2003年度

Nuclear Technology


320111
Aquaculture of uranium in seawater by a fabric-adsorbent submerged system
瀬古典明 ; 片貝秋雄 ; 長谷川伸 ; 玉田正男 ; 笠井昇 ; 武田隼人* ; 須郷高信 ; 斎藤恭一*
Nuclear Technology 144(2), p.274-278(2003) ; (JAERI-J 20645)

 海水中に溶存するウランの濃度は3mg/m3であるが,世界全体の海水ウランの総量は45億トンにのぼる.海水中のウランの回収に高い性能を有する高分子捕集材(ウラン捕集材)を用いる吸着法は,従来法に比べ経済的にすぐれる.吸着法ではウラン捕集材は吸着床に充填して使用する.原研は日本沖合7kmの太平洋で,深さ20mの海域で,上面サイズが16m2,高さが16cmの吸着床を浸漬した.吸着床には総重量350kg,52000枚のウラン捕集材で構成される捕集材カセットを充填した.総浸漬期間240日の実海域試験でイエロケーキとして1kgのウランを回収することに成功した.


320110
Dry flowing abrasive decontamination technique for pipe systems with swirling air flow
亀尾裕 ; 中島幹雄 ; 平林孝圀*
Nuclear Technology 144(1), p.76-82(2003) ; (JAERI-J 20644)

 原子炉施設の解体前除染技術として,アルミナ又は鋳鉄グリット研磨材と空気の旋回流を利用した乾式除染技術について検討した.旋回流によるステンレス及び炭素鋼配管の研削挙動を調べた結果,配管内表面の研削深さは空気流速の累乗及び研磨材濃度に比例して増加することがわかった.除染条件を最適化した後,動力試験炉(JPDR)の原子炉水浄化系統から切り出した汚染配管に対する除染試験を行った.これらの試験から,本技術が原子炉施設の廃止措置における解体前除染技術として有効であることが明らかになった.


320050
Power profile evaluation of the JCO precipitation vessel based on the record of the γ-ray monitor
外池幸太郎 ; 中村剛実* ; 山根祐一 ; 三好慶典
Nuclear Technology 143(3), p.364-372(2003) ; (JAERI-J 20600)

 JCO東海事業所の第1加工棟に設置されているγ線エリアモニターは,臨界事故の発生から終息に至るまで,転換試験棟の沈殿槽で発生していた核分裂連錯反応の出力に比例したγ線量率を計測,記録していた.この記録の事故発生後25分から事故終息までの部分(「プラトー」部)について,核分裂数2.2×1018で規格化することにより,核分裂連錯反応の絶対出力の履歴を評価した.


320201
Critical power correlation for axially uniformly heated tight-lattice bundles
呉田昌俊 ; 秋本肇
Nuclear Technology 143(1), p.89-100(2003) ; (JAERI-J 20724)

 低減速スペクトル炉の炉心は,三角格子状の稠密な燃料棒配列であり,高ボイド率条件で運転する特徴を有する.このため冷却限界の評価が重要な課題である.そこで,低減速スペクトル炉の基礎的な限界出力特性を評価する目的で限界出力実験を実施した.本報では,質量速度等パラメータが限界出力に及ぼす影響と,熱設計に用いてきた限界出力計算式の評価結果,そして本データと準稠密バンドル体系のBAPLデータを用いて導出した新限界出力相関式に関して報告する.本実験により,稠密炉心における質量速度,入口水温,出口圧力,そして径方向熱流束比の限界出力に及ぼす影響を明らかとした.また,熱設計に用いてきた限界出力計算式(Arai式)が限界出力を過小に計算することを示した.新相関式は,371点の原研・BAPLデータに対して±4.6%の誤差で軸方向に一様発熱している稠密バンドルの限界出力を計算できる.


310668
Investigation of irradiation behavior of SiC-coated fuel particle at extended burnup
沢和弘 ; 飛田勉*
Nuclear Technology 142(3), p.250-259(2003) ; (JAERI-J 20182)

 照射健全性を補償するためにHTTRの最高燃焼度は3.6%FIMAに制限されている.燃焼度を延長した場合の燃料挙動を検討するために,照射試験を行った.被覆燃料粒子のバッファ層とSiC層は5%FIMAを超えても健全性を保てるよう厚く設計した.これらの燃料コンパクトは,ORNLのHFIRと原研のJMTRのキャプセルで独立に照射した.放出率の測定値と計算値の比較から,両方の照射試験中に追加の破損が生じたことがわかった.内圧破損モデルでは,照射末期においても健全粒子のSiC層には引張応力は作用せず,破損は生じないと評価された.考えられる破損機構として,製造時のSiC層破損粒子の貫通破損又は加速照射による過度の内圧上昇が考えられるが,さらに検討が必要である.


310399
Critical experiments on 10% enriched uranyl nitrate solution using an 80-cm-diameter cylindrical core
山根祐一 ; 三好慶典 ; 渡辺庄一 ; 山本俊弘
Nuclear Technology 141(3), p.221-232(2003) ; (JAERI-J 19977)

 日本原子力研究所の定常臨界実験装置STACYにおいて10%濃縮硝酸ウラニル水溶液の臨界実験の3回目のシリーズが行われた.直径80cm円筒炉心が水反射体付き又は反射体なしで用いられ,ウラン濃度190g/Lit.から240g/Lit.の間における臨界液位と液位微分反応度の系統的なデータが得られた.それぞれの実験条件における中性子実効増倍率keffと,keffに対する不明量の影響が,核計算コードの実証用に提案されたベンチマークモデルと詳細モデルのそれぞれについて,数値計算によって評価された.MCNP 4BとJENDL-3.2断面積ライブラリーが用いられたサンプル計算では,ベンチマークモデルのkeffの値が,水反射体炉心では誤差0.05%Δ keffで,反射体なしの炉心では誤差0.17%Δ keffで再現された.


310550
Burnup importance function introduced to give an insight into the end effect
奥野浩 ; 酒井友宏*
Nuclear Technology 140(3), p.255-265(2002) ; (JAERI-J 20104)

 燃焼度クレジットを入れた燃焼燃料の臨界安全評価では端部効果がしばしば議論されるが,その定量的な議論に役立てるためにこの論文では燃焼度インポータンス関数を導入した.この関数は,反応度に対する燃焼の影響を燃料位置の関数として表す.燃焼度インポータンス関数をOECD/NEAの燃焼度クレジット専門家グループで採用されたフェーズIIAベンチマーク体系に適用した.この関数は,端部の燃焼度インポータンスが (1) 燃焼度,(2) 冷却期間,(3) 燃焼度分布及び (4) 核分裂生成物の考慮の場合に増加することを明瞭に示した.


310398
Visualization and measurement of subcooled water jet injection into high-temperature melt by using high-frame-rate neutron radiography
柴本泰照 ; 久木田豊* ; 中村秀夫
Nuclear Technology 139(3), p.205-220(2002) ; (JAERI-J 19976)

 溶融金属表面での水の直接接触沸騰は非常に効率の良い熱伝達を期待でき,液体金属冷却炉の一体型熱交換器の開発や軽水炉溶融炉心の冷却手段,または事故時の影響評価などと関連して近年注目を集めている.水ジェットのプール中への貫入挙動について,非沸騰体系またはジェットの沸騰する体系,プール材料の沸騰する体系など,数種類のプール流体を用いた実験研究がこれまでに行われており,プール流体と水ジェットの密度比Rmjで0.81〜13.6の範囲に及んでいる.これらの研究により,ジェット貫入やキャビティ形成に関する各種データが提供されてきたが,実機のような高密度比(R大)かつ高温沸騰条件でのデータは筆者らの研究を除いてほとんど得られていない.本研究では高速度撮影の中性子ラジオグラフィを用いた実験を行い,可視化に対する問題を解決するとともに,発生蒸気量やメルト/水噴流界面形状にかかわるパラメータの定量計測を行った.衝突ジェットは,R小の場合にはジェットブレークアップ(エネルギー散逸)により貫入が制限されるのに対して,高温溶融金属中への水ジェット貫入は浮力によって制限される.また貫入は,沸騰による蒸気生成量やその界面の安定性にも大きく影響され,初期メルト温度や噴流速度に対する依存性があることを見いだした.


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