2002年度

放射光


300572
酸素分子の運動エネルギーによって誘起されるSi(001)初期酸化過程の高分解能光電子分光解析
寺岡有殿 ; 吉越章隆
放射光 15(1), p.27-35(2002) ; (JAERI-J 19103)

 Si(001)表面の酸化過程に対する入射O2分子の運動エネルギーの影響をシンクトロン放射光を用いた高分解能高光電子分光によって研究した.O2分子の入射エネルギーは高温ノズルを活用した超音速シード分子線技術によって最大3eVまで制御した.部分酸化Si(001)表面を酸化後の飽和酸素量は入射エネルギーに対して2つのしきい値を示した.しかし清浄面の場合には単調な増加を示した.代表的な入射エネルギーで得られたSi-2p光電子スペクトルから,清浄面の場合にはエネルギー障壁のないバックボンドの酸化が示唆され,一方,部分酸化面の場合にはエネルギーに依存した直接的な解離吸着が示唆された.さらに,部分酸化表面ではSi-OHとSi-O-Siの構造の違いが0-1sの化学シフトとして実測された.Si-2pスペクトルを約1分きざみで測定し,酸化過程の実時間その場観察が行えたことは特筆される.


300571
SPring-8高エネルギーX線回折ビームラインBL04B2におけるランダム系物質の単色高エネルギーX線回折
小原真司* ; 鈴谷賢太郎
放射光 14(5), p.365-375(2001) ; (JAERI-J 19102)

 第三世代放射光施設における高エネルギーX線回折は,液体やアモルファス固体,ガラスなどのランダム系物質の構造解析に大きな進歩をもたらした.特に,X線の波長が短いため,高い散乱ベクトルQまで測定できるので,実空間分解能が飛躍的に向上した.また,X線の強度と透過能が高いため,少量の試料を透過法で測定できるので,高温高圧下での測定も比較的容易である.したがって,これまで(パルス)中性子回折によって調べられてきたランダム系物質のデータとの直接比較が可能である.われわれは,SPring-8において,ランダム系物質専用の高エネルギーX線回折計を建設し,いくつかの酸化物ガラス(SiO2及びGeO2ガラス)の中距離構造を明らかにした.特に,高エネルギーX線回折とパルス中性子回折の両データに,逆モンテカルロシミュレーションを適用し,中距離構造を含むガラスの大きな構造モデルの構築に成功した.これらの高エネルギーX線回折を中心とした,ランダム系物質の短・中距離構造の精密な構造解析法は,高温下でのランダム系物質の構造変化を調べる研究などにも適用され,SiO2ガラスは1000℃の高温下でも短距離構造は変化せず,わずかに平均的な中距離構造に変化が現れるだけであることが明らかになった.


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