2002年度

Japanese Journal of Applied Physics, Part 1


310215
Electron energy distribution function measured by electrostatic probes at divertor plasma in JFT-2M tokamak
上原和也 ; 津島晴* ; 雨宮宏* ; 川島寿人 ; 星野克道
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 42(2A), p.657-662(2003) ; (JAERI-J 19845)

 JFT-2Mトカマクのダイバータプラズマに対して静電プローブを用いて電子エネルギー分布関数を測定した.従来,静電プローブによる分布関数の測定はプローブ関数の二次微分で行われるが,一次微分による測定例は少なく,トカマクプラズマに対しては初めてである.電子エネルギー分布関数をプローブ電流の一次微分で測定するには,空間電位付近までプローブ電圧を印加して,かつ十分な電子飽和電流を得ることが必須の条件になるが,トカマクプラズマのような強い磁場中ではこの条件はなかなか満たされない.そこで磁場が非常に小さい値を保っているセパラトリックス付近のプラズマに着目して静電プローブ測定を行い,電子エネルギー分布関数を成功裏に測定した.プローブ電流の,一次微分は回路微分で行った.JFT-2Mのオーミックプラズマに対して密度依存の実験を行い,電子エネルギー分布関数とバルクの電子温度がどのように変化するかを測定した.さらに電子サイクロトロン加熱プラズマに対しても電子エネルギー分布関数を測定した.


310055
Second harmonic generation in Te crystal using free electron laser
山内俊彦 ; 菊澤信宏 ; 峰原英介
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 41(11A), p.6360-6363(2002) ; (JAERI-J 19719)

 原研自由電子レーザー(FEL)から発生する22ミクロンの波長を二種類の結晶,つまり非複屈折結晶であるCdTe及び複雑屈折結晶であるTeに入射して2次高調波(SHG)を発生した.そしてそれぞれのSHG変換効率,CdTeで2.2×10-2%(7.3×10-5%/MWcm-2)及びTeで0.4%,を決定した.また,Te結晶の位相整合角9.62゜を得た.


310054
X-Ray diffractometer for studies on molecular-beam-epitaxy growth of III-V semiconductors
高橋正光 ; 米田安宏 ; 井上博胤* ; 山本直昌* ; 水木純一郎
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 41(10), p.6247-6251(2002) ; (JAERI-J 19718)

 III-V族半導体の結晶成長の研究を目的に,MBE装置と組み合わせた表面X線回折計を製作し,放射光施設SPring-8の実験ステーションBL11XUに設置した.成長室の壁の一部に,X 線の窓材としてBeを用いたことで,真空槽の外からX線を照射し,散乱X線を真空槽外に導いて,その場X線回折測定を行うことができる.本装置のX線回折計は,単結晶構造解析用の四軸回折計と同等の機能を有しており,広範囲の逆格子空間の強度測定に基づいた,表面原子の三次元座標の決定を可能にする.本論文では,GaAs(001) 清浄表面において,(2×4)β2構造と一致する回折強度分布が得られたことを示す.さらに,成長中のX線回折強度を実時間測定し,成長過程の動的な解析ができることを示す.GaAs(001)上のホモエピタキシャル成長中のX線回折では,RHEED振動と同様の強度変化が明瞭に観察された.X線の場合は多重散乱が無視できるので,解析の精密化が期待できる.


301206
Collimation properties of a laser ion source measured using the multichannel Faraday cup
田村浩司
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 41(9), p.5845-5848(2002) ; (JAERI-J 19620)

 レーザー光イオン化プラズマから引き出されたネオジムイオンビームの収束特性を,多チャンネルファラデーカップを掃引することにより測定した.ファラデーカップ位置でのイオンビームは,引き出し電極系に半球型電極を配し収束電場を設けることにより収束することができた.また,中心イオンビーム強度はこれにより約36倍に増加した.この結果は,レーザー光イオン化イオン源の利用に有益である.


301205
Improved confinement of neon plasma inside a high-Tc superconducting tube
山内俊彦 ; 松沢秀典* ; 三神幸治* ; 石川淳一*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 41(9), p.5799-5800(2002) ; (JAERI-J 19619)

 本論文は高温超伝導体と荷電粒子(プラズマ)との相互作用に関する実験結果について述べたものである.FEL電子ビームの高温超伝導体ウイグラーやビームガイド用とともに,本研究で行われている荷電粒子と超伝導体相互作用研究と類似した視点で研究を進めており,期待される研究である.


301031
Precise control of Si(001) initial oxidation by translational kinetic energy of O2 molecules
寺岡有殿 ; 吉越章隆
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 41(6B), p.4253-4260(2002) ; (JAERI-J 19468)

 O2分子の運動エネルギーがSi(001)面との表面化学反応に及ぼす影響を化学反応動力学の立場から研究している.これはまた一面ではナノテクノロジーの一環とみることもできる.本論文では,まず,Si(001)面の初期酸化がO2分子の運動エネルギーで室温でも増速されることを示す.特にH2Oが解離吸着した部分酸化Si(001)面では第一原理計算で予測されたポテンシャルエネルギー障壁が実測されることを強調する.一方清浄Si(001)面ではそのようなエネルギー障壁は観測されない.この違いを明らかにするためSi2p光電子スペクトルを比較した.その結果,清浄表面ではエネルギー障壁(1.0eV)以下の運動エネルギーでもダイマーのバックボンドが酸化されることを確認した.これはブリッジサイトでの大きな吸着熱によりバックボンドにO原子が拡散するためと解釈された.


301144
Total-electron-yield X-ray standing-wave measurements of multilayer X-ray mirrors for interface structure evaluation
村松康司 ; 竹中久貴* ; Gullikson, E. M.* ; Perera, R. C. C.*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 41(6B), p.4250-4252(2002) ; (JAERI-J 19568)

 X線多層膜ミラーの層構造及び界面粗さの情報を得ることを目的として,全電子収量法を用いたX線定在波スペクトルを測定した.Mo/SiC/Si多層膜ではブラッグ反射に対応した定在波ピークが観測され,アニールによる層構造の乱れが示唆された.また,本法はその簡便な測定原理のため,反射率との同時測定が可能であり,かつ二次元マッピングによる層構造の均一性について可視化できることを示した.以上から,X線多層膜ミラーの評価手法として本法が有効であることを明らかにした.


300791
Boundary structure of Mo/Si multilayers for soft X-ray mirrors
石野雅彦 ; 依田修 ; 葉石靖之* ; 有元史子* ; 武田光博* ; 渡辺精一* ; 大貫惣明* ; 阿部弘亨
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 41(5A), p.3052-3056(2002) ; (JAERI-J 19269)

 軟X線反射鏡用Mo/Si多層膜の構造を評価するため,高分解能断面TEM観察及びX線回折測定を行った.また,TEM観察から示唆される多層膜モデルを用いて,X線反射率測定結果に対するシミュレーション計算を行い,多層膜の界面構造及び各層の膜厚,密度を定量的に評価した.その結果,Mo層の結晶性であり,Mo層厚が8nm以下のときは,Mo結晶粒径が層厚に一致することを見いだした.また,Mo/Si多層膜の界面に形成される混合層は,Si層側に形成されること,混合層の層厚は,Mo層とSi層の膜厚比にかかわらず約1.4nmであることがわかった.そして,Mo-on-Si界面に形成される混合層の層厚と密度は,Si-on-Mo界面に形成される混合層よりも大きく,Mo層とSi層の密度は,それぞれのバルク密度に比べて僅かに小さいことを見いだした.


300726
Measurements of the depth profile of the refractive indices in oxide films on SiC by spectroscopic ellipsometry
飯田健* ; 富岡雄一* ; 吉本公博* ; 緑川正彦* ; 塚田裕之* ; 折原操* ; 土方泰斗* ; 矢口裕之* ; 吉川正人 ; 伊藤久義 ; 石田夕起* ; 吉田貞史*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 41(2A), p.800-804(2002) ; (JAERI-J 19212)

 SiCは高周波,高パワー,高温,放射線照射下等,過酷な環境下で動作する素子用材料として優れた物性を持つ.また熱酸化で表面にSiO2層が形成されMOS構造が作製できるが,酸化層/SiC界面には欠陥が多いため,物性値から期待される性能が得られない.そこで本研究では,分光エリプソメーター(SE)を用いて,その界面欠陥の発生原因を光学的に追究した.試料には,SiC基板を乾燥酸化して得た60nm程度の酸化膜を用いた.これをHF溶液を用いて斜めにエッチングし,酸化膜の光学的周波数分散特性を,膜厚をパラメータとして測定した.得られた値は,セルマイヤーの式を用いたカーブフィッティング法により,屈折率に変換した.その結果,SiC上の酸化層の見かけの屈折率は,Si酸化膜より小さくなった.また,屈折率は酸化膜厚の減少と共にも小さくなり,膜厚が1nm程度では1にまで近づいた.この屈折率の膜厚依存性は,酸化層がSiO2層と高屈折率界面層から成ると仮定することで説明できる.このことから,酸化層/SiC界面には屈折率の高い界面中間層が存在し,それらが界面欠陥を発生させていると推定された.


300519
Ion beam distributions from a laser ion source with a pair of semicylindrical electrodes measured by a multichannel Faraday cup
田村浩司
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 41(1), p.405-409(2002) ; (JAERI-J 19050)

 レーザー光イオン化プラズマから引き出されたネオジムイオンビームの強度分布を多チャンネルファラデーカップを掃引することにより測定した.ファラデーカップ位置でのイオンビームは,従来のイオン引出し方法では空間電荷等の原因により広がりが大きいものであったが,引き出し系外側に半円筒型電極を配し,同心円状電位分布を設けることによりビーム幅は減少した.中心イオンビーム強度は,これにより約2倍に増加した.この結果は,レーザー光イオン化イオン源の応用に有益である.


301030
Pressure dependence of effective pair potentials in AgBr determined by extended X-ray absorption fine structure
吉朝朗* ; 村井敬一郎* ; 永井隆哉* ; 片山芳則
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 40(4A), p.2395-2398(2001) ; (JAERI-J 19467)

 AgBrにおける広域X線吸収微細構造(EXAFS)のデバイワーラー因子の圧力依存性をキュムラント展開法によって調べた.キュービックアンビル型装置(MAX90)と筑波のフォトンファクトリーの放射光を用いて,Br K吸収端のEXAFSスペクトルを透過法によって,室温高圧下(≦9.1GPa)で測定した.有効対ポテンシャルV(u)=au2/2+bu3/3!を評価し,2.1,4.2及び6.1GPaでのポテンシャル係数aとして,それぞれ1.59(4),1.75(4),1.91(4)eV/Å-2を得た.3次のキュムラントσ3は圧力と伴に増加したが,3次の非調和ポテンシャル係数bのエネルギーは圧力によってもほとんど一定であった.


301029
Anharmonic effective pair potentials of γ and α-CuBr at high pressure
吉朝朗* ; 奥部真樹* ; 大高理* ; 神嶋修* ; 片山芳則
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 39(12A), p.6747-6751(2000) ; (JAERI-J 19466)

 高圧下におけるγ及びα-CuBrのBr-Cu結合に対する非調和有効対ポテンシャルV(u)=au2/2+bu3/3!+cu4/4!を広域X線吸収微細構造(EXAFS)法によって調べた.BrのK吸収端近傍のEXAFSスペクトルを大容量一軸押しプレスとSPring-8の放射光を用いて測定した.それぞれの相における非調和有効対ポテンシャルは圧力に影響され,圧力の増加と伴に険しくなっていく.γ相のポテンシャルパラメーターaは,圧力4.8GPaでは0.1MPaに比べ約20%増加する.有効対ポテンシャルとBr-Cu距離の分布をもとに,α-CuBr中のCuの統計的な分布と超イオン導電機構について議論する.


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