2003年度

日本原子力学会誌


310688
緊急時環境線量情報予測システムSPEEDIの現状と今後の展開
茅野政道 ; 安達武雄
日本原子力学会誌 45(5), p.296-301(2003) ; (JAERI-J 20202)

 緊急時環境線量情報予測システムSPEEDIは1979年の米国スリーマイル島原子炉(TMI-2)事故を契機に開発が進められた.これが第1世代SPEEDIであり,国内原子力施設の事故に対応する文部科学省のシステムとして実運用されている.第2世代のSPEEDIである世界版SPEEDI(WSPEEDI)は,国外事故の我が国への影響をリアルタイムで評価することを目的としたもので,その開発はチェルノブイリ事故起因の放射性物質が我が国でも検出されたことがきっかけとなっている.また,WPSEEDIの開発と並行して,気象予報機能の改良を主目的としたSPEEDIの高度化も行われている.現在,SPEEDIは第3世代のSPEEDIであるSPEEDI-MPの開発に進展している.ここでは,大気中での問題を対象としていた従来版を,海洋拡散や土壌面への放射性物質の移行まで包括的に扱えるように改良することを目的としている.このような研究開発の間,チェルノブイリ事故,旧動燃再処理施設の火災爆発事故,JCO事故,三宅島の火山ガス噴出等,さまざまな事故放出にSPEEDIを適用し事故調査に貢献するとともに,信頼性の検証を行ってきた.本解説では,以上の研究開発の歴史や,実事故への適用例について概説するとともに,SPEEDI-MPを中心にした今後の展開について述べる.


310481
新しい固体電解質を用いた先進的核熱変換プロセスと高温ガス炉による電力水素併産システム,1; 電気・化学・熱複合エネルギー変換プロセス
石山新太郎
日本原子力学会誌 2(1), p.14-23(2003) ; (JAERI-J 20047)

 高温ガス炉を利用した先進的核熱変換プロセスとして,固体燃料電池(SOFC)を利用したメタンの部分酸化反応による電力水素併産システムに関する概念検討を行った.その結果,下記結論が得られた.(1)電力水素併産システムでは,発熱反応であるメタンの部分酸化反応系にエンタルピー変化と等量の核熱を投入することにより,電力,膨脹仕事エネルギー及び合成ガスを同時に併産できるシステムである.(2)その際,核熱投入量の熱電変換効率εを電力/(核熱+反応エンタルピー)で定義した場合,理論的には100%となる.さらに,メタン燃料を合成ガスに転換した場合の熱エネルギー変化は反応エンタルピー分であり,極めてわずかのエネルギー変化でのエネルギー変換が可能である.(3)電力水素併産システムでは,1273K級の高温場における高性能固体電解質が必要であり,そのため本研究ではCe0.8(Sm1-xMx)0.2O1.9について3b族(M=Mg2+,Al3+,In3+,Ga3+)を中心としたSmサイトへのメタルカチオンの置換による組成最適化を行った結果,Ce0.8Sm0.15In0.05O1.9の最適組成を決定した.(4)1273Kにおいて本固体電解質による電力水素併産試験を実施した結果,自由エネルギー変化ΔGの約74%を電気変換することに成功すると同時に,その際のメタン転換率として約90%を達成した.以上の結果から,核熱を電力にすべて変換できる究極的なエネルギー変換システムがあり得ることが結論された.


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