2002年度

低温工学


310087
ITER TFインサート・コイルのクエンチ特性と交流損失
礒野高明 ; 小泉徳潔 ; 松井邦浩 ; 杉本誠 ; 濱田一弥 ; 布谷嘉彦 ; Rodin, I.* ; CSモデル・コイル実験グループ
低温工学 37(10), p.539-544(2002) ; (JAERI-J 19751)

 トロイダル磁場(TF)インサート・コイルは,TF導体の特性を評価するためにロシアで開発され,中心ソレノイド(CS)モデルコイルの中に組込み,13T磁場下で試験した.本報告では主にクエンチ特性と交流損失について報告する.TF導体とCS導体と主な違いは,ジャケットの形状とマンドレルの有無であり,これが,クエンチ特性,交流損失に影響する.クエンチ試験は,46kA,12T,6.5Kで行い,常伝導転移後9秒まで電流を保持してクエンチ特性を測定した.常伝導転移長さは16mで,最大伝播速度は2m/sであった.最大温度は推定誤差が大きいが,160K程度と推定される.ヒステリシス損失は,熱量法で測定でき,素線の特性と良く一致した.しかし結合損失については,マンドレルの発熱が結合損失より10倍大きく,測定が難しい.TF導体のクエンチ特性などITERの設計反映できる情報が取得できた.


310086
ITER TFインサート・コイルの流体特性; 流体特性に対する電磁力の影響
濱田一弥 ; 河野勝己 ; 松井邦浩 ; 加藤崇 ; 杉本誠 ; 原英治* ; 奥野清 ; Egorov, S. A.* ; Rodin, I.* ; Sytnikov, V. E.* ; 高橋良和 ; CSモデル・コイル実験グループ
低温工学 37(10), p.531-538(2002) ; (JAERI-J 19750)

 国際熱核融合実験炉(ITER)の工学設計活動において,トロイダル磁場(TF)コイル用超伝導導体の製作性や性能を実証することを目的として,TF実寸導体を使用したTFインサート・コイルを開発し性能試験を行った.流体特性として,圧力損失特性が電磁力や通電履歴に依存する特性を示すか否かを検証した.過去の研究では,撚線は電磁力によって変形し,ジャケットと撚線との隙間に新たな流路が形成され,圧力損失が変化すると考えられる.また電磁力が繰り返し加わることによって撚線断面が塑性変形し,圧力損失の永久的な変化が起きると考えられるが,過去のモデル・コイル実験では,永久的な圧力損失の変化は明確には観測されていない.測定の結果,コイルを通電すると圧力損失は低下し,電磁力の影響を観測した.また,通電を積み重ねることによって,永久的な圧力損失の変化が生じることを観測した.圧力損失の変化を説明する撚線の変形量を計算した結果,13T,46kAで撚線は電磁力により1.4mm変形したと考えられる.


310085
ITER-TFインサート・コイルの分流開始温度
布谷嘉彦 ; 杉本誠 ; 礒野高明 ; 濱田一弥 ; 松井邦浩 ; 奥野清 ; CSモデル・コイル実験グループ
低温工学 37(10), p.523-530(2002) ; (JAERI-J 19749)

 国際熱核融合実験炉(ITER)の工学設計活動(ITER-EDA)を, ITER参加国である米国, 欧州, ロシア, 日本によって進めてきた.ITER-EDAの一環として, 日本原子力研究所は ロシア・エフレモフ電気物理研究所が主体になり製作したTFインサート・コイルの性能評価実験を原研の試験装置を用いてITER参加国と共同で行った.電圧タップより測定される電圧と,導体内の素線に発生している電圧の関係を定量的に考察することにより,分流開始温度の評価が正確に行われるよう考案した.これにより,定格条件(磁場12T,電流46kA)においての導体性能を把握することができ,ITER TFコイルの超伝導性能の実証を行った.


310084
ITERトロイダル磁場インサート・コイルの開発; ロシアとのハードウエアの研究協力
杉本誠 ; 中嶋秀夫 ; 加藤崇 ; 奥野清 ; 辻博史 ; Rodin, I.* ; Egorov, S. A.*
低温工学 37(10), p.513-522(2002) ; (JAERI-J 19748)

 国際熱核融合実験炉(Ineternational Thermonuclear Experimental Reactor, ITER) 中心ソレノイド(Central Solenoid, CS)モデル・コイル計画において,3つのインサート・コイルの開発・製作・試験を策定し,遂行してきた.2つめのインサート・コイルとしてトロイダル磁場インサート・コイル(以下TFインサートと記す)を,CSモデル・コイルの内側に設置し実験を行った.本報告では,このTFインサートの開発目標を記すとともに,ロシアでのコイル製作,日本での据付・実験について記す.TFインサートは,ITER-TFコイル用の超電導導体を用いて巻線した単層のソレノイドである(重量3.1トン).その開発はロシアと日本が共同で行い,原研の試験装置で性能評価を行った.その結果,開発目標である13T-46kAの通電に成功し,ITER-TFコイルが建設可能であることを実証した.


301082
ケーブル・イン・コンジット型超伝導導体の圧力損失及び結合損失に対する電磁力の影響
濱田一弥 ; 高橋良和 ; 松井邦浩 ; 加藤崇 ; 奥野清
低温工学 37(6), p.257-264(2002) ; (JAERI-J 19519)

 日本原子力研究所は,国際熱核融合実験炉(ITER)の工学設計活動の一環として,中心ソレノイド・モデル・コイル(CSMC)及びCSインサート・コイル(CSIC)の通電実験を行った.その結果,CSICの圧力損失が通電時に減少することや結合損失が電流値に依存することが観測された.これらの原因は,電磁力によってジャケット内部で超伝導撚線が圧縮変形して,新たに流路ができたことや,撚線部の変形により素線間の接触抵抗が変化したことが考えられるので,本論文ではこれらを定量的に説明することを試みた.その結果,電磁力によって撚線が約1.3mm変形すると実験と同様に圧力損失が低下することがわかった.また,圧力損失の検討結果等から導体の結合時定数を電磁力の関数として評価しCSICの結果損失を計算した.その結果,計算値は測定値とほぼ一致し,電磁力の影響を定量的に説明できた.


300902
ITER計画と超伝導コイル
吉田清
低温工学 37(5), p.190-201(2002) ; (JAERI-J 19368)

 国際熱核融合実験炉(ITER)で用いる主要機器の設計と機器開発は,国際協定に基づいて1992年から工学設計活動が実施され,2001年7月に完了した.現在,実機発注に向けた発注仕様書の準備を進めている段階で,ITER の建設は2005年頃に開始される予定である.ITER はプラズマの磁気閉じ込めと形状の制御のために超伝導コイルを用いる.超伝導コイル・システムはプラズマを生成するために,信頼性高く動作しなくてはならない.超伝導コイル・システムは機器コストの28%を要し,6年半の長い製造期間が必要になる.そのため,超伝導素線は ITER で最初に購入する部品になる.本稿は,ITERプロジェクトの現在の状況,設計案及び超伝導コイルを解説する.


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