局在5f電子状態を実験的に明らかにした.


301244
High-resolution photoemission spectroscopy of Yb2Co3X9(X=Ga and Al)
岡根哲夫 ; 藤森伸一* ; 井野明洋* ; 藤森淳* ; Dhar, S. K.* ; Mitra, C.* ; Manfrinetti, P.* ; Palenzona, A.*
Physica B: Condensed Matter 312-313, p.349-351(2002) ; (JAERI-J 19658)

 Yb2Co3X9(X=Ga,Al)は,X=Alでは近藤格子系となりTN=1.2Kで反強磁性秩序を示すのに対して,X=Gaでは価数揺動系となりパウリパラ常磁性基底状態をとる.本研究では高エネルギー分解能光電子分光によりフェルミ準位近傍の電子状態を調べ,近藤格子系から価数揺動系への物性の変化を電子状態の観点から理解することを目的とした.実験結果では,X=Gaの化合物では明瞭に近藤ピークが観測できたのに対して,X=Alの化合物ではフェルミ準位近傍に構造は見つからなかった.これは不純物アンダーソンモデルによるスペクトル解析から,これらの物質の特性温度の違いを反映したものとして理解される.


300814
Present status and future prospect of JRR-3 and JRR-4
桜井文雄 ; 堀口洋二 ; 小林晋昇 ; 高柳政二
Physica B 311(1-2), p.7-13(2002) ; (JAERI-J 19292)

 JRR-3は1985-1990年において,利用ニーズに対応するため大改造され,その後中性子ビーム実験を中心に利用されている.さらに,使用済み燃料発生の抑制のためのシリサイド燃料化を1999年に実施した.また,ビーム利用要求の増大に対応するために,熱中性子ビーム導管のスーパーミラー化を1998年から実施している.JRR-4においては,1996-1998年において,低濃縮シリサイド燃料化,原子炉施設の更新,医療照射設備の新設等を実施した.JRR-3の将来計画としては,連続中性子ビームの特徴を考慮し,物質・生命科学を中心とした中性子利用研究の一層の推進を図るための設備の整備を進め,大陽子加速器との相補的利用を図る.JRR-4については,医療設備を中心に利用促進を図る.


300741
Impact of lattice defects on the preformance degradation of Si photodiodes by high-temperature γ and electron irradiation
大山英典* ; 平尾敏雄 ; Simoen, E.* ; Claeys, C.* ; 小野田忍* ; 高見保清* ; 伊藤久義
Physica B 308-310, p.1226-1229(2001) ; (JAERI-J 19227)

 シリコン(Si)のPIN型フォトダイオードの高温γ線照射による劣化を評価した.試験試料はSiフォトダイオードで,抵抗率が2〜4KΩであり,厚さ0.3mmのカバーガラス窓をもつTO-18パッケージに収められている.γ線照射にはCo-60線源を使用し,照射量は最大1×107rad(Si),照射中の試料温度は20℃,100℃,200℃とした.照射前後のデバイス特性とDLTS測定を行い,照射による特性劣化と導入欠陥との相互関係について検討した.照射後のDLTS測定の結果,n形シリコン基板に導入された2種類の電子捕獲準位(Ec-0.22eV)及び(Ec-0.40eV)と1種類の正孔捕獲準位(EV+0.37eV)が検出された.一方,デバイス特性については,γ線照射により暗電流は減少し,光電流は増加する傾向が得られた.これらの特性変化をDLTS測定で得られた欠陥準位に関連付けて議論する.


300813
Induced lattice defects in InGaAs laser diodes by high-temperature γ-ray irradiation
大山英典* ; 平尾敏雄 ; Simoen, E.* ; Claeys, C.* ; 小野田忍* ; 高見保清* ; 伊藤久義
Physica B 308-310, p.1185-1188(2001) ; (JAERI-J 19291)

 InGaAsP系レーザダイオードにおいて高温γ線照射により発生する格子欠陥とその素子特性に及ぼす影響を明らかにするために,レーザダイオード試料にCo-60線源を用いてγ線照射を実施した.γ線の照射量は最高100Mradとし,照射中の試料温度は20,100,200℃とした.照射前後にダイオードの電流・電圧(I-V)特性,容量・電圧(C-V)特性を室温にて測定した結果,照射後の順方向,逆方向電流及び光出力は照射温度の増加に伴い増加すること,また,これとは反対にしきい値電流は減少することがわかった.


300740
Deep-level transient spectroscopy analysis of proton-irradiated n+/p InGaP solar cell
Dharmarasu, N.* ; 山口真史* ; Khan, K* ; 高本達也* ; 大島武 ; 伊藤久義 ; 今泉充* ; 松田純夫*
Physica B 308-310, p.1181-1184(2001) ; (JAERI-J 19226)

 100keV陽子線照射(1E10, 5E12/cm2)したInGaP半導体n+/p接合のキャリア濃度及び生成される欠陥準位を調べた.キャパシタンス測定の結果,キャリア濃度減少率として,1MeV電子線の0.93/cmより桁違いに大きい6.1E4/cmが見積もられた.またDLTS測定より欠陥準位を調べたところ,H1ピーク(Ev+0.90V対応)が観測された.このH1ピークが多数キャリア捕獲中心として働くことで,100keV陽子線照射では1MeV電子線照射に比べキャリア濃度減少率が大きいことが分かった.


300664
Vacancies in He-implanted 4H and 6H SiC epilayers studied by positron annihilation
河裾厚男 ; Weidner, M.* ; Redmann, F.* ; Frank, T.* ; Sperr, P.* ; Krause-Rehberg, R.* ; Triftshauser, W.* ; Pensl, G.*
Physica B 308-310, p.660-663(2001) ; (JAERI-J 19159)

 現在のSiC研究では,放射線によって形成される欠陥を同定することが,一つの課題となっている.これまで,ヘリウム注入により発生する深い準位のアニール挙動が研究されている.それらのあるものは,原子空孔に起因すると考えられている.そこで,本研究では,ヘリウム注入した高品質6H及び4H SiCエピ膜に対して,陽電子消滅及び深準位過渡応答(DLTS)測定を行った.陽電子消滅で得られた原子空孔深さプロファイルは,TRIMコードを用いて計算された結果と良く一致していた.ドップラーSパラメータ及び陽電子寿命ともに単一空孔の値を上回っており,単一空孔だけでなく,原子空孔クラスターも形成していることが示唆された.検出された原子空孔は,700℃及び1500℃のアニール温度で消失することがわかった.一方,DLTS測定の結果,いずれの多形においても,相対的に浅い準位と深い準位が形成されていることがわかった.これらは,1000℃以上のアニールで前後して消失することが見いだされ,陽電子消滅で得られた原子空孔のアニール挙動と良く一致していることが判明した.これより,ヘリウム照射で生成するDLTS準位は,原子空孔型欠陥に由来すると結論できる.


300739
Positron annihilation study of vacancy-type defects in silicon carbide co-implanted with aluminum and carbon ions
大島武 ; 上殿明良* ; 阿部浩之 ; Chen, Z. Q.* ; 伊藤久義 ; 吉川正人 ; 安部功二* ; 江龍修* ; 中嶋賢志郎*
Physica B 308-310, p.652-655(2001) ; (JAERI-J 19225)

 六方晶シリコンカーバイド(6H-SiC)へアルミニウム(Al)及び炭素(C)の共注入を行い,注入後及び熱処理後に残留する空孔型欠陥を陽電子消滅法により調べた.Al注入(濃度:2E18/cm3)は室温で,炭素注入(濃度:1E18/cm3)は室温または800℃で行った.その結果,両試料ともに注入後に残留する空孔型欠陥は主に複空孔(VsiVc)であること,1000℃での熱処理により表面層の空孔欠陥はクラスター化するが,深部の欠陥はクラスター化が抑制されること,さらに1000℃以上の熱処理では空孔欠陥サイズは減少し,1400℃熱処理により結晶性が回復することがわかった.また,Al単独注入試料中の空孔欠陥においても同様な振る舞いが観測され,共注入による欠陥の特異な振る舞いは見出されなかった.一方,電気特性の結果,共注入試料の電子濃度の方がAl単独注入より高く,共注入の効果が見られた.上記より,共注入ではサイトコンペティション効果によりAlの活性化率が向上するというわれわれのモデルの妥当性が裏づけられた.


300545
Formation and annihilation of intrinsic-related defect centers in high energy electron-irradiated or ion-implanted 4H- and 6H-silicon carbide
Weidner, M.* ; Frank, T.* ; Pensl, G.* ; 河裾厚男 ; 伊藤久義 ; Krause-Rehberg, R.*
Physica B 308-310, p.633-636(2001) ; (JAERI-J 19076)

 この論文では,4H SiC中の電気的に活性な固有欠陥の生成と消滅に関する詳細な研究について報告する.これらの固有欠陥は,n型4H SiCに電子線照射又はヘリウムイオン照射することで生成されたものである.700〜2100Kで等時アニールが行われた.固有欠陥は,高感度の深準位過渡応答測定(DLTS)により検出された.エネルギー準位と捕獲断面積などが,アレニウムプロットから決定された.おもに,次の特徴が見いだされた.(1)ヘリウム照射と電子線照射は異なる準位を誘起する.すなわち,電子線照射直後には,複数の電子準位が観測されたが,ヘリウム照射では,それらは130Kのアニール後出現した.(2)大部分の電子準位はアクセプターであり,1700Kのアニールで消失する.(3)同様な試料について陽電子消滅測定を行ったところ,特にZ1/Z2準位と原子空孔のアニール挙動が良く一致することがわかった.


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