2002年度

ポストシークエンス時代における脳腫瘍の研究と治療


301101
混合熱・熱外中性子を用いた悪性神経膠腫に対する中性子捕捉療法
松村明* ; 山本哲哉* ; 柴田靖* ; 中井啓* ; Zhang, T.* ; 阿久津博義* ; 松下明* ; 安田貢* ; 高野晋吾* ; 能勢忠男* ; 水谷太郎* ; 高橋宏* ; 豊岡秀訓* ; 山本和喜 ; 熊田博明 ; 鳥居義也
ポストシークエンス時代における脳腫瘍の研究と治療, p.427-435(2002) ; (JAERI-J 19538)

 新しく整備されたJRR-4号炉にて混合(熱・熱外)中性子を用いた術中中性子捕捉療法(α粒子線治療)のphaseI/II臨床治験を行い,その有用性を検討し,さらに患者位置セッテイングシステムと線量評価システムの検証も行う.1999年10月よりJRR-4号炉にて混合中性子を用いてPhaseI/IIの臨床研究を開始した.対象は7例で悪性神経膠腫GradeIII)3例・神経膠芽腫(GradeIV)が4例の初発例で,治療対象は以前に放射線治療を受けていないもの,一側の脳半球に限局している,全身的な合併症や多重癌なし,年齢は18-70歳までとした.Follow up期間は2ヶ月から21ヶ月であり,平均(median生存期間は神経膠芽腫で15.7ヶ月でこれまでに1例が腫瘍の遠隔再発により死亡し,もう1例は脳以外の原因で15ヶ月目に死亡したが腫瘍再発はなかった.悪性神経膠腫は平均(median)生存期間 16.3ヶ月であり,3例中1例が脳以外の原因で死亡したが,残り2例は生存中で経過観察中である.神経膠芽腫は1年生存率が75%,悪性神経膠腫は1年生存率は100%で,全体としても1年以内の死亡は1例のみである.症例数も少なく,症例選択の問題もあり,他の成績と直接比較できないが,初期段階としては満足すべき成績と考えられる.今後さらに症例を増やして検討したい.なお,原研の本研究に対する協力は,臨床研究を補助する熱中性子及び血液中ホウ素濃度測定並びに物理線量評価,患者セッティングシステムについて行った.


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