2002年度

真空


310083
β-FeSi2薄膜の結晶構造におけるSi基板処理効果
原口雅晴* ; 山本博之 ; 山口憲司 ; 笹瀬雅人* ; 仲野谷孝充 ; 斉藤健* ; 北條喜一
真空 45(10), p.749-753(2002) ; (JAERI-J 19747)

 環境半導体,β-FeSi2は人体への悪影響が少なく,資源も豊富に存在する元素からなる環境に配慮した材料であり,受発光素子・熱電変換素子などへの応用が期待されている.本研究ではSi基板の表面処理法が成膜したβ-FeSi2の結晶性に及ぼす影響を検討することを目的として,高温加熱処理,スパッタ処理,化学処理の3種の異なる方法で処理した基板を用いてそれぞれFeをスパッタ蒸着し成膜を試みた.得られたX線回折スペクトルから,高温加熱処理した基板を用いた場合は成膜温度973Kにおいてβ相ではあるものの種々の結晶方位が混在する膜となった.一方スパッタ処理,化学処理による基板の場合ではいずれも比較的良好な結晶性を持つβ-FeSi2膜が得られた.スパッタ処理法は簡易ではあるが表面に欠陥が残ることが予想される.この処理法によって原子レベルで平滑な表面が得られる化学処理と同等以上の膜が得られたことは,基板表面における拡散・反応過程が重要な過程となる本成膜法では欠陥の存在がFe-Si相互拡散を促進させ,薄膜形成に有利に働いたことを示している.


301079
超音速O2分子線を用いたSi(001)表面の初期酸化過程; 清浄表面と部分酸化表面での酸化反応機構の相違点
寺岡有殿 ; 吉越章隆
真空 45(7), p.604-608(2002) ; (JAERI-J 19516)

 超音速分子線技術を用いてO2分子の運動エネルギーを3eVまで加速し,Si(001)表面の初期酸化過程を研究している.Si(001)表面にO2分子線を数秒間照射し,表面酸素量を光電子分光で計ることを繰り返してO2吸着の時間変化をいろいろな運動エネルギーのもとで計測した.吸着曲線の一次微分から初期吸着確率(相対値)を求めた.その運動エネルギー依存性には0.3eVに極小が見いだされた.0.04eVから0.3eVまでは運動エネルギーの増加とともに初期吸着確率は減少した.これは前駆体経由で吸着が進むことを表している.一方,0.3eV以上では増加した.これは直接的な吸着を表している.


300841
レーザー光イオン化されたネオジムイオンビームの収束特性測定
田村浩司
真空 45(3), p.255-257(2002) ; (JAERI-J 19319)

 レーザー光イオン化により生成したイオンビームの利用を目的として,引き出されたイオンの強度分布を多チャンネルファラデーカップにより求めた.ビーム広がりを抑えるため円筒型の収束用電極を加えることで,横方向のイオン広がりを減少させることができた.半球型電極付加では,水平,垂直方向とも,電場がない場合に比べビーム広がりが減少し,中心部のビーム強度も増加させることができた.


300585
イオンビームスパッタリング法による高配向β-FeSi2の作製
仲野谷孝充 ; 笹瀬雅人* ; 山本博之 ; 斉藤健* ; 北條喜一
真空 45(1), p.26-31(2002) ; (JAERI-J 19116)

 イオンビームスパッタリング法を用いて,次世代化合物半導体として期待の高いβ-FeSi2のエピタキシャル成長薄膜の作製を試みた.最適な作製条件を決定するため,Fe蒸着中のSi基板の温度及び,蒸着するFeの量を変化させて実験を行った.形成されたシリサイド薄膜の結晶性と表面の形状はそれぞれ,X線回折法と走査型電子顕微鏡にて評価した.結果,Fe蒸着量33mn,Si基板温度700℃でβ-FeSi2のエピタキシャル性の良好な薄膜作製に成功した.一方,700℃以上では高温相であるβ-FeSi2が形成され,温度の上昇に伴い増加した.さらに基板温度を固定して蒸着量を変化させた実験から,α相の生成は基板温度だけでなく,Feの蒸着量にも大きく依存することを明らかにした.


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