2002年度

プラズマ・核融合学会誌


310164
Dynamics of plasma during the formation of a weak negative central magnetic shear configuration using counter neutral beam injection in the JFT-2M tokamak
神谷健作* ; 木村晴行 ; 小川宏明 ; 川島寿人 ; 都筑和泰 ; 伊世井宣明 ; 佐藤正泰 ; 篠原孝司
プラズマ・核融合学会誌 78(12), p.1361-1367(2002) ; (JAERI-J 19808)

 反電流方向中性粒子ビーム入射による電子密度の尖塔化を伴う閉じ込め改善モードにおいては,鋸歯状振動の安定化が観測されている.運動シュタルク効果を利用した電流分布測定を行うことにより,その動的挙動が明らかになった.鋸歯状振動が安定化される過程において電流分布が平坦化するとともに中心電子温度が増加し,最終的に凹状電流分布(弱負磁気シアー配位)が形成された.一方,電流方向中性粒子ビーム入射の場合には電流分布が尖塔化し,鋸歯状振動の発生とともに閉じ込めは劣化した.このことから,弱負磁気シアー配位の形成には反電流方向電流駆動が重要な役割を果たしていることがわかった.また第一壁のボロンコーティングによる不純物制御効果により,今回得られた弱負磁気シアー配位は準定常維持に適した特性を示すことが示唆された.


310163
ITERにおけるトリチウムの安全取り扱いに向けた設計の考え方
大平茂
プラズマ・核融合学会誌 78(12), p.1325-1330(2002) ; (JAERI-J 19807)

 国際熱核融合炉(ITER)の安全上の特徴に基づいた安全設計や安全評価の技術的要件としての安全確保のための基本的な原則や考え方は,旧科学技術庁原子力安全局原子炉規制課の顧問会において報告書「ITER施設の安全確保の基本的考え方」に取り纏められた.ITER国内建設の場合,燃料であるトリチウムの取扱施設等の安全設計の基本設計及び基本的設計方針は,この安全原則に適合するように現在整備中の具体的方針等に従って実施されることとなる.ここでは,ITERのトリチウム取扱施設等の概要,安全設計と安全評価における技術的要件としての基本的な安全性の原則及びアプローチ(平常運転時におけるALARAの原則の履行,放射性物質を内蔵する機器の構造健全性の確保による事故の防止等)について説明し,万が一の事故時でも除去能力を有する排気設備が環境中への放射性物質放出を抑制し公衆の過度の放射線被ばくを防止することなど,日本における安全性の原則,考え方,技術基準に基づくトリチウムの安全設計概念等を述べた.


310162
JT-60におけるトリチウム管理
及川晃 ; 宮直之
プラズマ・核融合学会誌 78(12), p.1308-1312(2002) ; (JAERI-J 19806)

 この10年間のJT-60重水素実験において生成されたトリチウムの状況についての総合的報告である.JT-60施設の排気口中トリチウム濃度は,常時計測器の検知可能レベル以下であり,また,排水中のトリチウムの濃度は地元自治体との協定による目標値以下であり,法による限度値以下であった.真空容器内の第一壁等の定期自主点検作業時には,点検のための停止前4週間に,重水素以外のガスのプラズマ放電により第一壁中に滞留するトリチウムを追い出し,さらに,容器内を換気することにより,同位体交換効果によりバックグランド以下まで容器内トリチウム濃度を下げた.現在,さらに第一壁中のトリチウムの挙動等について,大学等と共同で分析研究を進めている.


310161
日本原子力研究所トリチウムプロセス研究棟(TPL)のトリチウム安全取り扱い技術に関する実績
山西敏彦
プラズマ・核融合学会誌 78(12), p.1295-1300(2002) ; (JAERI-J 19805)

 原研TPL(トリチウムプロセス研究棟)においては,1988年4月から今日まで,事故等によるトリチウム放出は皆無であり,約60gの大量トリチウムの安全取り扱い実績を積み上げている.安全設備のトリチウム除去系も順調に稼動しており,除去効率として設計値(100〜10000)よりも30〜80倍高い値を得ている.スタックから放出されている気体トリチウム廃棄物は,平均濃度26Bq/m3であり,放射線障害防止法の規制値の1/200以下を達成している.14年間のTPLの運転により,今後の核融合施設にとって重要なトリチウム取扱い機器の不具合データベース等を蓄積するとともに,トリチウム機器の保守・変換作業等に関する手順,ノウハウを確立することができた.さらなる核融合施設の安全取扱い技術向上に向けて,トリチウム軽量管理・挙動,トリチウム除染に関する研究活動を展開している.


310285
Axisymmetric tri-magnetic-islands equilibrium of strongly-reversed-shear tokamak plasma; An Idea for the current hole
滝塚知典
プラズマ・核融合学会誌 78(12), p.1282-1284(2002) ; (JAERI-J 19915)

 強い負磁気シアで電流ホールがあるトカマクプラズマの新しい平衡に関する見解を提案する.この「軸対称三磁気島(ATMI)平衡」と呼ばれる平衡配位はR方向に並んだ三つの磁気島(中心の負電流島と両側の正電流島)及びZ方向に並んだ二つのX点を持つ.この平衡は,ATMI領域内の電流値が小さく制限されているとき,エロンゲーションコイルにより安定となっている.


310078
Conceptual design of tokamak high power reactor (A-SSTR2)
西尾敏 ; 飛田健次 ; 牛草健吉 ; 小西哲之
プラズマ・核融合学会誌 78(11), p.1218-1230(2002) ; (JAERI-J 19742)

 経済性と環境安全性に優れたトカマク炉(A-SSTR2)の概念設計を行った.ITER-FEATとほぼ同じサイズのコンパクトさで,4GWの高い核融合出力を得るべく,規格化ベータβN=4及びトロイダルコイルの最大経験磁場23Tを設定した.60MW,1.5MeVの負イオン中性粒子ビーム電流駆動と約80%のブートストラップ電流で定常運転を行う.装置構成上の特徴はセンターソレノイド(CS)コイルが排除されている点である.CSコイルを排除してもプラズマ着火及び電流立ち上げが可能であることを1.5D輸送コードTOPICS及びASTRAコードを用いたシミュレーションにより示した.最大磁場23Tのトロイダルコイルに作用する強大な電磁力を支持するために,CSコイルを排除したトーラス中心領域に支持構造部及び中心支柱を配置し許容応力を満足する構造解を見いだした.ポロイダルコイルは6個と簡素化されているが,三角形度0.4,楕円度1.8のプラズマ平衡配位が得られている.ERRATO-Jコードの評価では,導体壁をr/a=1.2の位置に置くことでβN=4までキンクモード(n=1,2)が安定となる.TOPICSで得られた分布では,最大出力時においてもバルーニングモードは安定であることが確認されている.垂直位置不安定性については,バナジウム合金製の5cm厚の鞍型安定化シェルの設置により,不安定性の成長率を40Hzと抑制することができ,フィードバック制御の見通しが得られた.


310077
放射性廃棄物削減へ向けた研究の現状
飛田健次 ; 日渡良爾*
プラズマ・核融合学会誌 78(11), p.1179-1185(2002) ; (JAERI-J 19741)

 廃棄物削減の観点から,核融合プラント廃棄物管理について概説する.核融合廃棄物は廃炉後50年で大部分がクリアランス廃棄物になり,法令に基づく管理から除外され産業廃棄物として扱える見通しが得られている.この時点では数千トンあまりが低レベル放射性廃棄物として残るが,廃炉後100年以内にはこれらの表面線量率が十分下がることから,核融合廃棄物のほとんどすべてがリサイクル可能と考えられている.このように,最近の研究の多くは,核融合システムにおいて構成材料物質のクローズドシステムを構築できる可能性があることを示唆している.物質循環の構築へ向けた研究の方向性及び開発課題をまとめた.


310076
核融合動力プラントの安全性についての考察
小西哲之
プラズマ・核融合学会誌 78(11), p.1157-1164(2002) ; (JAERI-J 19740)

 ITERの安全ロジックに基づいて,核融合動力プラントの安全性について考察した.ITERの方法論は核融合の原理的安全の本質に根ざしたものであり,多くの部分で動力プラントでも適用できる.即ち,放射性物質とエネルギーのソースタームを摘出し,そのハザードの大きさと経路を解析するものであり,核分裂と比較すればその規模と経路の遠さが対策を容易にしている.ITERと動力炉の最大の違いはトリチウムとエネルギーの共存するブランケットであり,インベントリーは同規模でありながらトリチウム処理系の性格が大きく異なる.大量トリチウム除去系が能動的に常時トリチウム放出を管理する特徴から,核融合プラントは異常時のためのシステムを特別に必要としない.


310075
ITERの安全性と構造健全性の確保について
多田栄介 ; 羽田一彦 ; 丸尾毅 ; 安全評価グループ
プラズマ・核融合学会誌 78(11), p.1145-1156(2002) ; (JAERI-J 19739)

 ITERは,国際協力で進めているトカマク型核融合装置であり,現在参加極間で建設準備に向けた協議が進められている.ITER建設においては,サイト国の安全規制や規格・基準類に従うことが基本とされており,我が国においても日本誘致に備えた検討が行われてきている.これまでに,文科省(旧科学技術庁)によりITERの安全上の特徴に基づいた安全確保の基本的な考え方が示された.これに基づき,原研では(財)原子力安全研究協会に検討専門委員会及び分科会を組織し,我が国の技術基準に立脚しつつ,ITERに特有な技術基準の整備を進めてきた.本報では,ITERの安全上の特徴や構造上の特徴を概設しそれに基づく安全確保の考え方及び機械機器の構造健全性にかかわる基準案の概要について述べる.


301262
Profile and shape control of the plasmas with transport barriers towards the sustainment of high integrated performance in JT-60U
鎌田裕 ; JT-60チーム
プラズマ・核融合学会誌 78(9), p.949-967(2002) ; (JAERI-J 19676)

 ITER及び原型炉に向けた先進トカマク運転概念の確立を目標とした研究である.ITERに近接する無次元量領域で,内部及び周辺輸送障壁を持つプラズマの分布構造,応答と,それを決定するパラメータ相互の相関に関する研究を進め,分布形状制御による,安定性,閉じ込め性能,非誘導電流駆動性能,高密度化により総合性能を高めた.


310080
Power dependence of ion thermal diffusivity at the internal transport barrier in JT-60U
坂本宜照 ; 鈴木隆博 ; 井手俊介 ; 小出芳彦 ; 竹永秀信 ; 鎌田裕 ; 藤田隆明 ; 滝塚知典 ; 白井浩 ; 福田武司
プラズマ・核融合学会誌 78(9), p.941-948(2002) ; (JAERI-J 19744)

 内部輸送障壁(ITB)を伴う閉じ込め改善プラズマは,先進トカマク運転に適しているだけでなく,異常輸送を引き起こす原因を解く鍵となる.一般にITBの形成において加熱閾パワーが存在すると考えられている.本研究の目的は,ITB形成においてもL/H遷移のように明確な閾パワーが存在するか,あるいはITB形成による輸送の応答は連続的なのかを調べることである.そこで輸送特性の加熱パワー依存性を調べた.その結果,3MW以上の加熱パワーでパラボラ型のITBを形成し,イオンの熱拡散係数は加熱パワーに対して連続的に減少することが明らかになった.また8MWの加熱パワーでは,パラボラ型からボックス型のITBへ遷移し,この時のイオンの熱拡散係数の応答は不連続的であることが明らかになった.


301261
Fast ion loss measurement by IRTV in a reduced ripple experiment with ferritic inserts on JFT-2M
川島寿人 ; 都筑和泰 ; 谷孝志 ; 佐藤正泰 ; 鈴木貞明 ; 木村晴行
プラズマ・核融合学会誌 78(9), p.935-940(2002) ; (JAERI-J 19675)

 JFT-2Mにおいて高空間時間分解能を持つ2次元赤外線カメラ(IRTV)システムを開発した.目的は,フェライト鋼板(FP)による高速イオンのリップル損失低減効果を評価することにある.IRTV本体は,時間分解能1/60秒,測定可能温度範囲0-500℃を有す.検出部分には,3〜5μmの赤外線に感度を持つPtSi素子が256×256個並べられている.第一壁を見込むための光学系構成を簡素化(レンズ,反射鏡,サファイア真空窓各1枚)し,カメラ位置から壁までの距離を3.5mまで短くして高空間分解能約3mmを得た.これを用いて,NBIが熱中,リップル補足損失イオンによる局所的温度上昇を観測することができ,FP装着前には,温度の最高上昇分ΔTsが約75℃に達した.FP装着後,ΔTsは明らかに減少し,リップル低減の最適条件では温度上昇がほぼ零になってFPの高速イオン損失低減効果を明らかにできた.


310079
特異点解析
徳田伸二
プラズマ・核融合学会誌 78(9), p.913-924(2002) ; (JAERI-J 19743)

 トロイダルプラズマの安定性解析の方法に関して,その最近の発展について入門的な解説を行った.臨界安定が連続スペクトルの端点になっている磁気流体力学系における摂動解析に,特に,力点をおき,そのような問題に適切な漸近接続法に注目する.そこではNewcomb方程式と内部層方程式が本質的な役割を果し,それらの数値計算法を議論する.


301260
磁力線に沿った運動が関与する非局所輸送
滝塚知典 ; 北條仁志* ; 羽鳥尹承*
プラズマ・核融合学会誌 78(9), p.857-912(2002) ; (JAERI-J 19674)

 磁場閉じ込めプラズマ中の磁力線に沿った輸送について概説する.無衝突及び衝突拡散的輸送について比較する.その速い輸送のために,磁力線方向のプラズマの性質は非局所的に振る舞いやすい.トカマク中のスクレイプオフ層とダイバータプラズマの非局所的現象の一つを紹介する.その磁力線方向に形成される非対称性はスクレイプ層の電流に関連する熱電不安定性に起因する.MARFEと呼ばれる局所的な現象は強い放射冷却により作られる.磁力線方向に非局所的で磁力線垂直方向に局所的構造を持つスネークはトカマクの中心プラズマに生じている.ミラープラズマにおけるミラー端からの軸方向損失について紹介する.特にピチ角散乱によるロスコーンへの落下及び磁気モーメント断熱性の破れによる損失が非局所的な軸方向輸送に関連することを述べる.


301076
核融合装置用超伝導コイルの電磁現象; 強制冷却型超伝導コイル
濱田一弥 ; 小泉徳潔
プラズマ・核融合学会誌 78(7), p.616-624(2002) ; (JAERI-J 19513)

 現在,ITER等のトカマク型核融合炉の設計には,高磁場性能,高耐電圧性能,電磁力に対する高剛性の要求から,強制冷却型超伝導コイルが採用されている.強制冷却型超伝導コイルにおいては,超伝導の電気抵抗ゼロの特性や反磁性という性質に,ケーブル・イン・コンジット導体(CICC)特有の複雑な構造が加わることにより,多様な電磁現象が発生することが知られている.最近特に解明に労力が注がれているのは,導体内部に発生する不均一電流による通電安定性に対する影響や変動磁場で発生する導体の交流損失現象である.CICCの開発においては,超伝導素線のヒステリシス損失及び交流損失及び導体内部での不均一電流による不安定性について研究が進展し,素線のフィラメント配置の最適化や,素線間の接触抵抗の制御を行うことによって,ITERモデル・コイルのような大型超伝導コイルの開発に成功することができたので,その概要を報告する.


310286
粒子ビーム技術の材料産業への応用
花田磨砂也
プラズマ・核融合学会誌 78(6), p.541-547(2002) ; (JAERI-J 19916)

 核融合用に開発したイオンビーム技術は,材料産業に応用されている.現在は,主に正イオンが用いられており,イオンドーピングによる材料の改質や微細加工に応用されている.最近,負イオン生成技術の開発はめざましく進展し,産業への応用が期待されている.原研では,ITER用に開発したMeV級負イオン源を用いて,世界で初めて,10ミクロン厚さの単結晶シリコン板の製作に成功した.本技術により,次世代半導体基板製作の開発が促進されると期待されている.本稿では,ビームによる半導体単結晶薄板製作技術を中心に,核融合で開発したイオンビームの応用について解説する.


300998
強力中性子源IFMIFのためのイオン源開発
渡邊和弘
プラズマ・核融合学会誌 78(6), p.535-540(2002) ; (JAERI-J 19444)

 核融合炉での中性子環境を模擬し,材料の開発を行うための中性子源である国際核融合材料照射施設IFMIFの開発が行われている.この装置のイオン源として100keV,155mAの重陽子イオン源が要求されている.本報告ではIFMIF用のイオン源の開発状況について紹介する.


300901
ITER計測機器に対する放射線照射効果
西谷健夫 ; 四竈樹男* ; Reichle, R.* ; 杉江達夫 ; 角田恒巳 ; 河西敏 ; 石塚悦男 ; 山本新
プラズマ・核融合学会誌 78(5), p.462-467(2002) ; (JAERI-J 19367)

 ITER-EDAの工学R&Dの一環として行った,ボロメータ,光ファイバー及び磁気プローブ線照射試験の結果について報告する.ボロメーターは赤外軟X線領域の輻射を測定する素子であり,プラズマのパワーバランスを評価する重要な計測器である.ITERのボロメーターの候補であるマイカ薄膜ボロメータの実時間照射試験をJMTRを用いて行ったところ,マイカ薄膜に蒸着した金の抵抗体の抵抗値の著しい増加が観測され,金から水銀への核変換が原因であることを示した.また0.03dpa(目標0.1dpa)のフルエンスで断線が発生したため,蒸着抵抗体を白金等の核変換断面積が小さい物質に代える必要があることを指摘した.ITER共通試料の光ファイバー(日本製フッ素添加ファイバー2種類,ロシア製3種類)をJMTRで照射した.その結果フッ素添加ファイバー及びロシア製KU-H2G, KS-4Vが優れており,ITERの真空容器近傍でも使用可能なことを示した.無機絶縁ケーブルの照射誘起起電力(RIEMF)については,磁気プローブの両端の中心導体間の作動電圧に与えるRIEMFの影響を,高感度電圧計を用いて直接測定することを試みた結果,ノイズレベル(100nV)以下であり,1000秒間積分しても問題ないことを示した.


300900
JFT-2Mにおける低放射化フェライト鋼のプラズマ適合性試験; 真空容器内への部分的設置
都筑和泰 ; 伊世井宣明 ; 川島寿人 ; 佐藤正泰 ; 木村晴行 ; 小川宏明 ; 三浦幸俊 ; 小川俊英 ; 柴田孝俊 ; 秋山隆* ; 岡野文範 ; 鈴木貞明 ; 山本正弘 ; 宮地謙吾 ; JFT-2Mグループ
プラズマ・核融合学会誌 78(5), p.455-461(2002) ; (JAERI-J 19366)

 JFT-2Mにおいては,核融合原型炉の構造材の有力候補である低放射化フェライト鋼(F82H)のプラズマへの適用性を調べる実験を段階的に進めている.本実験では,最終段階の真空容器内壁の全面フェライト鋼化の前段階として,フェライト鋼板を真空容器内に部分的に設置し,不純物放出,及び磁気的影響の予備的評価を行った.また表面特性改善のため,その場ボロン化設備を新設した.真空排気,プラズマ生成は,設置前と同様の手法で行い,不純物放出,プラズマ制御への影響が小さいことを確認した.またプラズマ安定性を調べる実験を行い,磁気的特性がロックトモードに悪影響を与えないことを示した.一連のデータ取得後ボロンコーティングを行い,その有効性を確認したボロン化後,βn=2.7の高規格化βプラズマの生成を行うことができ,プラズマ高性能化にとっても有望な結果を得た.


300899
Observation of resistive wall modes in JT-60U
竹治智 ; 徳田伸二 ; 栗田源一 ; 鈴木隆博 ; 諫山明彦 ; 武智学* ; 大山直幸* ; 藤田隆明 ; 井手俊介 ; 石田真一 ; 鎌田裕 ; 及川聡洋 ; 坂本宜照 ; 津田孝 ; JT-60チーム
プラズマ・核融合学会誌 78(5), p.447-454(2002) ; (JAERI-J 19365)

 JT-60Uにおいて,低トロイダルモード数nの電流駆動型(規格化ベータβN≦0.2)及び圧力駆動型(βN≧2.4)理想MHDキンクモードの壁安定化にかかわる抵抗性壁モード(RWM)を同定し,そのMHD特性を明らかにした.まず,電流駆動型RWMの場合,導体壁の磁場染込み時間τwの5-10倍の成長率をもち,圧力駆動型RWMの場合はτwの1-10倍の成長率をもつこと,また,圧力駆動型RWMはτwの数倍程度までの周期のモード周波数を伴うことがわかった.また,圧力駆動型RWMは,プラズマがアルフベン速度の1%程度のプラズマトロイダル回転をもつ状態で発生し,その発生時に顕著なトロイダル回転速度の低下を伴わないことがわかった.さらに,圧力駆動型RWMの発生後に起こるプラズマ崩壊(放電の終了)は,10τw程度で成長するRWMの成長率がその10倍以上に急速(0.1ms以内)に変化した直後に起こることを明らかにした.


301075
相対論的レーザー・プラズマ相互作用,1
永島圭介
プラズマ・核融合学会誌 78(5), p.419-426(2002) ; (JAERI-J 19512)

 最近のプラズマ物理の研究分野において,相対論的レーザープラズマ相互作用は最も活発な研究テーマの1つになっている.本解説では,臨界密度以下のプラズマ中でのレーザープラズマ相互作用を簡潔に解説し,これに関連した実験結果と数値シミュレーションを紹介している.特に,準定常近似モデルを用いた相対論的レーザー自己収束,非線形レーザー航跡場,非線形パラメトリック散乱等の解析を説明し,さらに,粒子の運動論的効果を含めたより複雑な現象の解析では数値計算の重要性を挙げている.


300997
加熱中性粒子ビームを利用した核融合プラズマ計測
鈴木隆博 ; 杉江達夫
プラズマ・核融合学会誌 78(5), p.411-416(2002) ; (JAERI-J 19443)

 加熱中性粒子ビーム(NB)を利用した核融合プラズマ計測として代表的なモーショナルシュタルク効果(MSE)による磁場/電流分布計測について解説する.磁化したプラズマ中へ入射されたNB粒子は磁場によりv×B電場を感じる.電場の存在下では原子の発光線は偏光面が電場と垂直なσ偏光,平行なπ偏光に分岐する.偏光角を測定することでv×B電場の方向がわかり,vはNBの入射速度で既知であることから磁場の方向すなわちピッチ角を測定する.平衡計算によりプラズマ電流分布を得ることができる.また,幾何学的に独立な2つのMSEシステムを組み合わせると,プラズマの閉じ込めに重要な役割を担っていると考えられている径電場の計測を行うことが可能である.平衡計算により求めた磁束分布の時間変化から誘導電流を評価することで,非誘導電流分布の計測を行うことも可能である.解説ではITERにおける設計の現状と問題点についても触れる.


300898
ITER及びトカマク炉における中性粒子ビーム装置
井上多加志
プラズマ・核融合学会誌 78(5), p.398-404(2002) ; (JAERI-J 19364)

 核融合炉用加熱電流駆動装置に対する物理要求を満足するべく設計された,ITER NBシステムの工学設計の概要を紹介する.本稿では加熱・電流駆動にかかわる重要な設計項目であるITERプラズマに対するNB入射装置のレイアウトについて概説する.特にNB周辺電流駆動によって電流分布を制御し,高性能かつ定常化を目指す先進プラズマ運転について,ITER NB設計でどこまでフレキシビリティを確保できるか,という観点から筆者らが解析を行った結果を紹介する.またITERをターゲットとして進められている,負イオン源と加速器の開発の現状について報告し,将来のトカマク原型炉・実証炉設計において描かれているNBの実現性についても言及する.


300839
JT-60U、Alcator C-Mod及びASDEX-Upgradeトカマクにおける中立平衡点の評価
中村幸治 ; 芳野隆治 ; Granetz, R.S.* ; Pautasso, G.* ; Gruber, O.* ; Jardin, S. C.*
プラズマ・核融合学会誌 78(4), p.347-355(2002) ; (JAERI-J 19317)

 トカマク・ディスラプションの際発生する垂直移動現象(VDE)を回避するうえで有利な「中立平衡点」を,国際共同研究によって,JT-60U,Alcator C-Mod及びASDEX-Upgrade トカマクで調べた.米国のAlcator C-Modトカマクでは,キラー粒子を入射することで強制的にディスラプションを発生させ,VDEの様子を調べた.その結果,計算機シミュレーションの結果通り,赤道面から数cm上に「中立平衡点」が存在することを確認した.一方,ドイツASDEX-Upgradeトカマクのディスラプション・データベースを解析し,トカマク装置によってVDEに個性があり明確な「中立平衡点」が存在しないことがわかった.その原因を計算機シミュレーションで調べた結果,ディスラプションの最中生じているプラズマ電流分布の変化が垂直移動現象に強く影響していることを明らかにした.


300838
過渡的衝突励起方式によるX線レーザー開発
永島圭介 ; 河内哲哉 ; 加道雅孝 ; 田中桃子 ; 長谷川登 ; 助川鋼太* ; 難波慎一* ; Tang, H.* ; 大道博行 ; 加藤義章
プラズマ・核融合学会誌 78(3), p.248-255(2002) ; (JAERI-J 19316)

 超短パルスレーザーシステムを励起光源に用いて過渡的衝突励起方式による小型のX線レーザー開発を行っている.励起レーザー光はチタン,銀,スズといった金属ターゲット上に直線状に集光している.これにより,32.6nm(チタン),13.9nm(銀),11.9nm(スズ)の波長でX線レーザーの発振に成功している.さらに,こうしたX線レーザーの空間コヒーレンスを向上させるために高コヒーレントシード光の増幅実験を計画している.


300581
大規模シミュレーションに要求される画像解析システム
鈴木喜雄* ; 岸本泰明 ; NEXTグループ
プラズマ・核融合学会誌 78(1), p.59-69(2002) ; (JAERI-J 19112)

 平成12年度から平成13年度にかけて,那珂研究所の計算機システムの更新が行われた.本システムは,それまで導入されていた並列計算機の約40倍の性能を有するスカラー型の超並列計算機であり,実行される大規模シミュレーションから得られる結果のデータサイズは非常に膨大となる.本論文では,このような膨大なデータの中で繰り広げられる物理現象を理解するためには,どのような画像解析システムが有用であるかについて議論を行い,実際に導入されたシステムの性能について評価を行っている.


300691
ITER工学設計
下村安夫 ; 常松俊秀 ; 山本新 ; 丸山創 ; 溝口忠憲* ; 高橋良和 ; 吉田清 ; 喜多村和憲 ; 伊尾木公裕* ; 井上多加志 ; 今井剛 ; 小林則幸* ; 河西敏 ; 杉原正芳 ; 廣木成治 ; 中村博雄 ; 吉田浩 ; 本多力* ; 飯田浩正 ; 片岡敬博* ; 片岡良之* ; 西川明* ; 島裕昭* ; 松本宏 ; 荒木政則 ; 仙田郁夫* ; 嶋田道也 ; 本多琢郎* ; 荘司昭朗
プラズマ・核融合学会誌 78(Suppl.), 224p.(2002) ; (JAERI-J 19186)

 日本,米国,欧州,ロシアの4極の協定に基づき,1992年7月に開始されたITER工学設計活動(ITER-EDA)は,ITER建設の判断に必要な技術的準備を整え,2001年7月に9年間の活動を完了した.本件は,ITER工学設計活動において完成された最終設計報告書の物理及び工学設計の成果を簡潔にまとめたものである.


300580
カオスにおける相対論的効果; トカマクにおける逃走電子の損失機構
徳田伸二 ; 樋口高年* ; 鈴木宣之*
プラズマ・核融合学会誌 77(12), p.1180-1220(2001) ; (JAERI-J 19111)

 巨視的な磁場揺動の存在するトカマクにおける電子の相対論的運動を数値的に解析した.相対論的運動が引き起こすストカスティシティは,いわゆる,位相平均効果を上回り,ディスラプション時に逃走電子が発生することを回避・抑制する有効な損失機構となる.一方,いわゆるKAM領域にある電子はRunaway-snakeとして観測される.


300897
Tritium areal distribution on graphite tiles of JT-60U divertor by imaging plate technique
田辺哲朗* ; 宮坂和孝* ; 正木圭 ; 宮直之
プラズマ・核融合学会誌 77(11), p.1083-1084(2001) ; (JAERI-J 19363)

 JT-60Uのダイバータタイルに蓄積されているトリチウムの表面分布をイメージングプレートを利用して測定した.その結果は以下のようである.(1)JT-60Uのダイバータ領域の黒鉛タイルのトリチウム蓄積量は,ドーム頂部表面及び,ダイバータバッフル板で大きく,逆にダイバータ領域で小さくなっていた.(2)ダイバータ黒鉛タイルに蓄積されているトリチウムの分布は,基本的には,トリチウムが一旦プラズマから均一に打ち込まれ,その後の黒鉛の温度により放出量が異なることを反映している.特に表面温度が1000℃以上になったと思われるダイバータの足の部分では,トリチウムはほとんど検出されなかった.(3)詳細にみれば,1枚のタイル内でも,入熱からは予想しにくいトリチウム分布があり,再堆積層がIPの測定に影響を与えている可能性がある.(4)以上の結果は,すでにTEXTORの黒鉛タイルで見いだされたトリチウムの分布と類似している.


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