2002年度

エネルギーレビュー


300829
新分野イオンビーム育種
田中淳
エネルギーレビュー 22(5), p.15-17(2002) ; (JAERI-J 19307)

 世界で初めてバイオ・材料研究専用に設立された原研高崎研究所のイオン照射研究施設(TIARA)における植物育種利用に関する総説である.1993年にTIARAが完成以来,イオンビームによる植物の突然変異体誘発研究では,初めて野性株よりも紫外線に耐性である突然変異体の誘発や,新花色のキクの誘発に成功するとともに花びら先端がフリル状になる遺伝子の存在を発見した.また,誘発される突然変異の特徴を分子レベルで解析し,イオンビームは決定的な遺伝子の変異を頻度高く誘発することで,変異率が高く,また変異スペクトルも広いために今までにない新しい突然変異体を効率よく作出できるという特徴を述べたものである.これらの研究は,環境保全や食糧資源の確保,また新産業の創出に向けて新種の植物を作り出すためにイオンビームが有効であることを示している.


300828
排煙・排ガスの環境対策; 電子ビームによる有害汚染物分解・除去
小嶋拓治
エネルギーレビュー 22(4), p.27-29(2002) ; (JAERI-J 19306)

 日本原子力研究所では,火力発電所からの排煙に含まれる硫黄酸化物及び窒素酸化物,工場の換気ガス中の有害揮発性有機物,ごみ焼却施設からの排煙中に含まれるダイオキシンなどの極微量の汚染物質を電子ビームの特長を活かして分解・除去する技術の開発を行っている.火力発電所から出る排煙の処理技術については,すでに実用化が進み,国内のみならず外国においてもその技術が活用されつつある.揮発性有機化合物については,分解挙動や粒状物質の生成などの現象を明らかにしており,実用化を目指した開発が進められている.ごみ燃焼排煙中のダイオキシンの分解に関しては,実ガスを用いた試験の結果,目的であった90%以上の分解率を達成した.このように,特に環境への拡散が防止しにくい排ガス中の汚染汚染物質に対する電子ビーム処理技術は,地上からの有害物質の削減に寄与するものとして,さらなる技術開発が期待される.


300675
未来を拓く材料創製; SiC繊維やカーボンオニオン
田中茂
エネルギーレビュー 22(4), p.16-18(2002) ; (JAERI-J 19170)

 放射線が材料に与える効果を研究することにより生み出された耐熱性材料,耐放射線性材料及び新しい機能性材料の特徴,製法,応用例等を紹介し,放射線利用研究が社会や産業に貢献していることを解説した.耐熱性材料として1700℃の耐熱性を有する炭化ケイ素遷移と炭化ケイ素セラミック複合材を,耐放射線性材料としてアラミド繊維強化プラスチック棒材と宇宙用有機材料を,また新しい機能性材料として「分子ふるまい」機能をもつイオン穿孔膜と新規潤滑素材として注目されるカーボンオニオンを取り上げた.


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