2002年度

表面科学


301256
超音速O2分子ビームで誘起されるSi(001)室温酸化の反応ダイナミクス
寺岡有殿 ; 吉越章隆
表面科学 23(9), p.553-561(2002) ; (JAERI-J 19670)

 超音速O2分子ビームと放射光光電子分光法を用いて,清浄及び水吸着Si(001)表面で起こるO2分子の解離吸着に対するポテンシャルエネルギー障壁を調べた.両Si(001)表面の酸素飽和吸着量をO2分子の並進運動エネルギーの関数として計測した.飽和量は両表面ともに入射エネルギーに依存して増加した.特に水吸着面の酸化では2つのエネルギーしきい値が観測された.清浄表面を第一のしきい値以下のエネルギーを持つO2ガスで酸化して得た飽和吸着面のSi-2p光電子スペクトルからシリコンダイマーのバックボンドに酸素が侵入するが,水吸着面では1.0eV以上の入射エネルギーでO2分子が攻撃しなければダイマーはそのバックボンドが酸化されないということがわかった.このことから清浄表面ではダングリングボンド経由の吸着反応経路が開けるが,水吸着面ではHとOH終端のために酸化が抑制され1.0eVを越えるエネルギーが必要である.


301069
O2分子のSi(001)表面への初期吸着とSiO脱離に及ぼす運動エネルギーの影響
寺岡有殿 ; 吉越章隆
表面科学 23(8), p.519-523(2002) ; (JAERI-J 19506)

 O2分子のSi(001)表面での初期吸着確率を室温で並進運動エネルギー3.0eVまで測定した.また,18O2分子とSi(001)表面の反応で脱離するSi18O分子の収率を900Kから1300Kの範囲で代表的な並進運動エネルギー(0.7eV,2.2eV,3.3eV)で測定した.初期吸着確率は0.3eVで極小となり1eV以上では一定値を示したが,SiO脱離収率は1000K以上では並進運動エネルギーに依存して増加した.これはシリコン二量体の架橋位置とサブサーフェイスのバックボンドほの直接的な解離吸着によると解釈された.


301068
グラファイト単結晶中に注入したシリコンの局所構造
馬場祐治 ; 下山巖* ; 関口哲弘
表面科学 23(7), p.417-422(2002) ; (JAERI-J 19505)

 固体炭素は二種類の局所構造,すなわちダイヤモンド構造と二次元グラファイト構造をとるのに対し,炭化ケイ素はsp3結合でできたダイヤモンド構造のみをとることが知られている.グラファイト状の構造をした二次元SixC層が存在し得るかどうかを明らかにするため,グラファイト単結晶(HOPG)にSi+イオンを注入して作成したSixC膜の局所構造をX線吸収端微細構造法(NEXAFS)により調べた.Si+イオンを注入した試料のSi K-吸収端のNEXAFSスペクトルに現れる共鳴吸収ピークは,他のどんなシリコン化合物の場合より低いエネルギーに観測された.また,このピーク強度の偏光依存性から,励起先の非占有軌道がπ*軌道的性質を持つこと,またその軌道の方向がグラファイト面に垂直に近いことがわかった.このことから,Si+イオン注入によって生成したSi-C結合はグラファイト面にほぼ平行であり,SixC層はsp2結合でできたグラファイト状の二次元構造をしていることが明らかとなった.


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