2002年度

Radiochimica Acta


310274
Effective diffusivity of neptunium and plutonium in granite from Inada, Ibaraki, Japan under anaerobic conditions
山口徹治 ; 中山真一 ; 岡本久人
Radiochimica Acta 90(12), p.863-868(2003) ; (JAERI-J 19904)

 地層処分場から漏えいした超ウラン元素が亀裂性の母岩材内を地下水によって移行するとき,岩石マトリクス内への拡散とそれに伴う鉱物表面への吸着により,その移行が著しく遅延されると期待される.この効果を安全評価に取り入れるためには,健全な岩石内における超ウラン元素の拡散のしくみを明らかにしなければならない.そこで,稲田花崗岩内におけるNpとPuの拡散を透過法で調べた.深地下を想定して,低酸素濃度かつ炭酸イオンが共存する条件,すなわちNpとPuが炭酸錯体として溶存する条件で実験を行った.Npの有効拡散係数として(4.4±1.1)×10-13m2s-1,Puについて(2.0±0.6)×10-13m2s-1が得られた.これらの元素は岩石内において,細孔拡散モデルに調和的な拡散挙動をとることが明らかになった.


310275
Sorption and reduction of Neptunium(V) on the surface of iron oxides
中田弘太郎* ; 長崎晋也* ; 田中知* ; 坂本義昭 ; 田中忠夫 ; 小川弘道
Radiochimica Acta 90(9-11), p.665-669(2002) ; (JAERI-J 19905)

 鉄酸化物はその表面で放射性核種を吸着することにより,地層中での放射性核種の移行を遅延させることが知られている.このような吸着反応において酸化還元反応に敏感な一部の元素に対して,単なる吸着だけでなく,鉄鉱物中のFe(II)による還元反応を伴う吸着反応の可能性が指摘されてきた.そこで,本研究ではFe(II)を含むマグネタイトとFe(III)のみのヘマタイトへのNp(V)の吸着反応について,大気条件下及び低酸素条件下で調べた.その結果,マグネタイトに対しては低酸素条件下でのNp(V)の吸着量が大気条件下よりも増加するとともに,その吸着形態は大気条件下で見られたイオン交換的な吸着よりも強い結合であることが示された.しかし,ヘマタイトではこのような現象が認めらないこと,低酸素条件下でマグネタイトに吸着したNpがNp(IV)を抽出するTTAで抽出された結果から,低酸素条件下ではマグネタイトへのNp(V)の吸着がNp(IV)への還元を伴う吸着現象である可能性を示唆した.


300993
Photofission of 209Bi at intermediate energies
羽場宏光* ; 笠岡誠* ; 五十嵐学* ; 鷲山幸信* ; 松村宏* ; 大浦泰嗣* ; 柴田誠一* ; 坂本浩* ; 古川路明* ; 藤原一郎*
Radiochimica Acta 90(7), p.371-382(2002) ; (JAERI-J 19439)

 最大エネルギー(E0)=450-1100MeVの制動放射線を209Bi標的に照射し,生成核質量数領域56≦A≦135において総計63核種の光核分裂収率を測定した.これらの収率値に,most probable charge(Zp)をAの一次関数Zp=RA+S,分布の半値幅FWHMCDをAによらず一定と仮定したガウス関数を最小二乗フィットさせ荷電分布を求めた.Zp並びにFWHMCD値は,E0≧600MeVで変化せず一定でR=0.421±0.001,S=0.6±0.1,FWHMCD=2.1±0.1c.d.であった.これらの荷電分布パラメータを基に収率データがある質量数で質量収率を求めた.得られた対称的質量収率分布はガウス関数で再現でき,その半値幅(FWHMMD)とmost probable mass(Ap)はそれぞれFWHMMD=33±1m.u.,Ap=96±1m.u.であった.本研究で得られた209Biの荷電分布,質量収率分布は,197Auの同様の実験結果並びに光子誘起核内カスケード理論計算PICA3/GEM(Photon-induced Intranuclear Cascade Analysis code combined with the Generalized Evaporation Model)と比較しながら議論する.


300891
Direct evidence for enchanced inner-sphere chloro complexation of Eu(III) and Cm(III) in anion exchange resin phase studies by time-resolved laser-induced fluorescence spectroscopy
有阪真* ; 木村貴海 ; 菅沼英夫* ; 吉田善行
Radiochimica Acta 90(4), p.193-197(2002) ; (JAERI-J 19357)

 塩化リチウム−メタノール水混合溶媒を用いる陰イオン交換分離系におけるEu(III)とCm(III)の樹脂相での存在状態を解明するために,時間分解レーザー誘起発光分光法を適用した.発光寿命測定により決定した内部水和数及び発光スペクトルの解析からイオンの存在状態を評価し,(1)Eu(III)とCm(III)の内圏型クロロ錯形成は塩化リチウム及びメタノール濃度の増加により促進されること,(2)両イオンともに溶存種に比べて吸着種の方がより高次の内圏型クロロ錯体であること,(3)Eu(III)に比べCm(III)の方がより高次の内圏型クロロ錯体を形成しやすいことを明らかにした.以上の結果はそれらの分配係数(Kd)とも良い相関を示し,Eu(III)とCm(III)のKdは(1)と(2)によって増加し(3)によってその相互分離が達成されることを見いだした.


300671
Production of positron emitters of metallic elements to study plant uptake and distribution
渡辺智 ; 石岡典子 ; 長明彦 ; 小泉光生 ; 関根俊明 ; 清宮正一郎* ; 中西啓仁* ; 森敏*
Radiochimica Acta 89(11-12), p.853-858(2002) ; (JAERI-J 19166)

 植物用ポジトロンイメージング装置の開発に伴い,ポジトロン放射体が植物の生理的な機能解明に有用であることがわかってきた.われわれは,この研究に用いるポジトロン放射体としてC-11,N-13,F-18等軽元素核種標識化合物の製造研究を行ってきた.今回は,新たにポジトロン放出金属元素金属元素V-48,Mn-52,Fe-52,Zn-62について製造開発を行った.AVFサイクロトロンからの陽子またα粒子ビームをターゲット物質に照射し,目的のアイソトープをイオン交換法または鉄共沈法によりターゲット物質から分離し,トレーサーとして必要な化学形に調製した.トレーサー溶液中の放射性不純物及び非放射性不純物をごく微量に抑えることができ,植物実験に十分供し得るトレーサーを製造する方法を確立した.


300670
Startup of transactinide chemistry in JAERI
羽場宏光* ; 塚田和明 ; 浅井雅人* ; 西中一朗 ; 阪間稔* ; 後藤真一* ; 平田勝 ; 市川進一 ; 永目諭一郎 ; 金子哲也* ; 工藤久昭* ; 豊嶋厚史* ; 正司譲* ; 横山明彦* ; 篠原厚* ; 大浦泰嗣* ; 末木啓介* ; 中原弘道* ; Schadel, M.* ; Kratz, J. V.* ; Turler, A.* ; Gaggeler, H. W.*
Radiochimica Acta 89(11-12), p.733-736(2002) ; (JAERI-J 19165)

 われわれの研究グループでは,超アクチノイド元素の化学挙動実験を計画している.最近,原研タンデム加速器を用いて加速される18O,19Fを248Cmターゲットに照射し,それぞれ261Rf,262Dbの合成に成功した.これらの核種の測定は新しく開発したα線連続測定装置を用いて行い,親娘のα-α相間事象によって確認した.化学挙動実験の最初としてRfの溶液化学実験を計画している.その準備として,Rfの同族元素Zr並びにHfに加え擬4族元素Th並びにPuの放射性トレーサを製造し,硝酸−フッ酸,硝酸並びに塩酸系においてイオン交換の分配係数を系統的に測定した.またRfのone-atom-at-atime chemistryを目指し,繰り返実験が可能な高速液体クロマトグラフ装置を開発しテストを行った.


300554
Characteristics of two fission modes
永目諭一郎 ; Zhao, Y.* ; 西中一朗 ; 後藤真一* ; 加治大哉* ; 谷川勝至* ; 塚田和明 ; 浅井雅人* ; 羽場宏光* ; 阪間稔* ; 市川進一 ; 末木啓介* ; 工藤久昭* ; 中原弘道*
Radiochimica Acta 89(11-12), p.681-688(2002) ; (JAERI-J 19085)

 核分裂における対称,非対称質量分割という二つの分裂モードに対応する質量分布並びに運動エネルギー分布を広範なアクチノイド領域のデータをもとに系統的に議論する.これをもとに重アクチノイド核領域で特異な現象として観測されているbimodal fission過程を二つの分裂モード解釈できることを示す.


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