2002年度

日本原子力学会和文論文誌


310156
材料データベースとリンクした知識ベースシステムの開発
加治芳行 ; 吉田健司* ; 益子真一* ; 藤田充苗* ; 志村和樹* ; 衣川純一* ; 辻宏和 ; 宮川俊一* ; 岩田修一*
日本原子力学会和文論文誌 1(4), p.412-418(2002) ; (JAERI-J 19800)

 物質・材料研究機構,日本原子力研究所,核燃料サイクル開発機構,科学技術振興事業団の4機関が共同して,分散型材料データベースシステム(データフリーウェイ)の開発を進めてきた.データフリーウェイのより有効な利用のために,材料データベースから抽出した知識を表現する知識ベースシステムの開発を行っている.拡張可能なマーク付け言語(XML)を検索結果の表示及びその意味を表現する方法として採用している.XMLで記述する知見ノートを知識ベースを構成する1つの知識として格納している.本論文では,データフリーウェイの現状,XMLによる材料データベースから抽出された知識の表現方法及び分散型材料知識ベースシステムについて述べる.


310155
高温ガス炉ガスタービン発電システム(GTHTR300)用高燃焼度燃料の成立性評価,その1
片西昌司 ; 國富一彦 ; 武井正信* ; 中田哲夫 ; 渡部隆* ; 泉谷徹*
日本原子力学会和文論文誌 1(4), p.373-383(2002) ; (JAERI-J 19799)

 原研では,HTTRの経験をもとに,独自の高温ガス炉ガスタービン発電システム(GTHTR300)の設計を行っている.GTHTR300の燃料に課される条件としては,HTTRに比べ出力密度が高いため冷却材への効率的な伝熱をはかること,最高140GWd/t程度の高燃焼度に耐えられること及び経済性を高めるため燃料コストを抑えることなどがある.これらの条件を満たすために,GTHTR300では,HTTRの燃料をさらに改良したものを使用する.この燃料について,高燃焼度における燃料健全性評価と,燃料製作コストを含む燃料サイクルにかかるコストの評価を行った.その結果,GTHTR300で予定している使用条件では,燃料は破損せず健全性を保つこと及びコストの観点でシステムの経済性の目標が達成できるとの見通しを得た.


301258
有機液体シンチレータと6Liガラスシンチレータを組み合わせた広帯域エネルギー対応中性子検出器
Kim, E.* ; 遠藤章 ; 山口恭弘 ; 吉澤道夫 ; 中村尚司* ; Rasolonjatovo, D. R. D.*
日本原子力学会和文論文誌 1(3), p.317-319(2002) ; (JAERI-J 19672)

 大強度陽子加速器施設の主な被ばく源による中性子の線量評価は,放射線安全管理上重要である.現在,中性子モニタリングではレムカウンタがよく用いられているが,レムカウンタは10MeV以上の中性子に対しては,感度が著しく低下する.そのため,より広いエネルギー領域において十分な感度を持つ中性子モニタの開発は不可欠である.本研究では,6Liガラスシンチレータと有機液体シンチレータを組みあわせ,低エネルギーから100MeVまで線量測定可能な中性子検出器を考案し,設計した.そして,製作した検出器の応答特性を評価したので,これについて報告する.


301073
ジルコニア固体電解質を用いた酸素センサの起電力に及ぼす中性子照射効果
日浦寛雄* ; 山浦高幸 ; 本橋嘉信* ; 小檜山守*
日本原子力学会和文論文誌 1(2), p.202-208(2002) ; (JAERI-J 19510)

 原子炉燃料中の酸素ポテンシャルの炉内測定を可能とする酸素センサの開発を行った.本センサは,CaOで安定化したジルコニア電解質の両側に標準極と測定極を接触させて酸素濃淡電池を構成し,発生する起電力から測定極となる燃料中の酸素ポテンシャルを推定する.本開発試験では,センサ標準極にNi/NiO,測定極には燃料の代わりにFe/FeOを用いることとし,さらに長寿命化対策を考慮してセンサを設計・試作して,その起電力特性を炉外試験及びJMTRでの照射下その場試験において調べた.炉外試験では,700℃〜1000℃間の温度変化に対する起電力の温度依存性は理論値とほぼ一致し,起電力経時変化は800℃一定の下で980hにわたり4%以内であった.照射下その場試験では,高速中性子(E>1 MeV)照射量8.0×1023 m-2(照射時間1650h)までの700℃〜900℃間の温度変化に対する起電力の温度依存性は炉外試験時に得られた結果とよく一致し,800℃一定下での起電力経時変化は理論値の6%以内であった.以上のことから,中性子照射下における燃料中の酸素ポテンシャルの測定が本センサにより可能であることがわかった.


300896
地震情報緊急伝達システムの研究開発
蛯沢勝三 ; 久野哲也 ; 柴田勝之 ; 大井昌弘* ; 堀内茂木* ; 阿部一郎* ; 都筑和久*
日本原子力学会和文論文誌 1(2), p.177-190(2002) ; (JAERI-J 19362)

 地震情報緊急伝達システムの研究開発では,最新の地震工学の知見を反映した震源・地震動パラメータの推定手法の開発を行うとともに,最新の通信・情報伝達技術を反映したシステム造りを進めた.システム開発は,基本システムと応用システムに分けて行った.基本システムは,地震情報を一方向で伝達する.応用システムは,災害情報センターとユーザサイトで構成され,双方向情報伝達が可能な防災システムである.基本システムの開発では,原研東海研周辺の地盤データ,試験用地震計ネットワーク,想定地震による地震動分布データ,表層地盤の増幅率関数データ等を整備した.これらのデータを用いて,システムの機能を検証した.応用システムの開発では,京大の亀田等が開発した多次元地理情報システム(DiMSIS: Disaster Management Spatial Information System)を利用した防災システムの概念を構築するとともに,地震動推定に基本システムを用いたプロトタイプシステムを開発し,東海村を対象としたデモンストレーションを行い機能を確認した.


301072
高温発電システムにおける冷却材ヘリウム中の微粒子除去フィルタの開発
石山新太郎 ; 武藤康 ; 文沢元雄 ; 塚崎和生*
日本原子力学会和文論文誌 1(2), p.164-176(2002) ; (JAERI-J 19509)

 高温発電システム(HTGR-GT)において,400MWt級高温ガス炉炉心から放出される黒鉛微粒子やアンダーミクロン級FP微粒子の捕集を目的に,HTGR-GTにおける基本仕様条件(1273Kにおける引張り強度>1.5MPa,FP微粒子捕集効率≧90%,高温FPフィルター初期圧力損失≦0.4%)を目標に2種類の粒径(13μm及び20μm)のハステロイ-X製高温FPフィルターメディアを試作し,その基本特性を把握するとともに実機の性能予測を行った.その結果,次の結論が得られた.(1)フィルター試作材の1273Kの引張り強度は3MPa以上の高い値を示した.(2)90%以上のFP微粒子捕集効率を実現するためには,フィルター試作材の中の20μmの粗粒フィルターで可能である.(3)0.4%以下の低圧力損失を実現するためには,フィルター試作材の中の20μmの粗粒フィルターで可能である.(4)本試験で得られた知見を基に,HTGR-GT用高温FPフィルター実機の基本仕様は次の通り推定された.ハステロイX原料の構成粒子直径;20μm程度,フィルター充填率;60%,ヘリウム流速; 6m/min,素材;ハステロイX,フィルター集塵面積;882m2,初期圧力損失0.4%以下,黒鉛粒子集塵容量;529.3kg,フィルター厚み;1.6mm,除去粒子径範囲;≧0.017μm.


300895
大きな超過倍率決定のための修正法の適用; 燃料追加法実験
長尾美春 ; 細谷俊明 ; 金子義彦*
日本原子力学会和文論文誌 1(2), p.153-163(2002) ; (JAERI-J 19361)

 原子炉の大きな正の反応度の決定には,燃料追加法,中性子吸収置換法等の方法が広く用いられている.しかし,これらの全ての測定方法は,超過倍率が15%Δkを越える領域に入ると20%程度の系統誤差を生じる可能性が指摘され,この問題を克服する「修正法」についての基本的考え方が提案された.この「修正法」は,現実の炉心において測定される実効増倍率の増分を計算により超臨界が許される仮想の炉心に対する値に転換するものである.本論文では,この「修正法」が大型の試験炉・研究炉に対して実際に適用可能であり,精度良く超過倍率を決定しうることを,JMTRC及びJMTRにおける燃料追加法実験データをモンテカルロコードMCNP4Aによる全炉心計算をもとに理論的に解析することによって明らかにした.


300753
地震PSA用のヒューマンエラーのモデル化の試み
横林正雄 ; 及川哲邦 ; 村松健
日本原子力学会和文論文誌 1(1), p.95-105(2002) ; (JAERI-J 19239)

 原子力発電所の地震に対する確率論的安全評価(PSA)で使用するために,運転員のヒューマンエラー確率(HEP)モデルとその適用例を報告する.このモデルでは,運転員のストレスや地震動レベルの影響を考慮して,HEPは,地震動がないときは内的事象と同じとし,地震動レベルの増加に伴って線形に増加し,ある地震動レベル以降は一定とするリミテッドランプモデルで表した.適用例として,外部電源喪失による事故シーケンスで必要となるさまざまな運転員操作を短期と中長期に分けて,関連する振動台実験の調査結果や既存の人間信頼性解析手法を用いて,各操作のHEPモデルのパラメータを決定し,地震時のヒューマンエラーが炉心損傷頻度に及ぼす影響を推定した.この適用例では,ヒューマンエラーの影響は小さいとの結果が得られるとともに,ここに示すモデル化手法は,地震時のさまざまな運転操作の重要性を分析するうえで有用であることが示唆された.


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