2002年度

Physical Review Letters


310271
Structure-driven nonlinear instability of double tearing modes and the abrupt growth after long-time-scale evolution
石井康友 ; 安積正史 ; 岸本泰明
Physical Review Letters 89(20), p.205002_1-205002_4(2002) ; (JAERI-J 19901)

 ヘリカル対称性を仮定した抵抗性簡約化電磁流体(MHD)モデルに基づき,ダブルティアリングモード(DTM)の非線形領域に新たな非線形不安定化過程が存在することを明らかにした.この現象は,弱結合DTMがRutherford型領域において抵抗性時間スケールで緩やかに成長し,内側磁気島が強く三角変形することにより起こる(構造駆動型非線形不安定性).このとき,三角変形した磁気島の頂点近傍の磁気再結合領域では,狭い空間領域にプラズマ電流が集中し,電流点が形成される.これは,抵抗性MHDモデルの範囲内で電流点構造が形成される可能性を示したはじめての結果である.また,このような非線形不安定化領域では,モード成長率が加速し,かつ抵抗値依存性が非常に弱くなる.このような,抵抗性時間スケールで緩やかに長時間成長した後の急激なモード成長は,実験的に観測されている抵抗性モードに起因するプラズマディスラプションと定性的に一致する.


310068
Plasma wakefield acceleration for ultrahigh-energy cosmic rays
Chen, P.* ; 田島俊樹 ; 高橋義幸*
Physical Review Letters 89(16), p.161101_1-161101_4(2002) ; (JAERI-J 19732)

 相対論的流れのあるプラズマ中のアルヴェン衝撃波によって誘起された航跡場に基づく宇宙線加速の新しい機構を導入する.この機構においてはテスト粒子の単位長さあたりのエネルギー利得はローレンツ不変である.加速粒子が無衝突になりプラスマ中でエネルギーをほとんど失わなくなる透明性のための閾値がある.乱雑な加速-減速フェーズの統計的邂逅は,1/E2という巾乗則を生み出す.こうしたプラズマ航跡場を生み出すのに好都合な環境は宇宙に汎在している.例えば,超GZK,超高エネルギー宇宙線(UHECR)の生成機構がγ線バーストにおいて起きる.こうした加速においては,1016eV/cm にのぼる加速匂配にもなる.この理論で評価された超高エネルギー粒子量は,UHECRの観測と一致している.


301247
Magnetic structure, phase diagram, and a new type of spin-flop transition dominated by higher order interaction in a localized 5f system U3Pd20Si6
小池良浩* ; 目時直人 ; 芳賀芳範 ; McEwen, K. A.* ; 神木政史* ; 山本竜之介* ; 阿曽尚文* ; 立岩尚之* ; 小松原武美* ; 木村憲彰* ; 青木晴善*
Physical Review Letters 89(7), p.077202_1-077202_4(2002) ; (JAERI-J 19661)

 局在5f電子系ウラン金属間化合物U3Pd20Si6の磁気構造,磁気相図,新しい機構に基づくメタ磁性転移を,原研が開発した液体ヘリウムフリー中性子散乱実験用10Tマグネット及び希釈冷凍機を用いた中性子回折実験によって明らかにした.基底状態では4aサイトの強磁性秩序と8cサイトの反強磁性秩序状態が,ウランスピンが平行になるように結合していることが明らかになった.この物質におけるサイト間ハイゼンベルグ交換相互作用はキャンセルしている.そのため,この磁気構造が安定化するためには,より高次の相互作用が必要であることが明らかになった.その起源として最も可能性が高いのは,結晶構造及び磁気構造から4体の交換相互作用と考えられる.5f電子系においては4体相互作用はいまだかつて観察された報告例がなく,交換相互作用のキャンセルと,サイト間の結合に伴うフラストレーションによって生じた強い磁気揺らぎによって4体相互作用が顕著に現れたと結論できる.


301165
Angle-resolved photoemission study of the MX-chain compound [Ni(chxn)2Br]Br2; Spin-charge separation in hybridized d-p chains
藤森伸一 ; 井野明洋* ; 岡根哲夫 ; 藤森淳* ; 岡田耕三* ; 真鍋敏夫* ; 山下正廣* ; 岸田英夫* ; 岡本博*
Physical Review Letters 88(24), p.247601_1-247601_4(2002) ; (JAERI-J 19589)

 巨大非線形光学効果を示す一次元電子系[Ni(chxn)2Br]Br2に対する,角度分解光電子分光実験の結果について報告する.光電子スペクトルでは,約500meVの分散を持つバンドがBrillouin zone前半(0≦kb/π <1/2)に存在するが,kb/π〜1/2付近で消失するのが観測された.同様の一次元電子系であるSr2CuO3などで観測されている,スピン・電荷分離に伴う二つの分散は観測されなかった.これらのスペクトルをd-p chainモデルによって解析を行い,Cu-O系に用いられるパラメータよりも,電荷移動エネルギーΔを減少させることによって以上の特徴が説明できることを明らかにした.光電子スペクトルにおける明確なスピン・電荷分離の不在と,巨大非線形光学効果は,この小さな電荷移動エネルギーが原因であると考えられる.


300989
Radiation damping effects on the interaction of ultraintense laser pulses with an overdense plasma
Zhidkov, A. J.* ; Koga, J. K. ; 佐々木明 ; 上坂充*
Physical Review Letters 88(18), p.185002_1-185002_4(2002) ; (JAERI-J 19435)

 イオン化を含む相対論的粒子シミュレーションにより,遮断密度を超えるプラズマスラブと超高強度レーザーでの相互作用における放射減衰の強い影響を見出し,解析した.ラジアンスIλ2>1022Wμm2/cm2とパルス幅20fsのレーザー放射によって生成された高速電子では,そのエネルギーの35%以上が放射に変換され得ることがわかった.放出されるX線はインコヒーレントで,レーザーのパルス幅の間のみ放出され,高強度になり得ること,レーザー強度に対して変換効率は非線形的に増加することを示す.サイクロトロン放射と同様に,超高強度レーザーで生成されたプラズマにおける相対論的電子の最高エネルギーは,放射減衰によって制限されると考えられる.


301057
Effects of circulating energetic ions on sawtooth oscillations
Wang, S.* ; 小関隆久 ; 飛田健治
Physical Review Letters 88(10), p.105004_1-105004_4(2002) ; (JAERI-J 19494)

 高エネルギーの順方向通過イオンによって内部キンクモードが安定化することを示す理論モデルを構築した.この理論モデルは,最近の実験における高エネルギー順方向通過イオンによる鋸歯状振動の安定化現象の解釈に適用できた.


300666
Prediction of orbital ordering in single-layered ruthenates
堀田貴嗣 ; Dagotto, E.*
Physical Review Letters 88(1), p.017201_1-017201_4(2002) ; (JAERI-J 19161)

 単層ルテニウム酸化物の磁気的性質を理解するために,軌道自由度の果たす役割を議論する.Ca2RuO4の反強磁性相に対し,X線吸収の実験において,dxy軌道には0.5個のホールが存在し,一方,dyz及びdzx軌道には1.5個のホールが含まれることが報告されている.このホール数分布は,単純な結晶場の議論からは理解できないが,クーロン相互作用と電子格子相互作用の協調によって生じる新しい軌道秩序構造によって説明される.加えて,ここで示される豊富な相図は,ルテニウム酸化物における大きな磁気抵抗効果の可能性を示唆し,新しい強磁性軌道秩序相の存在も予言する.


300552
Plasma equilibrium and confinement in a tokamak with nearly zero central current density in JT-60U
藤田隆明 ; 及川聡洋 ; 鈴木隆博 ; 井手俊介 ; 坂本宜照 ; 小出芳彦 ; 波多江仰紀 ; 内藤磨 ; 諫山明彦 ; 林伸彦 ; 白井浩
Physical Review Letters 87(24), p.245001_1-245001_4(2001) ; (JAERI-J 19083)

 JT-60Uトカマクにおいて,中心付近にトロイダル電流がほとんどゼロとなる領域(「電流ホール」)を有する高閉じ込めの平衡が数秒間安定に持続することが初めて観測された.これは,従来必要と考えられていた中心部のトロイダル電流がなくてもトカマクを安定に運転できる可能性を示すものである.電流ホールの半径はプラズマ半径の40%にまで及んだ.中心を外れた非誘導電流の増大によって電流ホールが形成されることが観測された.


300744
Dipole excitation of α clusters in 6Li and 7Li
中山信太郎* ; 山県民穂* ; 秋宗秀俊* ; 大東出* ; 藤村寿子* ; 藤田佳孝* ; 藤原守* ; 伏見賢一* ; Greenfield, M. B.* ; 郡英輝* ; 桑折範彦* ; 高久圭二* ; 民井淳* ; 田中正義* ; 豊川秀訓*
Physical Review Letters 87(12), p.122502_1-122502_4(2001) ; (JAERI-J 19230)

 6Heと7He原子の高励起E1励起準位が(7Li,7Be)反応により研究された.30MeVの励起エネルギーに巨大共鳴があり,この共鳴がE1励起でありα-クラスターの波動関数を持つであろうと推定された.


300745
Magic numbers in exotic nuclei and spin-isospin properties of NN interaction
大塚孝治* ; 藤本林太郎* ; 宇都野穣 ; Brown, B. A.* ; 本間道雄* ; 水崎高浩*
Physical Review Letters 87(8), p.082502_1-082502_4(2001) ; (JAERI-J 19231)

 中性子過剰核において魔法数がN=20から16へと変化するメカニズムを核力の基本的性質から議論した.まず,この魔法数の変化には,スピン反転のパートナーである,0d3/2軌道と0d5/2軌道間のT=0(単極子)相互作用が非常に強い引力である性質が関連していることを現実的殻模型計算の結果に基づいて議論した.この強い引力の起源は,ボソン交換力(OBEP)のような基礎的な相互作用から説明可能であることを示し,より現実的なG行列にもこの性質が保たれていることを明らかにした.この性質は非常に一般的なものであり,例えばN=8魔法数の消滅も同様にスピン反転パートナーの0p1/2と0p3/2軌道間のT=0相互作用で説明できるため,中性子過剰核における魔法数の理解に対し重要な役割を果たしている可能性が示唆される.


301056
Polaron ordering in low-doping La1-xSrxMnO3
山田安定* ; 日野理* ; 納土晋一郎* ; 金尾りんな* ; 稲見俊哉* ; 片野進
Physical Review Letters 77(5), p.904-907(1996) ; (JAERI-J 19493)

 低SrドープのLa1-xSrxMnO3について中性子散乱法で測定を行い,x=0.1及び0.15の試料について,Srドープにより導入された電荷(ホール)が秩序化するポーラロン秩序相を見出した.このポーラロンの秩序化が起こる温度は,この物質の金属→絶縁体転移に対応しており,また,秩序化した電荷の組む格子の周期は,立方晶ペロブスカイト構造を基本として,その2×2×4倍になっている.いわゆる整合相になっていることを確認した.2×2×4構造に対応する電荷の濃度は,x=0.125に対応しており,x=0.1や0.15で整合相が観測されたという事実は,この物質においては,電荷秩序の長周期構造が整合相に固定されやすい傾向をもっていることを示している.


[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  累積情報(2002年度) > 当ページ
Copyright(C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)