2002年度

日本ゴム協会誌


300577
ゴムの放射線架橋
幕内恵三*
日本ゴム協会誌 75(2), p.85-89(2002) ; (JAERI-J 19108)

 放射線加工のなかで最も実用化が進んでいるのは,放射線架橋である.ゴムの放射線架橋は,放射線利用の研究開発が始まった初期の段階から期待されていた.しかし,タイヤ以外のゴム製品ではあまり利用されていない.この原因を考察し,現状と新たな応用の可能性を紹介した.放射線架橋ゴムの低物性の主な原因は,ゴム分子の放射線による主鎖切断と放射線で発生したオゾンによる劣化のためである.多官能性モノマー添加による架橋促進と電子加速器による短時間照射などの適切な対策を講ずれば,放射線架橋でも硫黄架橋と同等の性能は得られる.配合によっては硫黄架橋よりもすぐれた耐熱性も認められる.硫黄架橋では数種類の架橋促進剤が使用され,複雑な配合となる場合が多いが,放射線架橋により配合の単純化が可能となる.また,放射線架橋の架橋速度は放射線の線量率で制御できるため,高線量率照射により押出し機とのon-line化がタイヤ工場では行われている.単純な配合と早い架橋は製造コスト削減に寄与することを強調した.


300687
切断と架橋によるゴム網目鎖の制御と発現する物性
伊藤政幸*
日本ゴム協会誌 75(2), p.68-72(2002) ; (JAERI-J 19182)

 本稿はゴムの網目鎖構造が関与すると考えられる未確定の問題を解明するために,放射線を利用してゴムに切断と架橋とを定量的に制御して加え,得られた試料の物性を測定し,以下の各点を明らかにした.(1)ゴムの破断伸びについて,生ゴムに架橋のみが加えられた場合には,破断伸びは架橋密度の-1/2乗に比例し,Bucheの理論と一致する.しかし切断が併発すると,短鎖網目への応力の集中と切断によって生じたFree endがゴムの伸び配向を妨害し,破断伸びは小さくなる.(2)Moony-Rivlin式のC1は弾性項とみなすことができ,C2は網目鎖間分子量の大きな鎖の絡み合いによる二次網目鎖によって発現する.(3)ゴム分子鎖が切断を受け,そこに酸化生成物が付加した場合,誘電緩和時間はFree endの長さが短いほど架橋点の束縛が強く,酸化生成物(極性基)の電場での運動が抑制されて緩和時間が長くなる.


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