2003年度

Journal of the Physical Society of Japan


320028
Evaluation of ion temperature using ion sensitive probe in the boundary plasma of the JFT-2M tokamak
上原和也 ; 福本亮介* ; 津島晴* ; 雨宮宏*
Journal of the Physical Society of Japan 72(11), p.2804-2810(2003) ; (JAERI-J 20578)

 静電プローブによる強磁場中のイオン温度の有力な測定法であるイオンセンシティブプローブの性能を拡張する目的でイオンセンシティブプローブの電子障壁の有限幅を考慮した粒子シミュレーションを行った.電子障壁の高さhに対するイオン電流の依存性を計算して,実験的に得られるイオン電流−h特性からより正確にイオン温度を評価できることが示された.hがリモート制御できるような改造型のイオンセンシティブプローブをJFT-2Mのプラズマに適用し,オーミック加熱時及びL/H遷移時のイオン温度を測定することに成功した.


311040
Single crystal growth and magnetic properties of 5f-itinerant antiferromagnet UPdGa5
池田修悟* ; 目時直人 ; 芳賀芳範 ; 金子耕士* ; 松田達磨* ; 大貫惇睦* ; Galatanu, A.*
Journal of the Physical Society of Japan 72(10), p.2622-2626(2003) ; (JAERI-J 20491)

 Gaの自己フラックス法により,ウラン3元化合物UPdGa5の単結晶育成を行った.磁化率は,5f電子の遍歴性と一致するような小さな温度依存性と異方性を示した.私達は,電気抵抗と磁化率測定において,ネール点31K以下に明らかな異常を確認した.磁気構造は,中性子散乱測定によって研究された.その結果,伝播ベクトルQ=[0,0,1/2]の反強磁性ピークを観測した.ウラン5fの磁気モーメントは,c軸に平行で,大きさは0.33μB/Uであり,c面内は強磁性的で,c軸方向に沿って反強磁性的に配列していることがわかった.


320030
Interference between thomson scattering and resonant scattering in X-Ray diffraction from CeB6
長尾辰哉* ; 五十嵐潤一
Journal of the Physical Society of Japan 72(9), p.2381-2384(2003) ; (JAERI-J 20580)

 CeB6の反強四重極秩序相におけるL吸収端近傍の共鳴散乱とトムソン散乱の両方の過程を考慮してX線回折の機構を理論的に研究した.格子歪み無しで,4f状態の反強四重極秩序相での電荷の異方性から実験に対応するトムソン散乱強度を計算で得る事ができた.この大きさはL吸収端近傍で共鳴散乱強度と同程度になり,二つの項は干渉を示すことを見いだした.これは,実験事実とよく対応する.これらの結果から,共鳴散乱及びトムソン散乱の両方とも反強四重極秩序の直接の反映であると結論される.


311041
Ga and Pt NMR study of UPtGa5 and UNiGa5
加藤治一* ; 酒井宏典* ; 徳永陽 ; 常盤欣文* ; 池田修悟* ; 大貫惇睦* ; 神戸振作 ; Walstedt, R. E.*
Journal of the Physical Society of Japan 72(9), p.2357-2363(2003) ; (JAERI-J 20492)

 UPtGa5及びUNiGa5は互いに同型構造をとるが,TN以下においては相異なった磁気構造をとる.これら両化合物についてGa,Pt核NMR測定を行った.本論文では常磁性相におけるナイトシフト(K)の結果について述べる.Ga核,Pt核位置におけるトランスファー超微細相互作用係数が求められた.またKのうち,温度に依存しない成分K0を定量的に評価することに成功した.解析の結果,UPtGa5及びUNiGa5における伝導電子の状態は少なくとも常磁性領域ではほぼ同一であることが示された.


310840
Magnetic structures of high temperature phases of TbBaCo2O5.5
左右田稔* ; 安井幸夫* ; 藤田利晃* ; 宮下健* ; 佐藤正俊* ; 加倉井和久
Journal of the Physical Society of Japan 72(7), p.1729-1734(2003) ; (JAERI-J 20333)

 酸素欠損ペロヴスカイト系TbBaCo2O5.5の中性子回折実験が行われ,多数の磁気及び構造相転移が観測された.340Kにおける電荷秩序を伴うメタル・絶縁体相転移,280Kの強磁性モーメントを伴う磁気相転移,及び260Kに反強磁性秩序を伴うと思われる相転移が観測された.特に270Kと250Kの磁気構造解析の結果,Co3+イオンのスピン状態がCoO6八面体では低スピン状態,CoO5ピラミッドでは中間スピン状態であることが明らかになった.


320029
Effects of "stripes" on the magnetic excitation spectra of La1.48Nd0.4Sr0.12CuO4
伊藤雅典* ; 安井幸夫* ; 飯久保智* ; 左右田稔* ; 佐藤正俊* ; 小林晃人* ; 加倉井和久
Journal of the Physical Society of Japan 72(7), p.1627-1630(2003) ; (JAERI-J 20579)

 ストライプ秩序構造を示すLa1.48Nd0.4Sr0.12CuO4における磁気励起の波数及びエネルギー依存性が詳細に観測された.その結果この系では高温相においても「揺らいでいる電荷ストライプ」が磁気励起に影響を与えていることが示唆された.


310740
Lattice distortion and resonant X-ray scattering in DyB2C2
五十嵐潤一 ; 長尾辰哉*
Journal of the Physical Society of Japan 72(5), p.1279-1286(2003) ; (JAERI-J 20253)

 DyB2C2における四重極秩序相におけるDyのL吸収端における共鳴X線散乱スペクトルを研究した.BとC原子の層の ゆがみを解析して,副格子ごとに違う主軸をもつ結晶場の有効モデルを構成した.5d状態はバンドとして扱い,4f状態は局在状態として扱い,双極子近似の範囲でスペクトルを計算した.格子歪が直接5d状態を変調する機構と格子歪により変調を受けた4f状態がクーロン相互佐用を通して5d状態を変調するとの機構の両方を調べて,前者の機構が圧倒的に大きいことを見いだした.


310659
Neutron diffraction study of the pressure-induced magnetic ordering in the spin gap system TlCuCl3
大沢明* ; 藤澤真士* ; 長壁豊隆 ; 加倉井和久 ; 田中秀数*
Journal of the Physical Society of Japan 72(5), p.1026-1029(2003) ; (JAERI-J 20173)

 TlCuCl3はこれまでに行われてきた磁気測定の結果から基底状態がスピン一重項で励起状態との間に有限なエネルギーギャップΔ=7.7Kを持つスピンギャップ系であることがわかっている.最近この物質にP〜0.8GPa程度の静水圧をかけると零磁場においてTN〜11Kで三次元秩序を示す相転移を起こすことが磁化測定から観測された.われわれはこの圧力誘起相転移の磁気構造を調べるために中性子弾性散乱実験を行った.その結果,P=1.48GPaの圧力下でTN=16.9K以下において波数Q=(h, 0, l)(hは整数,lは奇数)に対応する点で磁気ブラッグ散乱を観測した.またT=12.2K及びT=4.0Kにおいて磁気ブラッグ散乱強度の比から磁気構造を決定した.その結果,TN以下で一度磁気モーメントがa-c面内で秩序化し,さらに低温でb軸方向に向きを変えているということがわかった.またT=12.2Kで得られた磁気構造はすでに観測されているTlCuCl3のH‖bにおける磁場誘起磁気秩序相及びTl(Cu0.97Mg0.03)Cl3における不純物誘起反強磁性秩序相の磁気構造とほぼ同じであることがわかった.


310739
Evidence for magnetic-field-induced quadrupolar ordering in the heavy-Fermion superconductor PrOs4Sb12
神木正史* ; 岩佐和晃* ; 中島基樹* ; 目時直人 ; 荒木新吾* ; Bernhoeft, N.* ; Mignot, J. M.* ; Gukasov, A.* ; 佐藤英行* ; 青木勇二* ; 菅原仁*
Journal of the Physical Society of Japan 72(5), p.1002-1005(2003) ; (JAERI-J 20252)

 重い電子系超伝導体PrOs4Sb12の磁場誘起秩序相(FIOP相)が,反強四極子秩序相であることを,冷中性子三軸分光器LTASを用いて,磁場中,超低温の中性子散乱実験を行うことによって明らかにした.この実験によって,FIOP相において,0.02μBの小さな反強磁性モーメントが誘起されることを観察した.平均場理論による解析から,この反強磁性秩序は,四極子モーメントOyzの反強的な秩序によって誘起され,しかもその秩序にはOyz間の反強四極子相互作用が本質的な役割をしていることが明らかになった.そのため,この秩序が磁場誘起反強四極子秩序であることが結論され,この秩序相が安定化するために,Pr-4f電子がΓ1一重項基底状態及びΓ3三重項第一励起状態を持つことを明らかにした.


310658
Relativistic band-structure calculations for CeTIn5(T=Ir and Co) and analysis of the energy bands by using tight-binding method
眞榮平孝裕* ; 堀田貴嗣 ; 上田和夫* ; 長谷川彰*
Journal of the Physical Society of Japan 72(4), p.854-864(2003) ; (JAERI-J 20172)

 最近発見された重い電子系超伝導物質CeTIn5(T=Ir and Co)の物性を明らかにするために,相対論的線形化APW法を用いて電子構造とフェルミ面を明らかにする.相対論的バンド計算により得られたエネルギーバンド構造は,フェルミ面近傍におけるCe4fとIn5p成分の混成によって理解されde Haas-van Alphen効果の実験結果ともよく一致する.しかし,CeTIn5における磁性や超伝導を微視的観点から理解しようとするとき,バンド計算法に基づく解析は一般に困難である.そこでわれわれは,CeTIn5の主要なフェルミ面を構成するCe4fとIn5p成分に着目し,f-fp-p及びf-p軌道間のホッピングを考慮した,強束縛模型の構築を行った.このモデルを用いて,CeIrIn5とCeCoIn5の物性について議論する.また,CeTIn5における物性の違いについて,結晶場効果の必要性を指摘する.


310387
Quantum narrowing effect in a spin-peierls system with quantum lattice fluctuation
大西弘明 ; 宮下精二*
Journal of the Physical Society of Japan 72(2), p.392-398(2003) ; (JAERI-J 19965)

 スピンパイエルス系を扱う模型としてS=1/2のスピン・格子結合系一次元鎖を考え,スピンと格子の複合的量子効果の下での秩序形態について,量子モンテカルロ法を用いて調べた.磁性イオンの質量が大きい極限では,格子変位は断熱的に取り扱え,絶対零度で格子が歪んだスピンパイエルス状態を取る.一方質量が小さい場合には,断熱的な格子歪みを伴うスピンパイエルス状態は格子変位の量子効果によって乱され,絶対零度でも格子は歪まずに一様な格子状態を取る.この場合,帯磁率や磁気励起スペクトルなどの磁気的性質は,格子自由度のない静的な一様鎖のものと一致することがわかった.これは,格子揺らぎがスピン揺らぎに比べて非常に速いため,格子揺らぎの効果は平均化されて磁気的性質に影響を及ぼさないためであることを示した.


310386
Monte Carlo renormalization group study of the Heisenberg and the XY antifferomagnet on the stacked triangular lattice and the Chiral φ4 model
板倉充洋*
Journal of the Physical Society of Japan 72(1), p.74-82(2003) ; (JAERI-J 19964)

 いくつかの相互作用が競合して,すべての作用が最小になることができない物質はフラストレート系と呼ばれ,その物理的な振舞も通常の物質とは異なる.フラストレート磁性体は幾何学的な特質に起因するフラストレーションを内包し,典型的な例である.このクラスに属する物質の相転移は希土類金属などのさまざまな物質で実験により20年以上前から調べられているが,相転移の性質について統一的な見解が得られていない.またこれらの物質をモデル化した層状三角格子反強磁性体についても,繰り込み理論と数値計算により精力的な研究が続いているが,その相転移が一次か二次かという問題は解決していない.本研究では大規模な並列計算によるシミュレーションを行いその結果を繰り込み理論の枠組で解析し,相転移が一次転移であることを数値計算では初めて示すことができた.


310839
Magnetic structure and the hall resistivity of Cu1-xZnxCr2Se4
飯久保智* ; 安井幸夫* ; 小田啓介* ; 大野陽平* ; 小林義明* ; 佐藤正俊* ; 加倉井和久
Journal of the Physical Society of Japan 71(11), p.2792-2799(2002) ; (JAERI-J 20332)

 スピネル型化合物Cu1-xZnxCr2Se4が示す異常ホール効果の特異な振舞とこの系が持つ特異な磁気構造の関連について中性子回折,NMR,及び他の磁気や輸送測定が行われた.その結果この系のコニカルテニウム磁気構造発達と異常ホール係数の関係が明らかになった.


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