2003年度

Journal of Nuclear Materials


320181
Excellent corrosion resistance of 18Cr-20Ni-5Si steel in liquid Pb-Bi
倉田有司 ; 二川正敏
Journal of Nuclear Materials 325(2-3), p.217-222(2004) ; (JAERI-J 20704)

 酸素飽和した液体鉛ビスマス中で3000hの腐食試験を行うことにより,Si量の異なる3種類のオーステナイト鋼の腐食特性を調べた.450℃のこの条件では,3種のオーステナイト鋼とも,明らかなNi及びCrの溶出は示さなかった.550℃ではSi量の低いJPCA及び316ssはNi及びCrの溶出した厚いフェライト相が形成した.これに対し,18Cr-20Ni-5Si鋼では,Siと酸素からなる保護酸化膜が形成し,Ni及びCrの溶出を防いだ.Si添加したオーステナイト鋼は液体鉛ビスマス中で優れた耐食性を示すことを明らかにした.


310736
Irradiation behavior of rock-like oxide fuels
山下利之 ; 蔵本賢一 ; 白数訓子 ; 中野佳洋 ; 秋江拓志 ; 長島久雄 ; 木村康彦 ; 大道敏彦*
Journal of Nuclear Materials 320(1-2), p.126-132(2003) ; (JAERI-J 20249)

 岩石型燃料の照射安定性を調べるために,2回の照射試験を実施した.最初の試験ではディスク型燃料を,2回目はペレット型燃料を用いた.スエリング,ガス放出率及び相変化を,パンクチャー試験,被覆管外径測定並びに金相試験により調べた.イットリア安定化ジルコニア(YSZ)単相型燃料は,低いガス放出率(3%以下),無視しうるスエリング及び組織変化など,優れた照射挙動を示した.粒子分散型燃料は,粉末混合型燃料と比べ,スエリングは小さいが高いガス放出率を示した.本照射試験において,スピネルの分解と引き続く組織変化が初めて観察され,これは1700K以上で発生すると考えられる.スピネルマトリクス燃料のガス放出率は,燃料最高温度を1700K以下にすることで,コランダム型燃料と同等までに低減できると考えられる.スピネルマトリクスの照射損傷領域は,YSZ球表面に限定されていることがわかった.


310931
Selection of chemical forms of iodine for transmutation of 129I
白数淑郎 ; 湊和生
Journal of Nuclear Materials 320(1-2), p.25-30(2003) ; (JAERI-J 20414)

 長寿命核分裂生成物のヨウ素-129を中性子照射により安定核種に核変換できたならば,地層処分の負担軽減,環境負荷の低減につながるが,ヨウ素をどのような化合物で照射すべきかについては,解決されていない.文献調査により,適切なヨウ素の化学形を絞り込むとともに,被覆管候補材との両立性試験を実施した.CuIは空気中で安定に取り扱える数少ないヨウ素化合物の一つであるが,被覆管材料との反応が問題であった.しかし,Cuを被覆管のライナー材として用いることにより,両立性の問題を解決した.


310930
Fabrication of nitride fuels for transmutation of minor actinides
湊和生 ; 赤堀光雄 ; 高野公秀 ; 荒井康夫 ; 中島邦久 ; 伊藤昭憲 ; 小川徹
Journal of Nuclear Materials 320(1-2), p.18-24(2003) ; (JAERI-J 20413)

 原研では,地層処分の負担軽減,環境負荷低減を目的に,長寿命核種であるマイナーアクチノイドのNp,Am,Cmを窒化物燃料として加速器駆動核変換炉により短寿命核種に核変換する概念を提案している.これまでに,NpN,(Np,Pu)N,AmN,(Am,Y)N,(Am,Zr)N,(Cm,Pu)Nなどの窒化物を炭素熱還元法により酸化物から調製することに成功している.調製した窒化物については,X線回折法による相の同定及び格子定数測定,不純物酸素及び炭素の分析などを実施している.また,ウランを含まない(Pu,Zr)N及びPuN+TiNの燃料ペレットを製造し,材料試験炉JMTRにおいて照射試験を開始した.


310735
Durability test of irradiated rock-like oxide fuels
蔵本賢一 ; 白数訓子 ; 山下利之
Journal of Nuclear Materials 319(1-3), p.180-187(2003) ; (JAERI-J 20248)

 プルトニウム(Pu)の需給状況に柔軟に対応できる利用法の一つのオプションとして,現行の軽水炉中でPuをほぼ完全に燃焼でき,使用済燃料を安定な廃棄物として直接処分できる岩石型燃料とその軽水炉燃焼技術の開発を進めている.この岩石型燃料の照射後の地質学的安定性を評価するために脱イオン水中で90℃,約6ヶ月間の浸出試験を行った.注目したのはマトリックス元素,TRU及び長半減期β核種の浸出率である.Zr,U及びPu-239の浸出率は10-9g/cm2/dayのオーダーで極めて良好な浸出率であった.しかし,Yの浸出率は高く予想に反するものであった.また,揮発性のCsやIの浸出率は粒子分散型燃料で2-3倍ほど高く,FPガス放出挙動に見られるようにマイクロクラックを通じて拡散し,浸出液と接触しやすい箇所に析出したためと考えられる.


310929
Morphology change of rock-like oxide fuels in reactivity-initiated-accident simulation tests
中村武彦 ; 笹島栄夫 ; 山下利之 ; 上塚寛
Journal of Nuclear Materials 319, p.95-101(2003) ; (JAERI-J 20412)

 3種類の未照射の岩石(ROX)燃料の反応度事故(RIA)時挙動を調べるための試験を実施した.すなわちイットリア安定型ジルコニア(YSZ)単相型,YSZ/スピネル混合型及びスピネル中YSZ粒子分散型ROX燃料をNSRRでパルス照射し,RIA時の燃料破損モード,破損しきい値及びこの影響を調べた.燃料破損は,多量の燃料溶融を伴った破裂破損であった.破損モードの違いにもかかわらず,ROX燃料のしきい値は約10GJm-3とUO2燃料と同程度であった.しかし,ROX燃料の場合溶融燃料の分散が低いエンタルピで発生するため,破損の影響はUO2燃料と大きく異なるものであった.過渡加熱条件での燃料構造の変化と材料間の反応について,光学及び電子顕微鏡を用いた観察と分析を行った.


310928
Irradiation effects on yttria-stabilized Zirconia irradiated with neon ions
北條智博* ; 相原純 ; 北條喜一 ; 古野茂実* ; 山本博之 ; 二谷訓子 ; 山下利之 ; 湊和生 ; 佐久間隆昭*
Journal of Nuclear Materials 319, p.81-86(2003) ; (JAERI-J 20411)

 岩石型燃料の母材として注目されている安定化ZrO2の照射特性を調べた.核分裂片による照射損傷は,高エネルギー領域で生じる電子励起による損傷と低エネルギー領域で生じる核的衝突による損傷の二種類に大きく分けることができる.この中で,材料の損傷は,核的衝突によるはじき出しが主と考えられている.そこで,原研が開発して,低エネルギーイオン加速器付設高分解能電子顕微鏡を用いて,加速電圧35keVのNe+イオンを室温から1200℃に加熱した上記材料に照射し,各温度による損傷形態の違いを明らかにした.その結果,Ne照射では,各温度領域で材料の非晶質化を観察することができず,対照射性が非常に高いことを明らかにした.さらに,同温度の重照射で,数nmのNeバブルが生じることを明らかにした.また,1200℃の高温照射では,バブルは,大きく成長し数十nmに成長することを電顕その場観察法を用いて明らかにすることができ,この結果から,高温照射によるスエリング量を推定することが可能になった.


310734
Corrosion-erosion test of SS316 in flowing Pb-Bi
菊地賢司 ; 倉田有司 ; 斎藤滋 ; 二川正敏 ; 佐々敏信 ; 大井川宏之 ; 若井栄一 ; 三浦邦明*
Journal of Nuclear Materials 318(1-3), p.348-354(2003) ; (JAERI-J 20247)

 流動鉛ビスマス条件で,オーステナイト・ステンレス鋼の腐食試験を3000時間実施した.試験材はSS316は外径13.8mmの管であり,最高温度450℃,温度差50℃,流速1m/sである.試験後,管を切断し,光学顕微鏡,SEM,EDX,WDX,X線回折により分析した.鉛ビスマスはドレン後も,配管内部に付着していた.流動条件下での腐食量は0.1mm/3000時間であり,内面は凹凸が激しい.高温から低温部に質量の移行が観察され,低温部にはFe-Crの結晶粒が析出していた.粒径は0.1〜0.2mmであり,化学組成は鉄:クロムが9:1であった.これらの結果は,静的な腐食試験では観察されず,流動試験で始めて見出された.


310733
R&D on mercury target pitting issue
菊地賢司 ; 粉川広行 ; 二川正敏 ; 石倉修一* ; 神永雅紀 ; 日野竜太郎
Journal of Nuclear Materials 318(1-3), p.84-91(2003) ; (JAERI-J 20246)

 水銀ターゲットの開発では,圧力波の発生に関連して生じるピッチングが技術課題となっている.ピッチングはSHPBによるオフ・ビーム実験で見つかり,LANSCE,WNRオン・ビーム試験で確認された.ターゲット設計に生かすため,水銀中に生じる圧力を80MPaから減少させ,生じるピッチングの下限界値を見極める一連の試験を実施した.その結果,20MPa以下では実質的なピッチングによる損傷は明らかに限定された結果を得た.ピッチングによる形態は2つあり,小さな穴の生成と広範なへこみであった.小さな穴が生成される場合には質量の欠損が見られるが,へこみではそれが無いと観察された.


310651
2.5MeV electron irradiation effect of alumina ceramics
金正倫計 ; 齊藤芳男* ; 西澤代治* ; 道園真一郎*
Journal of Nuclear Materials 318, p.307-312(2003) ; (JAERI-J 20165)

 大強度陽子加速器施設の3GeVシンクロトロンでは,渦電流の影響を抑制するために,真空ダクト材料として,アルミナセラミックスの使用を検討している.アルミナセラミックスの放射線照射効果を検討するために,原研高崎研2号加速器を利用して2.5MeVの電子線照射を行っている.これまで1000MGyまで照射したサンプルの抗折強度試験及びアルミナセラミックスとチタンの接合強度試験を行ったので現状を報告する.


310927
Bubble dynamics in the thermal shock problem of the liquid metal target
石倉修一* ; 粉川広行 ; 二川正敏 ; 菊地賢司 ; 日野竜太郎 ; 荒川忠一*
Journal of Nuclear Materials 318, p.113-121(2003) ; (JAERI-J 20410)

 出力1MW,パルス幅1μsの陽子ビームが入射した時に水銀ターゲット容器に発生する熱衝撃応力を解析した.初期圧52MPaが水銀中を伝播することにより61MPaの最大負圧を生じる.この負圧の発生によりキャビテーションの生成が予想される.そこで,キャビテーションの挙動を調べるために,単一バブルに対してバブル動力学から導かれる運動方程式のシミュレーションを行い,パラメータ解析を実施した結果,ターゲット容器ウィンドウ部の圧力が変化することによりバブルが1000倍以上に膨張することがわかった.その結果,波動伝播に影響を与えることになるが,バブル液体の状態方程式は多項式近似が可能である.また,静的・動的試験により液体の臨界圧力,音速,共振周波数を測定することにより,水銀中に内在するバブルの半径や体積率の判定が可能となることが示唆された.


310542
Two-dimensional particle simulation of the flow control in SOL and divertor plasmas
滝塚知典 ; 細川哲也* ; 清水勝宏
Journal of Nuclear Materials 313-316(1-3), p.1331-1334(2003) ; (JAERI-J 20096)

 トカマク核融合研究において粒子と熱の制御が最重要課題の一つである.ヘリウム灰排気と不純物のダイバータ領域内保留はダイバータ板に向かうプラズマ流で決まる.板上の局所的熱負荷は流れのパターンに依存する.したがって,SOLとダイバータプラズマの流れの適切な制御によって粒子と熱の制御ができる.この論文では,PARASOLコードを用いた2次元粒子シミュレーションにより流れの制御を研究した.トカマクのダイバータ配位に似たセパラトリクスのある磁場配位を与えている.主プラズマ中に熱粒子源がある.ダイバータ板近傍にリサイクリング冷粒子源がある.SOLプラズマ中に流れ制御のためにガスパフ粒子源をおく.板上の静電ポテンシャルを変えてダバータバイアシングが可能である.ガスパフとバイアスの流れへの影響を調べた.シミュレーション結果から制御性を評価した.


310541
Radiation enhancement and impurity behavior in JT-60U reversed shear discharges
久保博孝 ; 櫻井真治 ; 東島智 ; 竹永秀信 ; 伊丹潔 ; 木島滋 ; 仲野友英 ; 小出芳彦 ; 朝倉伸幸 ; 清水勝宏 ; 藤田隆明 ; Hill, K.*
Journal of Nuclear Materials 313-316(1-3), p.1197-1201(2003) ; (JAERI-J 20095)

 負磁気シア放電は,定常トカマク型核融合炉の運転シナリオに対する有力な候補である.一方,ダイバータ板への熱負荷の低減には,不純物入射による放射損失の増大が有効である.JT-60では,高閉じ込めの負磁気シア放電に,Ne及びArを入射し,放射損失を増大した.Ne入射の場合には,X点MARFEの発生により放射損失が増大し,ダイバータプラズマが非接触状態になった.この非接触ダイバータを維持しつつ,内部輸送障壁が成長し,閉じ込め改善度が1.3から1.8に増大した.この時,Ne及びCの密度分布に内部輸送障壁が観測されたが,その密度分布は電子密度分布とほぼ同じで,不純物の選択的な蓄積は観測されなかった.一方,Ar入射の場合には,放射損失は内部輸送障壁の内側で増大し,軟X線発光分布からも主プラズマ中心部でのArの蓄積が示唆された.


310540
Asymmetry of dense divertor plasmas influenced by thermoelectric potential and charge-exchange momentum loss
林伸彦 ; 滝塚知典 ; 細川哲成* ; 清水勝宏
Journal of Nuclear Materials 313-316(1-3), p.1041-1045(2003) ; (JAERI-J 20094)

 熱電ポテンシャルと荷電交換運動量損失を考慮した高密度ダイバータプラズマの非対称性を,5点モデルを用いて解析した.ダイバータプラズマの温度が10eV以下になると運動量損失が大きくなる.非対称な平衡の低温側ダイバータでは,プレシース電位が運動量損失によって高くなり,熱電ポテンシャルの低下を補う.プレシース電位の変化により,運動量損失は熱電不安定性を安定化させる働きがあり,非対称性を弱める.平衡の分岐構造のために,一方のダイバータプラズマでリサイクリングを増加させ温度を下げるためには,もう片方のダイバータプラズマを高リサイクリングにさせ運動量損失を増加させると効果的に温度を下げられる.


310602
Two-Dimensional distribution of divertor radiation in JT-60U
木島滋 ; 玉井広史 ; 三浦幸俊 ; 東島智 ; 久保博孝 ; 櫻井真治 ; 清水勝宏 ; 滝塚知典 ; 小出芳彦 ; 波多江仰紀 ; 竹永秀信
Journal of Nuclear Materials 313-316(1-3), p.888-892(2003) ; (JAERI-J 20137)

 JT-60Uのダイバータ領域における放射損失を多チャンネル・ボロメータによって計測した.48チャンネルの線積分信号から,トモグラフィー解析によって2次元分布を得ることに成功した.この方法は,JT-60Uのダイバータプラズマを直感的に理解し,また今後シュミレーションコードを構築するうえで極めて有効である.一例として平均密度約3.7×1019m-3の代表的なHモード放電を解析した結果,ダイバータ板の前面約10cmの領域にわたって局在する内側15MWm-3,外側8MWm-3程度の強い輝度の放射帯の存在を確認することが出来た.この放射損失は全体で11MWに及び,加熱入力の約70%に相当するパワーがダイバータ部での放射損失によって消費されていることが明らかとなった.さらに密度の高い場合なども報告する.


310539
Tritium permeation study through tungsten and nickel using pure tritium ion beam
中村博文 ; 洲亘 ; 林巧 ; 西正孝
Journal of Nuclear Materials 313-316(1-3), p.679-684(2003) ; (JAERI-J 20093)

 核融合炉においては構成材料からのトリチウムの透過評価が安全確保のうえで重要である.このためプラズマ対向材料であるタングステンと代表的材料である鉄及びニッケルについて純トリチウムのイオン注入透過挙動に関する実験的研究を行った.また,全く同一の装置・条件下で重水素のイオン注入透過挙動の測定を行い,同位体効果の調査を行った.定常透過量に関しては,トリチウムと重水素で顕著な差は無くほぼ同様であるとの結果を得た.過渡挙動の解析からは,タングステン及びニッケル中のトリチウムの拡散係数が700Kの測定温度範囲内において重水素の係数より数%から数十%大きいという結果を得た.また,拡散の活性化エネルギーについては,トリチウムに関し,ニッケルでは重水素より5kJ/mol程度小さく,タングステンでは逆に5kJ/mol程度大きい値を得た.これらの過渡挙動解析から得た結果は,拡散係数が質量の1/2乗に逆比例し活性化エネルギーは等しいとする古典拡散理論を単純には適用できないことを示すものである.


310538
Ablative removal of codeposits on JT-60 carbon tiles by an excimer laser
洲亘 ; 川久保幸雄* ; 正木圭 ; 西正孝
Journal of Nuclear Materials 313-316(1-3), p.584-587(2003) ; (JAERI-J 20092)

 JT-60の水素プラズマ実験で生成した共堆積層を用いてレーザーアブレーションによる共堆積層除去の効果を調査した.7.6J/cm2のレーザーフルエンスの場合,共堆積層の除去レートは1.1μm/パルスに達する結果を得た.共堆積層の除去レートとレーザーフルエンスの関係から,共堆積層のレーザーアブレーション閾値及び波長193nmの紫外線レーザー吸収係数として,それぞれ1.0J/cm2と1.9μm-1という値を得た.また,照射中に共堆積層から放出した水素(トリチウム)はほとんど元素状ガスの形であることを測定し,2次汚染の可能性の高いトリチウム水がほとんど生成されないことを確認した.さらに,レーザー照射中の材料表面の温度上昇を,プランクの放射法則に基づいて高速赤外素子InGaAsにより測定した.


310537
Sputtering of carbon-tungsten mixed materials by low energy deuterium
谷口正樹 ; 佐藤和義 ; 江里幸一郎 ; 横山堅二 ; 大楽正幸 ; 秋場真人
Journal of Nuclear Materials 313-316(1-3), p.360-363(2003) ; (JAERI-J 20091)

 次期核融合実験装置においては,ダイバータ用アーマ材として炭素,タングステン等複数の材料を併用することが考えられている.この場合,アーマ表面には損耗したこれらの構成元素が再付着することにより材料混合膜が形成されると考えられている.しかしながら混合膜に対する低エネルギー水素の照射効果についてはほとんど研究例がなく,ダイバータ開発に必要なデータは不足しているのが現状である.そこで炭素,タングステン電極間で重水素雰囲気下でアーク放電を生じさせ,昇華,蒸発する炭素,タングステンをモリブデン基盤上へ堆積させることにより模擬炭素−タングステン混合膜を作成し,その低エネルギー水素による損耗特性を調べた.その結果,炭素膜中にタングステンが混入することにより,損耗が大きく減少することがわかった.これは,タングステン−炭素結合の形成により水素による化学スパッタリングが抑制されたためであると考えられる.


310536
Suppression of hydrogen absorption to V-4Cr-4Ti alloy by TiO2/TiC coating
広畑優子* ; 元嶋大* ; 日野友明* ; 仙石盛夫
Journal of Nuclear Materials 313-316(1-3), p.172-176(2003) ; (JAERI-J 20090)

 核融合炉材料候補材の一つである低放射化バナジウム合金(V-4Cr-4Ti)の,降温時における水素吸収を低減させるために酸化チタン層コーティングを試みた.この層の組成はTiO2とTiCであり,そのうちTiO2は80%である.コーティング層の厚さを増大させるに従いバナジウム合金の水素吸収率は大幅に低減され,厚さ0.5μm,温度 573Kではコーティングしない場合の1/50までとなった.


310535
Boronization effects using deuterated-decaborane (B10D14) in JT-60U
仲野友英 ; 東島智 ; 久保博孝 ; 柳生純一 ; 新井貴 ; 朝倉伸幸 ; 伊丹潔
Journal of Nuclear Materials 313-316(1-3), p.149-152(2003) ; (JAERI-J 20089)

 JT-60では酸素不純物と粒子リサイクリングを低減するためにデカボラン (B10D14)を用いたボロン化処理を行った.しかし,デカボランに含まれる軽水素が重水素プラズマを希釈することが問題であった.調整用トカマク放電数を減少させるために,重水素化デカボラン(B10D14)を用いたボロン化処理を近年導入した.本研究では同一放電条件の放電を定期的に繰り返し,重水素化デカボランを用いたボロン化処理の効果の持続性を調べた.中性粒子ビーム加熱4MWのLモード放電において,20gのデカボランを用いたボロン化処理では,主プラズマの酸素量は1.9%から1.3%までにしか減少させることができなかったが,70gのデカボランを用いたボロン化処理では,2.2%から0.5%まで減少させることができた.その後,酸素量は徐々に増加したが,約400ショットの間,約1%以下に抑えることができた.また,10-20gのデカボランを用いたボロン化処理を繰り返すことにって主プラズマの酸素量を約0.5%に維持することに成功した.講演では,構築したデータベースに基づいて,デカボランの使用量と頻度の最適化について議論する.


320024
Control of divertor heat load by Ar injection with keeping high performance in ELMy H-mode plasmas on JT-60U
東島智 ; 朝倉伸幸 ; 久保博孝 ; 三浦幸俊 ; 仲野友英 ; 木島滋 ; 伊丹潔 ; 櫻井真治 ; 竹永秀信 ; 玉井広史 ; JT-60チーム
Journal of Nuclear Materials 313-316, p.1123-1130(2003) ; (JAERI-J 20574)

 トカマク型核融合炉では,ダイバータ板への熱負荷低減が急務であり,そのためには高放射損失パワーが必要である.しかし大型トカマク装置では,高密度・高放射損失パワーを得るためにガスパフを行うと,リサイクリングの増加とともに閉じ込め性能が劣化する.アルゴン入射は,高密度・高放射損失パワー・高閉じ込めを両立する手段として有望である.JT-60Uでは,アルゴンガスをダイバータ配位のELMy Hモードプラズマに入射し,グリーンワルド密度で規格化した電子密度(nGW) が66%,吸収パワーに対する放射損失パワーの割合(frad) が80%で,閉じ込め改善度HH98(y,2)〜1 の高性能プラズマを得た.今回,粒子補給を容易にすることを目的に,外側ストライク点がダイバータドーム上にあるドーム配位のELMy Hモードプラズマへ同じくアルゴンをパフした.その結果,nGW〜80%,frad≧80%,HH98(y,2)〜1と更に高性能のプラズマを生成できると同時に,ダイバータ板へのELM熱負荷を1/3-1/5に低減できた.講演では,アルゴン入射実験の閉じ込め性能の進展とアルゴン入射やプラズマ配位の効果によるダイバータ板熱負荷低減,放射損失の増大,ELM特性の変化についてまとめる.


310732
Tritium distribution in JT-60U W-shaped divertor
正木圭 ; 杉山一慶* ; 田辺哲朗* ; 後藤純孝* ; 宮坂和孝* ; 飛田健次 ; 三代康彦 ; 神永敦嗣 ; 児玉幸三 ; 新井貴 ; 宮直之
Journal of Nuclear Materials 313-316, p.514-518(2003) ; (JAERI-J 20245)

 トリチウム残留量の評価及び吸蔵過程の解明のために,JT-60U W型ダイバータタイルにおけるトリチウム分布を,イメ−ジングプレ−ト技術(TIPT)及び燃焼法により測定した.その結果,発生したトリチウムの約10%がダイバータ領域に残留し,そのトリチウム濃度は,ドーム頂部及び外側バッフル板タイルで高く(〜60 kBq/cm2),ダイバータターゲットタイルでは低かった(〜2 kBq/cm2).DD反応で生成されるトリトンの粒子軌道計算の結果,第一壁及びダイバータタイルに打ち込まれるトリトンの粒子束分布は,TIPT及び燃焼法で得られたポロイダル分布結果と一致した.また,このトリチウム分布は,測定された再堆積層の分布状態との相関は認められなかった.これらの結果から,JT-60Uでのトリチウム分布は,プラズマ中におけるトリトンの粒子損失を反映していることがわかった.


311036
Re-emission of hydrogen implanted into graphite by helium ion bombardment
土屋文* ; 森田健治* ; 山本春也 ; 永田晋二* ; 大津直史* ; 四竈樹男* ; 楢本洋
Journal of Nuclear Materials 313-316, p.274-278(2003) ; (JAERI-J 20487)

 あらかじめ水素をイオン注入したグラファイト試料に60〜200keVのエネルギーでヘリウムイオン照射を行ない,水素の再放出過程を16MeV 16O5+を分析ビームに用いた反跳粒子検出法を用いて調べた.グラファイト中の水素濃度は,ヘリウム照射により急速に減少し,さらにヘリウム照射量が増加すると水素/炭素の比が約0.2の一定値に達した.グラファイトからの水素再放出は,ヘリウムの照射エネルギーが低くなるとともに増加した.この実験結果を質量平衡方程式により解析した結果,このヘリウムの照射エネルギー範囲では,ヘリウムよってはじき出された炭素原子と水素との弾性衝突が水素の再放出の主な原因であることがわかった.


310534
Issues to be verified by IFMIF prototype accelerator for engineering validation
杉本昌義 ; 今井剛 ; 奥村義和 ; 中山光一* ; 鈴木昌平* ; 三枝幹雄*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1691-1695(2002) ; (JAERI-J 20088)

 国際核融合材料照射施設(IFMIF)は核融合炉用材料開発のための加速器ベースの強力中性子源である.施設には2台の加速器があり,それぞれ最大40MeV/125mAの重陽子ビームを発生する.過去に350MHzにおける7MeV/100mAの陽子加速に成功した例はあるものの,IFMIF仕様の175MHz重陽子加速を実証することが重要であり,次期フェーズの技術実証期間において基本性能を実証する予定である.特に重要な設計パラメータである加速器間のビーム受け渡しエネルギーや高周波源特性等はプロトタイプ用に最適化する必要がある.このようなプロトタイプ設計に必要な基本要素技術(イオン源,FQへのビーム整合,高周波システム要素等)について現在,実施中の試験について目標と現状を述べるとともに,日本から提案中のプロトタイプの概念構成を示す.


310601
Water jet flow simulation and lithium free surface flow experiments for the IFMIF target
井田瑞穂* ; 堀池寛* ; 秋場真人 ; 江里幸一郎 ; 飯田敏行* ; 井上正二* ; 宮本斉児* ; 室賀健夫* ; 中村秀夫 ; 中村弘史* ; 中村博雄 ; 鈴木晶大* ; 竹内浩 ; 宇田直記* ; 山岡信夫*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1686-1690(2002) ; (JAERI-J 20136)

 国際核融合材料照射施設(IFMIF)の液体リチウム(Li)ターゲットの要素技術確証の一環として,水流による模擬実験を実施した.水流れの表面波挙動の上流ノズル内壁の表面粗さ依存性(6.3,100μm)と流れ表面雰囲気の圧力依存性(1,0.15atm)を調べた.その結果,表面波成長に与える影響はノズル内壁の表面粗さが支配的であり,100μmの粗さのノズルでは10m/s以上の高い流速で流れ表面の乱れが顕著になることが判明した.この結果をノズルの設計,製作に反映したLi流れ実験を,大阪大学のLiループで計画中である.この実験は,15m/sの流速及び真空雰囲気の条件で実施する予定である.なお本発表では以上の結果に加えて,Li流れ表面の不安定性,表面からのLi蒸発,Li流れによるノズルの腐食と浸食,電磁ポンプでのキャビテーションの解析等に関しても発表する.


310650
Status of activities on the lithium target in the key element technology phase in IFMIF
中村博雄 ; Burgazzi, L.* ; Cevolani, S.* ; Dell'Ocro, G.* ; Fazio, C.* ; Giusti, D* ; 堀池寛* ; 井田瑞穂* ; 角井日出雄* ; Loginov, N.* ; 松井秀樹* ; 室賀健夫* ; 中村秀夫 ; Riccardi, B* ; 竹内浩 ; 田中知*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part.2), p.1675-1679(2002) ; (JAERI-J 20164)

 国際核融合材料照射施設(IFMIF)は,重陽子−リチウム(Li)反応による加速器型中性子源であり,国際協力で3年間の要素技術確証フェーズ(KEP)を2002年末までの予定で実施中である.本報告では,KEPの結果を反映させた液体Liターゲットの最近の結果と今後の展望について述べる.連続運転に対応したLiループ構造を定めるため,Liループ配管の熱応力解析を行い,過大な熱応力が発生しない配置を定めた.また,ビーム緊急停止時の過渡解析を実施し,Li固化防止に必要な有機冷媒1次冷却系及び水の2次冷却系温度制御条件を定めた.Li純化系では,KEPの結果をもとに,材料の腐食に影響するLi中の窒素不純物制御用として,新たにCrホットトラップの検討を行うとともに,トリチウム制御用のイットリウムホットトラップの仕様を定めた.さらに,放射化したターゲットアセンブリの交換のための遠隔交換アームの概念設計を行い,基本構造を定めた.KEPに続いて,Liターゲットの長時間運転を実証するため,2003年の移行期間を経て2004年からLi試験ループを中心とした技術実証を開始する予定である.


310372
Neutron irradiation effect on the mechanical properties of type 316L SS welded joint
斎藤滋 ; 深谷清* ; 石山新太郎 ; 雨澤博男 ; 米川実 ; 高田文樹 ; 加藤佳明 ; 武田卓士 ; 高橋弘行* ; 中平昌隆
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1573-1577(2002) ; (JAERI-J 19950)

 国際熱核融合実験炉(ITER)の真空容器は,炉心の中心構造体としてブランケット,ダイバータ等の炉内機器を支持し,超高真空を保持するなどの機能が求められている.また,トリチウム閉じ込めの第一隔壁として安全設計上最も重要な機器と位置づけられている.本研究では実機への適用が検討されているSUS316L母材及び溶接継ぎ手(TIG,TIG+MAG及びEB溶接)について,JMTRを用いた中性子照射試験及び引張り試験やシャルピー衝撃試験などの照射後試験を行い,材料の機械的特性に与える中性子照射の影響を調べた.その結果,母材,TIG及びEB溶接継ぎ手については0.2〜0.5dpaの照射後も十分健全性は保たれていた.しかしTIG+MAG溶接継ぎ手はシャルピー衝撃値等が極めて低く,実機への適用は困難であると考えられる.


310455
Characterization of 316L(N)-IG SS joint produced by hot isostatic pressing technique
中野純一 ; 三輪幸夫 ; 塚田隆 ; 菊地正彦 ; 北智士 ; 根本義之* ; 辻宏和 ; 實川資朗
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1568-1572(2002) ; (JAERI-J 20021)

 316LN-IGステンレス鋼が国際熱核融合実験炉(ITER)の第一壁/ブランケットの候補材料として考えられている.その製造においては熱間静水圧(HIP)法を用いることが計画されている.HIP接合された316LN-IGステンレス鋼の健全性及び応力腐食割れ(SCC)に対する感受性を評価するために,真空中での引張試験及び高温水中での低ひずみ速度引張試験(SSRT)を行った.HIP接合材は引張強度の低下及び溶存酸素を含む水中でのSCC感受性を示さなかった.熱鋭敏化したHIP接合材はクレビス条件下でわずかにSCC感受性を示した.これらのことから,接合部位での強度は母材合金と同等であると言える.


310362
Mechanical properties of HIP bonded W and Cu-alloys joint for plasma facing components
斎藤滋 ; 深谷清* ; 石山新太郎 ; 佐藤和義
Journal of Nuclear Materials 307-311(2), p.1542-1546(2002) ; (JAERI-J 19940)

 現在,ITER等の核融合炉の設計において,ダイバータ装置のアーマー材としてW(タングステン)合金の適用が検討されており,冷却構造体である銅合金との接合技術を開発する必要がある.われわれは,高い信頼性や強度を得られる接合法として注目されている熱間等方加圧(Hot Isostatic Pressing; HIP)法を用いたWと銅合金の接合技術の開発に着手した.Wと無酸素銅の直接接合の最適接合条件は1000℃・2時間・147MPaで,接合強度はHIP処理した無酸素銅とほぼ等しい.一方,Wとアルミナ分散強化銅との接合は,残留応力や酸化物の形成により,直接接合は困難であるが,両者の間に厚さ0.3mm以上の無酸素銅を挟むことで接合が可能となった.引張り試験の結果,厚さ0.3〜0.5mmでは高温で接合強度が低下するため,厚さ1.0mm以上の無酸素銅間挿材が必要である.このときの強度はW/無酸素銅接合体やHIP処理した無酸素銅の強度をやや上回った.


310731
Ab initio study on isotope exchange reactions of H2 with surface hydroxyl groups in lithium silicates
中沢哲也 ; 横山啓一 ; Grismanovs, V.* ; 片野吉男* ; 實川資朗
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1436-1440(2002) ; (JAERI-J 20244)

 本研究ではリチウムシリケイトからのトリチウム放出に関する基礎的な知見を得るために非経験的分子軌道計算を用いてリチウムシリケイトとAl添加リチウムシリケイトの表面水酸基とH2の同位体交換反応について調べた.計算はGaussian98を用いてHF/3-21G, HF/6-31G**, MP2/6-31G**の理論レベルで行った.H3SiOHをシリケイトガラスにおける表面水酸基のモデルとして,H3Si(OH)Al(H)2OSiH3はAlを含んでいるシリカガラスの表面水酸基のモデルとして選んだ.各クラスターとH2の交換反応に対して計算されたHF/6-31G**活性化エネルギーはそれぞれ88.1と42.7kcal/molである.活性化エネルギーのこのような減少はAl原子の相互作用に起因した表面水酸基の電荷の変化と関連している.各原子の電荷をMulliken population解析によって求めた.その結果,表面水素原子のイオン性が表面水酸基に対するAl原子の直接の相互作用によって増加していた.他の理論レベルにおいても同様の結果が得られた.得られた計算結果はAl原子の相互作用によってリチウムシリケイトの表面水酸基とH2の交換反応がより低い温度で行われることを示唆している.


310533
In situ transmissivity measurements of KU1 quartz in the UV range under 14 Mev neutron irradiation
西谷健夫 ; 杉江達夫 ; 河西敏 ; 金子順一* ; 山本新
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1264-1267(2002) ; (JAERI-J 20087)

 紫外域の分光計測は炭素等の軽元素不純物のモニターとして重要である.ITERにおいてロシア製KU-1溶融石英は可視及び紫外域の窓材の有力な候補であるが,紫外域の中性子照射下における透過損失のデータはほとんどない.そこでFNSを使用して,KU-1溶融石英窓の14MeV中性子照射下における透過損失の実時間測定を行った.直径16mm,厚さ8mmのKU-1溶融石英サンプルはFNSの回転トリチウムターゲットの直前に設置した.重水素ランプにより紫外線をサンプルに入射し,透過光を光ファイバーに集光させ,照射室外の分光器で200-400nmの波長域の透過率を測定した.中性子フルエンスは7.4×1019n/m2であった.照射による著しい損失増加が200-300nmの波長域で観測され,特に215nmと245nmにおいて吸収ピークを確認した.215nmの吸収ピークでは5×1019n/m2のフルエンスで透過率が厚さ1cmに対し10%まで減少することがわかった.このことからITERにおける分光測定では窓の透過率をその場較正する必要があることを示した.


310371
Highly thermal conductive sintered SiC fiber-reinforced 3D SiC/SiC composites; Experiments and finite-element analysis of the thermal diffusivity/conductivity
山田禮司 ; 井川直樹 ; 田口富嗣 ; 實川資朗
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1215-1220(2002) ; (JAERI-J 19949)

 SiC繊維強化SiC/SiC複合材料(SiC/SiC)は,核融合炉の先進的ブランケット構造材料と目されている.構造設計の点から,最大熱応力を設計強度以内に抑えるため,材料には高熱伝導性が要求されている.最近開発された焼結SiC繊維は高熱伝導率を有しており,それを用いたSiC/SiC複合材料もまた高熱伝導性を示すことが期待される.ここでは,CVIとPIP法により焼結SiC繊維を用いて複合化し,それらの熱伝導率を評価した.その結果,CVI及びPIPによる複合材では,室温でそれぞれ,60W/mK,25W/mKの値をえた.これらの値は,非焼結SiC繊維の複合材の熱伝導率と比較すると,非常に大きく開発材料の有望性を示している.焼結及び非焼結SiC繊維のSiC/SiC複合材の熱伝導解析を有限要素法で行い,実験結果を裏付ける計算結果を得た.


310370
Optimizing the fabrication process for superior mechanical properties in the FCVI SiC matrix/stoichiometric SiC fiber composite system
井川直樹 ; 田口富嗣 ; Snead, L. L.* ; 加藤雄大* ; 實川資朗 ; 香山晃* ; McLaughlin, J. C.*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1205-1209(2002) ; (JAERI-J 19948)

 SiC繊維強化SiC複合材料は,低放射化や高温機械特性等に優れているため,次世代の核融合炉用の構造材料の候補材である.近年,高温機械的特性に優れたSiC繊維が開発された.本研究では,この繊維を用い,機械的特性を最適化した複合材料を作製することを目指し,複合化過程の最適化を行った.複合化過程としては最も高純度化が達成できると期待できるFCVI法を採用し,SiC繊維とマトリックスとの間の界面材料としては,低放射化や耐照射性が期待できるカーボン層を用いた.カーボン層の厚みの均一化及び最適化並びにマトリックス中の空孔の低減化及び空孔分布の均一化等によって,優れた機械特性を有するSiC/SiC複合材料が得られる見通しを得た.


310369
Decay heat measurement of fusion related materials in an ITER-like neutron field
森本裕一* ; 落合謙太郎* ; 前川藤夫 ; 和田政行* ; 西谷健夫 ; 竹内浩
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part2), p.1052-1056(2002) ; (JAERI-J 19947)

 崩壊熱を正しく予測することは,ITERの事故時安全性の確保のうえで重要である.特に,銅,ステンレス鋼,タングステンの崩壊熱については精度15%以内で予測する必要がある.本研究では,これらのうち銅とステンレス鋼をITERを模擬した中性子スペクトル下で照射し,その崩壊熱を全エネルギー吸収スペクトロメーターで測定した.測定結果を中性子輸送計算コードMCNPによる予測値と比較した結果,崩壊熱を正しく評価するには,銅及びステンレス鋼ともに共鳴吸収に対する自己遮へい効果を適切に考慮する必要があることがわかった.


310368
Disruption tests on repaired tungsten by CVD coating
谷口正樹 ; 佐藤和義 ; 江里幸一郎 ; 横山堅二 ; 秋場真人
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part1), p.719-722(2002) ; (JAERI-J 19946)

 タングステン材は高融点でイオンによるスパッタリングが小さいなど,ダイバータ用アーマ材として多くの利点を有している.しかしながら,ディスラプション等による高熱負荷を受けた際に表面に生じる損傷は深刻であり,その修復方法の開発は必要不可欠である.本研究では,CVDコーティングによりタングステン表面を修復する手法について,その有効性の検討を行った.試料として純タングステン及び1%ランタン酸化物含有タングステンの2種を用意し,ディスラプションによる損傷を模擬するため電子ビーム照射装置にて1250MW/m2の熱負荷を与えた.溶融孔の生じた表面に1mm厚のCVDコーティングを施した後,再度試料に1250MW/m2の熱衝撃をあたえ,コーティング層の信頼性を試験した.その結果,前処理なしでCVDコーティングを行った試料ではCVD層が剥離したものの,前処理として損傷部の溶融層を取り除いた試料では再度の熱負荷を与えた後も健全であることがわかった. 


310367
Tritium release properties of neutron-irradiated Be12Ti
内田宗範* ; 石塚悦男 ; 河村弘
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part1), p.653-656(2002) ; (JAERI-J 19945)

 高融点かつ化学的安定性に優れるBe12Tiは,600℃以上で使用される原型炉ブランケット用先進中性子増倍材として期待されている.ブランケット内でのトリチウム放出特性を評価するために,高速中性子フルエンス4×1020n/cm2 (E>1MeV) で330, 400 and 500℃の温度で照射したBe12Tiを用いて,トリチウム放出実験を行った.Be12Tiは,ベリリウムに比べてトリチウムが放出され易く,600〜1100℃でのトリチウム拡散係数はベリリウムよりも二桁大きかった.良好なトリチウム放出特性に加えて,1100℃まで加熱したサンプルについて測定したスウェリング量はベリリウムに比べて小さいことがわかった.


310454
Compatibility between Be12Ti and SS316LN
河村弘 ; 内田宗範* ; Shestakov, V.*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part1), p.638-642(2002) ; (JAERI-J 20020)

 核融合炉中性子材料に関して,ベリリウム(Be)は優れた特性を有しているが,高温でのスエリング,構造材や水との反応性等から,発電用ブランケットの想定温度(400〜800℃)では使用できない可能性がある.そこで,Beより融点が高く,化学的に安定なBe金属間化合物が注目されている.今回は,Be金属間化合物として最も有望な材料の1つであるBe12Tiとステンレス鋼(SUS316LN)との両立性を調べた.その結果,Be12TiはBeと比較してSUS316LN内に生成する反応層が約1/10になり,両立性が大きく改善されることを明らかにした.反応層のX線回折及び反応層内生成物のBe濃度測定の結果,Beの場合は生成物はBe11Feであるに対して,Be12Tiの場合の生成物はBe2Feであった.このことは,Be12T1の方がSUS316LN側へのBe原子の移動を生じにくいことを示し,反応層厚さも小さくなったと考えられる.


310366
Phase stability and mechanical properties of irradiated Ti-Al-V intermetallic compounds
沢井友次 ; 若井栄一 ; 實川資朗 ; 菱沼章道*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part1), p.389-392(2002) ; (JAERI-J 19944)

 Ti-35Al-10V合金をJRR-3Mで3.5×1025n/cm2まで400℃と600℃で中性子照射した.本金属間化合物は,粉末冶金から恒温鍛造を経て作製されたものであり,従来の2元系Ti-Al合金には含まれない規則β相を含み,延性に優れたものである.引張試験の結果,非照射材は400℃で約3〜15%の破断伸びを示したが,400℃照射材あるいは600℃照射材はほとんど塑性変形を示さずに破断した.一方,非照射材は600℃では60%以上もの破断伸びを示したが,400℃照射材あるいは600℃照射材の破断前の塑性変形は極めてわずかであった.これらの引張試験結果,特に低温(400℃)で照射した材料を600℃で試験した場合でも延性の低下が著しいことから,準安定な規則β相の照射による分解が考えられる.しかしながら電子顕微鏡を用いた電子線回折では,規則β相の分解による脆化相,例えばω相の形成は認められなかった.


310649
Effect of solute atoms on swelling in Ni alloys and pure Ni under He+ ion irradiation
若井栄一 ; 江沢正志* ; 今村淳子* ; 武中剛志* ; 田辺哲朗* ; 大嶋隆一郎*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part.1), p.367-373(2002) ; (JAERI-J 20163)

 Ni合金の照射による微細組織変化に及ぼす溶質原子の効果を500℃で25keVのヘリウムイオン照射により調べた.用いた試料はNi及び溶質原子のサイズ因子が異なる数種類のNi合金(Ni-Si,Ni-Co,Ni-Cu,Mi-Mn,Ni-Pd,Ni-Nb)である.1×1019ions/m2まで照射すると約1.5×1022m-3の高密度の転位ループが形成されたが,アンダーサイズ因子を持つNi-Si合金のみ,その密度がやや高くなった.また,4×1020ions/m2まで照射した試料では,キャビティが成長し,溶質原子のサイズ因子に依存してスエリングが0.2%から4.5%まで変化した.キャビティの数密度は溶質原子のサイズ因子の絶対値の大きさにしたがって増加する傾向にあり,スエリング値は増加した.これらの結果と反応速度論による点欠陥濃度の計算結果からヘリウム及び原子空孔の移動度し,溶質原子とヘリウム及び原子空孔との相互作用によって影響を受けることを推測した.


310648
Swelling of cold-worked austenitic stainless steels irradiated in HFIR under spectrally tailored conditions
若井栄一 ; 橋本直幸* ; Robertson, J. P.* ; 沢井友次 ; 菱沼章道*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part.1), p.352-356(2002) ; (JAERI-J 20162)

 ORNLのHFIR炉等で中性子のエネルギースペクトルを調整した照射をオーステナイト−ステンレス鋼に行い,スエリング挙動に対する冷間加工と添加元素の効果を調べた.弾き出し損傷に対するヘリウムの生成速度を約15appmHe/dpaに調整して,400℃で17.3dpaまで照射した.試料は20%冷間加工したJPCA,316R,及び炭素濃度を0.02%に低減し,ニオブやチタンを添加した材料(C及びK材)である.照射によってこれらの材料中にはキャビティ,転位ループ及び炭化物が形成した.冷間加工したJPCAと316R材のスエリングはそれぞれ0.003%,0.004%となり,溶体化処理材に比べてやや小さくなった.また,CとK材ではそれぞれ0.02%,0.01%となり,冷間加工によってスエリングが著しく抑制された.以上のように,炭素とニオブたチタンの同時添加に冷間加工を加えることで400℃でのスエリングは抑制された.


310365
Evaluation of in-pile and out-of-pile stress relaxation in 316L stainless steel under uniaxial loading
加治芳行 ; 三輪幸夫 ; 塚田隆 ; 菊地正彦 ; 北智士 ; 米川実 ; 中野純一 ; 辻宏和 ; 中島甫
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part1), p.331-334(2002) ; (JAERI-J 19943)

 中性子照射と高温水環境の同時作用効果によって生じる照射誘起応力腐食割れ(IASCC)が,軽水炉のみならず水冷却核融合炉の炉内構造材料の主要な関心事の1つとして指摘されている.応力がIASCCのキーファクターの一つであることから,照射条件下で詳細に応力を評価する必要がある.316Lステンレス鋼の引張型試験片を用いた応力緩和試験を288℃でJMTRにおいて行ってきている.この論文は,316Lステンレス鋼の引張型試験片の炉内及び炉外応力緩和試験結果についてのべ,おもに曲げ試験片を用いて得られたFosterらの文献データとの比較を行った結果についても述べる.さらに実験結果と永川モデルによる解析結果との比較も行った.


310364
Swelling behavior of TIG-welded F82H IEA heat
沢井友次 ; 若井栄一 ; 冨田健 ; 内藤明 ; 實川資朗
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part1), p.312-316(2002) ; (JAERI-J 19942)

 TIG溶接したIEAヒートF82H鋼のスエリング挙動をTIARAによる多重イオン照射を用いて調べた.Fe照射による損傷のピークより浅い領域に,He, Hイオンをデグレーダを通して均一に注入し,FIBによって作成した電子顕微鏡試料を用いてこの部分の観察を行った.照射温度は450℃で,照射量は50dpaである.TIG溶接の熱影響部には,明瞭な変態線が観察され,これより外側,すなわち溶接熱が焼き戻しに作用した部分でキャビティーの成長が著しかった.一方,母材の熱処理実験の結果,F82HのAc1温度は820℃程度と判明した.加工熱処理を施した母材に対する結果では,より高温で焼き戻しを行った材料でのキャビティー成長が著しい半面,冷間加工により転位密度を高めた材料では,キャビティーの成長が抑制されることが明らかになった.


310532
Microstructural analysis of mechanically tested reduced activation ferritc/martensitic steels
谷川博康 ; 廣瀬貴規* ; 安堂正巳* ; 實川資朗 ; 加藤雄大* ; 香山晃*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part1), p.293-298(2002) ; (JAERI-J 20086)

 特に中性子照射された材料の破壊機構について,微細組織レベル理解することは重要な問題として挙げられてきたが,強度試験後試料から透過型電子顕微鏡(TEM)用薄膜試料を作ることが極めて困難であったため,これまで十分に理解されていない.この技術的な問題を解決するために,集束イオンビーム(FIB)マイクロサンプリング・システムを,日本原子力研究所の東海研ホットラボ施設に導入した.このシステムにより,中性子照射された試料の疲労破壊起点といったような,破壊機構を理解するうえで要点となる箇所からTEM用薄膜試料を作ることが可能となった.この論文では低放射化フェライト鋼の疲労破壊挙動について,特に核変換生成ヘリウムの効果に着目して,微細組織観察をベースに検討を行った.その結果を報告する.


310600
Microstructure and hardness of HIP-bonded regions in F82H blanket structures
古谷一幸 ; 若井栄一 ; 安堂正巳* ; 沢井友次 ; 中村和幸 ; 竹内浩 ; 岩渕明*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part1), p.289-292(2002) ; (JAERI-J 20135)

 核融合原型炉のブランケットの構造材料には低放射化フェライト鋼F82Hが用いられる予定であり,F82H鋼は固相拡散接合法の一つであるHIP法により一体化される.F82H鋼は核融合反応により発生する高中性子束に曝されるため,材料中の原子の弾き出しやHeやHガスが発生するなどの照射損傷による機械特性の劣化が予想される.本報告は,F82H鋼のHIP接合部の照射損傷をイオン注入装置を用いて調べた結果に関するものである.0.5nmの再結晶粒が形成されているHIP接合部に430℃で50dpaのFeイオン,2000appmのHeイオン,及び500appmのHイオンを同時注入した結果,接合部近傍では硬さが増加していたため延性が低下する可能性があり,同時に多数のキャビティーも形成されていたためスウェリングも生ずるものと思われる.これらの照射損傷は接合特性を劣化させる原因となり得る可能性があることから機械試験等による影響の定量化が今後の課題である.


310647
Effects of triple ion beams in ferritic/martensitic steel on swelling behavior
若井栄一 ; 沢井友次 ; 古谷一幸 ; 内藤明 ; 有賀武夫 ; 菊地賢司 ; 山下真一郎* ; 大貫惣明* ; 山本春也 ; 楢本洋 ; 實川資朗
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part.1), p.278-282(2002) ; (JAERI-J 20161)

 F82H鋼は核融合炉構造材や核破砕ターゲット容器材の候補材料である.この鋼は耐スエリング性の高い材料として知られているが,最近,He生成を伴う中性子照射の重損傷領域においてスエリングが無視できないことがわかった.本研究ではF82H鋼のスエリング挙動に対する核変換生成物などの効果を詳細に調べるとともに,スエリング抑制方法を検討した.400から500℃までFe,He,HイオンまたはFe,Heイオンを50dpaまで同時に照射した後,TEM観察による照射欠陥の解析によってスエリングを評価した.核融合炉を模擬したトリプル照射ではF82H鋼のスエリングが照射温度の増加とともに3.2%から0.1%に低下した.一方,水素を注入しない2重照射ではスエリングが0.08%以下となった.他方,核破砕ターゲット容器材料の模擬トリプル照射ではその量が温度とともに増加する傾向にあったが,500℃で最大1%程度であった.また,後者の照射条件で8at%までの水素を注入した後,15Nの核共鳴反応法によって水素濃度を測定したが,注入領域に残存する水素濃度は測定限界以下になっていた.これらの結果から高温でのトリプル照射によるスエリングの著しい促進作用が400℃近傍に存在することがわかった.又,照射前の焼き戻し温度と時間や冷間加工法などによってスエリングをある程度抑制できた.


310531
Evaluation of hardening behavior of ion irradiated reduced activation ferritic/martensitic steels by an ultra-micro-indentation technique
安堂正巳* ; 谷川博康* ; 實川資朗 ; 沢井友次 ; 加藤雄大* ; 香山晃* ; 中村和幸 ; 竹内浩
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part1), p.260-265(2002) ; (JAERI-J 20085)

 核融合炉構造材料の第一候補材である低放射化フェライト鋼の開発において,高エネルギー中性子によって生じる照射損傷が材料特性へ及ぼす影響を明らかにすることは最も重要な課題の一つである.しかし現時点では,材料強度特性変化に対するヘリウムの効果については十分に明らかとなっていない.そこで,照射条件を高精度に模擬できる多重イオンビーム照射法,照射面部分の硬さ変化を精密に測定可能な超微小硬さ試験及び押込み変形部の微細組織観察法を組み合わせ,低放射化フェライト鋼に導入した損傷領域の強度特性変化についての評価を行った.まず弾出し損傷を加えた試片について微小硬さ試験を行った結果,特定の照射温度条件において明瞭な硬化が見られた.この硬化つまり変形抵抗増加の原因は,主として微細な欠陥の生成によるものであり,さらに同時照射下でのヘリウムの存在がその変形抵抗に及ぼす影響について報告を行う.


310646
Development of a non-destructive testing technique using ultrasonic wave for evaluation of irradiation embrittlement in nuclear materials
石井敏満 ; 大岡紀一 ; 星屋泰二 ; 小林英男* ; 齋藤順市 ; 新見素二 ; 辻宏和
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part.1), p.240-244(2002) ; (JAERI-J 20160)

 軽水炉や核融合炉などの構造材料の照射脆化を超音波法で非破壊的に評価する試験技術の開発を進めている.本研究では,原子炉圧力容器用A533B-1鋼材,不純物Pの含有量を低く調整したA533B-1鋼材及びサブマージマーク溶接部から製作した衝撃試験片をJMTRにおいて523K又は563Kで中性子照射した後,遠隔操作による超音波測定を行い,試験片中を伝わる超音波の音速及び減衰率を求めた.その結果,照射材では,未照射材に比べて横波,縦波ともに音速が低下し,縦波の減衰率は上昇する傾向があることがわかった.音速の低下は,中性子照射による鋼材の剛性率及びヤング率の低下に起因することが推測される.また,シャルピー吸収エネルギーの41Jレベル遷移温度シフト量の照射に伴う増加に対して,超音波の音速は低下し,減衰率は上昇する特性があることを見いだした.


310645
Microstructural study of irradiated isotopically tailored F82H steel
若井栄一 ; 三輪幸夫 ; 橋本直幸* ; Robertson, J. P.* ; Klueh, R. L.* ; 芝清之 ; 安彦兼次* ; 古野茂実* ; 實川資朗
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part.1), p.203-211(2002) ; (JAERI-J 20159)

 核融合炉構造材や核破砕ターゲット材は高エネルギー粒子との衝突によって弾き出し損傷が生じるだけでなくHやHeなどが生成する.このため本研究では10Bを添加したF82H鋼や54Feを用いて作製したF82H鋼を用い,中性子照射中にHeやHを生成させてこれらが組織に及ぼす影響を検討した.照射はHFIR炉で2.8から51dpaまで250℃から400℃で行った.250℃照射で水素が生成した材料では転位ループの数密度がわずかに増加するとともに,転位ループのバーガースベクトルの3割程度を(1/2)<111>タイプから<100>タイプのループに変化した.また,キャビティ形成を助長した.300℃や400℃照射でHeが生成した場合,転位ループの数密度はわずかに増加し,キャビティの数密度も増加した.照射温度に依存する微細組織変化の解析から,微細組織と照射硬化または延性脆性遷移温度シフトの間の関係を考察し,照射による延性脆性遷移温度シフトの増加の原因は転位ループ形成による硬化だけに起因しているものではなく,転位ループ上に形成したα'析出物にも関係していることを指摘した.


310453
Development of an extensive database of mechanical and physical properties for reduced-activation martensitic steel F82H
實川資朗 ; 田村学* ; van der Schaaf, B.* ; Klueh, R. L.* ; Alamo, A.* ; Petersen, C.* ; Schirra, M.* ; Spaetig, P.* ; Odette, G. R.* ; Tavassoli, A. A.* ; 芝清之 ; 香山晃* ; 木村晃彦*
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part1), p.179-186(2002) ; (JAERI-J 20019)

 低放射化フェライト/マルテンサイト鋼は照射下寸法安定性に優れ,また大きな投資無しで低放射化したコンポーネントを製造するに適する.このため,材料の開発及びこれを用いた炉設計研究が進められている.これまでIEAの低放射化フェライト/マルテンサイト鋼開発国際協力で,原研とNKKが開発した低放射化マルテンサイト鋼F82Hを標準材料としたラウンドロビン試験等が,EU,米国等の協力を受けて進めてきた.ここではF82Hについて,合金設計の考え方,熱物理的特性等の物性,照射前後の強度特性及びミクロ組織の評価結果,さらにこれらのデータベース化について報告する.ラウンドロビン試験等では,評価項目として,例えば強度特性について,引張,破壊靭性,衝撃,クリープ,疲労等といった,合金挙動を包括的に評価できる項目を選び,F82Hを代表とする低放射化マルテンサイト鋼の利用可能性について検討を加えた.その結果,F82Hのクリープ強度は,高温機器用材料として評価が高い9Cr-1Mo鋼と同等か優れること,また最も重要な照射挙動の一つである照射損傷による延性脆性遷移温度の上昇も他の合金と比較して小さい結果を得た.


310363
Non-destructive testing of CFC monoblock divertor mock-ups
江里幸一郎 ; 大楽正幸 ; 谷口正樹 ; 佐藤和義 ; 秋場真人
Journal of Nuclear Materials 307-311(Part1), p.144-148(2002) ; (JAERI-J 19941)

 非破壊検査(NDE)手法の確立は核融合装置のプラズマ対向機器(PFC)開発において重要な課題の一つである.特に,CFCタイルが銅冷却管にロウ付けされているダイバータの接合部のNDEは接合法の品質と信頼性を確保するうえで,その手法を早急に確立する必要がある.検査コストの観点から,赤外熱画像と超音波探針によるNDEが有望である.本研究では,これらの手法をCFCタイルと銅冷却管の接合体に適用し接合欠陥の検査能力及び検出された接合欠陥が熱サイクル中の進展の有無を調べた.接合体には,数種類の大きさの模擬接合欠陥が導入されている.超音波探針法では,冷却管に挿入したプローブで内側から接合面を検査した.また,赤外熱画像法では,温水と冷水を交互に接合体に供給し,CFC表面温度の過渡変化の時定数と数値解析結果と比較することで,接合欠陥の大きさを評価した.NDE後の接合体を用いて,ITER定常熱負荷条件下(10MW/m2・30秒)において,1000回以上の熱サイクル試験を行った.熱サイクル試験中のCFC表面温度はほぼ一定を示しており,熱サイクルによる初期欠陥の進展は観察されなかった.また,加熱中のCFC表面温度の最大値は,NDEで評価した欠陥の大きさを仮定した数値解析結果とほぼ一致しており,NDE結果の妥当性を示すことができた.


310361
Mass-spectrometric determination of oxygen potential of hypostoichiometric urania-yttria solid solution
中島邦久 ; 大道敏彦* ; 荒井康夫
Journal of Nuclear Materials 304(2-3), p.176-181(2002) ; (JAERI-J 19939)

 充分に還元されたU1-yYyO2-y/2の組成式でほぼ表すことのできる酸素欠陥型のウラニア−イットリア固溶体とほぼ化学量論組成に近いウラニア−イットリア固溶体を調製し,クヌーセンセルと組み合わせた質量分析測定によりその固溶体の酸素ポテンシャルを評価した.化学量論組成に近い固溶体の酸素ポテンシャルは,ウラニアに比べ非常に高くなった.一方,充分に還元された固溶体は,同じ亜化学量論組成をもつウラニアとほぼ同じ酸素ポテンシャルを有した.


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