2002年度

Fusion Engineering and Design


310212
H-D-T cryogenic distillation experiments at TPL/JAERI in support of ITER
岩井保則 ; 山西敏彦 ; 大平茂 ; 鈴木卓美 ; 洲亘 ; 西正孝
Fusion Engineering and Design 61-62, p.553-560(2002) ; (JAERI-J 19842)

 深冷蒸留法を採用した水素同位体分離システム(ISS)は核融合炉の燃料循環システムを構成する中核機器の一つである.国際熱核融合実験炉ITERのISS設計にあたり,設計検討上必要な体系的データ取得を目的とした深冷蒸留実験を実施した.得られた主な結果は以下の通りである.(1)ISS設計のキーパラメーターである理論段相当高の値は,実験から5cmと評価した.この値はITER-ISSの設計に採用された.(2)ISS制御ツールとしてレーザーラマン分光法を用いた高速遠隔多点水素同位体分析システムの開発を進め,水素同位体6成分(H2, HD, HT, D2, DT, T2)を1分以内に分析限界1000ppmの精度で分析できることを実証した.本システムの長期間信頼性は,2年間に渡り機器故障なく使用できた実績により確証した.(3)ISS動作評価コードを実験結果と比較検討を行うことで改良し,蒸留塔の動特性を模擬することに成功した.一連の実験を通し,ISSの設計手法及び運転手法を確立した.


310211
High heat load test of CFC divertor target plate with screw tube for JT-60 superconducting modification
正木圭 ; 谷口正樹 ; 三代康彦 ; 櫻井真治 ; 佐藤和義 ; 江里幸一郎 ; 玉井広史 ; 逆井章 ; 松川誠 ; 石田真一 ; 宮直之
Fusion Engineering and Design 61-62, p.171-176(2002) ; (JAERI-J 19841)

 日本原子力研究所では,JT-60改修計画として,臨界プラズマ条件クラスのプラズマを電流拡散時間よりも十分長く維持することが可能な超伝導トカマク装置を検討している.この改修装置のダイバータターゲット開発のため,高い熱除去効率が期待されるスクリュウ管を採用した直接冷却ダイバータターゲットの試験体を製作し,耐熱試験及び熱伝達特性の評価を行った.試験体構造は,直接M10ネジ穴(スクリュウ構造)を加工したCu-Cr-Zrのヒートシンクに無酸素銅(OFHC)間挿材を挟み,CFCタイルと一体で銀ロウ付けしたものである.熱負荷試験条件は,1MW/m2〜13MW/m2で,それぞれ30秒間入射を行った.また,冷却水の流速は,4m/s(0.93MPa),5.6m/s(0.88MPa),8m/s(0.74MPa)と変化させた.試験体に取り付けた熱電対の温度とFEMの解析結果とを比較することにより,スクリュウ管の熱伝達係数を評価した.解析に用いた熱伝達係数は,評価式の確立した平滑管の2倍,3倍,4倍とした.その結果,上記3つの冷却条件において,スクリュウ管の熱伝達係数は,平滑管の約3倍となることがわかった.これは,スクリュウ管の1.5倍に相当する.熱サイクル試験では,10MW/m2×15秒,1400回の照射においても熱電対の温度変化に異常は見られず,ロウ付け部の損傷もなかった.


301120
Development of a new discharge control system for JT-60 with a UNIX workstation and a VME-bus system
戸塚俊之 ; 赤坂博美 ; 末岡通治 ; 高野正二* ; 米川出
Fusion Engineering and Design 60(3), p.409-414(2002) ; (JAERI-J 19544)

 JT-60の実験開始以来,全系制御設備の放電制御計算機システムとして使用してきた16ビットミニコンピューターを更新した.新しい放電制御計算機システムはWSとVME-busで構成する分散処理型計算機システムとした.機能分担として,WSは,ネットワークとの接続性,ファイルシステムの管理,プログラム開発の容易性から,JT-60各設備との通信や各種演算処理,データ収集等を分担し,VME-busは,リアルタイム処理に適していることから,放電シーケンスの実行とハードウエア信号の入出力処理及び一部更新できず残るCAMACとのインターフェースを分担するものとした.このシステム更新により,データ収集等が高速となり,実験が効率的になった.また,機能追加や変更に容易に対応でき,JT-60改修後の放電制御システムの改造にも十分対応できる性能を備えたものとなった.


300517
Use of fusion energy as a heat for various applications
小西哲之
Fusion Engineering and Design 58-59, p.1103-1107(2001) ; (JAERI-J 19048)

 核融合炉の電力以外の多目的利用について検討した.核分裂炉と異なり,ブランケットがプラズマと独立に設計できることから,ブランケット構造材にODSフェライト鋼を使用することで超臨界水や過熱水蒸気などの一般の工業熱源に多く使われる400〜500度のプロセススチームが発生でき,各種化学工業への利用が考えられる.ことに温室効果ガスの低減が地球環境問題から重視されており,将来のエネルギー需給においては分散電源や水素など合成燃料の比率が高まると想定されているため,核融合炉はこのような社会では水素製造により,燃料電池などの分散電源や輸送用燃料の供給に寄与することが重要と考えられる.核融合は,多目的熱利用により送配電網の完備していない社会へも導入が可能であり,核拡散抵抗性を生かして発展途上国での利用可能性がある.


300516
Results of experimental study on detritiation of atmosphere in large space
小林和容 ; 林巧 ; 岩井保則 ; 西正孝
Fusion Engineering and Design 58-59, p.1059-1064(2001) ; (JAERI-J 19047)

 トリチウムの最終閉じ込め系を構成する建屋内におけるトリチウムの挙動及び雰囲気中からのトリチウム除去に関する研究は,核融合炉の安全性を確保するうえで重要である.原研では,12m3の大型気密空間からなるトリチウム安全性試験装置を用い,空間中に放出されたトリチウムの挙動について研究してきた.この結果,放出トリチウム中に水蒸気状のものがある場合には残留汚染が顕著に現れてトリチウム除去速度を遅らせること,また,雰囲気の湿度が結果に大きく影響を与えられることを見いだした.さらに,この現象が,トリチウム蒸気の壁面への吸着・脱離によって説明できることを解析によって明らかにした.


300515
Study on decay heat removal of compact ITER
鶴大悟 ; 閨谷譲 ; 荒木隆夫* ; 野元一宏* ; 大平茂 ; 丸尾毅 ; 橋本正義* ; 羽田一彦 ; 多田栄介
Fusion Engineering and Design 58-59, p.985-989(2001) ; (JAERI-J 19046)

 コンパクトITERの固有の安全性を踏まえた安全確保の考え方の構築の一環として,全冷却系が機能してない条件下での崩壊熱による各機器の温度上昇を見積もることにより非常用冷却系の必要性を検討した.全冷却系の全冷却材が瞬時に喪失し,機器間は輻射により熱伝達され,クライオスタットがヒートシングとなるといった極端に仮想的な条件にも関わらず,真空容器の最高温度は500℃近辺に留まり,なおかつ温度上昇は非常に緩やかで最高温度に到達するのが100日後であった.以上の結果より,コンパクトITERでは崩壊熱密度の小ささから,非常用冷却系が無くても輻射により崩壊熱が除去可能である見通しを得た.併せて,第一壁が一体型である場合及び真空容器冷却系が機能している場合の温度上昇に関して感度解析を行った.


300784
Status of lithium target system for international fusion material irradiation facility (IFMIF)
中村博雄 ; 井田瑞穂* ; 杉本昌義 ; 竹内浩 ; 湯谷順明* ; IFMIF International Team
Fusion Engineering and Design 58-59, p.919-923(2001) ; (JAERI-J 19262)

 本報告では,国際核融合材料照射施設(IFMIF)の液体リチウムターゲット系の現状について述べる.IFMIFは,核融合炉材料開発のため,照射量200dpaまで照射可能な強力中性子束(2MW/m2)を発生可能なD-Li反応方式の加速器型中性子源である.このような中性子発生のため,最大エネルギー40MeV,最大電力250mAの重水素ビームを,最大流速20m/sの液体リチウム流ターゲットに入射させる.1995年から1998年に実施した概念設計に続き,1999年に合理化設計を実施し,当初のIFMIF計画の目的を損なわずにコストを削減し,IFMIFの成立性を高めた.主な偏光は,液体リチウムターゲットの数を2個から1個に削減,リチウムルーム建家高さの半減等である.2000年からは,要素技術確証を開始し,液体リチウムループ実験の検討やリチウム模擬水実験を行った.また,リチウムループ系のシステム設計も開始した.


300514
Conceptual tokamak design at high neutron fluence
荒木政則 ; 佐藤真一* ; 仙田郁夫* ; 大森順次* ; 荘司昭朗
Fusion Engineering and Design 58-59, p.887-892(2001) ; (JAERI-J 19045)

 現在,国際協力で進めているITER工学設計において,より魅力的な工学試験が見込めるトカマク機器の構造概念を提案する.本提案は,ITERの実験を二期に分けて考えた時,後半の10年間でおもに工学機器の試験が予定されている.小型化したITERにおいても,主要な機器を変更することなく,工学試験で要求される中性子束やフルーエンスを現状の2倍程度(従来の大型ITERとほぼ同等)にでき,プラズマ運転と整合する炉概念を提示する.


300513
Fatigue behavior on weldment of austenitic stainless steel for ITER vacum vessel
西宏 ; 衛藤基邦 ; 橘勝美 ; 小泉興一 ; 中平昌隆 ; 高橋弘行*
Fusion Engineering and Design 58-59, p.869-873(2001) ; (JAERI-J 19044)

 ITERの真空容器は2重壁構造を採用して2重壁内側からの溶接ができないため,不溶着部を有する構造となる.本研究では,ITERに採用予定の部分溶込み溶接継手について,継手や溶接金属の疲労試験より疲労特性を明らかにするとともに,有限要素法による継手部の弾塑性応力解析を行い,破壊力学的手法を用いた疲労寿命の予測を行った.得られた結論は以下の通りである.(1)不溶着部はき裂と同様な挙動を示し,溶接継手の疲労寿命の大部分はき裂伝播寿命であった.(2)継手の疲労き裂伝播速度はき裂発生時に加速する.これは不溶着部を切欠きと考えたときの切欠き効果と考えられる.(3)溶金のき裂伝播速度から破壊力学的手法を用いて継手の疲労寿命を予測できる.(4)不溶着部の長さが短くても不溶着部は継手の疲労強度を大きく低下させる.


300512
Out-of-pile characterization of Al2O3 coating as electrical insulator
中道勝 ; 河村弘
Fusion Engineering and Design 58-59, p.719-723(2001) ; (JAERI-J 19043)

 核融合炉においては,ブランケット部と支持構造部間を電気的に絶縁する必要がある.そのために,構造材であるステンレス鋼上に電気絶縁材としてのセラミックコーティング被膜を施工することが考えられており,電気絶縁性等の観点からセラミックコーティング被膜材としてAl2O3が候補材として挙げられている.ステンレス鋼母材上にAl2O3を施工する場合,母材とAl2O3との熱膨張差によりAl2O3被膜に剥離が発生する.このため,母材とAl2O3間にアンダーコーティング被膜を施工することを考案し,アンダーコーティング被膜材としては,熱膨張率がほぼ両者の中間であるSUS410及び80Ni-20Crの2種類を選定した.今回は,照射後特性評価に先立ち,炉外においてこれらアンダーコーティング被膜材がAl2O3被膜の基本的特性(耐熱衝撃性,密着力性,電気絶縁性及び耐機械的衝撃性)に及ぼす影響について調べた結果を報告するものである.


300511
In-situ tritium release behavior from Li2TiO3 pebble-bed
土谷邦彦 ; 菊川明広* ; 八巻大樹 ; 中道勝 ; 榎枝幹男 ; 河村弘
Fusion Engineering and Design 58-59, p.679-682(2001) ; (JAERI-J 19042)

 核融合炉増殖炉ブランケット開発の一環として,ITERに設置されるテストポートを利用した増殖ブランケット・テストモジュールの照射試験が計画されている.このテストモジュールを設計するために,JMTRを用いて,中性子照射下におけるリチウムタイタネート(Li2TiO3)微小球充填体からのトリチウム放出測定を行った.スイープガス流量に対するトリチウム放出挙動評価から,見かけのトリチウム脱離係数は,スイープガス中の水素分圧が102Paまでは増加することが明らかになり,トリチウム脱離効果は表面反応が律速であることを明らかにした.また,照射温度に対するトリチウム放出挙動評価から,Li2TiO3微小球充填体の見かけのトリチウム拡散係数は約10-9cm2/sであり,これまで報告されたディスク状Li2TiO3の拡散係数とほぼ同じオーダであった.


300510
Neutronic and thermal estimation of blanket in-pile mockup with Li2TiO3 pebbles
長尾美春 ; 中道勝 ; 土谷邦彦 ; 河村弘
Fusion Engineering and Design 58-59, p.673-678(2001) ; (JAERI-J 19041)

 核融合炉ブランケットのトリチウム増殖材の候補であるリチウムタイタネイト微小球充填体の中性子照射下での温度及びトリチウム放出特性を評価するため,インパイルモックアップによる炉内照射試験をJMTRを用いて行った.本照射試験は,世界で初めて数百g規模の充填体を用いるため,従来の数g規模の照射試験とは異なり,温度分布の評価が重要となる.そのため,充填体内に熱電対を計33個計装して,照射試験炉の内部温度分布測定を行った.また,中性子及びγ線分布を求めるための核特性解析には連続エネルギーモンテカルロコードMCNPを用い,その結果得られた試験体内の発熱分布に基づき3次元温度計算コードTRUMPを用いた熱解析を行った.その結果,温度分布の計算値は熱電対による測定値と一致し,本解析手法は核融合炉ブランケット照射試験体の設計に十分有効であることがわかった.


300509
In situ characterization of a small sized motor under neutron irradiation
石塚悦男 ; 菅智史* ; 河村弘 ; 小野澤仁*
Fusion Engineering and Design 58-59, p.517-521(2001) ; (JAERI-J 19040)

 ポリイミド巻線を使用した耐放射線小型モータを開発し,JMTRを用いて照射試験を実施した.耐放射線小型モータには,フィールドコイルとしてポリイミド巻線,マグネットとしてNd-Fe,ベアリング等の潤滑剤としてポリフェニルエーテルを用い,フィールドコイルはMgO,Al2O3を充填したシリコン樹脂で固定した.耐放射線小型モータは約50℃で照射し,γ線量率と高速中性子束はそれぞれ7.4×101Gy/sと6.6×1014n/m2/sであった.モータの回転試験を実施した結果,γ線量及び高速中性子照射量が3.1×107Gy/sと2.8×1020n/m2まで正常に回転した.また,フィールドコイルの絶縁抵抗及び導体抵抗を測定した結果,γ線量及び高速中性子照射量が3.1×108Gy及び2.8×1021n/m2においても導体抵抗及び絶縁抵抗が1×108Ω及び12Ωであり,照射開始時より顕著な劣化は観察されなかった.


300508
Study of the high efficiency of ZrNi alloys for tritium gettering properties
土谷邦彦 ; 兜森俊樹* ; 河村弘
Fusion Engineering and Design 58-59, p.401-405(2001) ; (JAERI-J 19039)

 JMTRでは,核融合炉ブランケット構造を模擬した「部分モジュールインパイル照射試験」を計画している.本試験のためのトリチウム回収系には,取り扱いが容易でかつ常温付近でも良好なトリチウム回収性能を有するゲッタ材の開発が必要である.そこで,ZrNi合金に着目し,Niの一部をほかの元素で置換したゲッタ材を試作し,単体時及び充填時における特性評価を行った.単体時特性評価より,Zr1Ni1-x-yCoxFey組成のゲッタ材は室温時における水素平衡解離圧が金属ウランと同等の平衡解離圧(3.5×10-4Pa以下)になることを明らかにした.また,充填時特性評価により,Zr1Ni1-x-yCoxFeyは,常温でも水素を十分吸収し,その破過帯長さは空塔速度に対して直線的に増加することを明らかにした.


300507
Development of a micro gas chromatograph for the analysis of hydrogen isotopes gas mixtures in the fusion fuel cycle
河村繕範 ; 小西哲之 ; 西正孝
Fusion Engineering and Design 58-59, p.389-394(2001) ; (JAERI-J 19038)

 核融合炉燃料サイクルの研究開発において,水素同位体の分離分析は必要不可欠である.低温ガスクロマトグラフは,感度や再現性においてほかの分析手段に勝るが,分析時間が長く,急激な組成変化をともなう系や分析結果をもとにプロセス制御を行う場合には対応できない.その解決方法として,小型高速ガスクロマトグラフの低温仕様への改造を提案し,既に良好な結果を得ている.今回は分離カラムを充填カラムからキャピラリーカラムにかえて分離分析性能を調べた.キャピラリーカラムの使用でさらに分析時間を充填カラムの半分以下に短縮できた.また低温吸着の知見をもとに実際には分析を行っていないトリチウムを含む成分の出現位置も予測できるようになり,水素同位体全6成分の実用レベルでの短時間分離分析への見通しを得た.


300506
A Repetitive pellet injection system for JT-60U
木津要 ; 細金延幸 ; 平塚一 ; 市毛尚志 ; 笹島唯之 ; 正木圭 ; 宮直之 ; 本田正男 ; 岩橋孝明* ; 佐々木昇* ; Lang, P. T.*
Fusion Engineering and Design 58-59, p.331-335(2001) ; (JAERI-J 19037)

 JT-60Uではプラズマの高密度化を目的とした遠心加速方式のペレット(固体重水素)入射装置本体の開発を実施した.さらに,従来のトーラス外側からの入射に加えて,トーラスの内側からの入射を可能とするガイド管も開発した.本装置の開発では,ペレットの射出方向をばらつかせる原因の一つである重水素昇華ガスを効率的に取り除くようにした.さらに,ペレットの壁との衝突による破壊モデルを考慮した管径,テーパー角度,曲率を持ったガイド管を設計した.これらにより1.9mm立方体のペレットを周波数10Hz,速度600m/sの条件で8割以上の高効率での連続射出が可能となった.本装置を用いたプラズマへのペレット入射実験の結果,ガスパフでの供給に比べよりプラズマ中心側への燃料供給が可能なこと,100m/sのペレットであればガイド管を通してのトーラス内側からの入射が可能であることを確認した.


300505
Key features of the ITER-FEAT magnet system
奥野清 ; Bessette, D.* ; Ferrari, M.* ; Huget, M.* ; Jong, C.* ; 喜多村和憲* ; Krivchenkov, Y.* ; Mitchell, N.* ; 瀧上浩幸* ; 吉田清 ; Zapretilina, E.*
Fusion Engineering and Design 58-59, p.153-157(2001) ; (JAERI-J 19036)

 ITERマグネット・システムは18個のトロイダル・コイル,中心ソレノイド,6個のポロイダル・コイルで構成される.これらマグネットの設計にあたっては,いくつもの技術的課題を解決するとともに,ITERのミッションを達成するため,これまでにない特徴を有する設計となった.会議では,これらマグネットの設計の詳細について報告する.


300504
Development of ITER-CS model coil terminal assembling by using indium wires
高橋良和 ; 加藤崇 ; 布谷嘉彦 ; 安藤俊就 ; 西島元* ; 中嶋秀夫 ; 檜山忠雄 ; 杉本誠 ; 礒野高明 ; 小泉徳潔 ; 河野勝己 ; 辻博史
Fusion Engineering and Design 58-59, p.93-97(2001) ; (JAERI-J 19035)

 ITER計画において,13T-46kA定格性能を有するCSモデルコイルが開発され,実験が行われている.超電導コイルにおいて,電源と接続し電流を供給する窓口であるターミナル・ジョイントは,そのコイルの性能を決める重要なものの1つである.モデル・コイルは,真空容器の中で組立てられた.この時,ジョイントは垂直方向に組立てられるので,通常用いられるハンダは使用できないので,インジウム線を用いた組立て技術を開発した.開発にあたって,3組の短尺サンプルを製作し,実験を行った.その結果,十分に小さな電気抵抗であったので,モデル・コイルにこの技術を適用した.モデル・コイルの実験において,5nΩ以下という低抵抗であり,その温度上昇は0.06K以下であった.これらの結果を報告する.


300724
Design of the toroidal field coil for A-SSTR2 using high Tc superconductor
安藤俊就 ; 加藤崇 ; 牛草健吉 ; 西尾敏 ; 栗原良一 ; 青木功 ; 濱田一弥 ; 辻博史 ; 長谷川満* ; 内藤秀次*
Fusion Engineering and Design 58-59, p.13-16(2001) ; (JAERI-J 19210)

 核融合動力炉A-SSTR2のトロイダル・コイルを高温超伝導導体を用いて設計した.その設計思想,具体的設計例,今後の高温超伝導導体の開発ターゲットについて紹介する.


300503
Evaluation of critial current performance of 13 T-46 kA steel-jacketed Nb3Al conductor
小泉徳潔 ; 東克典* ; 土屋佳則* ; 松井邦浩 ; 高橋良和 ; 中嶋秀夫 ; 西島元* ; 布谷嘉彦 ; 安藤俊就 ; 礒野高明 ; 杉本誠 ; 加藤崇 ; 河野勝己 ; 檜山忠雄 ; 押切雅幸* ; 若林宏* ; 高野克敏* ; 関秀一* ; 宇野康弘* ; 中村恭悠* ; 沢田健治* ; 榛葉透* ; 塙博美* ; 辻博史 ; 菊地賢司 ; Fuchs, A.* ; Bruzonne, P.* ; Blau, B.* ; Veccey, G.* ; Nyilas, A.* ; 奥野清
Fusion Engineering and Design 58-59, p.1-5(2001) ; (JAERI-J 19034)

 13T-46kAステンレスコンジット導体Nb3Alを開発し,その臨界電流性能を評価した.Nb3Alは強度が高いために,ステンレスコンジットを使用しても,そこにかかる歪は0.4%以下と評価できる.これによる臨界電流の劣化度は10%と小さい.実験では,サンプル製作の都合上,Nb3Alに熱歪がかからなかった.本サンプルの臨界電流値には劣化がなく,実際のコイルの導体でも,この測定値より10%程度低い臨界電流値となる.よって,臨界電流値は100kAと予想され,十分な裕度がある.


300502
Absolute measurement of D-T neutron flux with a monitor using activation of flowing water
宇野喜智 ; 金子純一 ; 西谷健夫 ; 前川藤夫 ; 田中照也* ; 柴田泰生* ; 池田裕二郎 ; Khripunov, V.* ; Walker, C. I.* ; 海老澤克之* ; 竹内浩
Fusion Engineering and Design 56-57, p.895-898(2001) ; (JAERI-J 19033)

 循環水のD-T中性子による放射化反応を利用したITER用プラズマ診断中性子モニターの開発の一環として,原研FNSを用いて中性子束の絶対測定精度を検証する実験を行った.FNSに循環水ループを設置し,核融合炉の中性子場を模擬するためにSS-316/水遮蔽ブランケット模擬体系を使用し実験を行った.水とD-T中性子が反応して16O(n,p)16N反応により生成する16Nが放出するγ線をBGOシンチレータにより測定し,この計算値から16O(n,p)16N反応の断面積データ,MCNPコードにより計算した模擬体系中の中性子スペクトル及びBGOシンチレータの検出効率を用いて中性子発生量を求めた.結果は精度3%で校正された随伴α粒子モニターにより測定された中性子発生量と良い一致を示した.


300501
Progress of JT-60U facilities and experimental research toward steady high perormance plasmas
細金延幸 ; JT-60チーム
Fusion Engineering and Design 56-57, p.813-817(2001) ; (JAERI-J 19032)

 定常高性能トカマク運転の実現には,加熱装置による電流駆動と不安定性の抑制が必要であり,さらに,ダイバータによる熱と粒子の制御も不可欠である.そのため,JT-60Uでは,従来の加熱装置に加えて,負イオン源中性粒子入射加熱装置(N-NBI),電子サイクロトロン波加熱装置(ECRF)の装備を行う一方,W型ダイバータへの改造を行ってきた.本論文では,これらの装置の性能向上やパワーの増強などの現状,及びこれらの装置及び従来の加熱装置を用いた定常プラズマの制御にかかわる最近の実験成果をまとめた.その結果,上記の装置の評価として,N-NBIがITERの電流駆動装置として有望であること,回転を与える接線NBIは定常負磁気シアモード運転の制御装置として重要であること,ECRFによる局所的な電流駆動/加熱によって新古典ティアリングモードの抑制が可能であること,が確認された.一方,ダイバータでは,内側排気と両側排気の比較から,アタッチダイバータ状態では,両側排気は外側の排気口からプラズマ側へ中性粒子の逆流を許し,排気性能が低下することがわかった.


300723
Development and design of an ECRF launching system for ITER
高橋幸司 ; 今井剛 ; 坂本慶司 ; 小林則幸* ; 森清治* ; 毛利憲介* ; 伊藤保之 ; 庄山裕章* ; 春日井敦
Fusion Engineering and Design 56-57, p.587-592(2001) ; (JAERI-J 19209)

 国際熱核融合実験炉(ITER)では,プラズマ加熱電流駆動,分布制御,プラズマ立ち上げ等のツールとして電子サイクロトロン波帯加熱(ECRF)装置が必要とされている.水平ポートから中心及び周辺の加熱電流駆動を目的として,上斜めポートからは分布制御を目的として,前者はトロイダル入射角20〜45度,後者はポロイダル入射角度50〜58度の可変性能を有する入射系(ランチャー)が要求されている.何れも周波数は170GHz,総入射パワー20MWである.原研ではITER設計タスクのもと,先端ミラーによってに入射角度可変とするランチャーを基本に設計を行っている.その設計及びそれに必要な耐中性子可動ミラー用摺動部やダイヤモンド窓の開発,さらに先端から離れた位置に可動ミラーを設置し,そのミラーにより入射角度を変える遠隔駆動型ランチャーの開発を行っている.その成果について報告する.


300500
R&D of the heat-resistant LH antenna
関正美 ; 前原直 ; 藤井常幸
Fusion Engineering and Design 56-57, p.581-585(2001) ; (JAERI-J 19031)

 低域混成(LH)波は,トカマクを定常運転化し閉じ込め性能を向上できる.LH波用アンテナの工学的な課題は熱負荷対策で,耐熱性材料でアンテナを構築することが重要である.現在,耐熱性に優れた炭素繊維材を用いた開発を行っており,そのひとつはプラズマや高周波放電でダメージを受けやすいアンテナ先端部のみを耐熱化する型である.特徴はボルト締により交換可能としメンテナンス性を向上できることで,アンテナ先端部劣化による入射パワーの低下を防ぐのが目的である.開発のポイントは,導波管構造を持つSUS部材と炭素繊維材との接合方法の確立で,拡散接合を用いて成功した.今後,耐電力試験等を行い健全性を確認する.もうひとつの型は次世代の長パルス用の開発である.特徴は,LHアンテナを構成する電力分岐部全体が炭素繊維材で作られることで,高周波損失低減のため炭素材表面に銅の層を確実に着ける技術が重要である.そのために,チタンを緩衝材としたメッキ法やプラズマスプレー法を開発し,約50MW/m2(3.7GHz)の耐電力特性を確認した.高周波放電を持続させないことで耐熱性LHアンテナ製作の目処を得た.


300499
High heat load tests of neutron-irradiated divertor mockups
石塚悦男 ; 内田宗範* ; 佐藤和義 ; 秋場真人 ; 河村弘
Fusion Engineering and Design 56-57, p.421-425(2001) ; (JAERI-J 19030)

 炭素繊維強化炭素複合材とアルミナ分散強化銅からなるダイバータモックアップを中性子照射し,高熱負荷試験を実施した.試料の照射条件は,照射温度が約300℃,照射損傷量が0.3及び0.4dpaであった.高熱負荷試験は,熱流束を5MW/m2,加熱及び冷却時間を10秒として実施した.この際,冷却水の流速及び圧力は,各々11m/s及び1.5MPaであった.試験の結果,0.3dpaまで照射した試料の表面温度は約800℃となり,未照射試料により約400℃高くなり,0.4dpaの試料では1100℃となることが明らかとなった.この原因は,中性子照射によって,炭素繊維強化炭素複合材の熱伝導率が低下したためと考えられる.さらに,同じ高熱負荷試験条件で1000回の熱サイクル試験を実施した結果,炭素繊維強化複合材とアルミナ分散強化銅の剥離はなく,冷却性能が低下しないことを確認した.


300498
Manufacturing and maintenance technologies developed for a thick-wall structure of the ITER vacuum vessel
小野塚正紀* ; Alfile, J. P.* ; Aubert, P.* ; Dagenais, J.-F.* ; Grebennikov, D.* ; 伊尾木公裕* ; Jones, L.* ; 小泉興一 ; Krylov, V.* ; Maslakowski, J.* ; 中平昌隆 ; Nelson, B.* ; Punshon, C.* ; Roy, O.* ; Schreck, G.*
Fusion Engineering and Design 55(4), p.397-410(2001) ; (JAERI-J 19029)

 ITER真空容器厚肉(60mm)構造体の製造及び保守時に必要となる溶接技術,切断技術,非破壊検査方法及びそれらの遠隔操作機器を開発した.オーステナイトステンレス製厚板に対しては,TIG溶接,プラズマ切断,超音波検査などの従来技術を改良し,溶接速度の向上(0.12m/min),切断幅の極小化(10mm),欠陥サイズの特定化(板厚の7%)を図るなどの最適化を行った.またコスト及び技術的性能の観点より期待されている低圧力電子ビーム溶接(速度0.2m/min),多層パスYAGレーザ溶接(速度0.5m/min),YAGレーザ切断(2mm切断幅)及び電磁超音波探触子(探傷に媒体不要)を用いた検査技術などの最新手法検討も行った.さらにこれらの溶接,切断,検査装置を保持し,遠隔操作に供する機器について,局所減圧容器を含む電子ビーム溶接機器などの重量機器(kN)保持用とその他の軽量機器(100N)保持用の二種類の遠隔操作機器の検討を行った.その内,現時点では軽量機器保持用遠隔操作機器の製作が行われ,モックアップなどでの溶接試験などに適用し,その有効性が示された.


300497
ITER R&D: Auxiliary systems; Neutral beam heating and current drive system
井上多加志 ; Hemsworth, R.* ; Kulygin, V.* ; 奥村義和
Fusion Engineering and Design 55(2-3), p.291-301(2001) ; (JAERI-J 19028)

 本論文はITER EDA期間中に行われた中性粒子ビーム入射(NBI)システムのためのR&Dの成果をレビューしたものである.ITER NBI実現のために不可欠なR&Dとして,本R&D計画では大電流負イオン源と高エネルギー加速器の開発が精力的に行われた.(1)小型カマボコ型負イオン源において,短パルスながら負イオン生成の目標値である280A/m2 (D -)を十分低いガス圧力(0.3Pa)で達成した.1,000秒までの長パルス試験は最終段階にある.(2)加速器開発は高電圧放電の対策に手間取って遅れをきたしたが,EU,JA両国内チームとも,〜0.1Pa,長ギャップでのMeV級耐電圧試験を行い,1MV真空絶縁技術を確立した.(3)負イオン加速では,700-850 keVまでの負イオンビーム加速に成功している.ビーム加速に伴う耐電圧性能の劣化はEU,JA,両国内チームとも観測していない.加速器R&Dは,1MeV負イオンビーム加速の達成に向けて,現在も続けられている.


301023
Surface distribution of tritium on graphite tiles of divertor area in JT-60U
田辺哲朗* ; 宮坂和孝* ; 杉山一慶* ; 正木圭 ; 児玉幸三 ; 宮直之
Fusion Engineering and Design 41(3), p.877-881(2002) ; (JAERI-J 19460)

 JT-60Uのダイバータタイル及び内側第1壁に蓄積されているトリチウムの表面分布測定にイメージングプレートを適用した.その結果は以下のようにまとめられている.(1)JT-60Uのダイバータ領域の黒鉛タイルのトリチウム蓄積量は,表面ドームの頂及び,ダイバータバッフル板で大きく,ダイバータ領域で小さくなっていた.(2)バッフル板での蓄積トリチウム量は約10kBq/cm2であり,これは発生した全トリチウムが均一に壁に入射されたと仮定して計算された10kBq/cm2とほぼ同じオーダーであった.(3)ダイバータ黒鉛タイルに蓄積されているトリチウムの分布は,基本的には,トリチウムがいったんプラズマから均一に打ち込まれ,その後の黒鉛の温度により放出量が異なることを反映している.特に表面温度が1000℃以上になったと思われるダイバータの足の部分では,トリチウムはほとんど検出されなかった.(4)しかし,タイル上には,プラズマによる熱負荷のため,いったん打ち込まれたトリチウムも,タイルの温度が1000℃以上になるとほとんど放出され,残っていない部分が存在する.逆にトリチウムの蓄積量から,入熱が予測できその値は1-5MW/m2となった.(5)トロイダル全周にわたって,ドーム頂上のトロイダル分布はほぼ均一であったが,内側第1壁のポリダル方向には不均一分布が見られ,プラズマの上下非対称性を反映しているものと考えられる.


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