2002年度

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, A


301242
High-temperature XAFS measurement of molten salt systems
岡本芳浩 ; 赤堀光雄 ; 本橋治彦* ; 伊藤昭憲 ; 小川徹
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 487(3), p.605-611(2002) ; (JAERI-J 19656)

 希土類塩化物のような空気中で活性な溶融塩系の局所構造を調べるために,最高到達温度1000℃の高温XAFS測定システムを開発した.砂時計型の石英セルの上部タンクに固体試料を減圧状態でセットし,電気炉で溶融させ,厚さ0.1mm(0.2mm)の融体パスを通過するところで,XAFS測定を実施した.石英の吸収のために,10keV以上のエネルギー領域に測定が限られたが,本測定システムで吸湿性の高い活性な溶融塩系のXAFS測定が可能であることを確認した.


301241
Two-dimensional neutron imaging method using scintillators with wavelength shifting fibers
藤健太郎* ; 片桐政樹 ; 坂佐井馨 ; 松林政仁 ; 美留町厚 ; 高橋浩之* ; 中澤正治*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 485(3), p.571-575(2002) ; (JAERI-J 19655)

 次世代パルス中性子源を利用した中性子散乱研究に利用可能なシンチレータと波長シフトファイバを組み合わせた二次元中性子イメージング検出法の研究を進めている.本イメージング法は矩形シンチレータの4つの側面にそれぞれ波長シフトファイバを配置した構造の検出素子を用いている.入射する中性子の位置は,これら4本の波長シフトファイバから同時に蛍光が検出された場合入射位置とする方法により決定される.5×5×2mmtのLiガラスシンチレータを4×4のアレイとして配置した中性子イメージング検出素子を作製し基礎実験を行った.この結果,中性子検出効率が13%で,かつシンチレータ間のクロストロークが10%以下の位置精度で中性子イメージングが可能であることを確認した.


310261
Systematic measurement of maximum efficiencies and detuning lengths at JAERI free-electron laser
西森信行 ; 羽島良一 ; 永井良治 ; 峰原英介
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 483(1-2), p.134-137(2002) ; (JAERI-J 19891)

 FEL変換効率(η)のデチューニング曲線をさまざまなゲインとロスのパラメーターで測定を行った.デチューニング長(dL)の絶対値は変換効率の最大付近で0.1μmの精度で測定を行った.そのために外部レーザーを用いた光共振器内でのパルススタッキングを利用する.FELのゲインはバンチ電荷を変える方法ではなく,アンジュレーターギャップ長を変えることにより行った.理由はゲインを瞬時に変更することが可能で,電子バンチ性能を保持できるためである.高ゲイン,低ロス領域での最大ηはdL=0μmで得られ,超放射領域における理論値より大きな値が得られる.これに対し低ゲイン領域ではdL=0μmより短いところで最大ηが得られ,理論値と似た値を持つ.


310132
Intense ultrashort pulse generation using the JAERI far-infrared free-electron laser
永井良治 ; 羽島良一 ; 西森信行 ; 菊澤信宏 ; 沢村勝 ; 峰原英介
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 483(1-2), p.129-133(2002) ; (JAERI-J 19776)

 原研遠赤外自由電子レーザーにおいて高強度極短パルスを発生した.光共振器長を電子バンチ繰り返しと完全に同期した時に最も短く強度の強いパルスを得ることができ波長22.5ミクロンでパルス幅は250fsであった.これは光のサイクルの約3.7周期に相当し,数値計算の結果とよく一致している.FELパルスのエネルギーは100μJに達した.2次のオートコリレーションによるパルス幅の計測には厚さ2mmのTe結晶を用いた.光共振器長と電子バンチ繰り返しの同期をずらしていくとサブパルスが現れてくるが,このサブパルスの現れ方も計算結果とよく一致していた.


310260
High-efficiency ultrashort pulse generation in a high-gain FEL oscillator near the perfect synchronism
羽島良一 ; 西森信行 ; 永井良治 ; 峰原英介
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 483(1-2), p.113-118(2002) ; (JAERI-J 19890)

 ゲインの十分大きなFEL発振器では,電子バンチと光パルスの完全同期状態で高効率・超短パルスの発生が可能であることが原研FELで実証された.原研FELで行なった実験では,従来の理論で示されている短バンチFEL発振器の効率に関するスケーリング則を超えた高い効率が得られ,また,この時の光パルスは4サイクル以下の超短パルスであった.これらの実験結果は数値解析の結果とよく一致しており,「持続的なスーパーラディアンス発振」とよぶべき新しい発振形態であると考えられる.


300981
Application of multiparameter coincidence spectrometry using a Ge detectors array to neutron activation analysis
初川雄一 ; 大島真澄 ; 早川岳人 ; 藤暢輔* ; 篠原伸夫
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 482(1-2), p.328-333(2002) ; (JAERI-J 19427)

 核構造研究において顕著な成果を収めているゲルマニウム検出器系(クリスタルボール)を分析化学,特に中性子放射化分析法に応用して岩石試料中の微量元素の検出を試みた.一般に地質学的試料の中性子放射化分析では主要成分のナトリウムやマンガンからの放射線が強く微量成分の検出には化学分離などが必要であるが,クリスタルボールによって得られた2次元スペクトルにより非破壊で微量成分の検出に成功した.原研原子炉JRR-4気送管で標準岩石試料約100mgを10分間照射した後にゲルマニウム検出器系GEMINIを用いてγ線測定を行った.得られた2次元マトリクスからγ-γのコインシデンスを取り出し解析を行った結果,標準岩石試料JB-1a及びJP-1中に合計27元素を検出することができた.検出された元素の中ではJP-1中のEuがもっとも微量な成分でありその含有量は4ppbであった.


300884
Measurement of intrinsic radioactivity in a GSO crystal
Wang, S. C.* ; Wong, H. T.* ; 藤原守*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 479(2-3), p.498-510(2002) ; (JAERI-J 19350)

 GSO結晶中に含まれる極めて微量の放射性同位体元素を測定した.GSO中に含まれるものは232Thや238Uがあり,太陽ニュートリノ検出器のためにこれらの放射性元素をどの程度,減少すべきかを議論した.160Gdは二重β崩壊核であり,この原子核の半減期の上限を求めた.


301240
High-speed readout method using wavelength-shifting fibers for an imaging plate
片桐政樹 ; 坂佐井馨 ; 岸本牧 ; 中村龍也* ; 藤健太郎* ; 高橋浩之* ; 中澤正治*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 477(1-3), p.179-183(2002) ; (JAERI-J 19654)

 大強度陽子加速器を用いた核破砕中性子源から発生するパルス中性子を用いた中性子散乱研究に用いる中性子イメージング検出法として,イメージングプレートの高速読み出し法の研究を進めている.本検出法は,長方形状の励起光をイメージングプレートに照射し,放出される輝尽性螢光を並列にならべた波長シフトファイバ束により検出する.並列に読み取りを行うため,従来法に比較して数100倍から数1000倍,読み取り速度を改善することができる.イメージングプレート,波長シフト光ファイバ束,光電子増倍管等を用いた基礎実験を行った結果,本検出法により放射線イメージを測定可能であることを確認した.


300540
Simulated performance of the energy-recovery transport system for the JAERI-FEL
静間俊行 ; 羽島良一 ; 峰原英介
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 475(1-3), p.569-573(2001) ; (JAERI-J 19071)

 自由電子レーザー研究グループでは,超伝導リニアックを用いた高出力自由電子レーザーの開発を行ってきた.現在,波長領域20-30μmにおいて,マクロ平均出力2kW以上の安定したレーザー発振に成功している.レーザー出力のさらなる向上のため,ビームエネルギー回収実験を計画している.本会議では,エネルギー回収輸送系の詳細な設計について報告するとともに,この輸送系での電子ビームの運動学のシミュレーション結果について報告する.


300539
High extraction efficiency observed at JAERI free electron laser
西森信行 ; 羽島良一 ; 永井良治 ; 峰原英介
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 475(1-3), p.266-269(2001) ; (JAERI-J 19070)

 原研FELでは波長22μmのFELでマクロパルス平均出力1.7kW(2.3kW)を達成した.括弧値はFEL取り出し窓をブリュースター角に設定して得られる推定値.電子ビームからFELへの変換効率は発振後の電子ビームのエネルギー広がりから得られ,4.6%であった.ビームエネルギーが100kWなので4.6kW得られるはずだが,回折損等から取り出しは半分となっている.通常,変換効率の最大は光共振器デチューニングが0付近で得られるが,ゲインが小さく発振しない.最近のJAERI FELの性能向上で,ピーク電流の高い電子ビームが得られ,高ゲインとなり今回の成果に繋がった.


300538
EPR spectrometer installed in a soft X-ray beamline at SPring-8 for biophysical studies
横谷明徳 ; 赤松憲*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 467-468(Part.2), p.1333-1337(2001) ; (JAERI-J 19069)

 高輝度放射光施設において,これまで原研専用軟X線ビームラインの建設及び立ち上げを行ってきた.本ビームラインのエンドステーションのひとつである生物ステーションには,軟X線照射された生体分子の変化を調べるためのESR装置が設置される.本講演では,このビームラインに接続されたESRの概要を発表するとともに,実際の放射光ビームを用いて行った標準試料のESRシグナルを,従来のX線照射装置と用いた場合のそれと比較検討する.


301047
X-ray diffraction technique in energy-dispersive mode at SPring-8 for fluids at high temperatures and high pressures
田村剛三郎* ; 乾雅祝* ; 舟越賢一* ; 内海渉
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 467-468(Part2), p.1065-1068(2001) ; (JAERI-J 19484)

 SPring-8における高温高圧下の流体研究のために開発されたエネルギー分散型X線回折実験装置について,その概要を報告する.ベリリウム窓をもったガス容器は,ヘリウムガスによるガス圧で,200MPa,1700℃までの圧力,温度が発生可能であり,資料はサファイア製のセルに格納される.この装置をSPring-8高輝度放射光と組み合わせることで,試料ならびに高圧容器からのX線吸収や散乱の問題を克服することができ,精度の高いX線回折実験が可能になった.


300812
Soft X-ray reflectivity and structure evaluation of Ni/C/Ti/C multilayer X-ray mirrors for water-window region
竹中久貴* ; 伊東恒* ; 永井宏明* ; 村松康司 ; Gullikson, E. M.* ; Perera, R. C. C.*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 467-468(Part1), p.341-344(2001) ; (JAERI-J 19290)

 水窓領域における軟X線マイクロスペクトロスコピーに利用され得る高反射率の多層膜X線ミラーを設計・開発した.具体的には,層間のインターミキシングを抑えるためにカーボン層を間にはさんだNi/C/Ti/C多層膜を作製した.この多層膜の反射率を放射光を用いて測ったところ,9.5°の入射角に対して40%(λ=2.76nm)であった.この値はC層をはさまないNi/Ti多層膜のものとほぼ同等以上であった.さらにNi/C/Ti/C多層膜の方がNi/Ti多層膜よりも耐熱性が向上することもわかった.


300811
Soft X-ray reflectivity and structure evaluation of CoCr/C multilayer X-ray mirrors for spectral region around 6nm
竹中久貴* ; 永井宏明* ; 伊東恒* ; 村松康司 ; 川村朋晃* ; Gullikson, E. M.* ; Perera, R. C. C.*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 467-468(Part1), p.337-340(2001) ; (JAERI-J 19289)

 6nm領域における軟X線マイクロスペクトロスコピーに利用され得る高反射率の多層膜X線ミラーを設計・開発した.具体的にはマグネトロンスパッタ法を用いて,直入射条件下で高反射率が得られるCoCr/C多層膜ミラーを作製した.この多層膜ミラーの反射率を測ったところ,88°の入射角において,11.5%(λ=6nm)であった.この膜をアニール処理すると,反射率は13%に向上し,高反射率の多層膜を開発するうえで,アニール処理が重要であることを示した.


[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  累積情報(2002年度) > 当ページ
Copyright(C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)