2002年度

材料と環境


310166
沸騰硝酸水溶液の酸化還元反応に対する熱力学的考察
加藤千明 ; 木内清 ; 杉本克久*
材料と環境 52(1), p.44-52(2003) ; (JAERI-J 19810)

 沸騰硝酸水溶液中における金属の腐食を理解するためには,溶液中,特に沸騰状態における高い平衡電位の発生機構を知る必要がある.最初に,ラマン分光法を用いて硝酸水溶液中に存在する窒素酸化物を分析した.そのうえで,SOLGASMIX計算コードを用いた熱力学的な計算により存在する窒素酸化物量を検討した.ラマン分光分析から硝酸濃度と温度が上昇すると解離していないHNO3の存在量が多くなった.また,NO2の存在量は硝酸の熱分解により多くなった.熱力学計算から,硝酸水溶液中に含まれる重要な窒素酸化物はNO3-,HNO3,HNO2,NO,NO2であることがわかった.しかしながら,硝酸水溶液中の平衡電位は,おもにHNO3/HNO2平衡によって決定された.また,熱力学計算から沸騰伝熱面における硝酸の酸化力上昇は伝熱面上でのHNO2の熱分解と沸騰バブルによって溶液から分解生成物が連続的に排出することによりHNO2濃度が低下して生じることが示唆された.


310165
沸騰硝酸環境におけるジルコニウムの耐食性に及ぼす伝熱の影響
加藤千明 ; 矢野昌也* ; 木内清 ; 杉本克久*
材料と環境 52(1), p.35-43(2003) ; (JAERI-J 19809)

 沸騰硝酸環境におけるジルコニウムの耐食性に及ぼす伝熱の影響を各硝酸濃度で調べた.伝熱面及び等温浸漬面における腐食減量と電気化学的分極曲線を測定した.その結果,ジルコニウムの腐食速度は等温浸漬面よりも伝熱面の方が大きくなることが明らかになった.その速度は硝酸濃度と溶液温度の上昇により大きくなった.沸騰伝熱面における硝酸の酸化力上昇は,伝熱面上での熱分解による亜硝酸濃度の低下と沸騰バブルによって分解生成物が溶液から排出されることにより引き起こされる.沸騰伝熱面における12mol/dm3硝酸水溶液の酸化還元電位はジルコニウムの一次不働態皮膜の破壊電位に非常に近づいた.これは,核燃料再処理プロセスの沸騰伝熱面において応力腐食割れが生じることを示唆している.


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