2002年度

Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry


310256
Production of no-carrier-added 177Lu via the 176Yb(n,γ)177Yb→177Lu process
橋本和幸 ; 松岡弘充 ; 内田昇二*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(3), p.575-579(2003) ; (JAERI-J 19886)

 β線放出核種である177Luは,がん治療用の核種として有望である.半減期が6.73日,β線の最大エネルギーが498keVで,組織中のβ線の飛程が短い.さらに,画像化に適した208及び113keVのγ線を放出する.Lu-177は,通常176Lu(n,γ)177Lu反応を利用して高収率・高比放射能で製造される.しかしながら,標識抗体などを利用する放射免疫治療の分野ではより高い比放射能のRIが望まれている.そこで,無担体の177Luを製造するために,176Yb(n,γ)177Yb→177Lu反応を利用した製造研究を行った.本製造法では,マクロ量のYbターゲットから無担体の177Luを分離する段階が最も重要である.本研究では,逆相イオン対カラムクロマトグラフィーを用いて,その分離条件を検討した.その結果,5mgのYb2O3を用いた場合,80%の分離収率で無担体の177Luを得ることができた.


310255
Speciation of Eu(III) in an anion exchange separation system with LiCl-H2O/alcohol mixed media by time-resolved laser-induced fluorescence spectroscopy
有阪真* ; 木村貴海 ; 菅沼英夫* ; 吉田善行
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(2), p.385-389(2003) ; (JAERI-J 19885)

 塩化リチウム−水/アルコール混合媒体を用いる陰イオン交換(AG 1X8樹脂)系におけるEu(III)のクロロ錯形成を時間分解レーザー誘起発光分光法により評価した.Eu(III)のクロロ錯形成は,塩化リチウムまたはアルコール濃度の増加に伴い溶液相と樹脂相の両相で促進された.アルコール濃度の増加による錯形成促進効果はメタノールよりエタノールの方が顕著だった.溶液相では観察されなかった陰イオン錯体が樹脂相では見いだされ,樹脂相の化学環境はEu(III)のクロロ錯形成にとって特異な反応場を提供することがわかった.Eu(III)の陰イオン交換樹脂への吸着挙動は主に樹脂相の化学環境に支配され,Eu(III)は,吸着過程を通じて錯陰イオンを形成することを見いだした.


310254
Adsorbed compounds on pine needle surfaces for the environmental monitoring of uranium
齋藤陽子 ; 宮本ユタカ ; 間柄正明 ; 桜井聡 ; 臼田重和
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(2), p.341-345(2003) ; (JAERI-J 19884)

 環境への原子力活動の影響をよりよく理解するために,核物質の量及び分布を明らかにすること,すなわち,環境モニタリングが必要である.大気浮遊じんは,放射性物質や大気汚染物質の直接の輸送媒体であるため,しばしばモニタリングの指標として使われている.エアサンプラーは,大気浮遊じんを捕集するために使われるが,それらは捕集の時期や場所に制限がある.大気浮遊じんは,植物の葉表面に付着することが知られている.この現象に着目して,ウランの環境モニタリングのための指標として松葉表面付着物を利用することを検討した.原研東海研内の松林で採取した松葉を溶剤で洗浄し,表面付着物を回収した.また大気浮遊じんは,松葉採取と同じ場所でエアサンプラーにより捕集した.それぞれの元素濃度は機器中性子放射化分析(INAA)により測定した.松葉表面付着物中の元素濃度パターンは,同時期に捕集した大気浮遊じんと一致し,大気浮遊じんは,松葉表面付着物の主な成分であることがわかった.これらは,松葉表面付着物がウランの環境モニタリングのための指標となる可能性を示唆する.発表では,ICP-MSによるウランの同位体比及び定量分析の結果も報告する.


310253
New technique for the determination of trace elements using multiparameter coincidence spectrometry
初川雄一 ; 藤暢輔* ; 大島真澄 ; 早川岳人 ; 篠原伸夫 ; 櫛田浩平 ; 上野隆 ; 豊田和弘*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(1), p.111-113(2003) ; (JAERI-J 19883)

 γ線の同時計測の原理を応用することにより微小のγ線ピークの検出を可能にした多重γ線分析法について報告する.多重γ線分光法の開発,及びその応用として長寿命放射性核種129Iの分析と岩石試料中の極微量のイリジウムの分析について紹介する.129Iの分析においては海草中に含まれるヨウ素中に129I/127Iの比において3.5×10-10の微量の129Iの定量に成功した.またイリジウムの分析においては標準岩石試料中の300ppbから150pptの極微量のイリジウムの分析結果を示す.


300736
Chemical speciation of radionuclides through the microbial process in soils
柿内秀樹* ; 天野光 ; 一政満子*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 252(2), p.437-439(2002) ; (JAERI-J 19222)

 微生物による核種の吸脱着及び取り込みが起こるのか評価するため,Cs,Sr,Baと表層土壌から採取した微生物との相互作用を調べる実験を行った.(1)pH4,6,8の条件のもと5%PTYG BrothにおいてSr,Cs,Baイオン10ppm共存下30℃10日間培養を行ったところ,Sr,Csではほとんど微生物菌体への濃集は確認されなかった.Baは微生物菌体への濃集が確認され,培養開始のpHが低いほどその割合が顕著であった.(2)1%PTYG Broth(pH4)を用いてSr,Cs,Baイオン10ppm共存下30℃,5日間培養を行ったところ,Srは約75%,Csは約50%,Baは約40%が微生物上へ濃集されていた.この濃集成分について選択的抽出法を用いて存在形態を評価したところ,それぞれ種々の存在形態を示した.


300735
Characteristics of a simultaneous sampling system for the speciation of atmospheric T and 14C, and its application to surface and soil air
天野光 ; 駒知孝* ; 安藤麻里子 ; 小嵐淳* ; 飯田孝夫*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 252(2), p.353-357(2002) ; (JAERI-J 19221)

 空気中H-3,C-14について,化学形別同時サンプリング装置を開発し,その特性を調べた.また,その装置を用い,屋外空気,土壌空気についてサンプリングを行い,化学形ごとの濃度を定量した.本装置では,H-3について水蒸気,水素ガス,及びメタンの化学形を,C-14について二酸化炭素及びメタンの化学形のものを同時に採取できる.


301042
Development of rapid bioassay method for plutonium
桑原潤 ; 野口宏
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 252(2), p.273-276(2002) ; (JAERI-J 19479)

 プルトニウムの内部被ばくにおいて,摂取量評価のための最も高感度な方法は,排泄物試料を用いたバイオアッセイ法である.しかしながら,従来の方法は分析に数日を要していたため緊急時における迅速な対応という観点では適応が困難であった.そこで高感度なバイオアッセイ法を緊急時にも対応できる方法とするため,尿中プルトニウムの迅速なバイオアッセイ法の開発を行った.化学分離精製操作には,マイクロウェーブ湿式灰化装置や抽出クロマトグラフィーレジンを用いることで,分析時間の短縮化を行った.また,測定器には,超音波ネブライザを接続した誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いることで,測定時間を大幅に短縮することができた.全分析所要時間は12時間であり,本分析法は緊急時に有効なプルトニウムのバイオアッセイ法であるといえる.


300734
Characterization of hot particles in surface soil around the Chernobyl NPP
柳瀬信之 ; 磯部博志* ; 佐藤努* ; 眞田幸尚* ; 松永武 ; 天野光
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 252(2), p.233-239(2002) ; (JAERI-J 19220)

 チェルノブイル事故炉の周辺土壌中に多く含まれるホットパーティクル(HP)の特徴を研究した.用いた手法は,αトラック法,γ線スペクトロメトリー,選択的抽出法,電子顕微鏡分析である.事故炉周辺には約11年経過した時点においても,燃料起源のUO2形のHPが存在しており,HPが占める放射能の割合が10〜20%であることがわかった.選択的抽出法の結果,土壌中Uのかなりの部分が有機物相及びHP成分に含まれていることがわかった.しかし,湖畔のような湿潤な環境では,吸着成分が多くなっていた.チェルノブイルのような事故の場合,放射性核種の長期の移行挙動を予測するには,HPの変質・溶解の速度及び機構を明らかにすることが重要である.


300733
The Geochemistry of uranium in pore waters from lake sediments
長尾誠也 ; 柳瀬信之 ; 山本政儀* ; 小藤久毅* ; 宗林由樹* ; 天野光
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 252(2), p.225-232(2002) ; (JAERI-J 19219)

 陸域環境の天然水において,ウランの濃度は数ppt〜数十pptと低濃度であるため,測定及びサンプリング時の汚染や還元環境下にある試料の場合には酸化等の問題により,信頼性の高い測定値はそれほど報告されてはいない.本研究では,還元環境が比較的安定に維持されている湖底堆積物に着目し,6つの湖の堆積物から窒素ガスバッグの中で空気に触れないように間隙水を分離して濾過後,実験室に持ち帰りICP-MSによりウラン濃度を測定した.還元環境下にある間隙水中のウラン濃度は,6.9〜145ng/Lの範囲にあり,湖により異なる値を示した.これらのウラン濃度は,結晶質あるいは非晶質のウラン酸化物・水酸化物の還元環境下での溶解度に比べて1桁以上低いこと,2価鉄が検出されていることから,湖によるウラン濃度の変動は,間隙水サンプリング時における酸化等の影響とは考えにくく,各湖底堆積物内でのウランの挙動の違いを反映している.


300732
Back-extraction of tri- and tetravalent actinides from diisodecylphosphoric acid (DIDPA) with hydrazine carbonate
渡邉雅之 ; 龍ヶ江良三* ; 森田泰治 ; 久保田益充*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 252(1), p.53-57(2002) ; (JAERI-J 19218)

 効率のよい分離プロセスをデザインするにあたって,単純な試薬を用いることは,プロセスを簡略化するうえでも,二次廃棄物を消滅するうえでも非常に有利である.以前,著者らは,炭酸ヒドラジンがDi(2-ethylhexyl)phosphoric acid(HDEHP)に抽出された三価及び四価アクチノイドを効率的に逆抽出できること,また,その逆抽出メカニズムについて明らかにした.本報では,Diisodecylphosphoric acid(DIDPA)から三価及び四価のアクチノイドの逆抽出について明らかにすることを目的とした.Am(III),Eu(III)及びNp(IV)については,HDEHPと同様の逆抽出挙動を示すが,Pu(IV)についてはHDEHPの場合とは大きく異なる挙動を示すことが明らかになった.その結果,Np(IV)とPu(IV)との間の分離係数は,六倍ほど向上し,25程度となり,炭酸ヒドラジンによってNp(IV)の選択的な分離が可能であることが明らかとなった.


300529
18F used as tracer to study water uptake and transport imaging of a cowpea plant
中西友子* ; 多野井慶太朗* ; 横田はる美* ; Kang, D. -J.* ; 石井龍一* ; 石岡典子 ; 渡辺智 ; 長明彦 ; 関根俊明 ; 松橋信平 ; 伊藤岳人* ; 久米民和 ; 内田博* ; 辻淳憲*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 249(2), p.503-507(2001) ; (JAERI-J 19060)

 マメ科の植物の中できわめて乾燥に強いと考えられるササゲ(Vigna unguliculata Walp.)を用いて水分吸収の計測を行った.ササゲは茎の下部に乾燥に耐えるための水分保持組織を発達させていると考えられている植物である.われわれは,中性子ラジオグラフィの手法を用いてこの組織が他の茎よりも水分量が多いことを確認した.またサイクロトロンによって製造された18F標識水を用いてPETIS法によりササゲの水分吸収動態を測定した.インゲンマメとササゲで水分吸収を比較すると,乾燥処理でもササゲのほうが高い水分吸収活性を維持していることが示され,より乾燥に強い性質を有していることが示唆された.


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