2002年度

放射線と産業


301255
電子ビームを利用したごみ燃焼排煙中のダイオキシン分解・無害化技術の開発
小嶋拓治
放射線と産業 (95), p.64-68(2002) ; (JAERI-J 19669)

 原研では,平成12年11月から平成14年2月まで,高崎市ほか4町村衛生施設組合の高浜クリーンセンターにおいて,200℃の実排煙を対象に,電子ビームによる排煙中ダイオキシンの分解技術の開発を行った.この結果,以下が得られた.(1)ダイオキシンの分解率(照射前に対する照射後のダイオキシン濃度の比)として,線量3kGyで約50%,10kGyで約80%,及び14kGy以上では所期の目標である90%上が得られた.(2)今回の試験規模を約6倍することにより4,000m3/hの実規模へのスケールアップが可能とみなされ,実用化に向けた有意な基礎データが得られた.(3)電子ビーム照射前後における排煙について,環境ホルモン様の毒性をELISA法により調べた結果,毒性を50%以上低減できた.(4)ジフェニルエーテル(DPE)や塩化DPEなど,ベンゼン環やエーテル結合を持つ模擬有機物質を用いた,200℃における反応生成物の解析により,反応機構として,ダイオキシンの分解初期では,構造を維持したままの塩素の解離よりもエーテル結合の切断やベンゼン環の開環が主として起こっていることが推定された.


300680
放射線による燃料電池膜の開発
諏訪武 ; 森田洋右
放射線と産業 (93), p.22-28(2002) ; (JAERI-J 19175)

 現在固体高分子型燃料電池(PEFC)に使用されているナフィオン等パーフルオロスルホン酸(PFS)膜の現状,さらに高性能で低コスト化を目指した高分子電解値膜(イオン交換膜)の開発状況,特に放射線グラフト法による膜に焦点をあてて紹介する.最後に,われわれの進めている架橋PTFEを基材に放射線グラフト法で作製したイオン交換膜の特徴を紹介する.イオン交換容量は0.5〜3meq/g,含水率は20〜150wt%,25℃における導電率は50〜200mS/cmである.また,アルコール類に対する膨潤性は,ナフィオン膜に比較して小さく非常に安定である.


300679
有害金属の捕集に役立つ放射線グラフト重合
玉田正男
放射線と産業 (93), p.17-21(2002) ; (JAERI-J 19174)

 放射繊グラフト重合は既存の高分子材料に目的とする官能基を導入できる手法である.特に,前照射法では,グラフト率は,照射線量及び反応時間により容易に制御できる.また,照射した高分子材料を低温で保存することにより,離れた施設でのグラフト反応が可能であり,工業化に適した方法である.有害金属の捕集にはイオン交換やキレート反応が利用される.イオン交換やキレート反応機能を有する官能基を高分子材料に導入するには,照射した高分子材料にそれらの官能基を有するモノマーを接触させグラフト重合させるか,グラフト後の化学反応により合成する.グラフト重合で作製したパラジウム捕集材では,迅速に廃液の濃縮ができ,また,鉛の捕集材では従来の粒子樹脂に比較して,効率が約100倍程度高い.


300573
米国及び日本における食品照射の比較
久米民和
放射線と産業 (92), p.61-70(2001) ; (JAERI-J 19104)

 科学技術庁から原研に調査委託された「放射線利用の国民生活に与える影響に関する研究」として,平成12年度に米国における放射線利用経済規模調査を実施し,農業分野では食品照射及び突然変異育種について調査した.その中で,最近米国で急速に実用化が進展している食品照射についての報告をまとめた.米国の食品照射の経済規模は,スパイス類177〜3,847億円,果実・野菜6億円,トリ肉23億円で,合計206〜3,903億円と求められた.我が国は,馬鈴薯の発芽防止のみの19億円であり,米国の規模は日本の11倍(最小)から205倍(最大)であった.今後,米国では赤身肉の照射及び果実の検疫処理が急速に伸びると考えられ,スパイスは毎年10%増加,冷凍肉は3年後には300万ポンドに達するであろうと予想される.


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