2002年度

Physical Review C


310143
How good are the internal conversion coefficients now?
Raman, S.* ; Nestor Jr., C. W.* ; 市原晃 ; Trzhaskovskaya, M. B.*
Physical Review C 66(4), p.044312_1-044312_23(2002) ; (JAERI-J 19787)

 励起状態にある原子核がγ線を放出する代わりにK,L,M,…原子軌道電子を放出する現象を,γ線の内部転換と呼ぶ.核構造を解析するために,内部転換が起こる確率とγ線が出る確率との比で定義される,内部転換係数の測定が広く行われている.現在までに5%の誤差内で測定された100種類の内部転換係数について,理論値との比較を行った.理論計算には,相対論的Harterr-Fock-Slater(RHFS)法とDirac-Fock(DF)法の2種類を用いた.その結果,RHFS法よりもDF法による理論計算の方が実験値をより良く再現することを確認した.さらに,DF計算で取り入れた(1)電子の交換相互作用,(2)原子内の電子の空孔状態,(3)有限な核半径の効果の重要性を定量的に示した.


301246
Coherent φ and ω photoproduction from deuteron and non-diffractive channels
Titov, A.* ; 藤原守* ; Lee, T.-S. H.*
Physical Review C 66(2), p.022202_1-022202_5(2002) ; (JAERI-J 19660)

 重水素を標的とするコーヒレントφ中間子,ω中間子生成においては,アイソベクトル型の性質を持つπ中間子交換過程が少なくなる.この研究では(1)φ中間子発生における非回折チャンネル,(2)ω中間子発生における核子共鳴,をスピン観測量を通じて調べる可能性を検討した.


301164
Effective Lagrangian approach to the ω photoproduction near threshold
Titov, A.* ; Lee, T.-S. H.*
Physical Review C 66(1), p.015204_1-015204_12(2002) ; (JAERI-J 19588)

 ω中間子の光生成における核子共鳴の役割を,生成閾値付近のエネルギー領域で理論的側面から研究した.核子共鳴による反応振幅の計算には,実効ラグランジアンによる手法を用いた.その結果,核子共鳴の寄与は,光生成反応の微分断面積の分布を変えるほど大きいことがわかった.また,用いた計算手法の実験的検証は,スピン非対称性の測定によって可能であることを示した.


301055
First order phase transition of expanding matter and its fragmentation
近角真平* ; 岩本昭
Physical Review C 65(6), p.067601_1-067601_4(2002) ; (JAERI-J 19492)

 膨張運動する物質内の不安定性及びフラグメンテーションを拡張した周期的境界条件を課した分子動力学(膨張物質モデル)で調べる.膨張物質の満たす状態方程式はその膨張運動のために熱平衡状態のものと異なる性質を持つ.膨張物質モデルは膨張物質の時間発展を行い,その各時刻の圧力,温度などを計算できるモデルであり,膨張運動速度をパラメータにすることでこれらの熱力学的量の膨張速度に対する影響を系統的に調べることができる.特に密度変化に対する温度変化は熱平衡系の液相気相相転移との関係が興味深い.本研究では膨張物質モデルによって温度の密度に対する時間発展を調べるとともに,熱平衡状態の厳密な液相気相共存線をGibbsアンサンブル法を用いて計算している.液相気相共存線は熱平衡においては不安定性の境界である.しかしながら,膨張速度が速い,すなわち熱平衡から離れた状態においては系の不安定領域は異なる境界を持っている.膨張物質モデルの準静的極限では液相気相共存線内で温度が一定になることが確かめられた.これは1次相転移の特徴である.一方,膨張速度が速い場合は膨張に伴う密度揺らぎが共存域に入ってからもしばらく発生せず,系の一様性が維持される.すなわち,膨張運動が系の不安定性を抑制していることがわかる.系の不安定性はフラグメント生成として発現する.フラグメント質量分布は膨張速度と初期温度に依存する.膨張系から生じるフラグメント質量分布はbimodal指数分布になることが知られているが,本研究ではその小数フラグメント部分がパワー則とみなされる可能性に言及している.


301054
Polarization transfer in the 16O(p,p') reaction at forward angles and structure of the spin-dipole resonances
川畑貴裕* ; 石川貴嗣* ; 伊藤正俊* ; 中村正信* ; 坂口治隆* ; 竹田浩之* ; 瀧伴子* ; 内田誠* ; 安田裕介* ; 与曽井優* ; 秋宗秀俊* ; 山崎かおる* ; Berg, G. P. A.* ; 藤村寿子* ; 原圭吾* ; 畑中吉治* ; 神谷潤一郎* ; 野呂哲夫* ; 大林恵美* ; 若狭智嗣* ; 吉田英智* ; Brown, B. A.* ; 藤田浩彦* ; 藤田佳孝* ; 新原佳弘* ; 上野秀樹* ; 藤原守* ; 細野和彦* ; 民井淳* ; 豊川秀訓*
Physical Review C 65(6), p.064316_1-064316_12(2002) ; (JAERI-J 19491)

 392MeVでの16O(p,p')反応における反応断面積と偏極観測量が散乱角0°から14°までの角度で測定された.16O原子核の離散準位と共鳴準位へのスピン反転,スピン非反転強度がモデルに依存しない形で得られた.励起エネルギー19〜27MeVの領域の巨大共鳴が主に角運動量移行L=1で励起されていることがわかった.ΔS=1,ΔL=1をもつスピン双極子遷移の励起強度が求められた.その強度は理論計算と比較された.実験結果は原子核の殻模型から計算された波動関数を用いたDWIA核反応計算で説明されることがわかった.


301053
High-K negative parity states in 184Os
静間俊行 ; Stevenson, P. D.* ; Walker, P. M.* ; 藤暢輔* ; 早川岳人 ; 大島真澄 ; 古野興平* ; 小松原哲朗*
Physical Review C 65(6), p.064310_1-064310_12(2002) ; (JAERI-J 19490)

 170Er(18O,4n)反応を用いて,184Os原子核の高スピン状態の研究を行った.その結果,半減期48ナノ秒,Kπ=(18-)の核異性体とともに,新しい負パリティ状態の観測に成功した.多準粒子配位の計算から,ニルソン準位による配位を決定した.また,ポテンシャルエネルギー表面の計算結果から,184Os原子核の高スピン負パリティ状態において,3軸非対称変形が現れることがわかった.さらに,Kπ=(18-)の核異性体の崩壊におけるK量子数の役割について明らかにした.


300988
Effects of neutron number and nuclear deformation on complete fusion of 60,64Ni+154Sm near the Coulomb barrier
光岡真一 ; 池添博 ; 西尾勝久* ; 佐藤健一郎* ; Lu, J.*
Physical Review C 65(5), p.054608_1-054608_9(2002) ; (JAERI-J 19434)

 クーロン障壁近傍での重イオン融合反応が,原子核の変形や入射エネルギー,入射核の中性子数にどのように依存しているかを調べるために,60Ni+154Sm及び64Ni+154Smにおける融合残留核の励起関数を測定した.実験は,原研タンデムブースター加速器を用いて行い,60Ni及び64Niビームを変形核154Smターゲットに照射した.融合原子核214Th及び218Thの残留核は,反跳生成核分離装置を用いて分離し,崩壊で放出されるα線を検出することを同定した.測定結果を,変形の効果を取り入れた理論計算と比較した結果,融合の確率が変形核への衝突の向きに強く依存することがわかった.また,中性子数が4つ多い64Niビームの場合,60Niビームに比べて反応確率が100倍程度大きくなることがわかった.


300888
Effect of shell structure in the fusion reactions 82Se+134Ba and 82Se+138Ba
佐藤健一郎* ; 池添博 ; 光岡真一 ; 西尾勝久 ; Jeong, S. C.*
Physical Review C 65(5), p.054602_1-054602_9(2002) ; (JAERI-J 19354)

 重イオンの融合反応における殻効果を調べた成果の発表である.中性子数が82である138Baを標的にした82Se+134Ba融合反応と中性子数が78である134Baを標的にした82Se+134Ba融合反応で生成される蒸発残留核の断面積をそれぞれ測定した.その結果,中性子数82でマジック数になっている82Se+138Ba融合反応が82Se+134Baに比べ100倍程融合確率が大きいことがわかった.これは中性子数がマジックであることと関係していると考えられる.中性子数がマジックな原子核は励起しにくいため,衝突時により接近できるという理論計算と一致している.この事実はより重い元素(超重元素)を合成するための重要な要素になる.


300743
Systematics of cluster decay modes
Poenaru, D. N.* ; 永目諭一郎 ; Gherghescu, R. A.* ; Greiner, W.*
Physical Review C 65(5), p.054308_1-054308_6(2002) ; (JAERI-J 19229)

 アクチノイドなどの重核の新しい壊変様式として,炭素,酸素,フッ素,ネオンなどの自発重粒子壊変が最近実験的に確認されている.実験データの系統性ならびに重粒子壊変の理論計算に基づき,重粒子壊変と原子核の殻構造について議論する.また今後の重粒子壊変の観測が可能な核種を予測するとともに,重粒子壊変における半減期を推定する式を導き出した.


300550
Configuration-dependent band structures in odd-odd 180Ir
Zhang, Y. H.* ; 早川岳人 ; 大島真澄 ; 片倉純一 ; 初川雄一 ; 松田誠 ; 草刈英榮* ; 菅原昌彦* ; 小松原哲朗* ; 古野興平*
Physical Review C 65(1), p.014302_1-014302_15(2002) ; (JAERI-J 19081)

 中性子数,陽子数ともに奇数の原子核180Irの縞スピン核構造を調べた.タンデム加速器を使って154Sm(31P, 5ng)反応により180Irを生成し,励起関数,X-γ,γ-γ-t同時計数測定を行った.新たに4個の回転バンド(状態群)が観測され,これらの励起エネルギーの特徴とB(M1)/B(E2)比から,内部配位を決定した.1つのバンドで見つかった指標逆転現象について系統性を議論した.


300549
Distribution of the Gamow-Teller strength in 90Nb and 208Bi
Krasznahorkay, A.* ; 秋宗秀俊* ; 藤原守* ; Harakeh, M. N.* ; Janecke, J.* ; Rodin, V. A.* ; Urin, M. H.* ; 与曽井優*
Physical Review C 64(6), p.067302_1-067302_4(2001) ; (JAERI-J 19080)

 450MeVでの(3He, t)荷電交換反応が90Zrと208Pbに対して測定された.ガモフ・テラー強度が分裂していることが観測された.理論計算の比較が行われ,この分裂が説明された.


300742
Evidence for a 3.8 MeV state in 9B
秋宗秀俊* ; 藤村寿子* ; 藤原守* ; 原圭吾* ; 石川貴嗣* ; 川畑貴裕* ; 宇都宮浩章* ; 山県民穂* ; 山崎かおる* ; 与曽井優*
Physical Review C 64(4), p.041305_1-041305_4(2001) ; (JAERI-J 19228)

 450MeV 3Heビームを用いて9Be(3He, t)反応断面積が測定され,3.8MeV,1.8.MeVの励起準位が9B核で存在する証拠が提示された.


300820
Extreme location of F drip line and disappearance of the N=20 magic structure
宇都野穣 ; 大塚孝治* ; 水崎高浩* ; 本間道雄*
Physical Review C 64(1), p.011301_1-011301_5(2001) ; (JAERI-J 19298)

 モンテカルロ殻模型に基づき,奇核を含むN=20不安定核の構造を系統的に研究し,N=20魔法数の消滅のメカニズムを調べた.Z=11, 12核では,主に変形の効果により,sd殻からpf殻へ2粒子2空孔励起する配位が基底状態を支配するのに対し,Z=9のフッ素アイソトープでは,4粒子4空孔励起などさまざまな配位が混合する.陽子数に対する殻構造の変化を有効1粒子エネルギーの考え方に基づいて議論した.その結果,Z=9ではN=20が魔法数である通常の殻構造よりもむしろ,Z=8で見られるN=16魔法数の特徴が顕著に現れているため,0d3/2軌道とpf軌道が非常に混ざりやすくなっていることがわかった.この配位混合の増大が,Z=8から9にかけて中性子ドリップラインが著しく延びる現象に対し,重要な役割を担っていることを指摘した.


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