2002年度

Research and Development in Neutron Capture Therapy


301295
Failure pattern in the patients who underwent intraoperative boron neutron capture therapy (IOBNCT)
中井敬* ; 松村明* ; 山本哲哉* ; 柴田靖* ; Zhang, T.* ; 阿久津博義* ; 松田真秀* ; 松下明* ; 安田貢* ; 高野晋吾* ; 能勢忠男* ; 山本和喜 ; 熊田博明 ; 鳥居義也
Research and Development in Neutron Capture Therapy, p.1135-1138(2002) ; (JAERI-J 19709)

 原研JRR-4を使って,悪性グリオーマの患者15例に対してホウ素中性子捕捉療法が行われた.このうち2002年4月までに筑波大学が実施した7例の患者について事後の経過を観察し,その結果を報告する.MRIを使った検証では,1例の術野内の再発がみられ,2例の術野外での再発がみられた.また,1例において照射によるネクローシスがみられた.


301294
Intraoperative boron neutron capture therapy using thermal/epithermal mixed beam
松村明* ; 山本哲哉* ; 柴田靖* ; 中井敬* ; Zhang, T.* ; 松下明* ; 高野晋吾* ; 遠藤聖* ; 阿久津博義* ; 山本和喜 ; 熊田博明 ; 鳥居義也 ; 水谷太郎* ; 高橋宏* ; 豊岡秀訓* ; 能勢忠男*
Research and Development in Neutron Capture Therapy, p.1073-1078(2002) ; (JAERI-J 19708)

 原研のJRR-4の中性子ビーム設備を使って,1999年から2002にかけて9例の患者に対して熱−熱外混合ビームによる術中ホウ素中性子捕捉療法(IO-BNCT)を実施した.グリオブラストーマの生存中央値は,9.8カ月であり星細胞腫は,16.8カ月であった.熱−熱外混合ビームによる術中BNCTは,従来の治療法に比べ初期の放射線効果は良好であった.これらのフェーズI/IIの臨床試験は局所の腫瘍コントロールで有効でした.今後,IO-BNCTの有効性を証明するするため,革新的な手法を伴った臨床試験を継続して実施していくものである.これまで実施した臨床試験の結果を紹介するとともに,今後の展望について記述する.


301293
The Prediction of Boron concentrations in blood for patients of boron neutron capture therapy, 2
柴田靖* ; 松村明* ; 山本哲哉* ; 阿久津博義* ; 安田貢* ; 中井啓* ; 能勢忠男* ; 山本和喜 ; 熊田博明 ; 堀直彦 ; 大竹真一*
Research and Development in Neutron Capture Therapy, p.1055-1060(2002) ; (JAERI-J 19707)

 腫瘍摘出する初期開頭手術時に患者にホウ素薬剤(BSH)を少量投与し,得られた生物学的薬剤分布データを用いて,医療照射当日の血液ホウ素濃度の予測について予備調査を行った.悪性グリア腫瘍の患者9名は1995から2001年の間に日本原子力研究所においてホウ素中性子補足療法を受けた者である.その内7名については,腫瘍摘出の前にBSH1gを注入し,即発γ線分析装置(PGA)を用いてホウ素濃度の測定を行った.BNCT照射12時間前にBSHを100mg/kgの投与量を患者に注入し,ホウ素濃度を再び決定した.その結果,ホウ素の生物学的薬剤分布データは2相指数曲線の薬物動態分布を示した.もし,注入後から6時間又は9時間の医療照射直前のホウ素濃度が予測値に対して95%予測信頼区間にあれば,2相指数曲線フィットからの直接予測は照射時間内の血液ホウ素濃度の誤差を6%程度に抑えることができる.


301292
In-air radiobiological dosimetry of JRR-4 neutron beams for boron neutron capture therapy
山本哲哉* ; 松村明* ; 山本和喜 ; 熊田博明 ; 堀直彦 ; 鳥居義也 ; 遠藤聖* ; 松下明* ; 吉田文代* ; 柴田靖* ; 能勢忠男*
Research and Development in Neutron Capture Therapy, p.697-700(2002) ; (JAERI-J 19706)

 ホウ素中性子捕捉療法を実施するに当たり,各元素に対する生物学的効果比(RBE)は重要である.原研のJRR-4の中性子ビーム設備において,各ビームスペクトル毎のRBEをそれぞれ測定した.実験は,細胞実験による細胞生存率を評価して行った.熱外中性子ビームモード及び,熱中性子ビームモード1,及び2のホウ素のRBEはそれぞれ,3.99±0.24,3.04±0.19,1.43±0.08という結果を得た.実際のBNCTの臨床成績を評価するために,今後もさまざまなビームスペクトルでの細胞実験及びファントムによる細胞実験を重ねるものである.細胞実験から得られたそれぞれのビームに対するRBEとその特徴について報告する.


301182
Verification of the JAERI computational dosimetry system for neutron capture therapy
熊田博明 ; 松村明* ; 中川義信* ; 山本哲哉* ; 山本和喜 ; 鳥居義也
Research and Development in Neutron Capture Therapy, p.529-534(2002) ; (JAERI-J 19606)

 現在原研では,より正確な線量評価をともなったホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の実施を支援するため,患者頭部内の照射線量を計算によって評価するBNCT線量評価システム(JCDS)の開発を行っている.JCDSは患者の医療画像データを基に患者頭部の3次元モデルを作成し,モンテカルロコード:MCNP-4Cによって線量計算を行うものである.また,JCDSは照射線量を計算するだけでなく,患者を照射位置に正確かつ迅速にセッティングを行う「患者セッティングシステム」と連携し,患者の照射位置へのセッティングを支援する機能も有している.線量評価システムは初期バージョンが完成し,現在システムの検証を行っている.このJCDSの計算性能とBNCTへの適用性,有用性について報告を行う.


301181
Simple estimation method of γ-ray dose using low neutron-sensitive TLD (UD-170LS) for Intra-Operative Boron Neutron Capture Therapy (IOBNCT)
山本和喜 ; 熊田博明 ; 鳥居義也 ; 岸敏明 ; 山本哲哉* ; 松村明*
Research and Development in Neutron Capture Therapy, p.499-503(2002) ; (JAERI-J 19605)

 術中ホウ素中性子捕捉療法(IOBNCT)での脳の最大γ線線量を評価するために,本研究では,(1)低中性子感度TLDの開発,(2)各種コリメータサイズに対する捕獲γ線分布の相関式,(3)IOBNCTへの適応のため最大γ線線量の簡易評価相関式の導出を行った.TLDの熱中性子感度は,60Co等価で,5.1±0.8×10-1460Co-Gycm2)であった.γ線の予測値と実験値との平均偏差は,熱−熱外中性子混合ビームに対して±8.5%であった.この簡易方法によって医療照射におけるγ線線量の決定精度は改善される.


301291
Comparison of dosimetry by the realistic patient head phantom and by the patient's brain, and the JCDS calculation; A Clinical dosimetry study
遠藤聖* ; 松村明* ; 山本哲哉* ; 能勢忠男* ; 山本和喜 ; 熊田博明 ; 岸敏明 ; 鳥居義也 ; 樫村隆則* ; 大竹真一*
Research and Development in Neutron Capture Therapy, p.425-430(2002) ; (JAERI-J 19705)

 光造形技術を用いて,患者頭部の造形モデルとして写実的なファントムを製作した.この実体ファントムは将来的に線量計画システムの検証に寄与するものである.しかし,外科手術後の脳及び熱中性子遮へい材のモデル化に含まれる困難性のため,線量評価システム(JCDS:JAERI Computational Dosimetry System)を用いた計算,実体ファントム及びin vivo測定(医療照射)との間では十分な一致が見られなかった.幾つか課題があるものの,実体ファントムを用いた実験的シミュレーション技術は,術中BNCTに対してより確実な線量計画のための有効なツールである.


301290
Comparison of patient brain dose measurements and the JCDS calculation
山本哲哉* ; 松村明* ; 山本和喜 ; 熊田博明 ; 鳥居義也 ; 遠藤聖* ; 松下明* ; 柴田靖* ; 能勢忠男*
Research and Development in Neutron Capture Therapy, p.415-418(2002) ; (JAERI-J 19704)

 術中ホウ素中性子捕捉療法での患者脳内の線量の測定値を原研で開発している線量評価システム(JCDS)による計算結果との比較を行った.測定値での脳表面の最大熱中性子束は,平均2.33±0.37×109(cm-2s-1)であり,血中ホウ素線量は平均11.4±1.2(Gy)であった.これに対してJCDSの計算結果は,それぞれ2.21±0.33×109(cm-2s-1),5.7(3.5-7.8)(Gy)であった.これらの検証結果を踏まえ,IO-BNCTでの線量評価に対して,術後の体積線量をコントロールするためにJCDSを試験的に適用することが望まれる.BNCTから得られた測定結果との比較によるJCDSの検証について報告を行う.


301289
An Application to Intraoperative BNCT using epithermal neutron of new JRR-4 mode "Epi-12"
松下明* ; 山本哲哉* ; 松村明* ; 能勢忠男* ; 山本和喜 ; 熊田博明 ; 鳥居義也 ; 樫村隆則* ; 大竹真一*
Research and Development in Neutron Capture Therapy, p.141-143(2002) ; (JAERI-J 19703)

 1998年よりJRR-4で実施されてきた熱/熱外混合中性子ビームである熱中性子モードIをホウ素中性子捕捉療法に11回使用してきた.より深い腫瘍の治療のため,次の術中BNCTより熱外中性子を使用することを検討している.本研究では熱中性子モードIのカドミニウムシャッタを挿入することによって作られる熱外中性子モード(Epi-12モード)の医療への適用性と安全性を調査した.その結果,Epi-12モードの速中性子混入率の減少は,BNCT,特に術中BNCTに対して優位性があることがわかった.なぜなら,速中性子は正常組織に直接作用するため,BNCTの制限値の1つであるからである.さらに,Th-12とEpi-12モードを混合させることで,線量分布に変化させることができることがわかった.これは個々の腫瘍に対して最適な線量分布に制御する新しい方法として期待される.


301180
Development of the multi-leaf collimator for neutron capture therapy
熊田博明 ; 岸敏明 ; 堀直彦 ; 山本和喜 ; 鳥居義也
Research and Development in Neutron Capture Therapy, p.115-119(2002) ; (JAERI-J 19604)

 現在実施されている熱中性子ビームによるBNCTでは,患者頭部の照射領域外の正常組織に対する照射線量を抑えるため,濃縮リチウム入り熱可塑性プラスチック(リチウムヘルメット)をターゲット領域周辺に取り付け,照射領域を絞って照射を行っている.しかし,将来実施が期待されている熱外中性子ビームを用いたBNCTにおいては,このリチウムヘルメットでは熱外〜高速中性子ビームに対して十分な遮へい効果が期待できないため,これに代わる技術が必要であった.そこで,ビーム孔部のコリメータを板厚6mm×幅108.5mm×奥行き60mmのフッ化リチウム入ポリエチレンのスライドを多数重ね合わせ(左右30枚ずつ),任意のビーム孔形状を設定可能なマルチリーフコリメーターの開発を行った.このマルチリーフコリメータをBNCTに適用することにより,患部外の正常組織への線量を抑え,ターゲット領域に対して適切な線量を与えるBNCT照射の実施が可能となる.このマルチリーフコリメータの検証結果と性能について報告を行う.


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