2002年度

Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3


310250
Lattice parameter expansion by self-irradiation damage of 244Cm-240Pu oxide and mononitride
高野公秀 ; 伊藤昭憲 ; 赤堀光雄 ; 小川徹 ; 沼田正美 ; 木崎實
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.842-845(2002) ; (JAERI-J 19880)

 (244Cm,240Pu)混合酸化物及び窒化物固溶体のα線自己損傷による格子の膨張をX線解析により測定した.元の酸化物は244Cmのα崩壊により,(Cm0.4,Pu0.6)O2-xの組成を持っていた.これを643K及び1073Kで加熱した後,格子定数の時間変化を観察したところ,約5日で変化は収束した.格子定数の膨張率はともに2.6×10-3であったが,格子定数の初期値はそれぞれ0.5394,0.5388nmであった.炭素熱還元法により酸化物から窒化物固溶体を調製し,同様に格子定数変化を観察した結果,初期の格子定数は0.4945nmで,膨張率は3.5×10-3であり,酸化物に比べて大きい膨張率であった.


310249
Studies in the PuO2-ZrO2 pseudo-binary phase diagram
Albiol, T.* ; 芹澤弘幸 ; 荒井康夫
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.834-837(2002) ; (JAERI-J 19879)

 ZrO2リッチ領域のPuO2-ZrO2擬二元系状態図を,高温X線回折測定と自由エネルギー極小化法に基づく平衡計算により作成した.高温X線回折測定は空気雰囲気中で最高1573Kまで行い,1463K,PuO2濃度2.3-3.1mol%付近に従来報告されていなかった共晶線があることを見い出した.Chem Sageコードを使用した平衡計算は最高3000Kまで行い,実験データを良く再現できた.得られた結果はこれまで報告されている状態図に修正が必要であることを示すものである.


310248
Fabrication of americium-based nitrides by carbothermic reduction method
伊藤昭憲 ; 赤堀光雄 ; 高野公秀 ; 小川徹 ; 沼田正美 ; 糸永文雄
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.737-740(2002) ; (JAERI-J 19878)

 (Am, Y)N及び(Am, Zr)Nのアメリシウム系混合窒化物をAmO2,Y2O3及びZrO2を出発原料として炭素熱還元法により調製した.Am-Y系窒化物では,化学量論組成以上の過剰炭素条件下,1300℃及び1500℃の2段加熱法を適用することにより,10〜30mol%AmNの範囲で,酸化物が無く,固溶酸素量も低い混合窒化物固溶体を得ることができた.


310247
Phase study and thermal expansion of yttria stabilized zirconia doped with PuO2-x
山下利之 ; 山崎哲* ; 佐藤剛* ; 松井恒雄*
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.656-659(2002) ; (JAERI-J 19877)

 耐放射線損傷性と相安定性に優れ新燃料や高レベル廃棄物材料として注目されているイットリア安定化ジルコニア(YSZ)について,PuO2との反応を空気,真空及び水素雰囲気中で調べた.得られた蛍石型固溶体相の格子定数はPuの固溶に従い増加し,Puは少なくとも50%以上YSZ中への固溶することがわかった.固溶体の格子定数をPu含有量関数として定めた.また,蛍石型固溶体相の熱膨張を高温X線回折法により空気中1273Kまでの範囲で調べた.Pu含有量0〜25%の固溶体の熱膨張係数は6〜12×10-6K-1の範囲にあり,1000K以上の温度でPu添加量の増加に従い熱膨張係数は小さくなることがわかった.


310246
Oxygen potential measurements of pyrochlore-type Zr2M2O7+x7(M=Pu, Ce) by EMF method
音部治幹 ; 中村彰夫 ; 山下利之 ; 小川徹
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.652-655(2002) ; (JAERI-J 19876)

 パイロクロア型ジルコニアは高レベル放射性核廃棄物の処分形として幅広く研究されている.われわれは, P-type Zr2Pu(Ce)2O7+xの酸素ポテンシャル (Δg(O2))を測定するために,立方晶ジルコニアセンサーを用いたEMF測定装置を開発した.P-type Zr2Ce2O7+xは,1078KでΔg(O2)と組成xの関係が,xが0.34より大の時とxが0.34より小の時で異なった振舞いをすることがわかった.これは,x=0.34付近で酸素イオンと酸素空孔の秩序の仕方や度合いが変化したことを示しているのかもしれない.また,いろいろなxで763Kから1078Kの間でΔg(O2)と温度の関係を測定して,そこから酸素の部分モルエンタルピーΔh(O2)とエントロピーΔs(O2)を導出した.P-type Zr2Ce2O7+xのΔh(2)とΔs(O2)は,蛍石型CeO2-xとは大きく異なっていることがわかった.同様な実験をP-type Zr2Pu2O7+xでも進めており,その結果は,上述したP-type Zr2Ce2O7+xの結果と比較する.


310245
X-ray absorption study of molten uranium chloride system
岡本芳浩 ; 赤堀光雄 ; 伊藤昭憲 ; 小川徹
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.638-641(2002) ; (JAERI-J 19875)

 LiCl-KCl共晶塩中の,UCl3融体の局所構造について,U原子L3吸収端XAFS測定によって調べた.XAFS測定は,高エネルギー加速器研究機構の放射光実験施設BL27Bで実施した.ウラン水素化物の塩化によって調製した,UCl4を亜鉛粉末で還元してUCl3を得た.カーブフィッティング解析の結果,最近接U3+-Cl-相関に関する構造情報を得た.MD計算とXAFSシミュレーションコードFEFF8の併用から,最近接U3+-Cl-相関の相互作用について評価した.また,いくつかのウランハロゲン化物のXANES測定を行い,そのシフトから原子価について評価した.


310244
Density measurement of molten NdCl3-NaCl and NdCl3-KCl system by γ ray attenuation
佐藤忠 ; 岡本芳浩 ; 小川徹
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.635-637(2002) ; (JAERI-J 19874)

 γ線減衰法により溶融状態の混合塩化物NdCl3-NaClとNdCl3-KClの密度を測定した.Ho-166m放射線源からのγ線をGe-検出器を備えたγ多重波高分析器で測定し,石英セル中の溶融混合塩化物による減衰を求めた.溶融混合塩化物の密度はγ線の減衰率と吸収係数及び石英セルの長さから求めた.測定された密度データーはdilatometric法で測定された同じ系の密度データーと比較された. 


310243
Dissolution of uranium nitrides in LiCl-KCl eutectic melt
林博和 ; 小林紀昭 ; 小川徹 ; 湊和生
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.624-627(2002) ; (JAERI-J 19873)

 窒化物燃料の再処理に溶融塩を用いた高温化学法を適用することによって,高価なN-15をリサイクルすることができる.この概念の検証を目的として,ウラン窒化物(UN及びU2N3)を塩化リチウム−塩化カリウム共晶溶融塩中で塩化カドミウムと反応させることによって溶解し,放出される窒素ガスを定量した.その結果,大部分の窒素がN2として放出されることが確認された.窒素ガス放出の見られる温度は,これまでの報告にあるTRU窒化物の模擬物質として使われた希土類窒化物の場合よりも高温であった.


310242
Heat capacity of neptunium mononitride
中島邦久 ; 荒井康夫
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.620-623(2002) ; (JAERI-J 19872)

 試料には,炭素熱還元法で調製した窒化物を使用し,酸素濃度,水分濃度いずれも数ppm以下に抑えたアルゴンガス雰囲気グローブボックス内に設置された示差走査型熱量計を用いて比熱容量を測定した.測定は,高純度アルゴンガス気流中(100ml/min),昇温速度10K/min,100K間隔で昇温し323Kから1023Kまでの温度範囲で行った.粉末試料の場合,測定中かなり低い温度(〜370K)から試料の酸化に起因すると考えられる熱流束変化が認められたが,焼結体試料を用いることでこの問題は避けられた.DSC装置の確度を知るためにUO2の比熱測定も行った.その結果,文献値とほぼ一致することがわかった.UN及びPuNの比熱測定値は実験誤差の範囲内でほぼ文献値と一致した.一方,NpNの比熱値はUN及びPuNの比熱値とほぼ同じ値を有することがわかった.


310241
Phase relations between a fluorite and a pyrochlore structure in the system of actinides and zirconium oxides
山下利之 ; 蔵本賢一 ; 中田正美 ; 山崎哲* ; 佐藤剛* ; 松井恒雄*
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.585-591(2002) ; (JAERI-J 19871)

 蛍石型やパイロクロア型構造の立方晶ZrO2化合物は,化学的物理的安定性が高いうえにアクチノイドを自格子中に閉じ込めることができるため,不活性マトリクス燃料や放射性廃棄物体への応用面で注目されている.これらの構造を持つ化合物では,酸素空孔の配列が重要な役割を果たす.アクチノイド酸化物−ZrO2固溶体で蛍石型構造を持つ相は安定化ジルコニアと呼ばれ,すべての陽イオン,酸素イオン,酸素空孔はランダムに分布する.一方,パイロクロア構造相においては,酸素空孔の規則配列化が生ずる.本報では,アクチノイド酸化物−ZrO2系に関する格子定数や相関係をレビューし,アクチノイドの原子価やイオン半径,酸素空孔配列をもとに格子定数変化やパイロクロア構造層の出現を考察する.また,最近得られた蛍石型(237Np, Zr)O2-x固溶体のメスバウア分光結果も考慮する.


310240
Low-energy γ- and X-ray measurements by means of Compton suppression technique for safeguards environmental samples
安田健一郎 ; 森賢仁* ; 宮本ユタカ ; 間柄正明 ; 桜井聡 ; 臼田重和
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.576-578(2002) ; (JAERI-J 19870)

 保障措置環境試料中における核物質の極微量分析のため,原研はクリーンルーム施設を整備している.本施設に持ち込まれる試料のうち放射性物質量が過剰なものを仕分け(スクリーニング)するには,非破壊測定による半定量分析が必要となる.アクチノイドから放出されるγ線は一般に放出率が小さく低エネルギーであるため,核分裂生成物などから放出される,より高いエネルギーのγ線に起因するコンプトン散乱の影響を受ける.よって,高純度ゲルマニウム(HPGe)検出器による精密測定は困難である.今回,数100 keV以下のコンプトン散乱を抑制するため,HPGe-LEPS, LO-AXを主検出器,NaI(Tl)をガード検出器としたアンチコンプトンシステムを設計・製作した.予備試験としてCs-137のγ線を測定し,50〜400 keVにおけるバックグラウンドが約50%減少した.発表では,実試料の測定例も報告する.


310239
The Development of flow injection technique for rapid uranium determination in urine samples
桑原潤 ; Tolmachyov, S.* ; 野口宏
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.556-559(2002) ; (JAERI-J 19869)

 迅速な尿中ウラン分析のためのフローインジェクションシステムを開発した.このシステムは自動サンプリング装置,抽出クロマトグラフィによる分離装置及び誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)から構成される.自動サンプリング装置から導入された尿試料は,抽出クロマトグラフィ樹脂により化学分離され,目的元素であるウランは樹脂中に保持される.次にウランを溶離する液を分離装置に通すが,このときに液の流路をICP-MSに接続することで溶離したウランは直ちに測定される.このシステムを用いることで化学分離から測定までを1試料あたり10分以内に完了することができる.また,化学分離操作を自動化したことで分析者の労力を大幅に削減できる.


310238
Radiation measurement for safeguards environmental samples by imaging plate
安田健一郎 ; 桜井聡 ; 軍司秀穂 ; 臼田重和
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.552-555(2002) ; (JAERI-J 19868)

 IAEAの93+2計画に基づく保障措置システムの強化に対応するため,原研では高度環境分析研究棟(CLEAR)を整備し,保障措置環境試料中に含まれる極微量核物質の分析技術を開発している.試料間の相互汚染やクリーンルームへの汚染を避けるために,CLEARに持ち込む放射性物質の量的制限の設定を検討している.測定方法として,発表者は,オートラジオグラフィーの一種であり,試料中における低レベルの放射能分布測定に有効であるイメージングプレートの適用性を検討した.予備試験において,α線及びβ線源としてサマリウム(Sm-147)及びカリウム(K-40)試薬を測定した.α線では0.05〜0.1Bq,β線では0.01〜0.2Bqの領域において,測定値は放射能に対して線形性を示した.α線の検出限界を0.05Bqとすれば,約2μg程度の天然ウランの検出が期待できる.


310237
Sorption characteristics of actinium and protactinium onto soils
坂本義昭 ; 石井友章* ; 稲川聡* ; 軍司康義* ; 武部愼一 ; 小川弘道 ; 佐々木朋三*
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.481-484(2002) ; (JAERI-J 19867)

 ウラン廃棄物の安全評価において必要となるウランの娘核種のうち,Ac227とPa233の土壌に対する吸着挙動を調べた.数種類の土壌にAc227とPa233を吸着させた後,KCl+CaCl2,塩酸ヒドロキシルアミン,過酸化水素水による逐次抽出を行った.この結果,Ac227の吸着形態は,K+とCa2+で抽出されるイオン交換的な吸着成分(20-30%)とこれらの試薬で抽出されない土壌への固定成分(60-70%)からなり,Pa233の吸着形態は,塩酸ヒドロキシルアミンで抽出される非晶質Fe+Mn酸化物への吸着(20-50%)及び土壌への固定成分(40-50%)からなることを示した.これらの結果から,Ac227とPa233の土壌への吸着が不可逆的な吸着形態を取ることを明らかにした.


310236
The Resonance raman effect of UO2L2 (L=NO3, CH3COO or Cl) type uranyl compounds in dimethyl sulfoxide
曽我猛
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.433-436(2002) ; (JAERI-J 19866)

 ヂメチルスルホオキシド溶液中で,UO2L2 (L=NO3,CH3COO,Cl)型ウラニル化合物の共鳴ラマンスペクトルを測定した.ウラニルの全対称伸縮振動の共鳴ラマンプロファイルを,光学理論と電子吸収スペクトルの変換論に基づき解析した.その結果,1Σg11Φg電子遷移によるウラニル結合の平衡原子間距離の伸びは,共鳴ラマンプロファイルの変動幅とともに増加し,配位子からウラン原子に移動してくる電子密度に比例していることが示された.


310235
Mossbauer spectroscopic studies of 237Np in aqueous solutions
中田正美 ; 正木信行 ; 山下利之
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.426-428(2002) ; (JAERI-J 19865)

 メスバウア分光法は,固体については有効な測定手段である.溶液については,57Feメスバウア分光法では,溶液を凍結させることにより測定を行っている.本発表では,237Npメスバウア分光法を237Np(V)を含んだ0.6M硝酸溶液に対して測定を行ったので,その結果を報告する.237Np(V)を含んだ0.6M硝酸溶液のメスバウアスペクトルを11Kで1ヶ月間測定した結果,四極子分裂及び磁気分裂を含んだ16本の吸収線が観測された.そのアイソマーシフトは,-17.4(1)mm/sを示した.237Npメスバウア分光法のアイソマーシフトは,Npの価数や配位数をよく反映することがわかっている.アイソマーシフト値から,Np(V)は,0.6M硝酸溶液中で,配位数7を取ることがわかった.


310234
Extraction behavior of TRU elements in the nuclear fuel reprocessing
宝徳忍 ; 朝倉俊英 ; 峯尾英章 ; 内山軍蔵
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.313-316(2002) ; (JAERI-J 19864)

 PUREXプロセスの抽出工程における放射性核種の閉じ込め性に関する研究を行い,工程内でのウラン,プルトニウム及びほかのTRU元素の移行挙動の調査を行った.使用済燃料試験をNUCEFの再処理プロセス試験設備を使用し,3台の抽出機によって,ウラン,プルトニウムなどの濃度分布データを取得した.その結果,ウラン,プルトニウム,アメリシウムについてはその99%以上が想定された製品溶液中に移行したが,ネプツニウムはそれぞれの製品溶液中に分散した.(抽出残液に11%,FP溶液に23%,Pu溶液に36%,U溶液に30%),また,この結果を計算コードによってシミュレーションしたところ,概ね実験結果と一致したが,一部の工程で実験結果と若干の差が見られた.これらについては,さらに計算結果が一致するよう,今後考察を行う必要がある.


310233
Uranium(VI) speciation at elevated temperatures and pressures by time-resolved laser-induced fluorescence spectroscopy
木村貴海 ; 永石隆二 ; 尾崎卓郎 ; 有阪真* ; 吉田善行
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.233-239(2002) ; (JAERI-J 19863)

 高温高圧水溶液(水熱溶液)は種々の地球環境において見いだすことができるが,水熱条件下でのウランの加水分解,錯形成などに関する実験的研究はきわめて少ない.水熱溶液中で金属イオンの分光測定を行うための光学セルを開発し,時間分解レーザー誘起発光分光法と組み合わせてウラン(VI)の発光特性の測定から状態分析(スペシエーション)を試みた.溶液の温度(298-473K),圧力(0.1-40MPa),pH,配位子濃度などをパラメータとして,ウラン(VI)の発光スペクトル及び発光寿命を測定し,熱力学モデル及びデータに基づいて計算した溶存種分布と比較した.発光寿命の温度依存性から,ウラン(VI)の水和イオン,加水分解種,硫酸錯体,及びフッ化物錯体の活性化エネルギーを決定した.これらの結果から,ウラン(VI)溶存種の計算に用いたモデル及びデータの妥当性を新溶存種生成の可能性とともに議論する.


310232
Weak ferromagnetism induced in UO2-MOx heterogeneous multi-phase systems (M=Ti, Nb, Si, V, etc.)
中村彰夫 ; 吉井賢資
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.160-163(2002) ; (JAERI-J 19862)

 螢石型二酸化ウラン(UO2)はネール温度(TN)30.8Kの反強磁性体である.前報において筆者等は,UO2にこれに固溶しないTiOx(x=1.0, 1.5, 2.0)系を混ぜ,高温で熱処理すると,TNはほぼ一定のまま,UO2の反強磁性が弱強磁性へと変化していく挙動を示すことを見いだした.本報では,この反強磁性(AF)→弱強磁性(WF)移行挙動への洞察を深めるために,対象をM=Nb, V, Si等を含むUO2-MOx多相系へと拡げ,磁化率測定,粉末X線回折,EPMA分析等を用いて,検討を進めた.その結果,シリカ(SiO2)等のd電子を有しない絶縁体を含む多相系においても他系同様このAF→WF移行現象は見られることがわかった.これらの実験事実から,本現象は,MOxと密に接触したUO2表面近傍での反強磁性転移に伴う格子歪み(酸素変位)の機械的抑制により惹起されるのではないかと現時点では考えている.


310231
Empirical evaluation of the thermodynamic and magnetic properties from the atomic distances of NaCl-type actinide compounds
大道敏彦* ; 荒井康夫
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.156-159(2002) ; (JAERI-J 19861)

 岩塩型アクチノイド化合物(MX,M:アクチノイド,X:メタロイド)の幾つかの熱力学及び磁気的性質を原子間距離を基に類推した.MXの結合エネルギーの報告値は,二,三の例外を除いてポーリングの式を用いて求めた結合電子密度と比例関係を示した.一方,全価電子から結合電子を除いた電子数と有効磁気モーメントの報告値との関係は,L-Sカップリング及びフントの法則から計算したものと良く一致したことから,この電子数は局在する5f電子数に相当するものと考えられる.これらの結果を用いて,MX中のアクチノイド原子の酸化状態や磁気エントロピーの寄与等についても議論した.


310230
Magnetic properties of some neptunyl(+1) complexes
中本忠宏* ; 中田正美 ; 中村彰夫
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 3, p.102-105(2002) ; (JAERI-J 19860)

 幾つかの一価ネプツニル錯体の磁気的性質を,磁化測定及び237Np-メスバウア分光法を用いて調べた.粉末試料の磁化測定の結果,ギ酸アンモニウム塩(NH4)[NpO2(O2CH)2](1)は2-300Kの温度範囲で常磁性体,また一水和ギ酸塩[NpO2(O2CH)(H2O)](2)は12K以下で強磁性体になることがわかった.メスバウアの結果は,(1)が5.3K及び20Kで常磁性緩和を示すのに対して,(2)は5.3K及びTc(=12K)以上においても,良く分離した磁気的微細構造による分裂スペクトルを示す.これらのスペクトルをネプツニル(O=Np=O)結合軸方向に束縛されたアイジング磁石的挙動によって生じる内部磁場を仮定して解析することができた.また粉末試料の磁化率データを,5f2電子配置の基底L-S状態(3H4)の一軸性配位子場による分裂を考慮に入れて,矛盾なく説明できることを明らかにした.また,六水和フタル酸塩(NpO2)2(O2C)2C6H4・6H2Oの特異な磁気的挙動についても報告する.


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