2002年度

Materials Science Forum


300808
Radiation response of p-channel 6H-SiC MOSFETs fabricated using pyrogenic conditions
Lee, K.* ; 大島武 ; 伊藤久義
Materials Science Forum 389-393, p.1097-1100(2002) ; (JAERI-J 19286)

 ゲート酸化膜を水素燃焼酸化で作製したnチャンネル及びpチャンネルエンハンスメント型6H-SiC 金属−酸化膜−半導体 電界効果トランジスタ(MOSFET)特性のγ線照射による変化を調べた.γ線照射は室温にて8.8kGy(SiO2)/hで行った.ドレイン電流(ID)−ドレイン電圧(VD)特性の直線領域よりチャンネル移動度を,ドレイン電流(ID)−ゲート電圧(VG)特性よりしきい値電圧を求めた.チャンネル移動度は,nチャンネルMOSFETでは1MGy(SiO2)照射後も未照射と同等の値が得られ優れた耐放射線性が確認された.pチャンネルでは40kGy程度の照射によりチャンネル移動度が一時増加し,その後減少するという振る舞いを示した.これは,照射により発生した界面準位の電荷が未照射時に存在する界面準位の電荷を見かけ上補償したためと考えられる.しきい値電圧に関しては,nチャンネルでは照射による変動が0.5V程度と安定した値であったが,pチャンネルでは照射量の増加とともに負電圧方向へシフトし,1MGy照射により5V以上の変化を示した.


300807
Gamma-ray irradiation effects on the electrical characteristics of 6H-SiC MOSFETs with annealed gate-oxide
大島武 ; Lee, K.* ; 大井暁彦* ; 吉川正人 ; 伊藤久義
Materials Science Forum 389-393, p.1093-1096(2002) ; (JAERI-J 19285)

 ゲート酸化膜を水素処理(700℃)または水蒸気処理(800℃)することで初期特性を向上させた六方晶炭化ケイ素(6H-SiC)金属−酸化膜−半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)にγ線を照射を行い,電気特性(しきい値電圧(VT),チャンネル移動度(μ))の変化を調べた.γ線照射は線量率8.8kGy(SiO2)/h,室温,印加電圧無しの条件で行った.水素処理MOSFETでは,未照射で0.9VであったVTが530kGy照射後には3.1Vまで増加した.また,μは60kGy照射により減少し始めた.一方,水蒸気処理MOSFETでは,未照射で2.7VであったVTは530kGy照射後も3.3Vであり,変化量は0.6V程度と小さかった.μに関しては,180kGyの照射により減少し始め,水素処理MOSFETに比べ優れた耐放射線性を有することが見出された.さらに,subthreshold特性の照射による変化から界面準位・固定電荷の発生を調べたところ,水素処理MOSFETの特性劣化は界面準位の増加に伴いμが減少することで解釈できるが,水蒸気処理MOSFETでは多量の界面準位が発生する照射量においてもμの減少が見られなかった.これより水蒸気処理MOSFETの酸化膜及び界面は水素処理MOSFETと異なることが示唆される.


301233
X-ray photoelectron spectroscopy studies of post-oxidation process effects on oxide/SiC interfaces
土方泰斗* ; 矢口裕之* ; 吉川正人 ; 吉田貞史*
Materials Science Forum 389-393, p.1033-1036(2002) ; (JAERI-J 19647)

 六回周期六方晶炭化ケイ素(6H-SiC)基板上に成長させた酸化膜とSiC界面の酸化後アニーリングによる構造変化を調べた.6H-SiC基板を1200℃1時間ドライ酸化した試料,1200℃1時間ドライ酸化した後1200℃アルゴン中で1時間アニーリングした試料,1200℃ 1時間ドライ酸化した後1200℃アルゴン中で1時間アニーリングした試料をさらに950℃で1時間水蒸気雰囲気でアニーリングした試料を作製した.これら試料をMOS構造に成型し,CV特性を測定して界面準位量を測定した.また,同じ試料の表面酸化膜をフッ酸溶液を用いて斜めにエッチングし,酸化膜と6H-SiC基板界面近傍に存在する炭素とその関連の化合物量を,X線光電子分光法(XPS)を用いて測定して,CV特性から得られる界面準位量との相関を調べた.その結果,炭素関連の化合物(C-O,C)と界面準位との間に強い相関が認められた.


300806
Effects of successive annealing of oxides on electrical characteristics of silicon carbide metal-oxide-semiconductor structures
吉川正人 ; 佐藤美玲* ; 大島武 ; 伊藤久義
Materials Science Forum 389-393, p.1009-1012(2002) ; (JAERI-J 19284)

 4H-SiCエピ膜上に水素燃焼酸化法により酸化膜を成長させた.酸化の最終段階において950℃まで温度を低下させ30分間,引き続いて800℃まで温度をさらに低下させ3時間,それぞれ水蒸気雰囲気で酸化膜をアニーリングする連続アニーリングを行った.その後電極を蒸着してMOS構造を形成し,そのCV特性を測定して酸化膜/4H-SiC界面欠陥の電気特性を評価した.その結果,これまでの単一温度の水蒸気アニーリングとは異なり,連続アニーリングによって価電子帯近傍の界面欠陥量が,大幅に低下することを見出した.一方,伝導体近傍の界面欠陥については,950℃30分或いは800℃3時間等の単一温度の水蒸気アニーリングを行った時と同程度の欠陥低減効果が得られた.連続アニーリング法は,4H-SiC MOS構造用酸化膜の作製手法として有効であると結論できる.


300805
Post-implantation annealing effects on the surface morphology and electrical characteristics of 6H-SiC implanted with aluminum
大井暁彦* ; 大島武 ; 吉川正人 ; Lee, K.* ; 岩見基弘* ; 伊藤久義
Materials Science Forum 389-393, p.831-834(2002) ; (JAERI-J 19283)

 Al注入(1×1018/cm3,室温)した六方晶炭化ケイ素(6H-SiC)へ熱処理(Ar中,温度:1550から1750℃,時間: 3から30分間)を行い,表面状態と注入層の電気特性を調べた.原子間力顕微鏡(AFM)により表面観察を行った結果,熱処理により直線的な溝や溝に沿ったスパイク状の突起が形成されることがわかった.また,溝は高温・長時間熱処理ほど深くなることが明らかになった.面方位を考慮して解析を行った結果,溝の片面は(0001)面であると決定できた.一方,電気特性に関しては,高温・長時間熱処理ほど正孔濃度は増加するが,移動度は1750℃で3分間程度の熱処理で飽和傾向を示し,それ以上の長時間熱処理条件では変化は見られなかった.この結果は,注入Al原子の電気的活性化には高温・長時間熱処理が有効であるが,結晶性の回復には高温・短時間熱処理で十分であることを示している.結晶性の低下や表面荒れがデバイス特性に悪影響を与えることを考えると,Al注入層の熱処理条件としては1750℃,3分間が適切であると判断できる.


300804
Radiation-induced defects in 4H- and 6H-SiC epilayers studies by positron annihilation and deep-level transient spectroscopy
河裾厚男 ; Weidner, M.* ; Redmann, F.* ; Frank, T.* ; Krause-Rehberg, R.* ; Pensl, G.* ; Sperr, P.* ; Triftshauser, W.* ; 伊藤久義
Materials Science Forum 389-393, p.489-492(2002) ; (JAERI-J 19282)

 2MeVの電子線照射を行った4H及び6H SiCエピ膜について,陽電子ビームによる陽電子消滅測定及びDLTS測定を行い,高温で残留する深準位を同定した.電子線照射直後には,多くの電子準位が存在することがわかった.これらの多くは,1000℃までのアニールで消失し,その後E1/2(6H-SiC)とZ1/2(4H SiC)が残留することが見いだされた.これらは,負の電子相関を持つ特殊な電子準位である.また,最終的に1200〜1500℃のアニールで消失することが明らかになった.一方,陽電子消滅測定の結果,シリコン空孔に起因する複合欠陥が検出され,これが,上述の電子準位と同一の温度域で消失することがわかった.以上より,E1/2(6H-SiC)とZ1/2(4H SiC)準位は,何れもシリコン空孔を伴う複合欠陥であると結論できる.


300803
Comments on the effect of γ-irradiation on positronium formation in polymers at low temperature
Shantarovich, V. P.* ; 平出哲也 ; Kevdina, I. B.* ; Gustov, V. M.* ; Arzhakov, M. S.*
Materials Science Forum 363-365, p.352-354(2001) ; (JAERI-J 19281)

 ポジトロニウムは陽電子と電子の結合状態であるが,それらのスピン状態によってパラーポジトロニウムとオルリーポジトロニウム(o-Ps)が形成する.o-Psの消滅寿命はo-Psの捕まる空間の広さに依存し,高分子の微視的自由体積評価に期待されている.しかし,o-Psがどのように自由体積に由来する空間につかまるかわかっていなかった.平出らによって見いだされた新しいポジトロニウム形成を用い,o-Psがどのように空間につかまるかを考察し,その結果,ほぼすべてのo-Psがその寿命よりはるかに短い時間で空間につかまっていることが判明した.


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